日曜日, 4月 28, 2024

山麓の田んぼに「逆さ筑波」出現

田植えを前に田んぼに水が張られ、筑波山麓では「逆さ筑波」が現れ始めた。田んぼの水面が鏡となって筑波山が逆さに映る。 筑波山東側の石岡市に住む出版業、野末琢二さん(65)は、逆さ筑波を地域の魅力の一つとして捉え、2015年からフェイスブックで「逆さ筑波」の写真を募集し発信している。 毎年30点ほどの作品が集まる。二つ峰の逆さ筑波のほか、女体山が男体山に隠れて一つ峰になった逆さ筑波などが水面に映る。 野末さんは「田植え前に水が入る時期から、田植えが終わって早苗が成長して水鏡に山が映らなくなるまで、ちょうど4月下旬から6月上旬まで、わずかな時の逆さ筑波との出合いを大事にしたい」という。 野末さんが逆さ筑波を発信するようになったのは、11年の東日本大震災と12年の北条の竜巻災害がきっかけだ。「災害が2年続いて起き、精神的に落ち着かない日々だった。翌13年、桜の季節が終わり、田んぼに水が張られた頃、筑波山がぽっかりと水面に映っていた。逆さに映った筑波山がとっても新鮮で愛らしかった」と話す。逆さ筑波は毎年出現していたはずなのに、急に魅力的に感じられ、皆が撮った写真を募集してみようと思い立った。 山麓の同市神郡に住む肥田芳宣さん(58)は、地元をジョキングする合い間に逆さ筑波を撮影し、野末さんの呼び掛けに応じて毎年、写真を投稿している。 肥田さんによると撮影のポイントは「風が吹き始める午前6時前が狙い目。場所としては、西はつくば市寺具や筑西市赤浜、南はつくば市小田、北は桜川市樺穂まで」と言い、1枚の田んぼでは、水が張られてから田植えまで約1週間と、田植えから苗が成長するまで約3週間の1カ月間が撮影のチャンスだという。 筑波山麓ではほとんどが5月上旬までに田植えを終える。野末さんは間もなく、今年の逆さ筑波の写真の募集を開始する予定だ。 逆さ筑波は、風がない晴れた日に見ることができる。筑西市の母子島(はこじま)遊水池の逆さ筑波などが知られる。(榎田智司)

解消が進まない所有者不明土地問題《文京町便り》27

【コラム・原田博夫】日本の土地利用に関してはこのところ、耕作放棄地、空き家問題、ゴミ屋敷問題、シャッター商店街に加えて、所有者不明土地問題も、人々の口の端に乗るようになっている。要するに、本来、公共的性格をもっているはずの土地利用が、街づくりや災害復旧の現場をはじめ、さまざまな局面で滞っていることの表れのようだ。 こうした問題に対応するため、国は近年、関連諸制度の見直しに取り組んでいる。2018年6月の「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(所有者不明土地法)の制定を皮切りに、2020年3月には土地基本法が30年ぶりに見直され、土地の適正な「利用」と並んで、「管理」の重要性が土地政策の基本に位置付けられた。 同法では、法の対象とする「所有者不明土地」を、「相当な努力がはらわれたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地」(2条)と定義する。 2023年4月には改正民法が施行され、所有者不明土地や管理不全土地に特化した新たな管理制度や、相続制度・共有制度等に関する新規律の運用が始まった。同月には、所有者不明土地の予防策として、相続により取得した土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」もスタートした。 この「相続土地国庫帰属制度」は、申請要件として、管理コストの国への不当な転嫁や所有者が通常の管理を怠るなどのモラルハザードを防ぐ観点から、建物がある土地や境界が明らかでない土地等は不可であり、また、10年分の土地管理費相当額の負担金を納めることが必要とされる。 2023年4月27日に施行され、同年2月22日の事前相談開始から24年3月31日までの13カ月で2万件超の相談が寄せられ、申請件数は1905件、うち248件は国庫帰属が確定している。2024年4月からは相続登記の申請義務化も始まったので、この傾向は加速する可能性がある。これは事態改善への一歩前進である。 負担が重い土地所有者の探索 一方、人口減少下の国土管理の新たな手法として、国、都道府県、市町村、地域の各レベルで、土地管理の在り方を検討する「国土の管理構想」の仕組みが2021年6月に策定された。要するに、土地所有者の責務の明確化と「地域」の役割の重視、である。ポイントは、「所有者以外の者」すなわち「近隣住民・地域コミュニティ等」を、土地政策の担い手の一つとして明確に位置付けたことである。 具体的には、所有者不明土地対策の実施に要する費用の一部を国の直轄調査を通じて支援する「地域福祉増進事業」制度があり、全国展開を図るために先進的な取組の募集・採択が行われている(採択数は、2019年度6件、20年度7件、21年度7件など)。しかし、この制度を使って所有者不明土地の活用に至った事例は、新潟県栗島浦村(自治体)による1件に留まっている(2023年12月現在)。 スムーズな導入が進まない背景には、推進調査の実施主体の設定の難しさに加えて、土地所有者を探索する負担の重さがあるようだ。現状は、問題解決というより所在の端緒(たんちょ)に、着いたばかりである。(専修大学名誉教授)

