火曜日, 4月 7, 2026

花期は1週間から10日遅れ 「つくば牡丹園」9日開園

世界最大級のボタン、シャクヤクの庭園、「つくば牡丹園」(つくば市若栗、関浩一園長)が9日開園する。同園では、里山の自然の中に、ボタンとシャクヤクが800種6万株植栽されている。4月には大ぶりの花を咲かせるボタン、5月にはエレガントなシャクヤクを観賞できる。会期は5月22日まで。 今年は例年より開花が1週間から10日程度遅れている。ボタンの見頃は20日ごろから4月いっぱい。シャクヤクの見頃はゴールデンウイーク後半から閉園まで。大型連休中は、花の数は少ないものの両方の花が楽しめるとのことだ。 起伏のある6万平方メートルの園内は、ウェルカムエリア、ファームエリア、水辺エリアなど7つのエリアからなる。今年は園内で大人も子どもも参加できるスタンプラリーが開催され、それぞれのエリアでスタンプを探しながら園全体を周遊できる。 新型コロナで、一昨年には2~3000人にまで落ち込んだ入場者数は、昨年1万7000人にまで回復。今年は2万人程度との予想だ。コロナ禍は続いているが、いばらきアマビエちゃんに登録し、昨年同様の感染症対策を続けた上でオープンする。来園者には広々とした屋外施設で「密」を避け、自然に回帰してもらいたいという。 園内では、ピオニーガーデンテラスでサザコーヒー(ひたちなか市)や、抹茶、うどん、そばなどが提供される。ゴールデンウイークと5月の土日にはファームエリアにジューススタンドのベルファームつくば(つくば市下岩崎)が出店する。関園長(61)によると、園内へのピクニックマットや弁当の持ち込みも可能。園内は全て農薬不使用・酵素農法で管理されているので、安心して思い切り自然に触れてほしい、としている。 ボタンは木、シャクヤクは草の花 いずれもボタン属ボタン科に属するというボタン(牡丹)とシャクヤク(芍薬)。ボタンは木の花で、太い幹が分かれて花を咲かせるが、シャクヤクは草の花で、1本の細い幹に1つの花を咲かせる。花が楽しめるのはボタンが3~4日、シャクヤクは約1週間だ。花の品種ごとに咲く時期が異なるため、会期中、訪れるごとに違った花との一期一会が楽しめる。 それらの中から、関園長に一種類、紹介してもらった。同園オリジナルの貴重なボタン「トリビュート」は、オレンジがかったアプリコット色の花びらが目を引く(冒頭の写真)。上を向いて咲くオレンジ色で大輪のボタンは世界で唯一という。4 月中下旬が見頃だ。 法学部出身という関園長は、濃い赤色の八重で大輪のボタン「芳紀」に⼀⽬惚れしたことから、サラリーマンから転身し、花づくり、土づくりの道に入った。土職人を名乗りながらも研究に取り組み、この春には東京農⼯⼤学⼤学院で博⼠課程を修了した。⼤学院で学んだ知識と現場での実践経験、その両⽅を持っているのが自身の強みであり、今後はこれらを若い⼈たちに伝えていくことが⾃分の使命だと考えているという。(門脇七緒) ◆開園期間は4月9日から5月22日まで。開園時間は午前9時から午後5時。入園料は大人1000円、中学生以下無料。シーズンパス1800円。ペット入園可。問い合わせはつくば牡丹園(電話029-876-3660)。

