火曜日, 4月 7, 2026

懸案に見る茨城県とつくば市の距離《吾妻カガミ》167

【コラム・坂本栄】コラム139「上り坂の市と下り坂の県」(2022年8月15日掲載)では、つくば市と茨城県の考え方の食い違いを克服するため、「市は県から『独立』したら?」と提案しました。記事「意見相次ぎ審査継続へ 洞峰公園問題で県議会特別委」(8月30日掲載)を読むと、改めて県と市が置かれている状況と方向性の違いを感じます。 下り坂の県と上り坂の市 洞峰公園問題と県立高校問題を取り上げた139で触れた「つくば独立」論を箇条書きにしておさらいすると、こういうことです。 <洞峰公園問題での対立> ・茨城県:県立公園の運営を民間に任せて利益を出し、維持管理費を捻出したい ・つくば市:今の都市公園の形を維持すべきで、レジャー施設などは造らせない <県立高校問題での対立> ・つくば市:人口増に伴い中学生も増加している⇒市内に県立高を新設してほしい ・茨城県:新設は県全体の人口減少に逆行する⇒既存高の学級増などで対応したい <洞峰公園問題の背景> ・茨城県:県立公園内に民営レジャー施設を設けて少しでも稼ぎたい「貧しい県」 ・つくば市:学園都市のシンボル的な公園に余計なものは不要と考える「豊かな市」 <県立高校問題の背景> ・大きな流れとして「下り坂」の茨城県:県全体の人口減・少子化が進んでいる ・県全体とは逆に「上り坂」のつくば市:TX効果もあり沿線の人口が増えている こういった分析を踏まえ、「県立高問題は、県を当てにせずに市立高をつくば市がつくり、自分で解決したらどうか… また、洞峰公園問題は公園を買い取って市営公園にし、現状のまま市民に供したらどうか… 県と市が置かれている状況と方向が違うのだから、市は県から『独立』したら?」と提案しました。 貧しい県と豊かな市のズレ 周知のように、洞峰公園については県が市に無償で譲渡するという合意=無償という餌で釣り維持管理を市に転嫁=ができていますが、県議会が「待った」をかけました。その理由は冒頭のリンク先記事に出ているように、貧しい県と豊かな市の対立そのものでした。古参県議の言い分は「68億円の財産(洞峰公園の資産価値)を不交付団体のつくば市に無償で譲渡するのは疑問だ」に集約されます。 言い換えると、70億弱の価値がある公園(周辺は高級住宅地)を、地方交付税交付金(財政が苦しい自治体に国が配る一種の補助金)をもらっていない自治体(県内の不交付市町村はほかに神栖市と東海村)にタダでやるのはおかしい、つくば市は運動公園用地売却でもうけているのだから土地代を払わせろ―ということです。 下り坂の県の議員が上り坂の市の懐具合を見て、知事と市長の基本合意に文句を付けている図といえます。公立高校を県立にするか市立にするかの議論(問題解決のために私はコラムで市立高設立を提案)の構造も同じことです。 県南に政令指定都市を創る そろそろ「つくば独立」論に移ります。簡単に言うと、つくば市が核になって周辺自治体と合併し、政令指定都市(要件は人口50万人以上)を誕生させ、多くの行政権を県から市に委譲してもらい、県とは違う方向性を持つ行政単位を県南につくったらどうかという構想です。実現すれば、茨城県の「へそ」は水戸市から新つくば市に移ります。 前市長の市原さんが提起した土浦市との合併による中核市(当時の要件は人口30万人以上、現在は20万人以上)づくりは、政令指定都市に向けた準備のプロセスでした。「独立」構想を実現できる豪腕市長の誕生が待たれます。(経済ジャーナリスト)