まずこいのぼりで宙に 筑波宇宙センター 衛星「はくりゅう」打ち上げ目前

大型連休初日の27日、つくば市千現の宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターで、5月下旬に打ち上げが予定される地球観測衛星「EarthCARE(アースケア)」を知ってもらおうというイベントが開かれた。地域の親子連れ約60人が参加し、コイと竜と吹き流しの3体のこいのぼりが子供たちの手で掲揚された。 衛星事業の意味や意義を特に子供たちに知ってもらおうと開いた。イベントは「EarthCAREこいのぼりを宇宙にあげよう」と題し、衛星事業の紹介の後、親子で塗り絵によるミニこいのぼりを作成し、屋外に出て長さ3メートルの3体のこいのぼりを揚げた。この日のこいのぼりは「はくりゅうのぼり」と名付けられた特注品。衛星が打ち上げに成功すれば、衛星の愛称が「はくりゅう」となることから、登竜門を上る白い竜の形状で作られた。 EarthCAREは雲エアロゾル放射ミッション/雲プロファイリングレーダーの略称で、日本と欧州が協力して開発を進める地球観測衛星。搭載する4つのセンサー(雲プロファイリングレーダー、大気ライダー、多波長イメジャー、広帯域放射収支計)によって、雲、エアロゾル(大気中に存在するほこりやちりなどの微粒子)の全地球的な観測を行い、気候変動予測の精度向上に貴重なデータを提供する。地球から400キロ離れた低軌道を周回する衛星のため、大きな寒暖差や酸素原子の衝突などに対応して多層断熱材が白色になった。総重量は2350キロあり、4つのセンサーのうち雲プロファイリングレーダー(CPR)をJAXAが開発している。直径2.5メートルの大型ミリ波アンテナを備えたレーダーだ。ドイツのエアバス社で衛星に組み立てられ、米国バンデンバーグに移送された。スペースX社のファルコン9により、5月下旬に打ち上げられる予定という。先進レーダー搭載の気象衛星としてはH3ロケットにより6月30日に打ち上げられる「だいち4号」に比べ知られていないが、衛星の開発は1990年代に始まったという歴史がある。CPRプロジェクトの岡田和之サブマネージャー(43)は、入所以来20年間このプロジェクトに携わってきた。「震災やコロナ禍に振り回されたこともあってプロジェクトには曲折があった。ロケットも欧州宇宙機関(ESA)のヴェガでの打ち上げがロシアのソユーズに変更になりウクライナ情勢からファルコン9に切り替わった。今は無事打ち上がってくれることを願っている」という。 コイが白い竜になるまで20年かかった事業は、子供たちに継承されての長い取り組みになる。この日参加したつくば市の小学2年生、寺山未来さんは最後まで粘って塗り絵に取り組んだ。「コイのうろこ1つずつ色を変えて塗っていくのが大変だったけどとっても楽しかった。次は宇宙に行きたい」と目を輝かせた。(相澤冬樹)

