火曜日, 4月 7, 2026

悪いものを取り除くと良くなるか? 《続・気軽にSOS》110

【コラム・浅井和幸】かなり昔の学園ドラマで、「腐ったミカンがあるとその箱の中の他のミカンも腐るから早めに取り除かなければいけない」というニュアンスのセリフがありました。主人公の先生は「〇〇(生徒の名前)は腐ったミカンじゃない」と突っぱねていたような気がします。 ネットで検索したら、もう40年以上前のドラマのようですね。いやはや、よく覚えていないわけだ。 さて、実際問題ではいかがでしょうか。やはり、職場などで問題を起こす人物にやきもきさせられ、どうやって辞めさせようかと考えている人も少なくないでしょう。 確かに問題を起こす1人を辞めさせると、一気にチームのパフォーマンスが上がりより良い職場になっていくということもあり得ることです。しかし、1人を変えても、また別の人材が足手まといに感じて、悪口の対象になる人間関係というのは少なからずあるものです。 その腐ったミカン・ポジションの人を排除しても、また別の腐ったミカンが現れる。そう感じたときは、実はその場自体に腐ったミカンを作りだすメカニズムができている可能性があります。 どんなに優秀な人が集まった大学でも職場でも、必ず落ちこぼれは出るものです。「経済学者のヴィルフレド・パレート」とか、「パレートの法則」とか、「80:20の法則」とか、「2:6:2の法則」などで検索してみると、面白い情報が出てきますよ。 くず材料でおいしいラーメンを作る 優秀か優秀じゃないかという一つだけの定規、もしくは自分の好き嫌いの判断で、嫌いなものを取り除くことが、結果、自分の望まない方向にその場を動かしてしまうこともあります。そもそも、その「悪いもの」を排除することが難しい場面もあるでしょう。 そんなときは、その「悪いもの」の評価の善悪を抜きに、どのような性質があるかを洗い出し、それを生かすリフレーミングをすることをお勧めします。頑固者は意志が固いとか、お節介は面倒見が良いとか、声が小さいは控えめ―など。 それら短所だと思えるものを特徴としてとらえ、長所にしていける方法や組み合わせを考えて試してみるのです。 例えば、くず材料でおいしいラーメンを作るイメージでしょうか。他の料理では使えそうもないくず野菜や鳥や豚などの骨。これらを味見して、まずいから取り出しちゃえとなったら、おいしいスープが取れなくなるかもしれません。 毒は薄めると薬になることもあるものです。もともと渋柿は甘柿よりも糖度が高いといいます。物事は全てつながっていて影響を与え合っています。個々を良いもの悪いものに分けるのではなく、うまく組み合わせることでより、大きな効果を狙えるかもしれないと意識すると、違う景色が見えてきます。(精神保健福祉士)