悲しくて見られない上野の桜 《くずかごの唄》105

【コラム・奥井登美子】敗戦から6年後、私は上野桜木町にあった東京薬科大学女子部に通学していた。上野駅の公園口で降りて、東京芸大の前の道を通り抜けると、桜木町郵便局(私の実家・加藤家の親戚が局長)。その近くの谷中側の道路沿いに学校があった。 学校の敷地の一部に、彫刻家の朝倉文夫氏の家があったらしく、校舎の隅に彫刻の残骸がたくさん落ちていた。 薬科大が専門学校から新制大学になって2年目。学校側も、新制への切り替えで、どうしていいかわからなかったのだろう。今思い出すと、奇妙な、個性的な先生ばかりだった。 法学を教えてくれた正木昊先生は、「松川事件」「三鷹事件」や、自分が関係した「水戸の首なし事件」について、口角泡を飛ばしてしゃべりまくる。黒板いっぱいにチョークで漫画の絵を描く。実に面白い絵だが、終わると、すぐ消してしまう。 「そもそも官僚というのは、自分の立身出世のためならば、何ものも犠牲にする。独善、無責任、非能率、形式主義…」。今でも私は、テレビ画面に広がった漫画が出てくると、正木先生を想い出してしまう。 数学の三東哲夫先生は、寺田寅彦の文章を毎週1回、大きな紙に書いて、読んで解説してくださった。寅彦の文章は、科学と文学の接点を私たちに教えてくれた。 ドイツ語の中山久先生が始めたゲーテの「ファウスト研究会」が面白くて、私は当時、両国高校生だった弟の加藤尚武を誘って参加した。 大空襲で焼死した人たちを埋葬 上野駅公園口には、今の西洋美術館の所に、150人ぐらい家のない人たちが地面にゴザを敷いて寝ていた。家のない子が駅構内に300人ぐらいいて、そのあたりはすごい臭気だった。 桜並木の下では、東京都の腕章をつけた人が5~6人、いつもシャベルを持って地面を掘っていた。死体を処理する土地のない下町で、東京大空襲で焼け死んだ人たち(約8万人)が寛永寺のあるこの山へ運ばれ、手掘りで仮埋葬されたらしい。 6~7年たった当時でも、探すと、木の下、石の下など、思わぬ所から骨の断片がたくさん出てきたという。 上野の桜。今年も、見事な花をテレビで見た。しかし、本物の上野の桜は、私は涙が出てしまって、見られないのだ。(随筆家、薬剤師)

多世代に注目してほしい街の原点【つくば建築散歩】7

つくばセンタービル この連載でも避けては通れないであろう、つくばセンタービル。 つくば市によるリニューアル問題の是非にはさほど興味を示さなかったが、そもそもこの街の多世代に親しまれているのかどうか、磯崎新アトリエのこの作品がなぜ「センター」「シンボル」なのか、若い世代の人々がどのように感じているのかに関心を寄せる。 画期的な事件 建築から都市へ、市民が眼差し開く 【鵜沢隆 筑波大名誉教授コメント】「つくばセンタービルの改修計画が、最終的に室内の改修のみに限定された(2021年12月17日付)ことは、建築の社会的、文化的、都市的文脈が認められたことで、建築に市民権が与えられた。つくばセンタービルは、筑波研究学園都市の中心的、象徴的施設であったが故に、その建築の保持が求められたということを改めて確認しておきたい。都市とは切り離せない建築の存在が、この建築の保持の意識を市民に促した。市民に共有されたそうした意識の発生は、日本においては画期的な事件であったと言えよう。 つくばセンタービルの保持運動が、筑波研究学園都市との文脈から推進されたことで、将来的には筑波研究学園都市が日本の文化遺産の空間として再認識されることであろう。ひとつの建築から都市への眼差しが開かれることで、日本における空間認識のレンジ(範囲、広がり)が都市まで確実に押し拡げられたことは疑いない。 その意味でも、つくばセンタービル・リニューアル計画の撤回は、画期的な意義を獲得している」 地域の特別なよりどころ 【建築散歩】実はこの連載で取り上げた建築のうち、筑波大学大学会館を設計した槇文彦さん、南3駐車場の伊東豊雄さん、ひたち野リフレの妹島和世さんは、磯崎新さんと同様、プリツカ―賞の受賞者だ。もちろん、ここで取り上げてきた作品だけで賞を獲得しているわけではない。つくばセンタービルリニューアル問題の折、必要以上に「建築界のノーベル賞」という表現が目立っていたことが、いささか鼻についた。ある種の評価の物差しではあるが、逆にそこを意識しても仕方がないような気がした。 逆の捉え方をすれば、つくばとその近傍には、これほどにプリツカ―賞受賞者が手がけた建築があるということ。その視点で考えれば、自慢できる地域の財産なのだ。それぞれの建築がいよいよ老朽化した時、人々はセンタービルと同様にその成り行きに関心を寄せていくのだろうか。 おそらくそうはならないだろう。だからこそつくばセンタービルには、地域の人々の特別な拠り所となる魅力もあるのだと思われる。(鴨志田隆之) 第1部 終わり ➡つくば建築散歩1 槇文彦、筑波大学大学会館はこちら➡つくば建築散歩2 鵜沢隆、筑波大学総合研究棟Dはこちら ➡つくば建築散歩3 坂倉建築研究所、つくば国際会議場はこちら➡つくば建築散歩4 谷口吉生、つくばカピオはこちら➡つくば建築散歩5 伊東豊雄、南3駐車場はこちら➡つくば建築散歩6 妹島和世、ひたち野リフレはこちら (敬称略)