スミレ… 春の野草【宍塚の里山】112

【コラム・鶴田学】春の野草で、まず思い浮かべるのは、スミレ類でしょうか。宍塚の里山で最初に姿を見せるのは、アオイスミレ(写真左)。葉がフタバアオイに似ていることから、名がつけられています。ちなみに、徳川家で有名な「三つ葉葵(あおい)」は、フタバアオイから紋様(もんよう)化されているそうです。 次に、本格的に花をつけるのはタチツボスミレ、ニオイタチツボスミレ、コスミレ、ノジスミレなど。これに続き、ヒメスミレ、ツボスミレがやや遅れて、花を見せてくれます。本家のスミレは、このところ、あまり姿を見せません。かえって、道端などで見かけることが多いようです。 早春には、スプリング・エフェメラル(春の妖精)と呼ばれる華奢(きゃしゃ)な小さな花たちをみることができます。林の木々が葉を広げないうちに、春の太陽の光を浴びる戦略をとっている植物たちですね。早秋の短い期間に花をつけ、種をつけると共に、すぐに枯れて、1年の大半を地中過ごし、地下茎などに栄養を蓄えるのだそうです。 カタクリなどが有名ですが、宍塚の里山では、ヤマエンゴサク、ジロボウエンゴサク(写真右)、イチリンソウなどを見ることができます。見ごろは数週間なので、運がよければということになります。このなかで、ジロボウエンゴサクは儚(はかな)げで、特にお気に入りです。 ちなみに、タロボウ(太郎坊)はスミレで、ジロボウ(次郎坊)で、それぞれ、距(きょ=花の基部から伸びる袋状の部分)が長いので、子どもたちが引っかけて遊んだそうです。 自然環境は持ち帰れません 紹介したい春の野草は色々ありますが、4月下旬から5月初めになると、林の中で目立つのは、キンラン(写真中央)やギンランです。実は、この植物たちは、手入れされた里山環境でしか生き延びることができないとされ、里山の減少とともに、絶滅危惧種に指定されています。 春の時期に十分太陽の光が地面に届くように手入れされた環境が必要だけでなく、コナラなどブナ科の樹木とその根で共生している菌根菌(きんこんきん)と一緒生きているためです。 宍塚の里山では、里山の保全活動を進めてきており、毎年のようにキンラン、ギンランなどを見ることができるようになりました。自然環境を持ち帰ることはできません。是非、一緒に見守り、大切にしてもらいたいと思います。(宍塚の自然と歴史の会 会員)

科博の国産旅客機「YS-11」 航空宇宙技術遺産に認定

2月からヒロサワで展示 国立科学博物館(篠田謙一館長)が所有する国産旅客機「YS-11」の量産初号機が19日、日本航空宇宙学会から航空宇宙技術遺産に認定された。同機は今年2月からテーマパーク、ザ・ヒロサワ・シティ(筑西市)内の科博廣澤航空博物館で一般公開されている(2月1日付)。 戦後の航空機産業の空白後に、再び航空機設計の基礎技術を確立し蓄積したエポックメーキングな機体であることなどが評価された。 YS-11は、国内唯一の純国産民間旅客機として国の支援を受けて開発され、性能や経済性などが世界的に評価され活躍した。ヒロサワで公開されている機体は量産初号機で、現存するYS-11の中では試作機を除いて最古となる。1965年3月に運輸省航空局(当時)に納入され、日本の飛行安全を確認する点検機として2万時間を超えて飛行した実績がある。 2007年には機械遺産(日本機械学会)、08年には「重要航空遺産」(日本航空協会)に認定された。 羽田空港内の格納庫で保管されていたが、2020年にグラウドファンディングによる支援を得て、筑西市のヒロサワに移設し組み立てられた。21年3月、同館とザ・ヒロサワ・シティが一般財団法人科博廣澤航空博物館(廣澤清代表)を設立し、今年2月11日から一般公開されている。 同館産業技術史資料情報センターの前島正裕センター長は「長いこと保有し、やっと皆さんに見ていただけるようになった中、航空宇宙技術遺産として技術や機体の重要性を認定いただき、感謝申し上げたい。多くの皆さんにご覧いただければ」と話している。 航空宇宙技術遺産は、日本航空宇宙学会が日本の航空宇宙技術発展史を形づくる画期的な製品及び技術を顕彰して、後世に伝え、今後の航空宇宙技術の発展に寄与することを目的に認定している。23年からスタートし、第1号として6件、今年はYS-11を含め8件が認定され、認定件数は計14件になる。今年の8件のうち、2件は国立科学博物館が所有する製品で、もう1件は同館上野本館(東京都台東区上野公園)に展示されている超小型のペンシルロケットが併せて認定された。