老人食のむずかしさ 《くずかごの唄》109

【コラム・奥井登美子】「今日のぬかみそはナスにしてくれ」。ナスのぬかみそ漬けくらい難しい漬物はない。色がすぐに変わってしまう。それなのにうちの亭主は、食べたくなって叫んだら、2~3分のうちに色のよいナスを出さないと怒る。 亭主が製薬会社の研究所に勤務していたころ、日仏薬学会の事務長をやっていた。フランスのシラク大統領が来日した時も握手してもらったらしい。 当時の日仏薬学会の会長は東京理科大・薬学教授の辰野高司先生。辰野先生は、おじい様が東京駅を設計した辰野金吾氏。父上は東大のフランス文学者・辰野隆先生で、フランスに対する思いがハンパな人ではなかった。 亭主は高司先生に、フランス人との付き合い方を手に取って教えていただいたおかげで、ワインの選び方、フランス料理に使うチーズの種類などにも詳しくて、私も彼に教わって、家でフランス料理風のニセ料理をせっせと作ったものだった。 仏壇はしょうゆつぎの隠し場所 そのフランス通が85歳を過ぎてから、自分が幼いころ食べていたものだけが食べ物だと思い込むようになってしまった(幼いころの食べ物だけが食べ物と思い込む老人は多いらしい)。味付けはしょうゆとみそ。昔の人がよく食べた、ぬかみそ漬けが大好きで、白いご飯に漬物、半熟の卵があればいいと言う。 昔、あれほど好きだった牛肉のステーキも、食べてくれない。しょうゆを入れてすき焼き風にすれば少し食べてくれる。タンパク質を、どこでどうやって食べさせたらいいか、私は困ってしまった。幸い、霞ケ浦医療センター病院で栄養指導を受けることができた。 私が「塩分制限で塩分は1日6.5グラムですからね」と言うと怒ってしまう彼も、「栄養指導の時に、先生に言われたでしょう。1食2グラムなのよ」と言うと、怒らないで聞いてくれるので助かる。しかし、敵もさるもの。悪知恵を働かせて抵抗するので始末が悪い。 私がこの家に来た時に、近所に住む親戚のばあさんたちから、仏壇の掃除の仕方が悪いとよく叱られた。バラの花を供えた時も怒られた。私は今でも、仏壇の中だけはあまり見たくない場所になってしまった。 亭主は、私が見たくない仏壇の引き出しにしょうゆつぎを隠して、私が苦心して用意した減塩の料理にも、こっそりとしょうゆをかけていたらしい。(随筆家、薬剤師)

同じ境遇だから分かり合える 障害のある中高生向けLINE相談スタート つくば

障害者同士が対等な立場で支援し合う当事者団体「つくば自立生活センターほにゃら」(つくば市天久保)が4月から、「障害がある中高生のためのLINE de(ラインで)相談」事業を始めた。身体障害があり、公的な介助制度を使いながら市内で生活しているスタッフ4人が相談に対応する。 ほにゃら事務局長で、自身も重度身体障害がある斉藤新吾さん(47)は「障害のある中高生が自分と同じような障害のある大人に会う機会は少ないだろう。障害者として生きてきた私たちの経験が、今悩んでいる中高生の役に立てば」と話す。東洋大学客員研究員で、障害児教育が専門の一木玲子さんは「現在でも、障害のある中高生が障害のある大人に相談をする機会自体がほとんどない。中高生に身近なLINEを使ってその機会をつくるのは画期的な取り組みだろう」としている。 障害のある大人に相談したかった 自立生活センターでは、障害者同士が対等な立場で話を聞き合うことを通して、社会の中で自信を持って生きていくことを目指すピア・カウンセリングを日常的に行っている。障害のある仲間だからこそ分かり合えることがあるという考えがベースにある。 相談を受ける障害者スタッフも、中高生時代、様々な悩みがあった。斉藤さんは「当時、障害のある大人に相談できていれば、障害とともに生きていく具体的なイメージを持て、悩み方も違っていたかもしれない」と振り返る。 障害者スタッフの1人である川島映利奈さん(39)は「高校時代、地域で介助者の支援を受けながら生活している障害者と関わることで、親に介助を頼まなくても、自分の好きなことができると気づいた。学校で出会う友達や先生だけでなく、様々な背景を持つ障害者と話すことで将来の選択肢が広がるのでは」と語る。 LINE相談のホームページには、相談内容の例として「障害があるのは自分が悪いのか」「就職や1人暮らしはできるのか」などの障害に関する悩みや「先生や支援員・友達とどう関わればいいか」「家族と一緒でないと、どこにも行けない」などの人間関係の悩みが挙げられている。これらは、障害者スタッフが実際に中高生時代に悩んでいたことだ。 川島さんは「モヤモヤした気持ちを聞いてほしいだけでもいい。私たちと話すことで、一人じゃないと思え、少しでも楽になれば」と呼びかける。(川端舞) ●「障害がある中高生のためのLINE de 相談」のホームページから友達追加することで相談できる。開設時間は毎日午後5時から10時。1回の相談時間は40分。相談は無料で、匿名でも可能。希望する場合は、同性のスタッフが対応する。