花とだんご つくば市手代木公園の桜 《遊民通信》38

【コラム・田口哲郎】前略 桜の季節ですね。つくば市周辺もいたるところできれいな花が見られます。先日、手代木公園を散歩していたら、野球場のまわりに植えられている桜がみごとに咲いていました。桜が満開の光景はどうしてあんなに静かなのでしょうか? つくば市は騒音もあまりなく閑静なので、上野公園で見る桜よりも静かに感じるのは確かでしょう。 でも、現実の音の状況というよりは心象風景という気がします。花びらが散っているシーンを思い浮かべてみてください。無音のイメージではないでしょうか。それははかなさと関係しているのではないかと思います。咲きほこる花はきれいですが、1週間で散ってしまいます。生けとし生けるもの、若さのうちには力がみなぎり、老いてくれば衰えます。 盛者必衰のことわりをあらわすわけで、古来日本人はそのはかなさにも美しさを見出してきました。はらはらと地に落ちる、うす桃色の花びらを眺めながら、わたしたちは生命の勢いのなかに死の予感を読み取ります。そのときは外界の音が消えるほどに精神が集中するのでしょう。 ひとしきり感傷にひたったら、おなかが空きます。最近の気温の乱高下で体力が消耗しているのです。花よりだんごです。 年に一度は桜を見て、人の生きる道について思いをはせる。でも、腹が減ってはなんとやら。桜を愛(め)でてだんごを食べる。こう書くと、人間とはいかなるものかを言いつくしているようです。食べてゆく現実的な基盤と何かに思いをはせるこころの部分。そのふたつがなければ人間生活というものは成り立たないというわけです。このように何千年も日本人をよろこばせて、はげましてきた桜は本当にすごいですね。 極上のだんご「つくば」 さて、先日同じ研究室の学生と話していました。その人は生まれも育ちもつくば市というまさに、つくばサラブレット。つくばの観光名所はなんだろうという話になり、スマホで検索したところ、観光名所ランキングなるサイトを発見。1位筑波山、2位JAXA筑波宇宙センター、3位にイーアスつくばがランクインしていました。 ショッピングモールが観光名所になるのか!? とざわついていたところ、その人がつぶやきました。「筑波山と研究学園は結構離れているからねえ。あちらは古くて歴史があるけど、学園は平野に新しくつくった街だもんね。生活に必要なものはなんでもあるけどね」 誤解を招かないように補うと、これはつくば愛にあふれている人の発言です。生活便利施設は充実。おいしいパンとラーメンもたくさんある。道も広く、街並みがきれい。公園も多い。研究所群はテクノロジーの発信基地。研究学園はおだんごとしては極上です。 花も極上のはずです。桜はいたるところで咲いています。でも、それはつくばにかぎらず、日本中でみられる風景です。つくばがおなかのみならず、こころも満たせる街であることをお伝えできるようにこころがけます。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