市営みどりのプール 27日オープン つくば

つくば市営の温水プール「みどりのプール」が27日、TXみどりの駅近くの同市みどりの南にオープンする。平日午前中は市内の小中学校9校がそれぞれプールの授業を実施し、午後などは市民が利用できる。会議室やトレーニングルームもある。同市の温水プールはつくばウエルネスパーク(同市山木)に次いで2カ所目。 温水プールは25メートルプールが2槽設置されている。1槽は7コースあり、最大水深1.3メートルで水深の調整が可能な可動床になっている。もう1槽は6コースで、水深1.1メートル、車椅子用スロープが設置されている。水温は30~31度、プールサイドは床暖房で、体を温める採暖室もある。幼児用プールとして水深50センチ、直径5メートルの円形プールも設置されている。 小中学校の利用は5~12月の午前9時~午後0時30分で、学校にプールがない、みどりの南小中、研究学園小中、香取台小などTX沿線の新設校と、児童生徒数が増加し自校のプールでは足りない学園の森、みどりの学園義務教育学校、島名小のほか、真瀬小の児童生徒計約6000人がそれぞれ年3回程度、バスで行き来し利用する計画だ。 更衣室は、LGBTQなど性的少数者に配慮し、男女それぞれの更衣室に個室を備えているほか、車椅子の障害者などが利用しやすいようロッカーの高さを調整しシャワーやトイレと一体的に利用できる「だれでも更衣室」も設けられている。 ほかにダンスや体操などができる壁一面鏡張りのトレーニングルーム(約120平方メートル)と、可動の間仕切りで3パターン利用できる会議室(90平方メートル)がある。TX沿線のみどりの地区には公共の集会施設が無く、地域住民が集まりなどで利用できる会議室が整備されるのは初めて。会議室の利用が無い時は開放し、コミュニティスペースとして市民が自由に利用できるようにする。 環境にも配慮し、コジェネレーションシステムによりガスでプールの温水を沸かし、同時に発生する電気で施設の使用電力の一部をまかなうほか、発電量50キロワットの太陽光発電設備を取り付け、エネルギー使用量を50%削減する。 施設の運営は、筑波大の野村武雄名誉教授が代表を務めるNPOつくばアクアライフ研究所(つくば市島名)と東京アスレティッククラブ(東京都中野区)で構成するつくばアクアティックグループが指定管理者となり管理運営する。ほかに、水泳やダンス、ヨガ教室などの自主講座や、小学生対象の放課後運動教室を開催する。市が事業者に支払う24年度の指定管理料は年間約3900万円、プールや会議室などの利用料金と自主教室の受講料などは指定管理者の収入となる。指定期間は3年間。 施設は敷地面積約2万5000平方メートル、プールがある建物は鉄筋コンクリート造一部鉄骨造、延べ床面積約2900平方メートル。2022年10月から建設工事に着工し1年半かけて完成した。用地購入費も含めた総事業費は約35億円。 市スポーツ施設課の武笠健一課長は「環境に配慮し、障害のある人でもだれでも使っていただけるよう設計した。皆さんに来ていただけたら」と話している。 みどりのプールの場所はもともと学校用地で、みどりの南小の建設予定地として市が約8億5000万円で県有地を購入したが、産業廃棄物処理施設が近くにあること、高圧線の近くに位置することなどから議会で心配の声が上がり、市は、みどりの南小を約600メートル南の現在地に移転し、代わって小中学校が利用する屋内プールを建設した経緯がある(2020年6月2日付)。 ◆みどりのプールはつくば市みどりの南14-1。一般市民の利用時間は5~12月の平日が午後1~9時、学校の利用がない土日祝日と1~4月は午前9時~午後9時。休館日は毎月第2、第4月曜など。▷プール利用料金はつくば市民が大人1回550円(つくば市以外は820円)、子供・高齢者270円(同400円)、障害者180円(同240円)など▷トレーニングルームは同市民が1時間全室一般1100円(同1650円)、半室550円(同820円)など▷会議室は同市民が1時間当たり小会議室150円(同220円)、中会議室310円(同460円)、大会議室460円(同680円)など。つくば市在住、在勤、在学者であることを証明する免許証や学生証などの提示が必要。駐車場は200台分あり無料。詳しくは電話029-896-6870。

