火曜日, 4月 7, 2026

阿見町の予科練平和記念館 《日本一の湖のほとりにある街の話》12

【コラム・若田部哲】終戦直前の1945年6月10日。この日は、阿見・土浦にとって決して忘れてはならない一日となりました。当時、阿見は霞ヶ浦海軍航空隊を有する軍事上の一大重要拠点でした。そのため、B29による大規模爆撃を受けることとなったのです。当時の様子は、阿見町は予科練平和記念館の展示「窮迫(きゅうはく)」にて、関係者の方々の証言と、再現映像で見ることができます。今回はこの「阿見大空襲」について、同館学芸員の山下さんにお話を伺いました。 折悪くその日は日曜日であったため面会人も多く、賑わいを見せていたそうです。そして午前8時頃。グアム及びテニアン島から、推計約360トンに及ぶ250キロ爆弾を搭載した、空が暗くなるほどのB29の大編隊が飛来し、広大な基地は赤く燃え上がったと言います。付近の防空壕(ごう)に退避した予科練生も、爆発により壕ごと生き埋めとなりました。 負傷者・死亡者は、家の戸板を担架代わりに、土浦市の土浦海軍航空隊適性部(現在の土浦第三高等学校の場所)へと運ばれました。4人組で1人の負傷者を運んだそうですが、ともに修練に明け暮れた仲間を戸板で運ぶ少年たちの胸中はいかばかりだったかと思うと、言葉もありません。負傷者のあまりの多さに、近隣の家々の戸板はほとんど無くなってしまったほどだそうです。 展示での証言は酸鼻を極めます。当時予科練生だった男性は「友人が吹き飛ばされ、ヘルメットが脱げているように見えたが、それは飛び出てしまった脳だった。こぼれてしまった脳を戻してあげたら、何とかなるんじゃないか。そう思って唯々その脳を手で拾い上げ頭蓋に戻した」と語ります。また土浦海軍航空隊で看護婦をしていた女性は「尻が無くなった人。足がもげた人。頭だけの遺体。頭の無くなった遺体。そんな惨状が広がっていた」と話します。 累々たる屍と無数の慟哭 この空襲により、予科練生等281人と民間人を合わせて300名以上の方々が命を落とされました。遺体は適性部と、その隣の法泉寺で荼毘(だび)に付されましたが、その数の多さから弔い終わるまで数日間を要したそうです。 先の平成の世は、戦禍を免れ得た稀有(けう)な時代でした。しかし、現在私たちの多くが当然のように享受している日常は、こうした先達の累々たる屍(しかばね)と、無数の慟哭(どうこく)の上に成り立っていることを忘れてはならないでしょう。 「予科練の歴史を通じ、平和の尊さを学んでほしい。この地でも空襲があり、その延長線上に今の我々の生があることを感じてもらえたら」。山下さんはそう語ります。この凄惨(せいさん)な記憶と平和の尊さを語り継ぐべく、同館は空襲のあった6月10日に、毎年無料開放を実施しています。ぜひこの機会に、身近なところにも存在する戦争の記憶をご覧ください。(土浦市職員) <注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。 ➡これまで紹介した場所はこちら