まずは旬のナノハナから 花のリレーでつなぐ下広岡花迷路 つくば

花曇りの空模様が続くなか、中根農園直売所(つくば市下広岡、中根剛代表)の設けた「菜の花迷路」第1弾が見ごろを迎えている。菜種梅雨(なたねづゆ)が明ける中旬以降に第2弾、第3弾と順次開設の予定で、さらに一帯を折々の花のリレーでつなぐ「下広岡花迷路」の仕掛けで通年の集客を募る構えでいる。 直売所付近の農地に設置した迷路は広さ1300平方メートルのミニサイズで、入場料なしに散策できる。現在満開の見ごろとなっているのはセイヨウナノハナ。茎の高さが50~80センチほど。迷路は1メートルほどの幅でルートが切り開かれており、途中でシャボン玉を作って楽しめるようシャボン液が置かれている。 ナノハナ(菜の花)には、ナタネ(菜種は正式な作物名)、アブラナなどの呼び名がある。年末から初夏まで花期の長い花だが、菜花として食するには「これからが旬」と農園の中根剛さんの解説。今後、下広岡地内で2500平方メートルに設置した「菜の花迷路」の第2弾、7000平方メートルに及ぶ「菜の花大迷路」と相次いで開設する予定でいる。 農園では昨年7月に、耕作放棄地対策として「ひまわり迷路」を開設した(21年7月16日付)。中根さんによると、コロナ禍からアウトドアレジャーが人気となったこともあり、約1カ月で延べ2000人ほどが訪れたという。 そこで今年は一念発起。ナノハナの他に、4月末から6月に咲くポピーやヤグルマギクなどの遊歩道設置、6月中旬から11月上旬には昨年好評だった「ひまわり迷路」も開設する計画で、様々な花のリレー栽培に取り組んでいく。来場者を見込んで有料の駐車場(1台100円=税込み)も農園近くの数カ所に借地して設置した。 菜種梅雨の晴れ間にはウクライナカラー 3月から4月ごろ、気温が低く雲が多い日が何日も続いたり雨が降ったりする天気を「菜種梅雨」という。開花を促す春の雨「催花雨」という言葉が「菜花雨」に転じ、菜種梅雨という言葉ができたという説もある。 雨が上がって雲が晴れれば「青空と黄色の花でウクライナカラーになる」と中根さん。遠い地でウクライナの平和を祈る。(田中めぐみ) ◆現在開設中の「菜の花迷路」第1弾は入場無料。第2弾は大人100円、中学生50円。「菜の花大迷路」は大人200円、中学生100円を予定している。問い合わせは中根農園直売所☎090(6498)2913

新しい街の駅前ランドマーク【つくば建築散歩】6

ひたち野リフレ 常磐線ひたち野うしく駅前という立地から、「つくば建築散歩」とは言えないけれど、この建物をピックアップした意味については次回(最終回)にまとめる。設計は妹島和世建築設計事務所によるもの。妹島氏は伊東豊雄建築設計事務所から独立した建築家で、日立市の出身。 空と雲のパッチワーク映す 【鵜沢隆 筑波大名誉教授コメント】「この作品は、JRの新駅前に実現した中規模オフィスビルである。オフィスビルという空間的な凡庸さはそのままに、妹島和世は、駅側ファサード(正面)のデザインに設計のフォーカスを絞った。そのファサードはダブルスキン(2枚のガラス面構造)で、外側を横長のガラス・ルーバー(ガラス板を平行に複数並べたもの)が覆っている。 このガラス・ルーバーは日照をコントロールする意図よりも、それぞれのルーバーの取り付け角度が垂直方向に微妙に調整されることで、建築の表面に周囲の風景のリフレクション(反射)がパッチワークのように再構成される仕掛けである。 ただし竣工当初は、この建築の周囲にはほとんど建築は見当たらず、妹島の作品は、建築の表層に空のコラージュを映し出すだけであった。 竣工から10年以上が経過したが、この建築の周囲の環境はほとんど変わらず、空間密度は低いままである。したがって妹島のこの作品の表層に映るのは、未だに空のパッチワークである。 空を流れ行く雲が建築の表面に視覚化されることで、建築の存在感は、確かに希薄化されている。しかし、建築がダブルスキンという「仮面」をまとうことで、建築の都市的コンテクストの曖昧化がもたらされていることも指摘しておきたい」 女性建築家を起用 【建築散歩】1998年に完成したひたち野リフレは、新駅をコアに開発されたひたち野うしくの街びらきに合わせ、ランドマークとして計画された。都市開発者である住都公団(UR都市再生機構)では、「この建築については女性の建築家を起用したい」という初期方針を立て、当時まだ新進の域であった妹島氏に白羽の矢が当たった。 新しい街づくりの顔には、新しいコンセプトで建築にアプローチする設計者を求めたことが理由の一つだが、今だから書ける逸話として「女性建築家採用って格好いいだろう?」と、着工のときに公団幹部に耳打ちされた。軽快さや透明性を求め、建物の内側と外側の既成概念を無くしていくことが、妹島氏の建築に対するひとつのアプローチ。ひたち野リフレでは、壁面への街の映り込みにそのコンセプトが見出される。(鴨志田隆之) 続く ➡つくば建築散歩1 槇文彦、筑波大学大学会館はこちら ➡つくば建築散歩2 鵜沢隆、筑波大学総合研究棟Dはこちら ➡つくば建築散歩3 坂倉建築研究所、つくば国際会議場はこちら ➡つくば建築散歩4 谷口吉生、つくばカピオはこちら ➡つくば建築散歩5 伊東豊雄、南3駐車場はこちら ➡つくば建築散歩7 磯崎新、つくばセンタービルはこちら (敬称略)