ウクライナ避難民の心の支援に つくば生まれの「パロ」届く

産業技術総合研究所(産総研、石村和彦理事長)で誕生した、つくば生まれのアザラシ型ロボット「パロ」が、ウクライナ避難民への「心の支援」に役立とうとしている。「パロ」の発案者で研究開発者の産総研人間情報インタラクション研究部門、柴田崇徳上級主任研究員に1日夕、入った連絡によれば、ポーランド・ワルシャワの日本大使館で、避難民を受け入れている医療機関に「パロ」を届ける贈呈式が行われた。 贈られたアザラシ型ロボット「パロ」は、最新型のヨーロッパ向け医療機器版。1日(日本時間午後5時)、受け入れ先のマゾフシェ県神経精神医学センターとワルシャワ医療大学に、各2体が宮島昭夫特命全権大使から手交された。日本貿易振興機構(ジェトロ)のワルシャワ事務所を介し、産総研技術移転ベンチャーの知能システム(本社・富山県南砺市、大川丈男社長)の製造、寄贈による。 ポーランドの2医療機関へ 2月24日のロシアの侵攻により、紛争地からウクライナ国内や周辺国へ多くの人々が避難している。ポーランドには4月18日現在で、国外では最も多い280万人が避難したとされる。避難民へは「衣食住の確保」が最優先課題ながら、約3カ月が過ぎ「心の支援」も重要になってきている状況だ。爆撃、銃撃等による恐怖とその後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)、避難生活や集団生活のストレス、今後の不安、抑うつ、孤独、興奮、不眠等の精神的な問題が顕著になっているという。 そこで、「パロ」のような医療機器で、避難民の「心の支援」を行えば、オリジナルの「人道的支援」を提供できると考えた。「武器の提供はできないが、日本らしい貢献になる」と柴田研究員。 「パロ」は、ぬいぐるみ状のアザラシ型ロボットの内部に様々なセンサーや電気回路、機械系統を組み込み、人工知能で制御される。産総研では1993年から、本物の動物を飼うことが困難な場所や人々のために、セラピーを目的に研究開発された。 2011年の東日本大震災の際も、被災地では1~2カ月ほどすると、ストレス、不安、抑うつなどが増加するようになった。この時、被災地で活用されたのが約80体のパロ。そのふれあいに被災者は癒やされ、喜ばれた経験があった。柴田研究員は「今回も近い状況」という。 ウクライナでは2006年、外務省の「文化啓発用品」として在ウクライナ日本国大使館にパロが配置された。チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故後の小児ガンの子供たちなどを対象に、「心の支援」に活用され、好評を得た。このことから、ウクライナ人に「パロ」が受け入れられる可能性が高く、セラピー効果を期待できそう、と予測された。 日本では、一般家庭向けのペット用と、「福祉用具」としてのセラピー用のパロが、個人や医療福祉施設等で広く利用されている。他方、制度が異なるアメリカ、ヨーロッパなどでは、パロは「医療機器」として扱われる。現在の第9世代まで、世界30カ国以上で7000体以上が利用されている。 https://youtu.be/TJgw7QztyUc 今回、在ポーランド日本大使館から2つの医療機関に問い合わせたところ、避難民への「心の支援」のために、欧州向け医療機器版のパロの活用の希望があったことから、最新型の寄贈に至った。ポーランドでは初めての導入となる。 「ウクライナ国内、周辺国などへの避難民は約1000万人と非常に多く、長期化すると思われるので、これから『心の支援』がますます重要になる」と柴田研究員。コロナ禍の影響で、今回は参加できなかったが、今後状況が許せば現地を訪問し、見学や観察、避難民や支援者たちにインタビューするなどして、活用について情報収集する予定という。(相澤冬樹)