壁なくす交流の場に つくば在住スリランカ人 28日 母国の正月祭り

つくば市在住のスリランカ人らによる「スリランカお正月祭り」が28日、同市花畑の花畑近隣公園で開かれる。スリランカの新年は4月。正月祭りの主催団体「スリランカお正月祭り実行委員会」で活動する市内在住のニルマール・ペレラさん(46)は「たくさんのスリランカ人が住んでいるが、地域の人と交流する機会は限られている」と言い、「お互いの壁をなくせるような交流の場にしたい」と思いを語る。 2023年6月末時点で県内には3614人のスリランカ人が暮らしている。全国で3番目に多く、人口10万人当たりに換算すると国内最多となる。つくば市には昨年1月末時点で399人が暮らす。 留学生のレクリエーションが始まり つくばでスリランカの正月祭りが始まったのは約10年前。筑波大学で学ぶスリランカ人留学生たちが集まり、食事をしたりレクリエーションをしたのが始まりだったとペレラさんは言う。当初は学生中心だったが、つくば市や周辺で働くスリランカ人たちにも輪が広がった。市内で妻と3人の子どもと暮らすペレラさんが参加したのは2018年から。その後コロナ禍で2年間開催できなかった。昨年3年ぶりに再開すると、100人余りの同胞人や日本人が参加した。 ミルクライス食べる儀式から スリランカでは太陽がうお座からおひつじ座に移ったときに年が変わるとされており、占星術師たちが毎年その時間を国民に知らせる。4月中旬ごろになるが、今年は4月13日午後9時5分に新年を迎えた。 占星術師が年明けの時刻を予告すると、その前後に何もしてはいけない時間帯がある。年が明けてから初めてかまどに火を入れ、器にココナッツミルクとライスを入れて沸騰させ吹きこぼし、新年最初の食事はココナッツミルクで作るミルクライスを食べる。仕事を始める時間も、占星術師によって決められた時刻に行うのが慣習だ。「吹きこぼし儀式」「食べ始めの儀式」は、五穀豊穣を祈るものとされる。 つくばの正月祭りでも母国の儀式をもとに、ミルクを器に注ぎ、ココナッツオイルに火を入れて、ミルクライスを食べる儀式からスタートする。その後は、母国でするのと同様に、ダンスや綱引き、マラソン大会、パン食い競争、口に加えたスプーンにレモンを載せて走るなど、さまざまなレクリエーションを参加者同士で楽しみつつ、用意された食事に舌鼓を打つ。 10年以上続く中で地域の日本人との交流も少しずつ広がった。今年は家庭で備える防災について、外国人にもわかりやすくやさしい日本語と英語で表現した「防災かるた」を使い、考案者であるつくば市在住の防災士、水谷浩子さんを招いてカルタ大会を初めて開く。 子どもたちが母国文化と接する機会 ペレラさんは「日本で生まれたスリランカ人の子どもがたくさんいる。多くは地域の学校に通っていて、スリランカの文化に触れる機会が限られる。使う言葉も日本語が中心。一方で、つくばには沢山の外国人が暮らしているが、地域との関わりを持てずに暮らしている大人も多い。子どもたちにとってはスリランカ文化と接する機会に、大人たちにとっては地域との交流の場になるといい」と話し、「将来的には日本とスリランカ、互いの文化が持つ良い面が混ざり合い、つくばだからこその新しい文化が育っていくきっかけになれば」と思いを語る。(柴田大輔) ◆「スリランカのお正月祭2024+防災」は4月28日(日)午前9時~午後5時、つくば市花畑3-11-5の花畑近隣公園で開催。参加費無料。

