日曜日, 4月 5, 2026

雪入という集落《写真だいすき》35

【コラム・オダギ 秀】集落を進むと、少し高地になったところに小さな墓地があった。辺りには彼岸花が咲いていて、とても安らぐような静かな土地だった。だが、話を聞いてみると、それなりに色々つらいことがあり、大変だなというのが、ボクの感想となった。 彼岸花を撮影していると、近所のお婆(ばあ)さんが声をかけてくれた。そして、見ず知らずのボクに「ナシ食べていきな」と言う。それじゃと思ってボクは、婆ちゃんの家へ行く。婆ちゃんはボクを上りかまちに掛けさせると、ナシをむきながら、色々と話してくれた。 「イノシシがひどくてね。作ったもの作るそばから、畑荒らされて、みんな食べられちゃうのよ。囲いをしても、その下掘って入ってくる。だから、教えてもらって、畑の周りに電気の囲いしたのよ。うちなんか、小さい畑だけど10万近くしたのよ、もう大変。最初はよかったけど、すぐ慣れて穴掘って入ってくる。お墓んとこにワナあったでしょ。仕掛けても入ってこないのよ、わかってて。困ったわねえ」などと。 途中の道路にウリボウ(イノシシの子。子イノシシはウリのような模様がある)が、車にはねられたのかなあ、死んでいましたよと言うと、「そう、車だって避けられないわよ。ちょいちょいいるんだから。気イつけてね」。 ぼっち珈琲を淹れながら… この雪入(ゆきいり、かすみがうら市)という集落が、ボクは大好きだ。小さな部落だが、とても景色がよく、住む人がやさしい。ウロウロしていると、すぐ「どこに行くの?」と、誰かが声をかけて案内してくれる。子どもたちは、ニコニコしながら、あいさつしてくれる。そんな郷(さと)で聞く動物との闘いは、とても現実的だった。 集落の外れの小さな川辺で、ボクはぼっち珈琲を淹(い)れて飲みながら、撮影の反省をする。水源がどこかは知らないが、ちょっと跨(また)ぐには幅広すぎる小川が、そばの山地からきて集落の横を流れている。その水を、人々は田畑に引いているのだろうか。 清冽(せいれつ)な水で、流れを挟む草地に小さなキャンプ椅子を置き、その水の流れを眺めながら珈琲を飲んでいると、様々な思いが湧く。至福の時間だ。コンロにくべるわずかな火に癒やされたり、満たされたりする。カメラを磨いたりレンズを拭いたりする。色々な土地で、様々なものを撮り、たくさんの思いを抱く。だから、写真がだいすきだ。(写真家、日本写真家協会会員、土浦写真家協会会長)

