つくば市長を表敬訪問
短歌界の新人賞にあたる角川短歌賞を昨年11月に受賞したつくば市出身の東大生、渡辺新月さん(21)が26日、つくば市の五十嵐立青市長を表敬訪問した。渡辺さんは「子どもの時に見ていた筑波山や、高校時代に自転車で橋の上から眺めていた桜川は、今も強く心に残る原風景」だと話し、今後は「大学院への進学を目指し、創作活動と共に和歌の歴史を学び、和歌を切り口とした一本の線で日本の文学史を研究していきたい」と語る。五十嵐市長は「地元出身の渡辺さんを応援したい」と声を掛けた。
渡辺さんは母親の実家のある青森県八戸市で生まれて間もなく、つくば市谷田部に移り高校までを過ごした。土浦一高を卒業後、東京大学に進学し4月から4年生になる。都内に暮らしながら学生短歌会「東京大学Q短歌会」に所属し創作活動に打ち込んでいる。
百人一首が小学生の頃から好きだった。中学生のときに夏休みの宿題をきっかけに短歌に興味を持ち始めた。以来独学で創作活動を始めると、土浦一高在学中の2018年に第64回角川短歌賞で佳作を受賞。20年には第2回笹井宏之賞野口あや子賞、21年に第3回超然文学賞短歌部門最優秀賞を受賞した。22年、再び角川短歌賞佳作を受賞し、昨年6回目の同賞挑戦で最高位の短歌賞を受賞した。過去最多の870篇の応募があった。
小、中学時代は地元の谷田部交流センター図書室や中央図書館に何度も通いながら古い文献を読むことに夢中になっていたという。中学、高校時代は毎晩5首から10首の短歌を作り、日記と共に毎日手書きでの創作を現在まで続けている。「書くことが面白い。日記は事象だが短歌には感情を乗せることができる」と語ると、「自分が作った短歌を後から読み返すと、その時、自分がどんなことを感じていたかを思い出せる。短歌にはその時の感情を残すことができると気がついた時に、最初の驚きを感じた」と創作に打ち込み初めた当時の気持ちを思い返す。
「古い言葉に興味がある。古い言葉を使って新しいことを歌うことが短歌の醍醐味。大学に入ってからは能に興味をもつようになり、自分でも習うようになった」という。
自身での創作と共に、歴史上の人物や他の作家の作品にも関心を持つ。その訳を「他者の作品を読むことでその人の感情を『解凍』できる」とし、「歴史上の人物の感情を自分に引き寄せて感じることができるのも短歌の魅力」だと語る。(柴田大輔)