1周年迎えるコワーキングスペース 5日に記念パーティー つくばROOMS

利用者間の交流を重視した共用の仕事・勉強の空間、コワーキングスペース「ROOMS(ルームス)」(つくば市苅間)が1日、オープン1周年を迎えた。5日には記念パーティーを予定している。サービスを立ち上げた筑波大学大学院2年の滝波俊平さん(25)に話を聞いた。 ROOMS(2021年5月6日既報)は、作業用の「個室」と「コワーキングスペース」の提供をメーンにしている。開業から1年が経った現在、個室を目当てにした利用者が主だ。利用者の多くは女性で「オンライン会議を静かなところでやりたい」という声が多い。ほかにも「アイドルのライブを一人で集中して見たい」という個室利用者の声もあった。 今年4月の利用者数は「個室」が37人、コワーキングスペース5人。これまでの累計利用者数でみても12倍ほどのひらきがある。月間の売上額はおよそ4万円で推移している。「コワーキングスペースの利用が伸びないのは意外だった。現在は、コワーキングスペースを別の形に転換することも検討している」という。 開業当初は個室とコワーキングスペースのみを提供していたが、現在は「キッチンスペース」と「イベントスペース」、「こたつ部屋」も始めた。利用者のニーズに応えるためだ。しかしイベントスペースはコロナ禍で利用する催しが少なかったため利用者はほとんどいなかった。キッチンスペースについては「クリスマス女子会やママ会などで数件の利用があった」そうだ。「お客さんの声を聞きながら少しずつ新しい挑戦をしてきた。これからも良い場を作っていくために試行錯誤していきたいと思っている」と滝波さん。 コロナ禍での開業だったが影響は少なくなかった。「感染者数が増加すると利用者も減り、減少すると増える。このサイクルがあった」。コロナ禍のリモートワークやオンライン授業などの需要で「個室」の利用が増えるのではないかと考えていたが、実際にはそうした利用者は少なかったそうだ。 「良い場を作っていきたい」 1周年記念パーティーは5日、ROOMSで開催される。つくば市天久保の喫茶店「ひととつむぐカフェ 縁counter(エンカウンター)」などが出店する。同店は滝波さんと同じく、筑波大学大学院に在籍しながらお店を経営する伊藤悠椰さんのカフェだ。滝波さんは「ROOMSのスタッフの方が伊藤さんと知り合いで、紹介をしてもらった。こういう風にいろいろなつながりを作ることができた1年間だった」と振り返る。 同市上郷でパパイヤ農園を営む柳下浩一朗さん(ジミーfarm合同会社)からは、パパイヤ茶の提供を受けた。普段からコワーキングスペースで飲むことができるお茶だ。「こういうコラボはありがたい。これからもつながりが増えていったらうれしい」と滝波さん。 記念パーティーでは滝波さんが「植本祭」と呼ぶ催しが行われる。利用者から「好きな本」を募集し、それをROOMSが購入する。当日、参加者でそれらの本を棚に移し、誰かが好きな本だけが集まる「本棚」を完成させるというイベント。「私自身も本が好きでこの催しを考え付いた。新しいつながりが生まれたらうれしい」と話す。 今後について滝波さんは、「現在は5年制の一貫制博士課程の2年目なので、まだ数年は大学院生として在学する。これからもROOMSを続けていって、良い場を作っていけたらと思う」と展望を語った。(山口和紀) ◆1周年パーティーは6月5日(日)午前10時から。営業時間は午前9時から午後19時。日曜定休。電話029-856-4155 。HPはこちら。