学校心臓検診と心臓突然死《メディカル知恵袋》8

【コラム・髙橋実穂】学校心臓検診は海外にはない日本独特のシステムです。1958年、就学時に健康診断を行うことが定められ、73年から学校健診の必須項目に学校心臓検診が指定されました。95年から、小・中・高校の1年生全員に心電図検査が義務付けられました。該当する学年の生徒は、春に学校で一斉に心電図をとっています。小学4年生にも行う自治体も増加しています。 学校心臓検診の目的と1次検診の役割 当初の目的はリウマチ熱によって起こる心臓病の発見・管理でしたが、未発見の先天性心疾患や川崎病による冠動脈後遺症の発見・管理へと変化してきました。最近ではほとんどの先天性心疾患は学校心臓検診の前に診断されているため、遺伝性不整脈や心筋症などの発見・管理が重要になっており、心臓突然死の予防にシフトしつつあります。 現在の学校心臓検診の流れを図1に示します。1次検診で行うのは、心電図、学校医の内科検診、心臓検診調査票などです。遺伝性不整脈や心筋症の発見のためには12誘導心電図(胸6カ所と両手両足4カ所に電極をつけて、合計12個の波形を得る心電図)が望ましいですが、まだ省略4誘導の地域もあります。学校医の診察はとくに聴診が重要です。無害性心雑音とそうでない心雑音、心音の異常などを抽出する機会になります。 心電図や学校医の聴診所見に異常がなくても、調査票の項目で2次検診に抽出することもあります。とくに運動時胸痛や動悸、失神などの項目が重要になります。 学校心臓検診と心臓突然死 学校管理下の心停止の発生場所は、グラウンド、プール、体育館を合わせて約8割が運動に関連しています。運動によって増悪する疾患を見逃さないために、学校心臓検診は非常に有用ですが、すべて発見できるわけではありません。 学校心臓検診で発見可能な疾患は、先天性心疾患、心筋症(多くは肥大型心筋症)、WPW症候群、QT延長症候群、Brugada症候群、川崎病の冠動脈後遺症、肺動脈性肺高血圧症―などがあげられます。QT延長症候群は図2のようなtorsade de pointes(TdP)と呼ばれる特徴的な心室頻拍(ひんぱく)から心室細動に移行して、失神や突然死を発症する遺伝性疾患です。 いくつかの遺伝子型が報告されていますが、一番多い遺伝子型のLQT1は水泳中や運動中にTdPが誘発されるので、学校生活での制限が必要です。 学校心臓検診の心電図で発見がむずかしい不整脈として、カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)を図3に示します。これも遺伝性不整脈のひとつです。安静時の心電図では徐脈傾向以外に異常を示さないことが多く、運動あるいは精神的ストレス時にしか、心室期外収縮や心室頻拍、心室細動がおこらないことが発見が難しい理由です。失神をてんかんと誤診され、抗てんかん薬を内服しているケースもあります。 心臓検診調査票での突然死の家族歴や失神の既往とその状況が発見の契機になるため、調査票が重要であることがわかります。普段は元気なので、病識(びょうしき)が薄く運動制限が守られないこともあります。 学校心臓検診で発見できない疾患は、先天性冠動脈異常、大動脈解離、心筋炎、心臓震盪(しんとう)、特発性心室細動などです。心臓震盪は、前胸部に鈍的衝撃が加わることで心室細動が発生し、突然死の原因になります。中学生から高校1年生にピークがあり、野球のボールで起こることが知られていますが、ソフトボール、アイスホッケー、サッカー、バスケットボールなどの報告もあります。 突然死ゼロをめざすためには? 学校心臓検診の役割としては、聴診や心電図以外に調査票からもハイリスクを抽出し、2次検診、精密検査へ進め、正確な診断・管理をすることが重要です。しかし、学校心臓検診だけで心臓突然死を防ぐことはできません。 胸骨圧迫などの蘇生術や自動体外式除細動(AED)を速やかに、かつ適切に行うためには、AEDの設置推奨場所の順守や、職員全員・児童生徒による定期的な救命講習を行う必要があります。大人だけでなく、小児期から救命を学ぶことにより、他人の命を大事にする、いわゆる命の授業にもつながっていきます。(筑波メディカルセンター病院 小児科専門部長)