地方の企業が取り組むべき2つの課題 《地方創生を考える》22

【コラム・中尾隆友】地方の経済が活力を保ち続けるためには、地方の企業が元気であり、雇用を提供する役割を果たすことが欠かせない。そこで、地方の企業が早急に取り組むべき課題は、主にふたつあると考えている。 デジタル化の推進 ひとつは、企業のデジタル化を推し進めることだ。 デジタル化の効用は、何も業務の効率化だけではない。特にB to C(企業⇒消費者)のビジネスでは、顧客を大幅に増やすポテンシャルを秘めている。このコラムでも数年前に申し上げたように、デジタル化や人口減少が進む経済・社会では、「商圏」という考え方は必ずしも盤石ではないからだ。 国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によれば、茨城県の2045年の人口は223万5686人にまで減少(2015年の291万6976人から23.4%減)し、日本全体の減少率(16.2%減)よりかなり大きい。TX沿線を除いて、県全体で人口減少が加速度的に進み、商圏は縮小の一途をたどっていくのだ。 その対応策として、デジタル技術をうまく活用し、商圏の外(県外や海外など)から顧客を獲得するという発想が求められるというわけだ。 法令順守の徹底 もうひとつは、コンプライアンス(法令順守)を徹底することだ。 企業に求められるコンプライアンスとは、単に法令を守れば良いというだけでなく、高い道徳観や倫理観を持って業務を行うという意味も含んでいる。しかし残念ながら、この点でも遅れている地方の企業は多い。NEWSつくばコラムの執筆者でもある後輩の堀越智也弁護士によれば、コンプライアンスで問題がある企業の例には枚挙にいとまがない。 たとえば、昨今は住宅メーカーと消費者とのトラブルが多いという。成約を急ぐあまりに、虚偽の説明をしたり、不適切な契約をしたりするのは、地場のメーカーに共通する問題らしい。たとえ県内ナンバーワンとうたっていたとしても、それはまったく信用に値しないというのだ。 義務教育でESG(環境・社会・ガバナンス)が教えられる今となっては、地方の企業にもコンプライアンスの徹底は不可欠だ。茨城の企業にはこれらの課題を解決し、各々の地域の活力となってもらいたい。そう切に願っている次第だ。(経営アドバイザー)

故三浦春馬さん誕生日に特別な上映会 「聖地」土浦セントラルシネマズ

2020年に急逝した、土浦市出身の俳優、三浦春馬さんが32回目の誕生日を迎えるはずだった5日、同市川口の映画館「土浦セントラルシネマズ」に全国から多くのファンが集まった。同館では昨年1月以来、三浦さんの主演作品を上映し続けて、ファンの間で「聖地」と呼ばれている。この日、上映された3作品それぞれの冒頭に、誕生日に合わせて国内外のファンから寄せられたメッセージによる動画が上映され、会場から大きな拍手が上がった。 全国から「故郷」にファンが集う 誕生日の5日は、朝8時半から三浦さん主演で遺作となった「天外者」(2020年公開)を特別上映した。通常は午前11時から「森の学校」(2002年公開)、午後1時から「アイネクライネナハトムジーク」(2019年公開)、3時から「天外者」と、回を追うごとに三浦さんが年齢を重ね、主演俳優としての成長も見届ける上映順になっている。土浦セントラルシネマズの寺内龍地(67)社長は「三浦さんの成長を1日かけて追いかけられる」と説明する。 朝8時、開場時間を迎えるセントラルシネマズには、全国から駆けつけた100人以上のファンが並んだ。「春友(はるとも)」と呼ばれる。岡山県倉敷市の八木鈴恵さん(63)は4月2日から土浦に宿泊し、三浦さんにゆかりのある県内各地を巡りながら、思いを馳せたと話す。 この日のために休みをとったという石岡市の40代の女性は、どんな役でもなりきってしまう三浦さんの役作りの幅広さと、作品の外での口ぶりににじむ優しさが魅力だと語る。 東京町田市の野中英子さん(52)、秀昭さん(54)夫妻は、朝5時に自宅を出て、三浦さんが通った土浦市内の学校を訪ねてから朝一番の上映に駆けつけた。英子さんは「演技に対する真剣さ、ストイックさ、誰に対しても同じように対応する優しさに惹かれた」と話すと、三浦さんを思い返し目に涙を浮かべた。 会いたくなったら会える場所 寺内社長は「土浦は彼の故郷。うちを心の拠(よ)り所にしてくれる『春友』さん同士が、ここで仲良くなっている」と話す。この日、会場を訪れた神奈川県横浜市の梶原織栄さんと栃木県足利市の塩田真紀子さんも、同館の上映で知り合った「春友」だ。2人にとって土浦セントラルは「(三浦さんに)会いたくなったら会える」特別な場所だと思いを込める。 同館では、初主演作品の「森の学校」を昨年1月再上映させたのを皮切りに、現在まで主演の3作品を連続上映し続けている。寺内さんは「足跡を残す意味でも、彼の作品上映を続けていきたい。個人館の強みですよね。シネコンじゃできない」と連続上映への思いを語る。 土浦市出身の三浦さんがデビューしたのは2000年。その後、2002年公開の「森の学校」で映画初主演を果たすと、土浦セントラルは全国に先立ち同作品の上映を開始した。それが縁になり、その後も三浦さんは土浦を訪れた際に寺内さんを訪ねていた。「実直で、表裏がない。それが彼の魅力」と寺内さんが振り返る。 5月8日までは、各回の作品上映の前に、今年の誕生日に向けてファンから募った三浦さんへのメッセージをまとめた、4分50秒の「オリジナル動画」が上映される。同館からのSNSの呼びかけに、欧米やアジアなど世界中から寄せられた3000あまりのメッセージを、寺内さんの娘、杏里さんが動画に編集した。 「彼のファンは、シニアから高校生まで本当に幅広い。それが彼の魅力を表している」として、「普段の上映では、6割から7割のお客さんがリピーターです。本当にありがたいです」と話す。今後については、「三浦さんにとって土浦は故郷。配給会社が許す限り、上映を続けていくつもり」と言い、「会いたくなったら来てください。作品の中で、皆さんを待っています」と呼びかけた。(柴田大輔)