ホーム最終戦 引き分け つくばFC

関東サッカーリーグ1部後期第8節、ジョイフル本田つくばFC対東京国際大学FC(本拠地・埼玉県坂戸市)の試合が16日、つくば市山木のセキショウ・チャレンジスタジアムで開催され、2-2で引き分けた。つくばのリーグ成績は7勝4分6敗で10チーム中4位。これでホーム最終戦を終え、残るはアウェー1試合。最終節は10月1日、神奈川県サッカー協会フットボールセンター(かもめパーク)にて東邦チタニウムと対戦する。 第56回関東サッカーリーグ1部 後期第8節(9月16日、セキショウ・チャレンジスタジアム)ジョイフル本田つくばFC 2-2 東京国際大学FC前半 1-1後半 1-1 つくばはこの試合、3-4-2-1のフォーメーション(※メモ)で臨んだ。前線はFW熊谷誠也を中心にMF鍬田一雅、FW恩塚幸之介が左右に並ぶ1トップ2シャドーの形だ。前線がワンツーやくさびのパスで中へ入ると、相手DFが絞って外が空くので、そこを使って左のMF青木竣や右のDF山崎舜介が攻撃参加する形だ。 先制は前半22分、恩塚とのコンビネーションで青木が相手DFの裏へ抜け出し、GKの脇を射貫いて決めた。「恩塚が左サイドで組み立てながら、いいところで裏へパスを通してくれたので、DFとうまく入れ替わり、簡単に流し込む形で決められた」と青木。 ただしここまで、つくばのチャンスの数は決して多くなかった。東国大は屈強なFWを前線に置き、ロングボールを頭でつないで攻め込んでくる。セットプレーになれば長身のDFがゴール前へ上がり、さらに脅威は増す。32分の同点シーンもこの流れだった。東国大のコーナーキックを一度はクリアするが、もう一度放り込まれたボールをセンターバック石井偉理亜に頭で合わせられた。 この得点で東国大は勢いを取り戻し、つくばが我慢する形で前半の残り時間は推移した。「先制した後でもっと畳みかけていければよかった」と恩塚。「ボールを持ったときは押し込めていた。相手のスタイルは分かっていたので、守備が下がりすぎずにしっかりと対応できた」と副島秀治監督。 後半のつくばは、前半以上にサイドが活性化した。「右は押し込む形が前半からできていたし、後半は相手守備が前から来ていて、左サイドに穴ができ始めていた。そこをしっかり突いていこうと指示した」と副島監督。 結果が出たのは右から。後半24分、ロングボールに山崎が反応して駆け上がり、中央で待っていた恩塚にラストパス。糸を引くようなミドルシュートが左サイドネットに突き刺さった。「DFがボールに意識を奪われているのを見て、気付かれないよう少し遅れて進入。山崎が顔を上げた瞬間にボールを呼び、ファーストタッチを決めて2タッチ目で振り抜いた」と恩塚。今季5つめのゴールだ。 これで勝利が決まったかに思われたが40分、フリーキックの場面でGK三沼慶太が相手選手と接触、イエローカードを受けてしまい、直後のPKを決められ再び同点。副島監督は「ボールに触れていれば問題はなかったが、積極的にチャレンジしたことは悪くない。残り時間であと1点決められるかどうかが、もう1つ上のレベルへ行くためのカギになる」と評した。 次節は4位と5位の直接対決になりリーグ戦は終了するが、さらにその先がある。10月20日から佐賀県で開催される全国社会人サッカー選手権大会だ。「ここ数試合安定した戦いができており、勝ち上がるチャンスは大きいと思う。最終節でいい成果を収めて全社へ乗り込んでいきたい」と副島監督は意気込む。(池田充雄) 【メモ】フォーメーションは、ゴールキーパー(GK)を除く10人の選手の配置。3-4-2-1はディフェンス(DF)3人、守備的ミッドフィルダー(MF)4人、攻撃的MF2人、フォワード(FW)1人という配置隊形をいう。