鉾田市の「とっぷ・さんて大洋」《日本一の湖のほとりにある街の話》31

【コラム・若田部哲】温泉のイメージがあまりないと言われる茨城県。ところが実は、県内各所に特徴あふれる様々な温泉があるのです。そのひとつが、鉾田市の公営複合温泉施設「とっぷ・さんて大洋」。 1992年の開館以来、鉾田市や鹿嶋市など近隣の方のみならず、休日になると県外からも多くの方が訪れる同施設は、多い年には年間約20万人もの人が来館するそうです。その魅力について、支配人の生井沢さんにお話を伺いました。 この温泉の特徴と魅力は、なんと言ってもそのお湯。毎分67リットルの湯量でとうとうと湧き出るお湯は、コーヒーと見まがうほどの黒褐色! 初めての入浴時、その色に目はくぎ付け。しばし見入ってしまうこと必至です。 この特徴的な色は、土壌中の植物性堆積物が分解される過程で生成する「フミン質」に由来するそう。お湯の肌触りはなめらかで、入浴後もポカポカとした温かさが続くと評判です。黒湯は物によっては色うつりすることがあり、「持参した白いタオルが黒くなってしまった」と、笑いながら話すお客さんもおられるとのこと。 元日は特別に朝6時から営業 お湯の魅力に加え、眺望の素晴らしさも特筆すべきポイントで、露天風呂の眼前には、木立越しに鹿島灘の大海原が広がります。 「黒湯と木立越しの大海原」という字面でのご紹介だと、まるで高級温泉リゾートのような雰囲気を感じるかもしれませんが、この施設はとても地域密着。土地の方々の地元言葉も賑々(にぎにぎ)しく、地元に愛される庶民派温泉という風情で、その点もたまりません。 生井沢さんに、より温泉を楽しむための方法を伺うと、「当館は温水プールやトレーニングジムが併設された複合施設。『温泉』と、そうした設備が併設された施設はなかなかありません。運動してからご入浴いただくことで、よりリラックス感を味わっていただけるのでは…」とのアドバイスが。 さらに、毎年元日は特別に朝6時から営業を開始し、温泉につかりながら鹿島灘から昇る初日の出を眺められるそうです。新しい一年の始まりを、個性あふれる黒湯の温泉で迎えてみてはいかがでしょうか。(土浦市職員) <注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ヶ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。 これまで紹介した場所はこちら

宍塚・吉瀬にスマートIC《宍塚の里山》119

【コラム・森本信生】国土交通省は、常磐自動車道路「(仮称)土浦スマートインターチェンジ(IC)」の新規事業化を、2024年9月6日に決定した。土浦市は、すでに2024年度予算でスマートICの調査委託费として3070万円を計上し、2024年4月に、都市計画課内にスマートIC整備推進室も設置、4人の専任職員を配置している。 ICは、土浦市とつくば市の境で、常磐高速道路と交差する土浦学園線(県道24号線)北側に設置し、接続道路は、宍塚、吉瀬あたりの土浦学園線とされている。上の写真は、土浦学園線の桜橋から、常磐自動車道路を見たところであるが、この周辺にICが建設されると考えられる。 詳細な場所は、土地買収などに支障をきたす恐れがあるため、現時点では公表できないとのことだ。建設費用は、高速道路から料金所までを東日本高速道路株式会社が負担、料金所から土浦学園線までを地元自治体が負担する。自治体負担の費用は国の補助が2分の1程度交付される可能性がある。 今後、土浦市では測量を行い、計画を策定する予定ということで、国、東日本高速道路、茨城県などの関係機関と調整しながら、線形などの詳細検討を実施し、具体的な計画が推進される運びとなったら、地元地区への回覽や地元説明会の開催など、段階を踏んで説明していくとのことである。 生物相などへの影響調査が必要 ICの整備は、中心市街地へのアクセス向上およびアクセス圈の拡大に伴う観光振興の支援、新たな土地利用の創出による企業誘致の促進や物流の効率、救急医療の支援、さらには、大規模災害時のリダンダンシー(冗長性)の確保や早期復旧活動の支援などの効果が期待できるとしている。 国交省事の業認可発表時(9月6日)資料では、IC整備効果として「中心市街地へのアクセス向上と防災機能の強化」「物流の定時制向上•物流の効率化の支援」の2点があげられている。 具体的には、「土浦駅・つくば駅」の中心市街地への渋滞箇所を回避や、土浦市上高津地区やつくば市中根金田台地区への所要時間の短縮、定時制の向上があげられている。しかし、すでに建設されている巨大流通施設(ZOZOBASEつくば2、Amazon Flex茨城つくばDS)がある、つくば市の流星台とさくらの森の境に位置する4車線道路である藤沢荒川沖線が、土浦学園線に接続される。 さらに、新たな流通拠点や企業誘致に成功すれば、土浦学園線の交通量は飛躍的に増加するだろう。現時点でも、「つくば市~土浦市間の一部道路区間においては、ピーク時以外でも渋滞が発生」(『TX県内延伸調査の結果について』茨城県政策企画部交通政策課2023年3月31日)とういう認識となっており、さらに深刻な渋滞を招くだろう。 このようなことから、IC利用が想定される地域の開発の進行、それに伴う交通量の昼夜の推定、大気汚染、騒音、振動、道路で削られる予定地の生物相などのIC設置による影響調査が必要だ。(宍塚の自然と歴史の会 理事長)

