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懸案に見る茨城県とつくば市の距離《吾妻カガミ》167

【コラム・坂本栄】コラム139「上り坂の市と下り坂の県」(2022年8月15日掲載)では、つくば市と茨城県の考え方の食い違いを克服するため、「市は県から『独立』したら?」と提案しました。記事「意見相次ぎ審査継続へ 洞峰公園問題で県議会特別委」(8月30日掲載)を読むと、改めて県と市が置かれている状況と方向性の違いを感じます。

下り坂の県と上り坂の市

洞峰公園問題と県立高校問題を取り上げた139で触れた「つくば独立」論を箇条書きにしておさらいすると、こういうことです。

<洞峰公園問題での対立>

・茨城県:県立公園の運営を民間に任せて利益を出し、維持管理費を捻出したい

・つくば市:今の都市公園の形を維持すべきで、レジャー施設などは造らせない

<県立高校問題での対立>

・つくば市:人口増に伴い中学生も増加している⇒市内に県立高を新設してほしい

・茨城県:新設は県全体の人口減少に逆行する⇒既存高の学級増などで対応したい

<洞峰公園問題の背景>

・茨城県:県立公園内に民営レジャー施設を設けて少しでも稼ぎたい「貧しい県」

・つくば市:学園都市のシンボル的な公園に余計なものは不要と考える「豊かな市」

<県立高校問題の背景>

・大きな流れとして「下り坂」の茨城県:県全体の人口減・少子化が進んでいる

・県全体とは逆に「上り坂」のつくば市:TX効果もあり沿線の人口が増えている

こういった分析を踏まえ、「県立高問題は、県を当てにせずに市立高をつくば市がつくり、自分で解決したらどうか… また、洞峰公園問題は公園を買い取って市営公園にし、現状のまま市民に供したらどうか… 県と市が置かれている状況と方向が違うのだから、市は県から『独立』したら?」と提案しました。

貧しい県と豊かな市のズレ

周知のように、洞峰公園については県が市に無償で譲渡するという合意=無償という餌で釣り維持管理を市に転嫁=ができていますが、県議会が「待った」をかけました。その理由は冒頭のリンク先記事に出ているように、貧しい県と豊かな市の対立そのものでした。古参県議の言い分は「68億円の財産(洞峰公園の資産価値)を不交付団体のつくば市に無償で譲渡するのは疑問だ」に集約されます。

言い換えると、70億弱の価値がある公園(周辺は高級住宅地)を、地方交付税交付金(財政が苦しい自治体に国が配る一種の補助金)をもらっていない自治体(県内の不交付市町村はほかに神栖市と東海村)にタダでやるのはおかしい、つくば市は運動公園用地売却でもうけているのだから土地代を払わせろ―ということです。

下り坂の県の議員が上り坂の市の懐具合を見て、知事と市長の基本合意に文句を付けている図といえます。公立高校を県立にするか市立にするかの議論(問題解決のために私はコラムで市立高設立を提案)の構造も同じことです。

県南に政令指定都市を創る

そろそろ「つくば独立」論に移ります。簡単に言うと、つくば市が核になって周辺自治体と合併し、政令指定都市(要件は人口50万人以上)を誕生させ、多くの行政権を県から市に委譲してもらい、県とは違う方向性を持つ行政単位を県南につくったらどうかという構想です。実現すれば、茨城県の「へそ」は水戸市から新つくば市に移ります。

前市長の市原さんが提起した土浦市との合併による中核市(当時の要件は人口30万人以上、現在は20万人以上)づくりは、政令指定都市に向けた準備のプロセスでした。「独立」構想を実現できる豪腕市長の誕生が待たれます。(経済ジャーナリスト)

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ふるさとのない時代《くずかごの唄》154

【コラム・奥井登美子】お正月には誰も故郷に帰りたくなる。私が育ったのは荻窪のみどり幼稚園。緑の名の通り、生垣に囲まれた家と野原の、のんびりした緑色の住宅街だった。 しかし今の東京の町はどこも高いビルばかりで、緑がない。故郷という言葉とはかけ離れた風景になってしまっている。私の故郷と呼べるような所は、もうどこにもなくなってしまったのだ。 幼い時、父の故郷、新富町へもよく連れて行ってもらった。父は歌舞伎座が新富座であった頃の、鉄砲洲小学校出身。「菅原伝授手習鑑」などに寺子屋の子役として駆り出されて、よく出演させられたそうだ。台詞(せりふ)も筋もよく覚えていて、よく私に語って聞かせてくれた。 隅田川のほとりに町があって、父は「〇〇ちゃんの店でノリを買おう」などと、昔の友達の家に寄っておしゃべりするのを楽しみにしていた。父の故郷はいま、日本ではない、高いビルばかりのどこか架空の空間になってしまっている。 タケちゃんの文が朝日に載った 1月27日の朝日新聞「折々のことば 鷲田清一」に、加藤尚武の文が載っていた。「個人の間の平等は、ある程度まで…自然の平等に支えられているが…国力の差は、ネズミとゾウの違いよりも大きい」 加藤尚武は私の弟のタケちゃん。京都大学の哲学教授を務めた後、鳥取に環境大学を創り、環境問題を、哲学のまな板の上に載せた人。「環境問題のすすめ」という著書もある。生活者として、医療と環境を意識して生活している。 加藤家の男たちはみな食べるのが好きで、父も、兄も、タケちゃんも、好きなものを自分で作って食べるのが趣味だ。 私はせめてせめて、お正月くらいは、おしゃべりの好きな弟のタケちゃん、母の昔の味の料理を作ってくれる妹、姪たちに会って、亡くなった父、母、兄の個性を偲(しの)びながら、今の子供たちと比べて、大笑いするしかないのだろうか。(随筆家、薬剤師)