ひと味違う立体駐車場【つくば建築散歩】5

南3駐車場 筑波研究学園都市中心部にいくつかある立体駐車場が「名建築」の域に収まるのかどうか、議論を呼びそうな気もするが、ともすれば無味乾燥なだけの立体駐車場が巨大な構造体を都心部に横たえるとどうなるのかという、都市景観の面から浮かぶ懸念を払しょくしようとした試みがある。もちろんその取り組みが成功したか否かは、見る人の主観で変わってしまうが、今回紹介する1994年完成の南3駐車場(つくば市竹園)は、ひと味違うと感じられる。 建築が都市と対峙 【鵜沢隆 筑波大名誉教授コメント】「伊東豊雄建築設計事務所が設計したこの駐車場は、すぐ近くに存在する坂倉建築研究所の南1立体駐車場(つくば市吾妻、クレオ隣)の空間構成と無縁ではない。否、それとは好対照の空間構成を意図して設計されたと言っても過言ではない。つまりこの駐車場は、南1立体駐車場とは対照的に、立体駐車場に不可欠な車の上下移動のランプ(斜路)を積極的に外に露出させることで、この建築の機能的な存在を都市の中にストレートに表出させた。 坂倉建築研究所の駐車場が、立体駐車場に不可欠な斜路の空間を建築の内側に包み込むことで、都市の建築の空間構成との連続性を求めたのに対して、伊東豊雄建築設計事務所の駐車場は、立体駐車場という建築の機能的特殊性を建築のファサード(正面)に据え、都市の建築との不連続性を際立たせることで、作品の存在を訴えかけた。車のための斜路を空中高く持ち上げて峻立する鉄骨の柱列が、この建築のさっそうとした印象を際立たせ、建築が都市と対峙する。 裏側のペデストリアンに面したファサードが、バーコードを思わせるようなルーバー配列になっていることも、もうひとつの外観を作り出している。坂倉建築研究所と伊東豊雄建築設計事務所の立体駐車場の建築を改めて対比的に見直せば、それぞれの建築作品の空間特性が際立って明らかになるはずである」 都市とのかかわりまでも織り込む 【建築散歩】紹介したいことはすべて鵜沢隆筑波大名誉教授に書き込まれてしまった。要は、機能一点張りでもかまわない都市インフラと言い切ってしまえる立体駐車場に、機能は当然のことデザインや都市とのかかわりまでも織り込むという、非常にぜいたくな計画をベースにつくられた建築物なのである。そのことは、日常の利用では気にも留めない、留める必要もないものかもしれないが、「立駐ひとつとっても、つくばのそれはよそとは違うんだよ」と自慢できるのだ。 伊東豊雄さんは今、水戸市において完成しつつある新市民会館の設計を手がけている。伊東さんの代表作には仙台市の複合公共施設・せんだいメディアテークがあるが、水戸市民会館同様、都市と建築のつながりを表現しており、鵜沢名誉教授の都市と建築の不連続性という見方とは裏腹に、南3立体駐車場もまた都市とのかかわりを浮かび上がらせる側面もあると思える。(鴨志田隆之) 続く ➡つくば建築散歩1 槇文彦、筑波大学大学会館はこちら ➡つくば建築散歩2 鵜沢隆、筑波大学総合研究棟Dはこちら ➡つくば建築散歩3 坂倉建築研究所、つくば国際会議場はこちら ➡つくば建築散歩4 谷口吉生、つくばカピオはこちら ➡つくば建築散歩6 妹島和世、ひたち野リフレはこちら ➡つくば建築散歩7 磯崎新、つくばセンタービルはこちら (敬称略)