片っ端から喫茶店②スターバックスひたち野うしく店《遊民通信》103

【コラム・田口哲郎】 前略 片っ端から喫茶店、第2回はスターバックスひたち野うしく店です。ひたち野うしくのふれあい通りに面し、JR常磐線ひたち野うしく駅から徒歩9分ほどのところにあります。スターバックスらしいレンガ風の外観、そしてギリシャ神話の人魚サイレンがモチーフのロゴマークの看板を見ると、あの深煎りのコーヒーの香りが漂ってくるようです。 店内は清潔で明るく、ソファ席、テーブル席があり、外にはテラス席も。いつも賑わっている印象で、比較的若い層が多い気がします。店員さんたちは笑顔で人当たりよく、親切です。スタバといえば期間限定フラペチーノです。今はクリスマス・年末らしく、いちごとチョコレートをメインにしたもののようです。 スターバックスは米国のシアトルで1971年に開業し、日本に上陸したのは1996年、銀座の松屋通り店。松屋百貨店のすぐ裏にあります。20代のころは大学の帰りによく行きました。学生の私にとってはスタバに行くために銀座に行く感じでした。 日本にスタバを持ってきたのは、サザビーですから、当初はちょっとおしゃれなカフェといった感じでした。96年というと、東京では空前のカフェブームが起き、カフェが従来の喫茶店に代わって増えたあたりですね。 いまや茨城には42店舗も 関東ですと、スタバは東京にしかないというイメージでした。とんねるずの石橋貴明さんが十数年前、テレビ番組で、赤坂(おそらくTBSの近く)のスタバのドライブスルーの話をしていたことを覚えています。 石橋さんのことですから、スタバのドライブスルーが当時の最先端のトレンドであることを意識しての発言だったと思います。そのドライブスルーも、ひたち野うしく店にあり、車が並んでいることも多いです。 スタバは東京だけのものではなく、店舗数も増えて、いまや茨城県には42店舗あるそうです。ひたち野うしく店ができたのは、2009年あたりと記憶していますが、そのときは、茨城にもスタバができるなんてすごいと思いました。 現在、我が家からスタバが徒歩圏内ですが、東京の郊外に住んでいる知人の家よりも最寄りのスタバが近かったりすると、ちょっとした優越感を覚えるのは不思議です。それほど、スタバは都会の証という印象があるのです。 ひたち野うしく店は、ほどよくお客さんがいて、東京の店舗のように混雑していて座れないということもあまりなさそうですし、いつ行っても、ゆっくり休める場所としてとてもよいですし、テイクアウトして歩きながら、公園で一服もできますね。 行けば、シアトルスタイルのコーヒーはもちろん、フラペチーノ、多彩なフードも楽しめる都会的なカフェ、スターバックスは郊外住宅地ひたち野うしくでも魅力的な所です。ごきげんよう。 草々 (散歩好きの文明批評家)