こどもと一緒に本を読むということ③ 《ことばのおはなし》46

【コラム・山口絹記】娘とふたりで山を登っていた時のことだ。娘に昔のことを聞かれ、「うーん、なんだっけ。思い出せないな」と答えると、「パパは何か望みをかなえちゃったのかもしれないね」と言われてハッとしたことがある。 この、「何か望むものを得た代わりに、大切な記憶を失くす」という設定は、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』で主人公のバスチアンが体験するものなのだ。 娘と私の会話には、一緒に読んだ物語の登場人物がたびたび現れる。彼らは私たちにとって、よく知る共通の知り合いや友人のようなものなのだ。 そして彼らが会話に登場するたびに、私と娘の間で彼ら自身やその背景にある物語に対する印象が大きく異なっていることに驚かされる。 ひとつの物語でも、それを受け取った人によって抱く感情や印象が異なるのは、なぜなのだろう。質量のないことばが、私たち一人ひとりに届いたとき、それぞれに違った影響を与えるというのは、当然のことのようで、とても不思議な現象ではないだろうか。 私にもたれかかりながら、私の読む物語に耳を傾ける娘の身体からは、自然と感情が伝わってくる。緊張してこわばったり、笑ったり、身体が熱くなったり。私が気にもとめなかった場面に喜んだり、悲しんだり。私はそんな娘の変化にいちいち驚きながら本を読む。 誰かの物語を体験する行為 物語というのは、それに関わった人の数だけあり、そしてまた、それを受け取る人の数だけ存在する。私たちは、自分自身のひとつの物語しか生きることができないが、本を読むというのは、一時的にせよ、今、ここではないではないどこかで、誰かの物語を体験する行為だ。 そして、そんな物語を誰かと一緒に読むというのはとても特別な行為なのだと思う。きっと娘は、私と一緒に読んだ物語を忘れてしまうこともあるだろう。少しさみしい気もするが、それはそれでよい。 様々な物語が営まれる場所や登場人物というのは、いずれ彼女にとっての何か大切なものに置き換わるスペースになるのだと思う。だから、よいのだ。 一緒に本を読んでいるとき、ふと娘の顔をのぞくと、見たこともないような真剣な表情で挿絵をじっと見ていることがある。自分も大好きな場面で娘が興奮していると、ついつい夜遅くまで一緒に読みふけってしまう。 「まだ読みたい」と言いつつ眠ってしまった娘を抱えて寝室に運んでいると、こんな時間がいつまでも続いてくれたらいいと思ってしまうのだが、娘との読書を卒業しなければならないのは、私の方なのかもしれない。(言語研究者)

教育現場のクラスターを早期に検知 リーバー、筑波大など4大学と共同研究

医療相談アプリを提供するリーバー(つくば市、伊藤俊⼀郎社長)は31日までに、筑波大学(つくば市、永田恭介学長)、京都大学(京都市、湊長博学長)、福島大学(福島市、三浦浩喜学長)、福島県立医科大学(福島市、竹之下誠一学長)の4大学と健康観察アプリ「LEBER(リーバー)」を活用した感染症クラスターの早期検知などをめざす共同研究に着手した。 研究は、主に教育現場における集団感染を早期に検知し、積極的検査につなげるアラートシステム「感染症AIサーベイランスシステム」の開発を目的としている。アプリ利用者の体温・体調管理データなどを解析するうえで、適切なAIの計算方法(アルゴリズム)を構築して、「リーバー」に組み込む研究だ。これにより、より早期のPCRや抗原検査に繋げての感染症クラスター予防や、アプリ内健康予報を通じてユーザーに的確な行動を促す仕組みを構築をめざす。 「リーバー」は24時間365日スマホで医師に相談ができる医療相談アプリ。学校向けには健康観察アプリ「LEBER for School」があり、児童・生徒の体温・体調データを収集している。全国約1300校に導入されており、つくば市では小中学校全校に普及し、保護者の9割に使われている。 コロナ禍の現在、教育現場ではPCR検査などで1クラス2人以上の陽性反応者が出ると学級閉鎖、クラスターとなる。これら感染症の早期検知のため、「リーバー」によって収集した発熱などのデータを解析する。解析のツールとなるのが感染症数理モデルで、流行データ分析やシナリオ分析を行い政策判断の核ともなる。今回、いち早く数理モデルを活用した感染予測研究に取り組んでいる京都大学医学研究科環境衛生学分野、西浦博教授の参画を得た。 さらにAI技術構築では筑波大学人工知能研究室、鈴木健嗣教授、教育現場でのサービス設計の検討と改善では福島大学教育推進機構、前川直哉准教授ら、4大学の研究者がそれぞれの役割分担を持って共同研究に加わった。 リーバー社によれば、研究は集団感染に警戒と検査を促す「アラート」を発するタイミング、その文言などにも及ぶという。2022年度の単年度事業で、成果は論文等にまとめる一方、アプリへの実装を目指すということだ。(相澤冬樹)

