日曜日, 5月 12, 2024

ゴジラの国の子どもたち《映画探偵団》74

【コラム・冠木新市】アカデミー賞の視覚効果賞を受賞した山崎貴監督の日本映画『ゴジラ-1.0』が世界中で大ヒットしている。さらに米国映画『ゴジラ✕コング 新たなる帝国』が近日公開となる。今年はゴジラ誕生70周年にあたる。1954年当時、ゲテモノ作品と馬鹿(ばか)にする人もいたが、今ではゴジラは日本の文化財と言っても過言ではない。 考えてほしい。公開当時20歳だった人は90歳、16歳だった人は86歳、10歳だった人は80歳だ。日本はゴジラを見て育った子どもたちの国なのである。 『ゴジラ・デイズ』 1980年代後半、『ゴジラを創った男たち』のテレビドラマ用の企画を考えた。1954年は東宝撮影所で黒澤明監督の『七人の侍』が製作されていたころ。ビキニ環礁で水爆実験が行なわれ、日本国中に放射能の恐怖が襲う中、田中友幸プロデューサ一は『G作品』の企画を立案。街頭テレビでは米人レスラーに力道山の空手チョップが炸裂(さくれつ)。 この年発足した自衛隊の撮影協力のもと、『ゴジラ』が作られる。作家の三島由紀夫がロケ地を訪れ、国産特撮第1号のゴジラに関心を示す。苦闘する特撮監督円谷英二と本多猪四郎監督。ゴジラとその時代をノスタルジックに描く。 企画書を田中プロデューサ一あて送ると、代理の方から電話があり「現在、新作のゴジラを準備中で、古いイメージを与えて新しいゴジラの邪魔をしたくない」との返事だった。1984年の『ゴジラ』の興業成績がいまひとつだったため、その後作られてなかった。1年後、その新しい作品が『ゴジラVSビオランテ』(1989)だとわかる。 知人に預けてあった企画書は出版社に渡った。ちょうどそのころがゴジラ生誕40周年を迎える前年にあたり、ゴジラブ一ムが起きていた。出版担当者の「第1作だけでなく20作までひろげ、関係者にインタビューして40年史にまとめられないですか」となり、『ゴジラ・デイズ』(1993年)の本になった。その年、アメリカ版『GODZILLA』が製作されるとのニュースが流れていた。 『新諸国物語』 特撮監督・川北紘一にインタビューした際、『ゴジラ』公開時、夢中になったのは『紅孔雀』だと話してくれた。そうなのだ。70年前、ゴジラに負けず劣らず少年少女の人気を集めていたのは、東映の『新諸国物語』シリーズである。 北村寿夫原作のNHKラジオ連続放送劇『新諸国物語 笛吹童子』を映画化したお子様向け時代劇は、白鳥党とされこうべ党の戦いを描く勧善懲悪の活劇3部作だった。大ヒットを記録した東映は、続いて『新諸国物語 紅孔雀』を全5部作で公開する。 『新諸国物語』は最終的に『白鳥の騎士』『笛吹童子』『紅孔雀』『オテナの塔』『七つの誓い』『天の鶯』『黃金孔雀城』の7部作の大河シリーズとなる。戦後の混乱が残る日本で生きる少年少女に正義と勇気のメッセージを送る作品だった。 私が体験したのは『黃金孔雀城』(1961)からで、黒冠者(里見浩太郎)の忍術シ一ンにしびれた。またテレビで見ていた山城新伍・主演『風小僧』は『新諸国物語』のスピンオフ作品だと後で知る。『スター・ウォーズ』(エピソード4)は、元ネタが黒澤監督の『隠し砦の三悪人』であることは知られているが、善と悪のフォ一スの戦いを見て、私は『新諸国物語』を連想した。 世界はゴジラの国の子どもたちの時代を迎えようとしている。今こそ、『新諸国物語』をリメイクし世界に輸出すべき時ではないかと思う。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