悠仁さま「寮に暮らしていただきたい」 筑波大進学で永田学長

秋篠宮家の長男、悠仁(ひさひと)さまが筑波大学生命環境学群生物学類の推薦入試に合格し、来春入学することについて、同大の永田恭介学長は26日の定例記者会見で「合格おめでとうございますというスタンス。他の学生もそうだが、入ったからには筑波大学での勉学、筑波大学という場所での勉学を十分に伸び伸びとやっていただきたい」と話した。 宮内庁が、赤坂御用地からの通学を検討していると発表していることについては「ご家族がお決めになることだと思っていて、現在のところどうなるかは我々として知り得ぬところ。実際にはご相談は何も受けてない」とする一方「希望を言えば、本当は寮に暮らしていただけるといいなあということもある」とし、仮に寮に入る場合でも既存の寮で対応でき、特別な寮を学内に建てるなどはないとした。 警備については、悠仁さまの警備によって「(一般学生の)通常の学生生活が阻害されるような警備や、開かれた大学が壊れるような警備はしないと思う」とも話した。 キャンパスの環境整備については、街灯の数が少なかったり、樹木が大きくなり根が舗装道路を持ち上げてがたがたしている自転車道などがあるので「この際、今まで不備があったところは手を入れたい」と話し、学生がよく通るところを中心に補修したいと述べた。 悠仁さまが入学する生物学類は定員80人。推薦入試は64人が受験し悠仁さまも含め22人が合格した。同大は学際的な学びを重視しているため、入学後は、自分が入学した学類以外の科目を6単位以上とらなくてはならないという。実習については、特に生物学類は学内の演習もいろいろあるほか、下田臨海実験センター(静岡県下田市)で海の生物に関する実習や、菅平高原実験所(長野県上田市)で授業や研修をすることもあるという。

小学生時代の昆虫食体験《くずかごの唄》145

【コラム・奥井登美子】スーパーで干し柿の「市田柿」を見ると、つい買ってしまう。この柿には、私の異文化体験の思い出がぎっしり詰まっているのだ。 小学6年生のとき、空襲に備えて、都内の小学3~6年の子どもは強制的な疎開。田舎に親戚のない私は、学校単位で集団疎開したものの、あまりの過酷さに耐えられず、父に迎えに来てもらった。そして、父の知人の知人を頼って、長野県の下伊那に疎開できた。 天竜川が流れていて、両側はかなり急斜面の山間の村。おいしい干柿で評判になった市田村のお隣が山吹村だった(両村は後に合併して一つの町になった)。私は山吹小学校6年に転入した。クラスの友だち数人で、山の中のキャンプ場になりそうな空き地で食事会をしてくれるという。 昔からの昆虫食文化が残っている地域だ。田んぼが少ない。蚕(カイコ)に食べさせる桑(クワ)の木がいたるところに植えてあって、どこの家でも蚕をたくさん飼っていた。 蚕の蛹(サナギ)は子供たちの大事な蛋白(タンパク)質源だ。蚕の蛹を油炒めすると、キトキトと動くのが気になったけれど、食べてみたら魚の煮干しの味だった。会食のとき、男の子が蛇を採ってきて、きれいに皮を剥(む)き、5センチくらいに切ってフライパンの中に入れた。 蛇は怖くない 山の友達だ 私は生きた蛇を初めて見たので、ついつい「蛇が怖い…」と泣いてしまった。次の日、私が蛇が怖くて泣いた、という話がクラス中に知れてしまった。女の子は私を優しくかばってくれるが、男の子は、服装も言葉も違う疎開者をからかったり、いじめてみたりしたいらしい。 学校の帰り、生きた蛇をぶっつけられたこともある。蛇を怖がっていたら道も歩けない。草むしりもできない。私は怖くないフリをするしかない。「蛇は怖くない。山の友達だ」と、1人で唱えているうち、だんだん蛇の行動や性格がわかるようになった。 蜂(ハチ)の子は大ごちそう。高価なので子供たちの食事には出してもらえなかったが、私も教えてもらいながら、「蜂の子取り」に参加させてもらった。 蜂の足に真綿の目印をつける。山の中のどこを飛んでいるかよくわかるので、その真綿を目当てに、3~4人で追いかけて地蜂の巣を見つけ、それを掘り取って貴重な蜂の子をゲットする。蜂の幼虫は、チーズに蜂蜜をかけたような風味のある食べ物だった。 この村で味わった昆虫食体験は、今ではとても貴重な体験だったと思っている。(随筆家、薬剤師)