牛久沼近くで谷田川越水 つくば市森の里北

台風2号と前線の活発化に伴う2日からの降雨で、つくば市を流れる谷田川は3日昼前、左岸の同市森の里の北側で越水し、隣接の住宅団地、森の里団地内の道路2カ所が冠水した。住宅への床上浸水の被害はないが、床下浸水については調査中という。 つくば市消防本部南消防署によると、3日午前11時42分に消防に通報があり、南消防署と茎崎分署の消防署員約25人と消防団員約35人の計約60人が、堤防脇の浸水した水田の道路脇に約100メートルにわたって土のうを積み、水をせき止めた。一方、越水した水が、隣接の森の里団地に流れ込み、道路2カ所が冠水して通行できなくなった。同日午後5時時点で消防署員による排水作業が続いている。 市は3日午後0時30分、茎崎中とふれあいプラザの2カ所に避難所を開設。計22人が一時避難したが、午後4時以降は全員が帰宅したという。 2日から3日午前10時までに、牛久沼に流入する谷田川の茎崎橋付近で累計251ミリの雨量があり、午前11時に水位が2.50メートルに上昇、午後2時に2.54メートルまで上昇し、その後、水位の上昇は止まっている。 南消防署と茎崎分署は3日午後5時以降も、水位に対する警戒と冠水した道路の排水作業を続けている。 現場を見に来た同団地内に住む防災介助士の金栗聡さん(55)は「いつもは平穏な谷田川だが1日で急変しびっくりした。いつ何が起こってもおかしくないと痛感した」と語った。 森の里自治会の倉本茂樹会長は「43年住んでいて、谷田川が越水したのを見たのは初めて。2015年と16年に森の里団地で床下浸水があったが、その時の原因は、団地の排水ポンプが停電で動かなくなったため。その後10年ぐらいかけて停電でも動くように改修した。越水し、びっくりしている。団地内に水が来ないように堤防をかさ上げしてほしい」と話す。 谷田川を管理する県竜ケ崎工事事務所河川整備課によると、越水部分の長さは不明という。越水の原因についても「強い雨が長時間にわたって降ったが、越水した原因は調査している」と話すにとどまっている。 森の里より少し上流の同市谷田部地区では、谷田川の水位が午後になっても下がらないことから、3日夕方まで、両岸に広がる水田が冠水し、一面湖のようになった。 つくば市危機管理課によると、3日は市全体で、森の里を含め29カ所で道路が冠水したほか、倒木の被害が10件あった。

論文もパネルで「CONNECT展」 筑波大芸術系学生らの受賞作集める

筑波大学(つくば市天王台)で芸術を学んだ学生らの作品を展示する「CONNECT(コネクト)展Ⅶ(セブン)」が3日、つくば市二の宮のスタジオ’Sで始まった。2022年度の卒業・修了研究の中から特に優れた作品と論文を展示するもので、今年で7回目の開催。18日まで、筑波大賞と茗渓会賞を受賞した6人の6作品と2人の論文のほか、19人の研究をタペストリー展示で紹介する。 展示の6作品は、芸術賞を受賞した寺田開さんの版画「Viewpoints(ビューポインツ)」、粘辰遠さんの工芸「イージーチェア」、茗渓会賞授賞の夏陸嘉さんの漫画「日曜日食日」など。いずれも筑波大のアートコレクションに新しく収蔵される。芸術賞を受賞した今泉優子さんの修了研究「樹木葬墓地の多角的評価に基づく埋葬空間の可能性に関する研究」は製本された論文とパネル、茗渓会賞を受賞した永井春雅くららさんの卒業研究「生命の種」はパネルのみで展示されている。 スタジオ’S担当コーディネーターの浅野恵さんは「今年は論文のパネル展示が2作品あり見ごたえ、読みごたえがある。版画作品2作品の受賞、漫画の受賞も珍しい。楽しんでいただけるのでは」と来場を呼び掛ける。 筑波大学芸術賞は芸術専門学群の卒業研究と大学院博士前期課程芸術専攻と芸術学学位プログラムの修了研究の中から、特に優れた作品と論文に授与される。また同窓会「茗渓会」が茗渓会賞を授与している。 展覧会は関彰商事と筑波大学芸術系が主催。両者は2016年から連携し「CONNECT- 関(かかわる)・ 繋(つながる)・ 波(はきゅうする)」というコンセプトを掲げ、芸術活動を支援する協働プロジェクトを企画運営している。 (田中めぐみ) ◆CONNECT展Ⅶ 3日(土)~18日(日)スタジオ’S(つくば市二の宮1-13-6)開館時間は午前10時から午後5時。入場無料。電話029-860-5151