「筑波山、桜川は原風景」 角川短歌賞受賞の渡辺新月さん

つくば市長を表敬訪問 短歌界の新人賞にあたる角川短歌賞を昨年11月に受賞したつくば市出身の東大生、渡辺新月さん(21)が26日、つくば市の五十嵐立青市長を表敬訪問した。渡辺さんは「子どもの時に見ていた筑波山や、高校時代に自転車で橋の上から眺めていた桜川は、今も強く心に残る原風景」だと話し、今後は「大学院への進学を目指し、創作活動と共に和歌の歴史を学び、和歌を切り口とした一本の線で日本の文学史を研究していきたい」と語る。五十嵐市長は「地元出身の渡辺さんを応援したい」と声を掛けた。 渡辺さんは母親の実家のある青森県八戸市で生まれて間もなく、つくば市谷田部に移り高校までを過ごした。土浦一高を卒業後、東京大学に進学し4月から4年生になる。都内に暮らしながら学生短歌会「東京大学Q短歌会」に所属し創作活動に打ち込んでいる。 百人一首が小学生の頃から好きだった。中学生のときに夏休みの宿題をきっかけに短歌に興味を持ち始めた。以来独学で創作活動を始めると、土浦一高在学中の2018年に第64回角川短歌賞で佳作を受賞。20年には第2回笹井宏之賞野口あや子賞、21年に第3回超然文学賞短歌部門最優秀賞を受賞した。22年、再び角川短歌賞佳作を受賞し、昨年6回目の同賞挑戦で最高位の短歌賞を受賞した。過去最多の870篇の応募があった。 小、中学時代は地元の谷田部交流センター図書室や中央図書館に何度も通いながら古い文献を読むことに夢中になっていたという。中学、高校時代は毎晩5首から10首の短歌を作り、日記と共に毎日手書きでの創作を現在まで続けている。「書くことが面白い。日記は事象だが短歌には感情を乗せることができる」と語ると、「自分が作った短歌を後から読み返すと、その時、自分がどんなことを感じていたかを思い出せる。短歌にはその時の感情を残すことができると気がついた時に、最初の驚きを感じた」と創作に打ち込み初めた当時の気持ちを思い返す。 「古い言葉に興味がある。古い言葉を使って新しいことを歌うことが短歌の醍醐味。大学に入ってからは能に興味をもつようになり、自分でも習うようになった」という。 自身での創作と共に、歴史上の人物や他の作家の作品にも関心を持つ。その訳を「他者の作品を読むことでその人の感情を『解凍』できる」とし、「歴史上の人物の感情を自分に引き寄せて感じることができるのも短歌の魅力」だと語る。(柴田大輔)

いい日旅立ち《続・平熱日記》154

【コラム・斉藤裕之】宇部の個展に向けてのロングドライブ。いつもパクを預かってくれるマヨねえこと小山さんは「1カ月でも預かるよ」と言ってくれたが、山口で義妹のユキちゃんもパクを待ってくれていることだし。何も好き好んで千キロの道のりを犬と絵を積んで軽自動車で走らずともと思うのだが…。 とにかく無理せず安全運転。しかしなにせ長丁場なので、飽きない工夫が必要なのだけれども空いているのは耳ぐらい。普段はラジオ派、というよりも特に好んで音楽を聴く習慣もないのだけれど、高速道路でそれまで聴いていたラジオ局の電波が届かなくなるという厄介なこともあって、改めてCDの良さに気付いたのだ。 例えばCD1枚で1時間、約百キロは退屈しないで走れる。ところが世の中はサブスクやブルートゥースの時代になっているし、私の家にはろくにCDがない。 キーボードプレイヤーとしてバンドをやっている友人のマサシさん。銀行員の彼は私より一回りほど若い。先日はライブに招待されて、50年代から90年代までの洋楽を中心に楽しませてもらった。そうだ!彼にCDを借りよう。 「じょうばん せーん!」 ところで長女の子供、つまり孫が3才近くになって2人で出かけることになった。というのも、2人目ができたので長女は少しでも体を休めたいから上の子の面倒を見てくれというのだ。生まれた時からしばらくはうちにいたし、それからも割と頻繁にうちに来ているので孫とは仲良しであるから、ふたりきりで出かけることに不安はない。 目指すは常磐線。そう、孫は電車が好きなのだ。「じょうばん せーん!」と繰り返しながら、楽しそうに駅のホームに到着。踏切を通過する度に喜び、さてどこまで行こうかと思ったが、その日は鉄橋を渡って我孫子で下車。それから、別の日には土浦までの旅を楽しんだ。 さてパクと山口に出発だ! 後日、快くCDを持ってきてくれたマサシさんとそんな話をした。というのも…彼の息子さんは以前私の家に絵を描きに来ていて、まだ学校に上がる前だったか、どうやら電車が好きだというので、とりあえず電車ばかり描かせた。家にあった子供百科事典の「でんしゃ」の項目数ページは切り取られ彼専用の見本となった。で、なんと息子さんはこの春JR西日本への就職が決まったというではないか。 JRといえば、CMにも使われた「いい日旅立ち」という歌がある。私が高校を卒業するころに流行(はや)った曲だ。なぜだか家に百恵ちゃんのレコードがあって聴いていた思い出がある。昨年まで新幹線の中で流れていたのも記憶に新しい。 さてパクと山口に出発だ! 「いい日旅立ち」になりますように! マサシさんのCDからどんな曲が流れてくるか楽しみだ。(画家)