日本国際学園大生の作品が表紙に つくばエリア下宿探し情報誌

日本国際学園大学(つくば市吾妻、橋本綱夫学長)がこのほど学内で実施した「ひとり暮らしガイドブック」の表紙デザインコンペ(ジェイ・エス・ビーグループ協賛)で、4年の矢治竜乃介さんの作品が最優秀賞を受賞し、10月につくば市エリアで発行された学生向けマンション・アパート情報誌「学生下宿年鑑2025ダイジェスト版ーつくば市エリア ひとり暮らしガイドブック」(ジェイ・エス・ピーグループ UniLifeつくば店発行)の表紙になっている。年間で約5000部発行される。 優秀賞には同大4年の菊地祥真さんの作品が選ばれた。同大向けの冊子「日本国際学園大学・2025年度春入居のご案内」(同)の表紙となり、同大の受験生や来校者らに配布される予定だ。 学内コンペは、学生の作品を磨く力を伸ばし活躍の場を与えることを目的に、各エリア版の学生下宿年鑑「ひとり暮らしガイドブック」を各地で発行しているジェイ・エス・ビーグループの協賛で、昨年から実施している。今年の学内コンペには教育の一環として学生4人が応募した。 最優秀賞の矢治さんは「自分の部屋に似たイメージでデザインした。学生という立場から、自分の部屋の雰囲気を『本』の中に表現するというコンセプトで挑戦した。気合を入れて作った作品なので、評価をいただけて本当にうれしい」と喜びを語った。 矢治さんは山梨県甲府市出身、卒業後は都内の会社に就職が決まっている。今後は「イラストだけでなく、動画クリエーターにも挑戦し、総合クリエーターとして生きていけたらいい」と語る。 優秀賞の菊地さんは「自分の理想の一人暮らしの部屋を、設計図のように表現した。好きな色合いや木目調の素材感を取り入れたことが、評価されたポイントだと思う。遊び心が隠されてあるので探してみてほしい」とコメントする。 菊地さんは千葉県柏市出身、つくば市内の会社に就職予定で「会社に入ってからは総合的なデザイナーとしての役割があったり、ドローンを使った撮影などもやっていくことになっている。自分のやりたいことをやっていけたら」と話す。 主催者は「昨年よりデザインのクオリティーがより高くなっていて感心した。賞の選定は、どれも素晴らしく僅差の結果となった。来年も開催するので、さらに多くの素晴らしい作品が集まることを楽しみにしている」と講評する。 同大企画部広報課の原沙織さんは「2人のデザインは特に優秀で、教員からも評価をもらっている、2人は今年8月にタペストリーコンペティション(8月2日付)にも選ばれており、今後の活躍に期待したい」と述べる。(榎田智司)

クリスマス坊や《短いおはなし》34

【ノベル・伊東葎花】 子どもたちが巣立つと、クリスマスは普通の日になる。ケーキも買わないし、ごちそうも作らない。ツリーも飾らなければ、プレゼントを用意することもない。夫婦2人で、鍋でもつついて終わり。そう、あの子が来るまでは。 あるクリスマスの夜、その子はひょっこりやって来た。まるで最初からそこにいたように、ちょこんと椅子に座っていた。とても小さな男の子。絵本に出てくる小人のような男の子。 「あらあら、なんてかわいい坊やかしら」 私は急いで夫に電話をした。 「あなた、帰りに駅前でケーキを買ってきてちょうだい。かわいいお客様なの」 子どもたちが小さかったころを思い出して、チキンライスを作り、てっぺんに折り紙で作った旗を立てた。小さな坊やに出してあげると、目を輝かせてきれいにたいらげた。イチゴがたくさん載ったケーキを片手に帰って来た夫は、坊やを見て頬を緩めた。 「かわいいなあ」 ケーキを切り分けると、小さな手で上手にフォークを使って食べた。満足そうな笑顔を残して、坊やはいつの間にか消えていた。 クリスマス坊やは、毎年やって来た。どこから来るのか分からない。だけどそんなことはどうでもいい。イブの夜、私たちは坊やを待ちわびて、ケーキを買ってごちそうを作る。去年のプレゼントは、毛糸で編んだ小さな帽子。その前は手袋とポシェット。坊やは大事そうにそれを持って帰り、次の年にはちゃんと身に着けて来た。 そして今年もクリスマスがやってきた。プレゼントは赤い小さなマフラー。水色の箱にリボンをかけてテーブルの上に置いておく。もうすぐ来ると思うと、そわそわした。 しかしその日、クリスマス坊やは来なかった。 「私の手料理に飽きちゃったのかしら」 「いや、僕がいつも同じケーキを買うからだ」 夫も私もひどくがっかりした。 「まあ、せっかくのイブだ。シャンパンでも開けようじゃないか」 「あら、珍しい。日本酒しか飲まないあなたが」 夫がシャンパンを買ってくるなんて初めてのことだ。ふたの開け方がわからなくて、ふたりであれこれ言い合ううちに、ポンと跳ねたふたが天井に当たって落ちた。 「あらいやだ。あなた下手ねえ」 そう言って大笑いした。 「夫婦2人でも、充分楽しいな」と夫が言った。 「そうですねえ」 私たちは、グラスを合わせて乾杯をした。 「メリークリスマス」 クリスマス坊やは来なかったのではなく、私たちに見えなくなっただけだ。だって、テーブルに置いたプレゼントが、いつのまにかなくなっている。それはきっと、坊やがいなくても楽しく過ごせることが分かったから。坊やは「もう大丈夫だね」と笑いながら、来年は他の家に行くのかしら。 「ねえあなた、来年はプレゼント交換でもしましょうか」 「いいね」 (作家)