どうする?花火旅《見上げてごらん!》18

【コラム・小泉裕司】煙火業界は、あっちの大会、こっちの大会と大忙し。旅行会社の花火ツアーも好調で、各地の花火会場は赤や黄のツアー旗にワッペンを胸に付けた行列が続く。その人混みをかいくぐり、プラチナチケットを手に観覧席に向かう。今回は、コラム5「…越後3大花火」(2022年8月21日掲載)で書いた「海の大花火大会」(新潟県柏崎市)の会場に到着するまでの「どうする?」お話。 午前11時、JR土浦駅改札口に到着するや、「列車事故のため、土浦駅から取手駅間は運転を見合わせています。復旧の見込み時間は不明です」のアナウンス。この告知がトラウマの読者も少なくないはず。 駅員に確認したところ、「1時間以上の遅れ、取手駅から上野駅方面は通常運転」とのこと。本来、11時25分土浦駅発で上野駅へ向かい、12時46分発「とき321号」に乗車。いったん長岡駅で下車し、ホテルへ荷物を置いてから、柏崎市の花火会場に向かう予定。往復乗車券と新幹線特急券は「えきねっと」の「チケットレス」で、在来線特急は紙切符で予約済み。 遅延に慣れない筆者の心臓はバクバク。「さあ、どうする?」。思いついた選択肢は次のとおり。 ① 予約を変更し、運転再開まで土浦駅で待機する。 ② 土浦駅まで送ってくれた家族を呼び戻し、その車で取手駅に向かう。 ➂ ②と同様、家族の車で上野駅に向かう。 ④ 自宅に戻り、新潟県までひとり車で向かう。 ⑤ 中止する。 苦手な長距離ドライブ、しかもひとり 選んだのは、④の往復635キロのドライブひとり旅。花火をあきらめる考えなど毛頭ない。最大の理由は「自己完結」であること。家族の車で自宅に戻り、ガソリンを満タンにして、3本の高速道路をノンストップ、長岡市内まで4時間。宿泊ホテルに駐車後、長岡駅から信越本線で柏崎駅に17時50分到着。会場入りは18時20分。打ち上げ開始19時30分まで1時間の余裕だ。「花火を見る」に限れば、正解だった。 選択肢①の場合は? 新幹線予約を変更しようと土浦駅の駅員にたずねたところ、「ネット予約は駅窓口では対応できない。上野駅に着いたら電話で変更してほしい」と、渡された小さな紙切れには「えきねっとサポートセンター」の連絡先がプリント。早速電話したが話し中。この状況は終日続いた。つながったのは翌朝。かの常磐線は1時間20分後に運転再開したとの後日談だが、これでは上野駅に着いたところで、つながらず路頭(駅構内)に迷っていたに違いない。 車で長岡市に到着後、間に合わなかった信越本線柏崎駅までの特急券を払い戻そうと、並んだ長岡駅の窓口では「到着駅で手続きしてほしい」との案内。「花火大会で混雑する柏崎駅にたらい回し?」と切り返すと、「次の方どうぞ」と完全無視。不快な思いを残し、後日、サポートセンターと土浦駅窓口で払い戻しの手続きを完了。交通費に限っての収支は1,000円ほどの黒字で、苦手な長距離ドライブは、やはり正解だったのだろう。 以来、新幹線の予約は、割安な「eチケット」ではなく、「紙切符」に限ることにした。利用日間際に届く発券の催促メールが、少々わずらわしいのだが…。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