酒気帯び運転で40代女性職員を停職処分 つくば市

つくば市は25日、酒気帯び運転により、市財務部の40代女性職員を、同日から6カ月間の停職処分にしたと発表した。 市人事課によると職員は、昨年10月27日午前7時52分ごろ、車で出勤途中、市外で民有地のフェンスと接触する物損事故を起こし、警察の調べで酒気帯び運転が分かった。 市の調査によると職員は、前日の夜9時40分ごろから350ミリリットル入りのハイボール缶を6本未満飲酒した。翌朝は体調が不調ということはなく、車で出勤途中、助手席に物が落ちたため拾おうとしてハンドル操作を誤ったと話しており、酒気帯び運転については認め、罰金と免許取り消しの行政処分を受けているという。その後、市職員分限懲戒審査委員会を開いて処分を決定した。 五十嵐立青市長は「飲酒運転が大きな社会問題となっている中、これまで再三の注意を喚起してきたにも関わらず、このような不祥事を起こしたことは誠に遺憾。市民の信頼を裏切り多大なる迷惑をお掛けしたことを心からお詫びします。今後再発防止に万全を期し、市民の不信を招く行為を厳に慎むよう綱紀の保持を徹底させます」などとするコメントを発表した。

実証実験同意の個人情報を漏えい つくば市立保育所の保護者27人分

実験は中止 つくば市は25日、民間企業が市立保育所2カ所で予定していた実証実験で、実験に参加することを同意した保護者の個人情報が、6日から11日の6日間、他の参加同意者に閲覧できる状態になっていたと発表した。市は個人情報の不適切な取り扱いがあったとして、今回の実証実験は中止するとしている。 市科学技術戦略課によると、漏えいしたのは、保護者の氏名、メールアドレスと、子供の発達状態に関するアンケートを集計した概要。アンケートの概要は、保護者個々人の氏名などと紐づけされたものではないという。 先端技術を活用し子育て支援サービスを開発、提供するエフバイタル(東京都中央区、安島真澄社長)が作成したインターネット上の回答フォームで、実証実験に同意した保護者が、他の保護者の氏名などを閲覧できる状態になっていた。 同社は昨年10月、同市と「先進技術を活用した子育て支援及びSDGsの推進に係る包括連携協力協定」を締結した。協定に基づいて、市立保育所2カ所で、3~5歳の園児の保育所での様子を動画で撮影し、人工知能を活用して行動の特徴や傾向を解析し、得られた結果を保育所で活用する可能性について検証する計画で、6日から回答フォームで保護者に参加を募っていた。 11日午後6時ごろ、保護者の一人から、他の保護者の回答内容が閲覧できる状態になっていると市に連絡があり発覚した。 市は同社に対し、保護者の回答情報を閲覧できないよう速やかに設定を変更するよう指示したとし、さらに27人を含む2カ所の保育所の3~5歳児の保護者全員に、市と同社がそれぞれ謝罪し対応状況を知らせたとしている。 原因について市は、エフバイタルがオンライン回答フォームを作成した際、設定を誤ったためだとし、同社に対し、検証と再発防止策を求めているとしている。今後の同社の実証実験について市は、現時点で未定だとしている。