キャッチフレーズの怖さ《続・気軽にSOS》134

【コラム・浅井和幸】キャッチフレーズとは、時に人が悲しみから抜け出すきっかけになり、時に勇気をもって立ち向かうようになる素晴らしいものです。 ・夢は必ずかなう・人間生きているだけでもうけもの・明けない夜はない・親が変われば子が変わる これらは前を向くときに、説得力のある大きな力になります。少ない文字数で端的に表せる素晴らしいものですね。しかし、「端的に表せる」表現は危険をはらんでいます。時に、一方的に決めつけて責め立てる言葉となることもあるので、注意が必要です。 例えば、優勝を逃した選手に向かって「大丈夫、夢は必ずかなうよ」と言えるでしょうか? 大切な人が交通事故で重体となり、虫の息のときに「人間生きているだけで儲けもの」と声をかけられますか? 苦しみのさなか、泣き叫んでいる状況で、そのようなキラキラした言葉をかけることはマイナスになることはあっても、決してプラスにはなりません。端的に言い切る言葉は、時と場合、その人との関係性で、言って良いか悪いか決まってきます。 自分が良いと思う言葉だからといって、いつも良い言葉として受け取られないことは肝に銘じておくべきです。また、キャッチフレーズに縛られて、その言葉が示すことは逆の言動をしてしまうこともあります。 「8050問題」というキャッチフレーズ 人に共感をすることが大切だと伝えたいがために、共感が出来ない相手を責め立てる。「あなたは共感力が足りない。なんで人に共感できないのだ」と。相手がいかに共感できずに周りを傷つけているかを説教して、ケンカになったり、相手を悲しませたりする場面はまあまあ見られます。 このとき、共感が苦手な人の気持ちに共感を出来ずに、共感を押し付けている状況で、自分自身が相手に共感する気持ちから離れていることに気づきにくいものです。 ちなみに、ひきこもり問題で「8050問題」というキャッチフレーズがあります。親が80歳で、ひきこもった子どもが50歳。親の年金だけの収入で苦しい生活を送っているという問題を世間に広く伝え、しかも若者だけの問題ではないのだと認識してもらうためには、とてもよいものだと考えます。 しかし、80歳と50歳。人口が多い団塊の世代と団塊ジュニアがその世代になってくると考えると…。止めておきましょう。ひきこもり問題が若者だけの問題ではなく、中高年、高齢者も含む問題には変わりないのですから。 キャッチフレーズにとらわれずに、うまく使う方法を試行錯誤していけると、より人とのコミュニケーションや自分が成し遂げたいことに利用できるかもしれませんね。(精神保健福祉士)

台風で霞ケ浦に帰る 死せるハクレン、オイルフェンスを越えて

台風2号の影響による増水警戒中の桜川で2日、大量酸欠死したハクレン死魚の一部が、土浦市銭亀橋に設置してあったオイルフェンスをすり抜けて下流に向かい、相当数が霞ケ浦に達する事態になった。 つくば市玉取の田土部堰(たどべぜき)の下流で、酸欠によるハクレンの大量死が見つかったのが先月24日、桜川を管理する県土浦土木事務所(土浦市中高津)が堰付近の桜橋にオイルフェンスを張り、26日から死魚の回収に乗りだしていた(5月27日付)。 オイルフェンスはさらに下流の銭亀橋(土浦市大町地先)にも設置され、同事務所河川整備課によれば、1日までに約1万尾を回収した。ドローンなどによるパトロールの結果、1日午後5時時点で、田戸部堰下流から銭亀橋までの区間で、死魚が集中している箇所の回収は概ね完了したとの認識だったという。点在する全ての死魚を回収するのは困難であり、2日朝の時点で、回収しきれなかった一部の死魚が銭亀橋のオイルフェンスにかかっていたとしている。 ところが台風2号の影響で雨足の強まった2日昼ごろから、流下してきた死魚が次々にフェンスを越え始めた。銭亀橋のフェンスは合成繊維織布に塩化ビニールを被覆したもので、全長80メートル(20メートルのものを4本接続)、高さは水面上で30センチ、水面下で40センチ程度ある。 水位があがると、ハクレン死魚はフェンス上部にある隙間をすり抜けるように流下していく。川岸の水の淀みに群れで滞留する死魚もあり、あたりに臭気を漂わせたが、河川敷が水没するにつれ、これらの個体も流されていった。目測で100匹以上は流下した。 同事務所は、台風等の出水時に河川内で作業することは危険かつ困難であるとして、様子見の状況。天候が回復し河川の水位低下を待ってから、オイルフェンスが外れているようであれば、張り直しを行う。追加設置は考えていないという。 死魚が霞ケ浦まで流されると管理は国交省に移り、対応は国の判断に任されることになる。 同事務所では、「今回のハクレン大量死は、急激な河川水位低下による酸欠死と推察されることから、水門や堰の管理者に対し、水門付近の水位に急激な変動が生じないような水門操作を行っていただけるようお願いしていく」としている。(相澤冬樹)