よいボールペンを探す《続・気軽にSOS》141

【コラム・浅井和幸】何人かで集まって軽い相談が始まります。相談というほどではなく、軽い情報交換程度のもの。例えば、ボールペンをなくしてしまったので、どこで買えばよいかな?という投げかけがあったとします。その投げかけに、Aさんは「コンビニで売っているよ」と即答します。Bさんは「〇〇画材屋でたくさんの種類を売っているから、そこで選んで買いなよ」と、いろいろ考えた後に答えます。 でも私だと、いつ使うの?とか、何に使うの?と、もうちょっと条件を絞るための質問をしてしまいたくなる癖があって、AさんとBさんはある条件下では正解だけど、今その提案は早急すぎないかと、違和感を持ってしまうのです。 もちろん、ボールペン程度の簡単なおしゃべりであれば、事務所に試供品があるから適当に持っていけと答えてしまいますし、むしろ大まかな質問に対して具体的に答えるほうが一般的なのだと思います。 しかし、真剣に悩んでいる人に対しても、このような場面によくぶつかり、私の中に違和感が長年ありました。例えば、よい勉強法ない?に対して、何の勉強とか、目的が分からないまま回答。例えば、風邪とかうつ病の対処法で、実際にどのような症状があるかを聞く前に回答する。 これら的が絞られる前の疑問に対する、具体的な回答は「人生を成功させるたった3つの方法」「これだけやればだれでもダイエットができる」というような本のタイトルが好まれることでも、日常的なやり取りで好まれるのだろうなと理解します。 もう少し具体的な条件を増やす これらは、質問と回答がピタリとはまれば最短の解決となるでしょう。しかし、条件が大ざっぱなままなので、無駄に試行錯誤、トライアンドエラーの行動を繰り返すことになりかねません。具体的にしようと、疑問に対して質問を重ねすぎるのは、単なるウザい、面倒な奴となりかねません。(浅井は、面倒な奴に他ならないのですが) しかし、あまりにも回答がしっくりこないことが多い場合は、もう少し具体的な条件を増やすことが必要なのかもしれないと頭の片隅に入れておきましょう。所在地を「茨城県」→「茨城県つくば市」→「茨城県つくば市二の宮」と絞り込むように。(精神保健福祉士)

研究者の愛があふれる「シダ展」 16日から 筑波実験植物園

国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)で16日から、シダ植物がテーマの企画展「シダ・ミュージアム―つくばシダ展」が始まる。同園が保有するシダ植物600種以上の中から、初公開となる近年発見された新種や絶滅の恐れのある希少種などを含む約200点が展示される。同園でのシダ展開催は19年ぶりとなる。 現在、世界中にある1万2000種余りのシダ植物のうち日本には約600種が生息しているとされる。一方で、野生のシカに食べられるなどして、約3分の1にあたる260種あまりが絶滅の危機にひんしており、環境省が定める「レッドリスト」に登録されている。 こうした状況の中で同園は、希少なシダ植物を絶滅から救うため胞子から培養し育てている。今回の展示では、保護の取り組みの様子が公開されるとともに、「タカサゴイヌワラビ」など絶滅危惧種に指定されている約80種を間近に見ることができる。 また2018年に長崎県対馬で発見された新種の「ツシマミサキカグマ」や、今回の企画展を担当する同博物館植物研究部陸上植物研究グループの海老原淳さん(45)らが同年に鹿児島県徳之島で、日本国内で初めて自生するのを発見した新産種で、これまで台湾、中国、ベトナム、ミャンマーで確認されていた「ムシャシダ」など、直近7〜8年の間に見つかった新種・新産種を8種、展示している。 ほかにも、水分を含むとフィルムのように半透明に輝く、コケに似た「コケシノブ」や、江戸時代にも人気を博し、古くから園芸品種として愛好されてきたシダ植物で根や葉をもたないことが特徴の「松葉蘭」、見るだけでなく日本の食生活に根付いた「わらび」など食べられるシダ植物のレシピを「3分シダクッキング」という動画で会場で流すなど、ユーモアを交えながら、シダに親近感を覚える仕掛けも用意されている。 企画展の担当者で同博物館植物研究部多様性解析・保全グループの堤千絵さん(46)は「シダ植物は地味なイメージがあるかもしれないが、着生することで高い木に登る。それだけでなく、落ちる雨水を集めるなど、シダは自然の中で賢く生きている。そんなシダ植物の多様な生き方は魅力的。より多くの人にその魅力が伝われば」と思いを語る。 海老原さんは「今回、筑波実験植物園で開催するシダ植物の企画展は19年ぶり。シダに詳しい方も、初めて接する方も、大人からお子さんまで楽しめるような構成を作った。ぜひ、シダの多様な魅力を知る機会にしてもらえたら」と、来場を呼び掛ける。(柴田大輔) ◆「シダ・ミュージアム―つくばシダ展」は9月16日(土)~24日(日)まで、つくば市天久保4-1-1 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時から午後4時30分。料金は一般320円(税込み)、18歳以下と65歳以上は無料。期間中は「シダの多様性研究と保全の最前線」(16日開催)など専門家によるセミナーが複数予定されている。それぞれ定員制で、予約が必要なものもある。詳細はイベント特設サイトへ。