広さ最大、コインランドリー併設 ガソリンスタンド「つくばみどりの店」開所

ライフスタイルの中のSSへ、新しい形態目指す セキショウグループのセキショウカーライフ(つくば市、萩原孝弘社長)は25日、つくばエクスプレス(TX)沿線のつくば市みどりの地区にガソリンスタンド「つくばみどりの店」(菊地東人店長)をオープンした。コインランドリーを併設し、最新型のドライブスルー洗車機と、9台分の屋根付き拭き上げ場を備える。敷地面積は約4084平方メートルで、県内のほか栃木、群馬、福島に計54店を構える同社のガソリンスタンドの中で最大。同社が新店舗を開所するのは5年ぶりという。 菊地店長は「若い世代が多い地域なので、例えば季節によって餅つきや豆まきなどのイベントを開いて、地域住民の新たなコミュニティーをつくる場となれば」と話し、「今までのサービスステーション(SS)とは違った目線で、カーライフの中にあるSSから、ライフスタイルの中のSSというような新しい形態をつくっていくことができれば」と話す。 市内のTX沿線を結ぶ新都市中央通り線と国道354号の交差点に位置する。24時間営業、セルフサービスのガソリンスタンドで、8台分の乗用車給油レーンと、ドライブスルー洗車機2台、タイヤなどの下回りを予備洗いする高圧洗浄機、洗車後に水滴などを拭く屋根付きの拭き上げ場が9台分ある。オイル交換など車の整備をするカーメンテナンス場は設置しておらず、整備や修理は近くのみらい平店と連携して実施する。 併設のコインランドリーもセルフ式、24時間営業で、通常の洗濯や乾燥のほか、羽毛布団やスニーカーなどを洗濯、乾燥する機械を備える。 オープンに先立って25日、同所で竣工式と開所式が催された。関彰商事の関正彬取締役は「新店舗を運営できるのはうれしい限り。今回はセルフ式の新店舗となる。お客様の利便向上を目指し、地域のお客様に選ばれる店舗運営を目指したい」とあいさつした。 エネオス関東第1支店の小金丸大輔副支店長は「国内は経済的に活況を呈しているが、資源高やインフレが続き、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出ゼロ)は以前にも増して議論が活発になっている。先行きが読めない中、関彰商事は将来に目を向けて手を打ってこられた。つくばみどりの店もそういう店。道路の開通や住宅増加を見越してこの場所につくってくださった。単にセルフSSではなく、新しいサービスとして地域密着で近接性の高いランドリーを設置いただいた。エリアナンバー1のSSとなるようけん引していただければ」と話した。 ◆つくばみどりの店はつくば市谷田部871(陣場F-22街区7)。4月5日(金)~7日(日)の3日間、オープンイベントを開催する。問い合わせは電話029-886-6722(同店)