来年開学の日本国際学園大、米ノースウッド大と提携 筑波学院大で調印

来年4月に日本国際学園大学(学園大)として開学する筑波学院大学(学院大、つくば市吾妻、望月義人学長)で2日、米国ノースウッド大学と結ぶ協定覚書の調印式が行われた。ノースウッド大が日本の大学と提携するのは初めて。 来年4月の開学(22年12月1日付)に合わせて学園大の学生は、ノースウッド大に留学したり、両大学の学位を取得できるようになる。併せてつくばキャンパスにノースウッド大の留学生を迎えるなどする。 ノースウッド大は米国のほか、中国、スリランカ、スイスなどに国際プログラムセンターを設け、学位が取得できる英語の授業を行っている。さらにフランス、ポルトガルなどにも広げる計画であることから、学生は米国だけでなく各国の国際センターで学べるようになる。 開学に合わせて学園大は来年4月、つくばキャンパス(現在の学院大)にインターナショナルプログラムセンター(IPC)を開設し、留学や学生同士の相互交流について案内したり、米ノースウッド大学から留学生を迎えるための教育プログラムをつくる計画だという。 ノースウッド大はミシガン州にある私立大学で1959年に創設された。自動車マーケティング、ファッションマーケティングとマネジメント、保険リスク管理、eスポーツマネジメントなど、ビジネス分野のユニークな教育プログラムを提供する大学として知られる。特に自動車マーケティングは、学生が毎年モーターショーを企画、開催し、世界各国から現役の自動車ディーラーも訪れている。 2日の調印式では、学院大を運営する学校法人日本国際学園の橋本綱夫理事長と望月学長、来日したノースウッド大のリーブス真美子学長代理が協定覚書に調印式した。 橋本理事長は「新しい大学の開学を機に連携協定を締結できて大変うれしい。学生が海外に挑戦できる機会になる。ノースウッド大は米国だけでなく世界各国にキャンパスをもっており、学生はいろいろな国に行って学べる。そういった可能性が開け、学生が世界に目を開くすばらしい連携協定になる」などと話した。 リーブス学長代理は「ノースウッド大は、ソ連が1957年に世界初の人工衛星打ち上げに成功し、米国の大学がサイエンス教育に一色になった時代に、会社を経営する人材育成は必要だと感じた2人が、退職金を前借りして1959年に創設した。開学の精神は息づいており、現在も34%の学生が卒業して6年以内に起業するなど、起業家精神が旺盛な学生がたくさんいる。学園大学との提携を機に、クリエーティブで起業家精神がある学生と一緒に学べるといい。長くお付き合いしていきたい」と語った。 来年4月に開学する日本国際学園大学は、国際教養、英語コミュニケーション、現代ビジネス、公務員、国際エアライン、国際ホテル、AI・情報、コンテンツデザイン、日本文化・ビジネスモデルの9つのコースがあり、つくばと仙台に2つのキャンパスがある。