ツェッペリン伯号の模型など展示 地域再発見を イオン土浦で16日から

子どもたちに地域の話題を紹介し、空への夢を持ってほしいと、「飛行船と空飛ぶ人たち」と題した催しが16日からイオンモール土浦(同市上高津)で開かれる。20世紀初頭、土浦に飛来した世界最大級の飛行船、ツェッペリン伯号の模型2機が展示されるほか、筑波大の学生サークルが製作した人力飛行機が展示される予定だ。協力は「土浦ツェッペリン倶楽部」、「つくば鳥人間の会」。18日まで。 会場はモール1階の「花火ひろば」。長さ約3メートルのツェッペリン伯号の模型2機が展示される。実物の約80分の1の大きさで、1機は今年2月に完成した新しい模型だという。時間帯によっては土浦ツェッペリン倶楽部の会員が来場し、展示解説を行う。また、紙芝居「ツェッペリンが舞い降りた日」の実演が1日2回、午後1時からと午後3時から行われる。 人力飛行機は、筑波大学のサークル「つくば鳥人間の会」が作ったもので、人力飛行機の練習用コックピットやプロペラ、2005年から歴代の人力飛行機の機体図面も展示する。子ども向けの体験イベントとして、各日先着100人限定で、ストローを使って不思議な形の紙飛行機を作る工作体験が行われる。 30万人押し寄せ、流行語に 巨大なドイツの飛行船、ツェッペリン伯号が土浦に飛来したのは1929年(昭和4年)8月のこと。世界一周の途中に霞ケ浦海軍航空隊(阿見町)の霞ケ浦飛行場に寄港し、5日間停泊した。乗員、乗客は料亭「霞月楼」(土浦市中央)で歓迎を受けた。当時最先端の乗り物だった236.6メートルの飛行船を一目見ようと30万人の観衆が押し寄せたと伝えられ、「君はツェッペリンを見たか!」が当時の流行語となったと言われている。 イオンモール土浦では「土浦と茨城」の話題を紹介し、地元を再発見してほしいと「知るをたのしく。まなびの」と題したイベントを毎月実施している。「土浦ツェッペリン倶楽部」の堀越雄二さんは「一般の方に土浦にツェッペリン伯号が飛来したという大きな歴史があることを知って誇りに思ってもらいたい。子どもたちも模型と一緒に写真を撮って楽しんでもらい、町おこしの起爆剤になれば」と来場を呼び掛ける。(田中めぐみ) ◆イベント「飛行船と空飛ぶ人たち」はイオンモール土浦1階、花火のひろばで、16日(土)から18日(月・祝)の3日間開催。開催時間は午前11時から午後5時まで(受付は午後4時半まで)。