パリパラ柔道銀メダリスト 半谷さんに名誉卒業生の称号授与 筑波技術大

パリ2024パラリンピック視覚障害柔道女子48キロ級J1(全盲)クラスで銀メダルを獲得した半谷静香さん(36)に、母校の筑波技術大学(つくば市天久保、石原保志学長)が24日「名誉卒業生」の称号を授与した。半谷さんは「(4年後の)ロス大会を目指したいが、まずは2年後に日本で開かれるアジア大会出場が目標。自分が競技をすることを通じて障害への理解、啓発につなげたい。また障害の当事者とサポートする人の両者が共に居心地の良い空間をつくれるよう、追求していきたい」と意欲を語った。 筑波技術大は、聴覚と視覚に障害のある学生を対象とした国内唯一の国立大学法人。同大の「名誉卒業生」は、1998年の長野パラリンピックと2006年のトリノパラリンピック女子バイアスロン視覚障害者の部で金メダルを取った井口深雪さんに続いて、半谷さんが2人目。 半谷さんは福島県いわき市出身。地元の中学で柔道を始め、筑波技術大に入学し視覚障害者柔道に転向した。大学時代は柔道に打ち込む傍らで、友人たちと筑波山を登ったりするなど学生生活を楽しんだ。2010年に初めて出場した国際大会「広州2010アジアパラ競技大会」の女子52キロ級で3位に輝き、2年後のロンドンパラリンピック女子52キロ級で日本代表に選出された。パリ大会は4大会連続パラリンピック出場となり、自身初のメダル獲得となった。 競技をする上で大切にするのが、自身の体や思いを「言語化」することだと話す。目が見えないため、他の選手や自分の動きや状態を鏡や動画で確認できない。動きや状態を、的確な言葉で指導者と伝え合う必要があるからだ。「目が見える人と、見えない人が同じゴールを目指す上で、欠かせないこと」だと話す。 今後については、競技を通じて学んだ『言語化』への理解を生かし、「見えない人や、見えにくい状態の人がもっとわかりやすく学べる環境を整備していきたい」と語る。 今できることを全力で 式典後に同大春日キャンパスで開かれた講演会では、厳しい減量で体が追い込まれる中、「周りのアドバイスに従い、試合2日前に休んだことでベストパフォーマンスを出せた」などパリ大会での思い出を語った。在学生に向けては「視覚障害の当事者は理不尽なことをたくさん味わっていると思うが、必ず解決する策はある。状況を分析し考えることとで立ち向かえる。今できることを全力で行うことが大切」などと、障害に向き合いながら力強く社会で生きていくための思いを語った。(柴田大輔)

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