米国のペットショップ禁止法《晴狗雨dog》8

【コラム・鶴田真子美】2017年に米カリフォルニア州で法改正があり、2019年から、ペットショップでイヌ、ネコ、ウサギを販売できなくなりました。ただし、保護シェルターの里親募集中のイヌ、ネコはショップに置くことができます。ショップには、首輪やリード、水槽や金魚、キャリーバックやケージなどが並びます。 ニューヨーク州でもこのペットショップ法案が通り,2024年から施行される予定です。それ以降は、保護シェルターが提供する保護イヌ、ネコ、ウサギのみが販売されることになります。 ニューヨーク州は、ペット販売業の規模が大きく繁殖も盛んであるため、店舗やブリーダー(育種家)からの抵抗はすさまじく、訴訟も起こりました。店頭で商品としてのイヌ、ネコ、ウサギを売買できなくなったブリーダーは失業の不安を訴え、ニューヨークで実施しても他州で買えるなら意味がないと反発。「ニューヨークのブリーダーとペットショップが困るだけだ」と矛盾を訴えました。 しかし、生体販売への抵抗感が市民の側にはありました。メリーランド州では2020年、ペットショップが禁止になり、イリノイ州では2021年、ペットショップがブリーダーから入手したイヌ、ネコを販売することを禁じました。 米国でのペットショップ禁止はブリーダーでなく、まずバイヤー(買い手)のところからスタートしました。買うのを止めさせるのは需要の抑制につながります。売り手からでなく買う方から止める、売らせないより買わせない―。このように米国の「PET STORE BAN(ペットショップ禁止)」はスタートしたのです。 実は、ホームブリーダー(自宅で母子を大事に生育するブリーダー)はこの法改正に賛成しています。彼らはエシカル(倫理的)ブリーダーとも言われ、半年や1年前から希望者と契約を結び、家庭環境下で子イヌを育てます。子イヌは母親や兄妹たちと過ごし、心身の健康と社会性を獲得します。 このように、優良ブリーダーは子イヌや子ネコたちが大切に飼育されることを望んでいるのです。 劣悪な繁殖場「パピーミル」 一方で、パピーミル(子イヌ工場)と呼ばれる劣悪な繁殖場もあります。これを完全に禁止にするには、子イヌ工場で育った子イヌは売れないようにすること、消費者に買わせないことなのです。 法改正を経て、ペットショップで買えなくなった市民らはパピーミルからは買わずに、直接ホームブリーダーの元に足を運ぶようになります。飼い主となる人は、家庭に迎えるイヌ、ネコがどのような環境で育ったかを知る権利があります。購入者、つまり消費者には、トレーサビリティー(過程追跡)などの情報提供は当然入手する権利があります。 このように欧米では、利益のために、命ある伴侶動物を大量に繁殖させ、店に並べる行為を禁止しようとする動きが始まっています。その理由は、シェルターに保護イヌ、保護ネコがあふれているからです。産ませなくても、虐待や殺処分から救われたイヌ・ネコが各地のシェルターにはあふれているのですから。(犬猫保護活動家)

宇宙ビジネスへの「橋渡し」つくばで いばらきスペースサポートセンター開所

つくば市千現のつくば研究支援センター内に1日、「いばらきスペースサポートセンター」が開所した。宇宙ビジネスの活動拠点として、茨城県が専任コーディネーターを常時配置し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や企業と連携した展開を図る。 コーディネーター2人が常駐 県内の特に中小・ベンチャー企業の宇宙産業への挑戦意欲を高め、新規参入や取引機会の拡大を図るのがねらい。県は1日付で、専任コーディネーター2人を配置、宇宙ビジネスに関する企業からの相談にワンストップで対応する常設の拠点として、県内企業による新製品開発や受注拡大、県外宇宙ベンチャーによる県内企業との連携等を支援する。 県は2018年に「いばらき宇宙ビジネス創造拠点プロジェクト」を立ち上げ、宇宙ベンチャーの創出・誘致や宇宙ビジネスへの新規参入を目指し、支援体制の構築を進めてきた。さらに「いばらき宇宙ビジネス創造コンソーシアム」で宇宙ビジネスに挑戦する企業の事業化推進にも取り組み、昨年にはJAXAでの勤務経験を持つ黒田信介さん(66)が専任コーディネーターとなり活動を強化させた。 コーディネーターの鈴木貞明さん(左)と黒田信介さん その成果を踏まえ、今回黒田さんに加え、ひたちなか地区などで中小企業支援のための産業活性化コーディネーターを務めてきた鈴木貞明さん(68)との2人の陣容で、研究支援センター1階に常駐体制を組んだ。宇宙産業とのつながりや専門知識を生かし、技術開発のノウハウやニーズについて助言する。必要に応じて開発商品の販路開拓も支援。JAXAや宇宙ベンチャーとは、開発した商品の活用提案や試作品発注の橋渡し役を担う。 1日には、同センターで開所イベントの講演会が開かれ、宇宙ビジネスにかかわるJAXAの担当者や先発企業の実例発表などが行われた。県内の企業を中心に60人以上が集まり、聴講し、名刺交換などを行った。 開所イベントで、コーディネーターの黒田さんは「SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれて久しいが、(スペースデブリなどで)遅れをとっているのが実は宇宙利用。技術による可能性追求に民間主導で盛り上げていきたい」などと抱負を述べた。 イベントに参加していた研究機器の設計・製造企業、オオツカ(つくば市大曽根)の大塚美智夫社長(71)は「我々のような小さなところではJAXAあたりには営業をかけられないし、こちらから研究開発を提案するのも難しい。でも話によっては提供できる技術もありそうなので、情報交流の新しいチャネルが開けることへの期待は大きい」と語る。(相澤冬樹) ◆いばらきスペースサポートセンター(つくば市千現2-1-6 つくば研究支援センター1階)電話080-9158-0947(平日午前10時~午後4時)ホームページはこちら