コインランドリーの女王《短いおはなし》19

【ノベル・伊東葎花】 彼女は赤いポルシェでやってくる。 胸元で揺れる長い髪、体形がそのまま出るようなミニのワンピース。 右手にピンクの大きなバッグ。左手に車のキーをじゃらりと鳴らし、ヒールの音を響かせる。 ここは、町はずれのコインランドリー。客は1人暮らしの男ばかり。 誰もが彼女のファンだ。 彼女がほほ笑むと、ハートの矢が刺さったようにメロメロになる。 コインを入れる仕草(しぐさ)にさえ誰もがときめく。 「どうぞ」 彼女のために椅子(いす)を空けると、優雅に足を組む。 ヘッドフォンで音楽を聴き、リズムに合わせて体をくねらせる。 ああ、なんてセクシー。 僕らは彼女を、クイーンと呼んだ。 クイーンが来るのは月・水・金の午後8時。いつも時間ピッタリだ。 そしてそれは、金曜の夜だった。 いつものようにクイーンが来て、僕らを翻弄(ほんろう)させて出て行った。 僕はその日、興味本位でポルシェを追った。 こっちは原付バイクだし、追いつくはずもないと思ったが、ポルシェは意外とゆっくり走った。 そして古いアパートの前で停まった。 ここがクイーンの家? まさか、こんなボロアパートに住んでいるはずがない。 そう思ったとき、ポルシェのドアが開いて女が出てきた。 「え?」 それは、まったくの別人だった。 よれよれのスエット上下、無造作に束ねたぼさぼさの髪、サンダル履き。 クイーンはどこに行ったんだ? ぼさぼさ女は、クイーンが持っていたのと同じピンクのバッグを持って、アパートの階段を上がっていく。 次の瞬間、赤いポルシェが消えて、古ぼけた軽自動車に変わった。 まるでかぼちゃの馬車みたいだ。魔法が解けたのか? 僕は首をひねりながら帰った。 月曜日、クイーンはいつものようにコインランドリーにやってきた。 僕は、金曜日のことを確かめたくて、ポルシェの鍵を隠した。 クイーンが音楽を聴いているときに、こっそり自分のポケットに入れた。 帰ろうとしたクイーンは、焦って鍵を探した。 「鍵がないわ。誰か知らない?」 時間がどんどん過ぎていく。 5分後、魔法が解けた。 ぼさぼさの髪、毛玉だらけのスエット、ノーメイクの平凡な顔。 取り巻きだった男たちは、あまりの変貌(へんぼう)ぶりにうろたえた。 僕がポケットから鍵を出すと、彼女は泣きそうな顔で出て行った。 ポルシェは、もちろん軽自動車に変わっている。 「何だ、アレ?」「普通の女だ」 男たちは、事態が飲み込めないまま帰って行った。 僕は罪悪感と、何とも言えない喪失感を拭いきれなかった。 水曜の夜、僕の原付バイクが、突然赤いポルシェに変わった。 鏡を見たら、上質なスーツと整ったさわやかなルックス。 理想の男になっている。 今度は僕の番なのか? おそらく魔法は1時間余りで切れるのだろう。 さてどうしよう。 僕はとりあえずコインランドリーに向かった。 いつもは男ばかりのコインランドリーが、女子大生のたまり場になっていた。 彼女たちは、目をハートにして僕を迎えた。                                 (作家)