大地震など緊急事の薬《くずかごの唄》138

【コラム・奥井登美子】最近、処方箋に「残薬調整」と書かれているのを持ってくる人が多くなった。いい傾向である。そういうとき、我々薬剤師は、患者さんが前にもらった分の残薬を入れて、調剤する。 「残薬調整と処方箋に書いてありますので、すみませんが、残薬を見せて下さい」 家に残っている薬の数を紙に書いて持ってくる人もいるが、私は実物を見せてもらっている。薬を大事に保存している人の中に、期限が切れた昔の薬が混ざっていることがあるので、私は必ず錠剤の形や色などを点検して、期限を確かめている。 自分の薬は自分で持って逃げる 「随分たくさん、薬が残ってしまいましたね」 「ハイ。引き出しを整理したら、いつの間にか、こんなにたくさん…」 「大地震があったときの『緊急事態用』に、1週間分ぐらい別にして、救急カバンに入れておいたらいいと思いますけど」 「救急カバンなんて、ないわ」 「自分で作るしかないですよ」 「避難するような大地震なんか、この辺りであるわけないと思いますが…」 「関東大震災から100年です。もしかして地震があって、万一避難するとき、自分の薬だけは自分で守って持っていく。そういうときのために、自分用の救急袋を作っておいたらいいと思いますけど…」 「能登半島の地震のとき、薬はどうしたのでしょう」 「さあ、わかりませんが、防災は個人個人違うと割り切って、大切なものを大事に保管しておいたらいかがでしょう」 無いと困る血圧や心臓の薬 医療の不備だった事例はいろいろ報道されているけれど、薬は、個人個人あまりに違いがありすぎるせいか、あまり報道されていない。薬剤師会の中に「災害時情報共有システム」という組織が地域ごとにあるが、電気もない中でどう働くのか、私にもわからない。 血圧の薬。心臓の薬。1週間以上休薬することができない薬は多い。薬はかさばるものではない。せめて自分のいつもの薬くらいは、緊急時に持って避難することを心掛けてほしい。(随筆家、薬剤師)

研究学園駅近くにBBQ広場 つくば薫製手作り工房がオープン

つくば学園の森 薫製手造り工房(つくば市二の宮、塚崎雅之社長)は25日、ベーコン、ハム、ソーセージ、スモークチキンなどの直販所にバーベキュー(BBQ)広場を併設した「Bella Foresta TSUKUBA(ベラ・フォレスタ つくば)」をTX研究学園駅から約1キロのつくば市西大橋にオープンした。イタリア語のベラ・フォレスタは美しい森という意味で、森林を切り開いたエリアで薫製肉を焼いて食べられる。 10数本の大木を残した新施設の広さは1200坪(4000平方メートル)。ここに、薫製肉販売店、BBQゾーン、ハム・ソーセージ造り体験施設、ドッグランなどが広がる。真壁石を磨いて造られたBBQ用のテーブルとイスは20セット用意されている。駐車場は隣接地に約50台分。 塚崎社長は「研究学園駅から1キロ、つくば駅から1.5キロの場所。タクシーだと1メーターと両駅から近い。旧村落に残っていた森林を買い取り、市民が集える場に整備した。キッチンカーが営業できる区画も設けたので、業者さんは店を出してほしい」と語る。 つくば市内を貫く土浦学園線から約200メートルのところに位置し、自動車でのアクセス性もよい。 当面は薫製肉販売とBBQが中心になるが、今秋にはフランスパンとジェラートの店もオープンする。場所は同広場第2駐車場そばの元飲食店舗。塚崎社長は「今、社員2人をイタリアで研修させている。ハムやソーセージをパンに挟んで食べ、イタリア風アイスも楽しんでもらいたい」は話す。(岩田大志) ◆同店はつくば市西大橋59-7。問い合わせは電話029-846-0186(同店)。ホームページは現在制作中。 ➡塚崎さんの過去記事「電気工事会社 …ハム工房を経営…【キーパーソン】」はこちら