ウクライナ侵攻と核のリスク 《雑記録》34

【コラム・瀧田薫】4月1日現在、ロシア軍のウクライナ侵攻が始まって約1カ月が経過した。戦況は大方の予想を覆し、混迷の度を増している。電撃戦によってキ-ウを陥落させ、傀儡(かいらい)政権がウクライナを支配する当初のシナリオは頓挫(とんざ)したが、戦争の主導権はまだプーチン大統領の手中にある。 ただ、長期かつ大規模な作戦にロシアの財政が耐えられないのは事実だし、西側からの経済制裁は時間とともに厳しさを増す。ロシア国内の厭戦(えんせん)気分が高まれば、ロシア政府の政治的基盤が揺らぐ事態もあり得る。 プーチン大統領としては態勢の立直しを急ぐことになるが、予想される展開は、大きく分けて3つある。第1は暫定合意による停戦、第2は望んでのことではないが戦局の膠着(こうちゃく)化、第3は戦術核の使用による戦争の終結である。 停戦については、その成否を分ける2つの条件がある。「ウクライナの中立化」と「クリミア半島と東部2州の主権問題」である。まずウクライナがNATO加盟を断念し中立を宣言する。そのかわり、戦争当事国と周辺国(米、英、仏、独、中国、その他)が協議してウクライナの安全を保障する多国間条約を結ぶ構想だ。 これの難点は、それぞれの国の思惑が錯綜(さくそう)して一本化が難しいことだ。次にクリミア半島の主権をロシアに帰属させ、東部2州をウクライナから独立させる条件だが、ウクライナ側は当然拒否する。しかし、市民の犠牲を放置できず、問題を棚上げし、停戦の発効後に戦争当事国、周辺国そして国連が参加する交渉テーブルを設定する構想だ。プーチン大統領がこれにどう反応するかは予断を許さない。 停戦合意が不調に終わった場合、戦局は膠着化する可能性が高い。クリミア半島とウクライナ東部の2つの州をロシア側が実効支配し、ウクライナは朝鮮半島のような分断状態に陥る。この膠着が何年続くかわからず、常に戦争の火種は残るわけで、世界経済に長期にわたる悪影響を及ぼすことになるだろう。 「戦術核は使える核」と公言 最後の、そして最悪の展開は「戦術核の使用」である。これをプーチン大統領が本気で考えていると見る専門家は少なくない。彼は以前から「戦術核は使える核」であると公言し、戦術核の先制使用も辞さない構えを見せてきた。これは明らかに「核の相互抑止」システムからの離脱であり、これに他の核保有国が追随すれば、核戦争に歯止めがきかなくなる。 今後、ロシアのウクライナ侵攻が日本の安全保障戦略に影響することは間違いない。事実、一部の政治家から「核武装」推進の声が上がっている。しかし、「核による抑止という考え方」自体が破綻しつつある、それこそが現実だ。これを直視し、「核の先制攻撃は絶対にしない」と宣言する国を1国でも増やす努力、それこそが日本の役割である。 もちろん、日米同盟、国連その他の外環境を踏まえた上で、必要な通常戦力のあり方を同時に考える。そうしたバランスが必要だ。一時の熱狂で物事を進めれば、国をあやまり、世界を滅ぼす。(茨城キリスト教大学名誉教授)

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