敵対関係から、ともに闘う仲間へ 《電動車いすから見た景色》46

【コラム・川端舞】今、女性団体と障害者団体の共闘の歴史を調べている。1972年、母体保護法の前身である優生保護法において、重度障害がある胎児の中絶を認める改正案が国会に上程された。だが、女性団体と障害者団体が反対し、法改正は阻止された。 女性の社会運動であるフェミニズムの歴史を解説した荻野美穂の「女のからだ―フェミニズム以降」(岩波新書)によると、当時の改正案には経済的理由による中絶の禁止も含まれ、当初、フェミニズムの運動に関わる女性たちは、「産む・産まないは女が決める」という「中絶の権利」を主張し、中絶の禁止に反対した。これに対し、障害者たちは「胎児に障害があれば、中絶するのか」と厳しく問うた。 昨年出版されたフェミニズム入門書「シモーヌVOL.7」(現代書館編集)では、当時、障害者団体側であった横田弘と、女性団体側であった志岐寿美栄が書いた文章を掘り起こし、女性と障害者が互いに葛藤を抱えながらも、共闘関係になっていく過程を特集している。 「胎児の障害の有無により、中絶するかを決めるのは、今生きている障害者をも否定する」「障害児を産んだだけで、女性は社会から冷たい目を向けられ、我が子を殺してしまうまで追い詰められる」という血を吐くような両者の葛藤の末、実は互いを苦しめているのは今の社会構造だと思い至り、社会を変えるべく共闘していった。その結果、優生保護法の改正は阻止されたのだった。 マイノリティを苦しめる正体 現在、母体保護法では、胎児の障害を直接的な理由とする中絶は認められていないが、出生前診断で障害があると判定された胎児の多くは、「身体的理由又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがある」として中絶されている。 障害児として生まれた私は、どうしても障害のある胎児に感情移入し、中絶する女性に敵意を向けてしまいたくなる。しかし、障害児者はいないことを前提に多くの建物や制度が作られ、健常児の育児さえ、女性だけに負担を強いる社会を考えると、苦悩の末に障害のある胎児を中絶する女性だけを責めることはできない。 「障害児の誕生は避けるべき」「育児は女性がやるべき」という圧力で、女性の社会進出や障害者の生きる価値を否定し続ける社会を変えていきたい。この社会は多数派が都合のよいように作られている。現在もマイノリティ集団同士が敵対してしまっている現象が至る所で起きているが、彼らに生きづらさを押しつけているのは誰なのか、冷静に考えたい。(障害当事者)

洞峰公園を現地視察 県議会調査特別委員会

県営の都市公園、洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)を地元のつくば市に無償譲渡する県執行部の方針を審査している県議会の県有施設・県出資団体調査特別委員会(田山東湖委員長)の委員らが13日、洞峰公園を現地視察し、県都市整備課らの案内で、野球場や体育館のプール棟とアリーナ棟、新都市記念館、フィールドハウス、冒険広場や洞峰沼などを見て回った。 野球場は当初、パークPFI事業者がグランピングやバーベキュー施設を建設する計画を立てていた。現地で県の説明を受けた県議からは「(公園の中の)狭いエリアということが分かった」「皆さんへの説明が足りなかったのではないか」などの意見が出た。 体育館のプール棟とアリーナ棟、飲食店やギャラリースペースがある新都市記念館、トイレや会議室があるフィールドハウスの視察では、市への譲渡に向けて、県が現在、雨漏りやタイルのはがれなど不具合箇所を修繕しているなどの説明が県担当課からあった。 緑豊かな公園環境が維持されてきたことについて県は「4000本の樹木があり、100種類の鳥類が観察されている。公園サポーターが5団体登録されていて、若い人からお年寄りまで、花壇をつくったり清掃活動をして環境が維持されてきた」などとと説明した。 視察の途中、つくば市の飯野哲雄副市長らも参加して意見交換が行われ、県議からは「議会で(パークPFI事業を)議決して1年もたたないうちにこういったことになってしまった。つくば市の心配もあるし、県の貴重な財産を無償であげていいのかという県民感情もある」(森田悦男氏)、「(体育館や新都市記念館などの)建物の機能をきちんと維持していくことが課題。(県が策定した)長寿命化計画では建物の更新に数十億円かかる。市としてやっていけるのか」(江尻加那氏)、「プールは冬も温水で、体育館は暖房。つくば市は移管後、学校のプールに使いたいという話もある。燃料費は(年間維持管理費の)1億5000万円の中に入っているのか」(中山一生氏)などの質問や意見が出た。 田山委員長は「グランピングやバーベキュー予定地は(公園の中の)狭い一部の用地だということが分かった。いい悪いは別にして、県民やつくば市民への説明が欠落していたんだと思う。(公園の維持管理費など)経費だけの問題で云々ではなく、市民感情としてどうなのかということもあったと思う。現在の(県と市との)話の進み具合も意識して、今後に向けて検討したい。現場を見て良かったと思う」など感想を話した。 委員らはこの日、前回の8月30日の委員会で継続審査となった洞峰公園のほか、民間譲渡が計画されている鹿島セントラルホテルの計2カ所を現地視察した。次回の委員会は25日開催される予定。(鈴木宏子)