団体客から個人客にシフト 「亀の井ホテル 筑波山」オープン

筑波山中腹のつくば市筑波に「亀の井ホテル 筑波山」が23日、リブランドオープンした。昨年9月末、「筑波山温泉 つくばグランドホテル」が米国の投資ファンドに譲渡され(23年8月10日付)、同ファンド子会社でホテル運営会社のマイステイズ・ホテル・マネジメント(東京都港区)が客室やレストランなどの改修を実施していた。つくばグランドホテルは団体客の利用が多かったが、新たなホテルは家族連れやペットとの旅行、サイクリングなど多彩なスタイルで旅行する個人客を主なターゲットとする。訪日外国人の誘客も目指す。 客室は、小さな子供を持つファミリー向けのキッズルームや、3世代で宿泊できるファミリールーム、愛犬と宿泊できるペットルームなど新たな客室が新設された。 食事は、団体客向けの宴会場を無くし、2階にビュッフェ形式のレストランを新設。常陸牛の焼きしゃぶ、県産キノコを使ったきのこ鍋、県産食材でアレンジする山海丼のほか、朝食は納豆の食べ比べができるなど、県産の食材を使った豪華な食事を自由に取り分けて食べられるようにした。ビュッフェ形式は筑波山にある五つの観光ホテルで初めてという。 7階の露天風呂は、今まであった柵を取り払い、関東平野や富士山、日光連山などの大パノラマが望める絶景の露天風呂に改装した。 ロビーラウンジがある3階は、家族や友人とリラックスしたり交流できる空間としてゲームやトランプなどができるゲームエリアを新設した。 今後さらに、自転車を客室に持ち込めるサイクルルーム、部屋の中から関東平野の景観を楽しめるハリウッドパノラマビュールームなどを新設し、7月6日にグランドオープンする予定。 24日は関係者を集めて内覧会が催され、新装施設が案内された。ロビーラウンジがある3階南側には広いデッキが広がり、関東平野が見渡せる。ラウンジはファミリーなどを意識したものに改装され、元カラオケルームは大画面でゲームを楽しめるゲームルームになった。家族や友人と、トランプや人生ゲームなどのボードゲームを楽しめるテーブルも設置された。7階キッズルームはかわいいキノコのキャラクターが登場する楽しいデザインが施されている。2階のビュッフェレストランは青森のねぶた師が手掛けた「つくばねぶた」が置かれている。朝食、夕食とも好きなものが食べられ、外国人も想定した多様なニーズに応える。 同ホテルの天満龍裕支配人(45)は「茨城のおいしい食材を提供するなど食事に力を入れており、豊富なメニューをそろえている。レストラン、ビュー、新しいお部屋はもちろんだが、まずはお客様を温かく迎えられるホテル、人に会いに来ていただけるホテルづくりを今後ともしていきたい」と話す。 同ホテルは客室61室(定員325人)、宿泊料金は1人当たり一般客室1万3000円~、ファミリールーム1万8000円~(消費税、サービス料込み)。初年度は年間約3万2000人の宿泊客を目指す。 亀の井ホテルは、マイステイズ・ホテル・マネジメントが2022年4月、日本郵政から「かんぽの宿」30施設を譲り受け運営を開始したホテルと、亀の井ホテル別府(旧別府亀の井ホテル)など計32施設により22年7月に誕生した。筑波山は39施設目。県内では、かんぽの宿だった大洗、潮来に次いで3施設目。 日帰りから滞在型へ 筑波山観光の新たな戦略とは? 筑波山は首都圏から日帰りできる距離にあり、現在、日帰り観光が主流になっている。どうやって滞在型に変えていくのか、天満龍裕支配人と、本社の増井香織マーケティングアドバタイジング パブリックリレーションズチーム チームマネージャーに新たなホテルの運営戦略などについて聞いた。 ー亀の井ホテル筑波山の魅力、売りは何か。 天満支配人 今回は食事を一番変えさせていただいた。茨城県の魅力がたっぷり詰まったビュッフェになっている。ビュッフェはファミリー層が大好きかと思う。食事は県産のきのこ鍋、納豆カツなど。朝食では納豆3種食べ比べをしたり、夜朝共に茨城の食材をふんだんに準備している。あと、亀の井ホテルグループの共通メニューもあって、どこの亀の井ホテルに行ってもおいしく食べていただけるメニューもあるので自信をもってご提供させていただく。