常総学院、日航石川を破り1回戦突破 選抜高校野球

第96回選抜高校野球(西宮市、甲子園球場)は大会6日目の25日、第1試合で茨城県代表の常総学院(土浦市)が日本航空石川(石川)と対戦。エース小林心汰の好投と4番・武田勇哉の決勝打により、1-0で常総が競り勝った。2回戦は第3試合(27日午後2時からの予定)、報徳学園(兵庫)と対戦する。 第96回選抜高校野球 1回戦(25日、甲子園球場)常総学院   000001000 1日本航空石川 000000000 0 試合前に両チームの監督が予想した通り、ロースコアの締まった試合になった。ともに放った安打は5本ずつで無失策。常総学院はエース小林が9奪三振で完封、日航石川は2年生左腕の猶明光絆が5回まで2四球4奪三振の好投で常総学院打線を苦しめた。 4回表の常総学院は、武田の四球と5番・森田大翔の中前打などで2死一・二塁とするが、ダブルスチール失敗で好機を逃した。4回裏には日航石川に1安打1四球と暴投で2死一・三塁とされるが、小林がカットボールで次打者を三振に取った。 スコアが動いたのは6回表。先頭の2番・池田翔吾が四球で出塁後、ボークで進塁。3番・若林佑真の送りバントで1死三塁とする。ここで打席に立った武田は右翼への犠牲フライ。4番の仕事で常総学院が貴重な決勝点を手にした。 常総学院は8回表に2死満塁、9回表に1死一・二塁の好機をつくるが、日航石川の継投の前に追加点は挙げられず。9回裏の日航石川は、四球と盗塁、単打で1死一・三塁と逆転のチャンスをつくるが、次打者が遊ゴロからのダブルプレーで試合終了。能登半島地震の被害に苦しむ地元の輪島市に、勝利を届けることはできなかった。 「さすが」「やる時はやる」 土浦市中村西根の常総学院高校では、生徒ら約70人が視聴覚室に集まり、大型スクリーンの前で観戦応援をした。バスケットボール部の海老澤慶人さん(3年)は、野球部員とも親しく、日頃から試合の結果などを話して互いに励まし合っている。武田選手の決勝打には「さすがだなと思った」と感想。次戦では、仲の良い杉山陽大選手の活躍に期待しているという。 「みんな最後まで集中を切らさず、全力を出しきってくれた」と話すのは相澤宥愛さん(3年)。特に小林投手の投球と、6回裏の池田選手のダイビングキャッチが最高だったという。「2人とも教室ではおちゃらけてるが、真面目なところもあり、やる時はやるなという感じ」とのコメント。自身は剣道部で、大会があるため甲子園に応援には行けないが「次戦も頑張ってほしい」と期待を託した。(池田充雄)

つくばオフィスをオープン バックオフィスのタスキー

経理や労務などの業務を後方から支援するバックオフィス総合支援事業のタスキー(本社 東京都中央区、青谷貴典社長)は22日、つくば市二の宮に「つくばオフィス」をオープンした。同グループの拠点としては5カ所目となる。つくば市内のホテルで21日、関係者約200人を集め記念式典が催された。 つくばは人口増加が続き、集積する研究機関を中心にスタートアップ企業が生まれ続けていることから、ローカルビジネスやスタートアップビジネスを支援しようと開設した。 つくばオフィスは、スタートアップ企業の創業支援や、中小企業の会計、税務、人事、労務などを支援する。公認会計士の菊池友博さんが所長を務め、公認会計士、税理士など4人が配属される。 会計ソフトなどを開発するマネーフォワード社のクラウド型会計ソフトを積極的に活用し、業務を代行する企業の日々の取引データの入力などを効率化して会計業務にかかる時間を大幅に短縮。さらに給与計算、売上管理、労務管理、経費精算などをネットワーク化することなどが特徴だ。 地域開発を行うグループ会社のBTも同オフィスに拠点を置く予定で、外食産業の坂東太郎(青谷英将社長)と、筑波山麓でフォトウェディング事業や複合施設運営事業などの地域開発を行う。 タスキーは2018年に設立された。バックオフィスのDX化が強みで、バックオフィス総合支援事業、HR(人材)ソリューション事業、経営コンサルティング事業を3つの柱としている。マネーフォワード主催のフォワード・アワード2021では「バックオフィス改革 チャレンジ賞」を受賞した。 タスキーグループは、グループを統括するタスキ―を中心に、士業業務を担うタスキー税理士法人、タスキー社会保険労務士法人、バックオフィスアウトソーシング事業を運営するB-tas、地域開発事業を担うBTの5社から構成されている。グループ全体で、公認会計士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士、行政書士など計32人のスタッフがいる。 21日の記念式典であいさつした青谷貴典社長(44)は「坂東太郎、青谷洋治会長の次男として生まれ、両親が事業を大きくしていくのを見てきた。社員や地域のために、坂東太郎の後を継ぎたかったが、公認会計士の道を目指した。主に仙台で仕事を学び、自分のふるさと茨城の地で事業を始めることになった。人手不足など経営者の悩みに沿った運営をしていきたい」と語った。 つくばオフィスの所長を務める菊池友博さん(34)は「人と人をつなぎ未来へたすきをつなぐということで、会計、労務、人事、情報サービス、ウェブサービスなど専門的な業務を総合的にやっていく。スタートアップ企業の多いつくばという地で役立ちたい」と意気込みを語った。 式典ではつくば市の五十嵐立青市長、筑西市の須藤茂市長、阿見町の千葉繁町長、境町の橋本正裕町長のほか、桜井姚つくば市商工会長、岡田広元参議院議員らが祝辞を述べた。続いてマネーフォワードSMB事業推進本部の服部穂住さんが「企業を成長させる組織づくりとは」というテーマで記念講演し、中小企業のDX化やバックオフィスの重要性などを語った。(榎田智司)