「通訳」と「翻訳」 《ことばのおはなし》58

【コラム・山口絹記】前回の記事(5月7日付)で、絶版本の翻訳をする、ということについて書いた。今回はそもそも「翻訳」とはどういうものなのか、ということについて、少し距離をおいて書いてみようと思う。私は以前、某企業において通訳業務を担当していた。「通訳」と「翻訳」、いずれも二つ以上の言語の仲介をするということに関しては変わりないのだが、実は結構性質の違う行為なのだ。 「翻訳」というものについてより理解するために、まず「通訳」という行為について少し想像してみよう。その場にいる複数人が、共通の話題に関して意思疎通をはかりたいと考えている。違っているのは使用している言語のみだ。英語を話す者、日本語を話す者、それぞれが発言する内容を、私がリアルタイムで訳して相手に伝えていく。 通訳である私は、明確にその場に存在していて、その場の人間は常に相手の表情や空気を感じつつ、私のことばに耳を傾けている。通訳と言っても、私の場合は部外者ではなかったので、議題についても両言語で参加するわけだ。会話を続けていく中で、カンどころを押さえておけば基本的に問題がない。 通訳という業務にもいろいろあると思うのだが、比較的こういった業務(一関係者として通訳する)は比較的難易度が低く、仲介する両者ともに属さない通訳業務のほうが、より難易度が高いだろう。なぜなら、その場に通訳者として存在はしているのだが、内容に関する専門知識は事前に別途学んでおかなければならないし、存在自体を強く意識させてしまうようでは円滑な議論ができないからだ。 翻訳者の存在を意識させない さて、翻訳者の存在は読者に意識させるべきだろうか。私は基本的に意識させてはいけないと思う。特に文学であれば読者は物語を読みたいわけで、それが翻訳されたものかどうかなど関係がない。知ったことではないのだ。 翻訳されているからこそ読めるのだが、大多数の読者は、もともとどういった表現でその文章が書かれているかには関心がない。関心が強ければ自分で原書を読もう、言語を学ぼうとなるだろう。 そして、翻訳するものが文学作品であれば、当然「文体」が大切だ。文学作品を書くとなると、一般的に平均よりも高い文章作成能力が要求される。読書好きな方であれば、この著者の文体が好き、なんてことは当然にあって、これはおそらく一般的な通訳者には強く要求されないタイプの問題だ。 通訳者にも高いレベルの言語能力は要求されるが、あくまで優先されるべきは正確な情報であって、それをおろそかにしてまでその場の人間の感情を揺さぶることを優先するべきではない。 一方で、文学の翻訳においては、物語の世界に読者を誘導させるために、時に正確な情報伝達をあきらめなくてはならないときがある。このバランス感覚がおそらく文学の翻訳におけるキモなのだが、この話は次回にまわそう。まさかのシリーズ化である。(言語研究者)