(首都圏から)近くにこんないいところがあるんだよということを知っていただきたい。 それから弊館の売りは関東平野のビュー。7階のインフィニティ露天風呂があってそこからの景色はひじょうにすばらしい。宿泊のお客様だけが利用できるので、食事や温泉の魅力を十分に発信していきたい。 今サイクリストが多く、筑波山にも自転車で来られる方がたくさんいらっしゃる。そういった方々が筑波山に上がってこられて一休みできるようなサイクルルームもつくる。いろんなニーズに応えられるように、ファミリー向けのキッズルームや3世代向けの絆ルームをつくったり、多種多様なお部屋を準備するので、今まで日帰りで帰ってしまったお客様が一休みできる空間をつくっていきたい。 ―宿泊客をどこから呼び込むのか。 天満 亀の井ホテルグループには、旧かんぽの宿で会員になっていた方々を中心にKMC会員(カメノイ・ホテル・メンバーズ)が66万人おり、亀の井ホテルのいろいろな温泉地を巡っていただこうと取り組んでいる。関東圏のお客様が多いが、遠方からお越しいただいている方もいらっしゃる。会員様を増やしていこうとキャンペーンを組み込んだりしており、さらに会員数を増やしていきたい。 ―筑波山のホテルは、客室で食事をとる個室食が中心だが、亀の井筑波山では個室食は提供しないということか。 天満 以前は団体のお客様がメーンで、宴会場も大中小3カ所あったが、ビュッフェや客室に改装した。今回、個室食のメニューから一新してビュッフェに変えた。お客様のお声をお聞きすると「個室食なんだよね」というお声が結構あった。個室食が好きなお客様もいらっしゃるが、筑波山には個室食のお宿(ホテル・旅館)がたくさんある。ビュッフェのレストランをもっているお宿はあまりない。こういった差別化を図りながら、地元の古くから営業されているお宿との共存を目指して、より多くのお客様が筑波山に来ていただけるコンセプトを考えたい。 ―地元のつくば市では職場の忘年会や宴会で筑波山のホテルを利用するというイメージがある。亀の井筑波山では宴会は受けないということか。 天満 宴会をされたい方はほかのお宿があるのですみ分けをしたい。 ―訪日外国人客(インバウンド)はどれくらいを想定しているのか。 天満 今現在のインバウンドは15%ぐらい。私の中ではまず15%から30%に増やしていきたい。インバウンドをとっていきたいというのはビュッフェにした理由の一つでもある。海外からのお客様でメニューが口に合わないものがあったり、食べられないものがあったりということがある。ビュッフェスタイルであれば好きなものが食べられる。地元の食材をふんだんに使った茨城県のおいしい料理を知っていただきたいと料理を準備させていただいた。温泉もあり、東京からのアクセスがいい。筑波山は標高877メートルと百名山の中でも低いが、コースによってはすごくきつかったり、なだらかな魅力あふれるコースがある。そういったことを身近に楽しめる場所として最適な場所だと思う。海外の方も、地元の方も大切しながら、共存できるホテルづくりをしていきたい。 ー県内には大洗、潮来、筑波山と3件の亀の井ホテルがある。どのように連携していくのか。 天満 例えば亀の井筑波山に問い合わせがきたお客様に「うちはいっぱいですけど、こちらはいかがですか」とご紹介ができたり、あと食器とか「こういういいものがあるから使ってみたら」と情報交換がすごくしやすかったりする。 ―米国の外資系ホテルが初めて筑波山に進出してきたということで、地元としては期待やさまざまな受け止めがある。 増井 本社チームマネージャー つくばグランドホテルの時代は地域との共存はすごくあったと思う。私たちが運営を引き継いで、どういうホテルになるんだろうという期待を皆さんにもっていただいている。ホテルも運営会社も、近隣の皆さんと一緒に筑波山という地域、茨城という地域を盛り上げたい、観光に貢献したい、寄与したいというスタンスでいる。(榎田智司、鈴木宏子)

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