植物のありのままを芸術的に描いた絵《邑から日本を見る》156

【コラム・先﨑千尋】今、水戸市千波町の県近代美術館で、企画展「英国キュー王立植物園 おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり」が開かれている。私は絵心がないので、ボタニカル・アートとはどんなものかを知らなかった。本によれば、ボタニカルとは日本語では“植物学の”、アートは“芸術”だから、ボタニカル・アートとは「植物学的な絵=植物画」という意味になる。 「植物のありのままの姿を、誇張を交えずに、正確に、細密に表現し、かつ鑑賞に堪える芸術性を合わせた絵画」だそうだ。そう言われても、実際に見てみないと分からない。 この企画展は、キュー王立植物園が所蔵する作品や個人コレクションを主体に構成され、食用植物を題材にした18~19世紀のボタニカル・アートとともに、英国の食文化を伝えるティー・セットや家具、18世紀ごろの古いレシピやヴィクトリア王朝期の主婦のバイブル「ピートン夫人の家政読本」など、約190点が展示されている。 これらによって、この時代に貿易大国として世界に君臨した英国の食の歴史や文化、生活様式が分かるというものだ。同植物園は、18世紀に王室の宮殿に併設した庭として始まり、現在は世界有数の植物や菌類の研究機関でもある。 五感が刺激される不思議な絵 会場に入ると、リンゴや洋ナシ、ザクロなどの果物やカブ、キャベツなどの野菜、紅茶やコーヒー、チョコレートの原料となるカカオ、ハーブやスパイスなど、私たちが日ごろ口にする食べ物や飲み物になる植物が目に飛び込んでくる。写真と見間違うほど、正確、精密に描かれた絵だ。 普通の絵だと、日本画でも西洋画でも、描く人の個性によってどこを強調するかがはっきりしており、見る人にもそのことが分かる。しかしボタニカル・アートはそうではなく、あくまでも対象となる野菜や果物を、主観を交えず正確に描写することに力点が置かれる。1枚の絵の中に葉の裏表や果実の内部などが綿密な手わざで描かれ、実物を見ているような気分になる。果物や野菜、花などが生きているのだ。手に取ってみたくなる。 写真とは違い、生命の力強さを感じる。描き手には、例えば、花びらの数、おしべ・めしべの形や数、茎に葉がどのようについているか、とげや毛があるかなどを注意深く観察することが求められる。ボタニカル・アートは「科学と芸術の融合」だそうだが、展示されている作品を見ていると、私の五感が刺激されてくる。 NHKの朝ドラ、植物学者・牧野富太郎をモデルにした番組を思い出した。牧野は収集した植物を、時間を置かずに描き、残した。全体図だけでなく部分図も多く描き、まるで解剖図のようだった。牧野は画家ではなかったが、誰にでもできる技ではない。同館では、昨夏の「土とともに 美術にみる<農>の世界」に続く好企画だ。(元瓜連町長) ◆ボタニカル・アート展は4月14日まで(月曜休館)。電話029-243-5111(同館)。