点字ブロックのQRコードで道案内 視覚障害者支援へ つくば駅で実証実験

点字ブロックに貼り付けられたQRコードをスマートフォンのカメラで読み取りながら、視覚障害者を目的地まで、音声で正確に誘導する移動サポートシステムの実証実験が31日、TXつくば駅と隣接のつくばセンターバスターミナルで実施された。 つくば駅やバスターミナルの利用に慣れている視覚障害者は、頭の中の地図をもとに白杖や点字ブロックを使いながら1人で移動できるが、よく知らない場合、外出を支援する誘導者が必要になる。新たに開発された移動支援システムは、視覚障害者が自分のスマートフォンを使って、1人でつくば駅やバスターミナルを移動できるよう誘導する。 実証実験は、TXを運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区)と、バスターミナルを管理するつくば市、システムを開発したリンクス(東京都港区、モハメッド・オサムニア社長)、システムの開発協力をした筑波技術大学(つくば市天久保)の4者が共同で実施した。 31日は、技術大で学ぶ視覚障害者の学生ら5人がそれぞれ、自分のスマートフォンを使って専用のアプリを起動し、カメラを点字ブロックに向けて、音声で誘導を受けながら、バスターミナルのバス停からつくば駅の上りホームまで、片道約340メートルを一人で白杖を付きながら歩いて往復した。 点字ブロックの曲がり角や分岐点、階段に差し掛かると、「直進3メートル」「右19メートル」「階段35段」などの詳細な音声案内があった。 実証実験に参加した視覚障害者で技術大の寮に住む保健科学部情報システム学科1年の井田怜菜さん(18)は「『右何メートル』とか細かく教えてくれてありがたい。4月に北海道からつくばに引っ越してきたばかり。知らないところではガイドヘルパーなどに頼って移動するが、アプリがあると1人で移動できる」と感想を話す。 視覚障害者で技術大4年の北畠一翔さん(21)は「リアルタイムで情報を得られるので安心できる。点字ブロックがあるだけではどこにつながっているか、教えてもらわないと分からない。アプリで案内してもらえるので自分だけで目的に到着することができる」と語っていた。 開発された移動支援システムは「shikAI(シカイ)」と命名されている。今回の実証実験では、地上にあるバスターミナルから、地下にあるつくば駅構内やホームまでの延びた点字ブロックに、計約500枚のQRコードが貼り付けられた。設計図面や現地調査をもとにあらかじめ作成された点字ブロックの地図情報をもとに、点字ブロックに貼られたQRコードの位置情報をスマートフォンのカメラで読み込んで、視覚障害者の位置を確認し、1メートル単位で誘導する。 2016年から開発が始まり、17年から筑波技術大学の松尾政輝助教(29)が開発協力してきた。リンクスの小西祐一取締役によると、17年から東京メトロで実験を始めたが、当初は無線で誘導するシステムだったことから、地下鉄では案内が途切れるなど壁にぶつかった。点字ブロックにQRコードを貼り付けてスマートフォンのカメラで読み取るシステムに変更したところスムーズにいくようになったという。 現在すでに実用化されており、2020年から東京メトロの10駅と豊島区の区役所と図書館、今年3月からはJR西日本が大阪駅うめきたエリアに導入した。 つくば駅での実証実験は6月7日まで計4回実施され、安全性や利便性、効果や課題などを検証する。松尾助教は「人によってどういうものが使いやすいかは異なるが、効率的な移動手段を当事者が選べることが重要。shikAIは当事者の意見を聞いて開発された。導入されれば移動の選択肢の幅が広がる」と話している。 リンクスは、駅やバスターミナルの管理者が導入費用を負担し、利用者は無料で利用できる枠組みを提示している。導入費用は1駅当たり100万円から200万円程度で、つくば駅構内とバスターミナルに導入する場合、200万円程度かかるという。 今後つくば駅で導入するか否かについて首都圏新都市鉄道は「実証実験の結果を踏まえて4者で検討したい」とし、つくば市は「バスターミナルだけではなくて駅までシームレスにつながることが大事なので、実証実験の結果を検証して首都圏新都市鉄道と協議したい」としている。

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