「今」と向き合う若手作家14人 県つくば美術館で写真展

国内外で活躍する14人の若手作家による写真を中心とした作品展「ヴィジュアル・コミュニケーション展2023ーレジリエンス:不確実性のうちを生きる」が、12日から県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。主催は市内在住の写真家、田嵜裕季子さんが代表を務めるビジュアルコミュニケーション研究会。田嵜さんが教べんをとる日大芸術学部で写真を学んだ卒業生らが参加する。同会による展覧会は2011年4月に始まり、今回で7回目を迎える。 これまで展覧会では、その時代の世相を映像で表現することに努めてきた。今回のテーマを「不確実性」にした理由を田嵜さんは「私たちの元には、AI、コロナ、戦争など次々に起きる問題が、多くの情報と共に毎日押し寄せ、まるで霧の中を手探りで歩いているような時代を生きている。今が『不確実』であるとあえて言うことで、この時代を誰もがたくましく生き抜くことができればという思いを込めた」と説明する。 会場には、戦争の記憶を写真で表現する菊田真奈さんの「安らかに眠ってください 過ちは繰返しませぬから」▽横になれないよう真ん中に肘掛けを付けたベンチなど公共空間の「排除アート」をテーマにした阿部隼也さんの「The Appearance of Spaces(ゼ・アピアランス・オブ・スぺイシス)」▽施設に入所した祖母と向き合う飯田茜さんの「Unsicherheit(ウンジヒャーハイト)」など全14作品が展示されている。 相対化、問いかけ 出展者の一人で写真家の三橋宏章さん(38)は、これまで東海村の原子力関連施設や東京都千代田区にある千鳥ケ淵戦没者墓苑など、社会的な問題を抱える風景を写真にし、発表してきた。今回展示するのは数年前から取り組む国立公園をテーマにした「風景、まなざし、国立公園」。釧路湿原や富士山、瀬戸内海、屋久島の森など6カ所の写真を展示している。 千鳥ケ淵戦没者墓苑に関心を持つ中で、同墓苑の植生を設計した造園学者、田村剛氏が、日本の国立公園の「産みの親」であると知ったのが、このシリーズに取り組むきっかけになった。その目的を三橋さんは「国立公園は『日本を代表する自然の風景地』として法律で政治的に定められた『日本』を表すもの。それを写真にすることで日本という国を相対化して見ることができるのではないかと考えた」と話す。写真中央に、三橋さんのカメラに背を向け壮大な風景に見入る観光客が映り込むのが特徴だ。「不確実性の高い現代で、人間や社会を超えた存在を求めているようにも見える。そう駆り立てるものを写真で表現したかった」と作品への思いを語る。 地方都市の文化とコミュニティーをテーマに作品を作る浦邉俊考さん(23)は、故郷の房総半島と、そこと歴史的なつながりを持つ紀伊半島を舞台とした写真6点を展示する。民俗学者・柳田國男が説いた「黒潮」の流れに乗って移動した人の営みに、二つの半島のつながりを見出すとともに「地域らしさ、幸せとはなにか」を問いかける作品だ。 社会に向き合うきっかけに SNSやニュースに動画が増えるなど表現手段が多様化している中、主催団体代表の田嵜さんは「私たちは、わかりやすく短時間で説明された情報を見せられ、無意識に消費しているが、写真は、そこに立ち止まって自分で読み解くという側面がある。若い作家たちが向き合っている『今』に出会うことで、より主体的に社会に向き合うきっかけにしてもらいたい」と来場を呼びかける。(柴田大輔) ◆「ヴィジュアル・コミュニケーション展2023ーレジリエンス:不確実性のうちを生きる」は県つくば美術館で開催。会期は18日まで。開館時間は午前9時半から午後5時、最終日のみ午後3時まで。入場無料。18日は、国内外で開催されるフォトフェスティバルの企画等に関わるキュレーターの菊田樹子さんと参加作家によるトークイベントが11時から開催される。問い合わせはメールで。

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