路上から対抗 筑波大生「本を読むデモ」でパレスチナと連帯

イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への軍事侵攻が続く中、「理不尽な暴力に、学ぶことで対抗する」という思いを抱く学生らが23日、犠牲者への連帯を示す「静かに本を読むデモ」をつくば市天王台の筑波大学構内で行った。 「もしよかったら、本読んでいってください」 雨上がりの午後5時、冷え込む屋外で筑波大大学院1年の安田茉由さん(23)が、通りかかる学生に声を掛ける。地面に敷いたシートの上には19冊のパレスチナ関連書籍と印刷した資料が並んでいる。誰でも自由に手に取り、時間をかけて読むことができる。「大学内に、パレスチナの今を学べる空間をつくれたら」と考え用意した書籍は主に安田さんと、企画に協力する同大大学院3年の上田由至さん(31)によるものだ。上田さんによる短い感想が添えられたものもある。風に飛ばないよう印刷物に置かれた小石には、「停戦」「誰も殺すな」など安田さん直筆のメッセージがカラフルなイラストとともに描かれている。 「スタートは午前11時。これまでに5人くらいが長い時間読んでくれ、その他に話をしてくれた親子や、立ち止まって見てくれる学生などがいた」と、厚手のコートに身を包む2人は笑顔で話す。 きっかけはデモ参加 きっかけとなったのが、3月14日につくば駅前で行われたガザ地区攻撃への抗議デモだった。参加した安田さんはパレスチナ問題に関心を持ち、署名活動に協力するなど行動してきた。ただ、大きい音が苦手な安田さんはデモでの音に馴染めなず、「自分ができる他のことがあるんじゃないか。大学という場がせっかくあるのだから、学ぶことで暴力に対抗できないか」と考えた。そこで思い至ったのが「静かに本を読むデモ」だった。「知らないことで、日本人の私たちも民族浄化や虐殺への加担につながってしまった」という反省があった。 活動の場を屋外にした理由は「室内で読書会をやるより、ランダムに人と出会うことができる外が良かった。屋外なら、ちょっとだけ見て去っていく、じっくり見る、遠くから眺めるなど様々な関わり方ができる。静かにできるのも大事にしたい。スピーカーを使ってデモをするのも素敵で応援したいと思いつつ、私のように大きな音が苦手だったり気後れしちゃう人でも関われる場をつくりたかった」という。そして同じ学科で学ぶ上田さんに声を掛けた。 安田さんは都内の大学に通っていた学部時代に、駅前の広場や路上に敷いた大きなロール紙にペンで誰でも落書きできるイベントを開いた。路上を行き交う人同士が絵を描くことでつながり、そこで生まれる交流に心を動かされたという。海外から来た人、路上生活する人、多様な職業の人、子ども、大人、高齢者がそこで交わった。上田さんは、大正期の路上での芸術、政治活動などを始め「路上」で繰り広げられた表現活動を研究対象としている。2月には、国内外の事例や思想を論じる雑誌「路上の抵抗誌」を創刊した。 暴力に抗う 「暴力」に対して2人はこう話す。自身の研究対象であるフェミニズムとの関わりから安田さんは「私はフェミニズムを研究する中で性暴力についても学んでいる。暴力に対して誰が一緒に怒り、周囲がどうそれに応答したのかが性暴力被害に遭う人にとって、その後の回復や残る傷の深さを左右する。パレスチナで人々が負う傷やトラウマは今だけでなく一生続くかもしれない。それに対して命を落とす一人一人を悼むととともに、私がその傷を広げてしまわないよう何とかできればというのも個人的な動機になっている」 上田さんは「ガザでは日々死傷者数が増えている中で欧米諸国がイスラエル支援に立っている。マイノリティーの側に立つことが、自分が学んできた人文学だと考える。学ぶこと、実際に声を上げることが大切」と話す。 安田さんはさらに「一番は続けていくこと」だと言う。今後については「足を止めてくれる人が同じ空間で本を読んで、同じ思いを共有できるのは良い経験。今すぐ何かが変わるわけではないかもしれないが、家に帰ってから思い返すなど、少しでも変化を与えられたらと思っている」と話す。「私はパレスチナのことを知らなかった。だからこそ声を上げてこなかった。そのために暴力に加担し、また、させられてきたのが悲しかった。大学院生として学ぶことで(暴力に)加担しないよう抗っていきたい」と述べる。今後の活動は、SNSを通じて発信していくという。(柴田大輔)

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