生存確認 《短いおはなし》3

【ノベル・伊東葎花】 嫁が来たよ。40過ぎてようやく結婚した長男の嫁だ。杓子(しゃくし)定規で生真面目な、なかなかの変わり者だ。 嫁は、毎週土曜日の13時きっかりにチャイムを鳴らす。そして玄関先で必ず言うんだ。「お義母さん、こんにちは。生存確認に参りました」「はいはい。ご苦労さん。この通り生きてるよ」 嫁は背筋を伸ばして、茶室に招かれたようにお茶を飲む。「つつじが美しいですね」庭を愛(め)でることも忘れない。マニュアルがあるのかね。いつも同じだ。 「洋一は元気? ちっとも顔を見せないけど」「洋一さんは、公私ともに順調です」「職場の挨拶(あいさつ)みたいだね」「お義母さん、あの葉っぱは紫陽花(あじさい)ですね」「そう。うちの紫陽花は近所でも有名だよ。まるで虹の国に迷い込んだみたいにきれいだよ」「虹の国ですか? すみません。比喩は苦手で、全く想像できません」「まあ、見たらわかるよ。来月には咲くからさ。生存確認のついでに見たらいいよ」 嫁は急に目線を落として、深々と頭を下げた。「すみません。私がここへ来るのは今日が最後です」「ええ、なに? どういうこと?」「洋一さんからお話があると思いますが、私たち、離婚することになりました」「噓だろう? まだ1年も経っていないじゃないか」「私たちは、恋愛をせずに結婚しました。婚期を過ぎて互いに焦っていたのです」「上手(うま)くいかなかったのかい?」「洋一さんに、好きな人ができました。私と結婚した後に、運命の人に出会ったそうです」「何だい、それ。ひどいじゃないか。親の顔が見てみたい…って、あたしか!」「彼は悪くありません。早まって、私と結婚してしまっただけです」「だけど、あんたはそれでいいのかい?」「私、別れを告げられても悲しくなかったんです。契約が終わったくらいにしか感じませんでした。つまり、それが答えです」嫁は表情を変えずに、きれいな姿勢のままお茶を飲みほした。「生存確認は引き継ぎますので、ご心配なく」「バカだね。そんなのどうだっていいよ」 嫁は立ち上がって庭を見た。「虹の国の紫陽花、見たかったです。それだけが心残りです」少し丸まった背中が微(かす)かに震えている。たった数ヶ月の付き合いだけど、嫁と庭を眺める時間は嫌いじゃなかった。紫陽花、一緒に見たいよ。 「ねえ、生存確認は、やっぱりあんたにお願いしたいよ。ダメかね?」嫁が振り向いて、微かに笑った。「承知しました。では、これからは嫁ではなく、茶飲み友達として伺います」「茶飲み友達か。いいねえ」 嫁は、深々と頭を下げて帰っていった。石畳を歩く歩幅が少しだけ乱れている。可愛くないね。素直に泣けばいいのにさ。 (作家)

写真が好きになる写真 《写真だいすき》8

【コラム・オダギ秀】もう半世紀ほども昔の話だ。1枚の写真に衝撃を受けた。小さな本の表紙の写真だ。野の花に、小さな石仏がほほ笑みかけていた。何てすてきな写真なんだと、ボクはその写真の虜(とりこ)になり、以来半世紀、写真を職業にしながら、野の石仏を撮ることになった。 そのころは、まだ石仏などあまり注目されておらず、その撮影者は作家だったが、野の石仏の魅力を普及させた先駆者だった。 後に、同じ石仏を何度もその作家が撮ったのを見たが、それらの写真には魅力を感じなかった。同じ石仏なのに、他の写真にはほほ笑みがないのだ。そのことから、写真を撮るときの心情と写真技術がいかに大切かをボクは学んだ。 写真屋さんが撮った記念の集合写真に、感銘を受けたこともある。ボク自身は、何の関係もない写真だ。 同窓会だそうだ。10人ほどの年配の男女が、庭に椅子を並べて掛けている。なかに2脚、誰も座っていない椅子が置いてある。参加したくて、でもどうしても来られなかった2人の席だそうだ。素晴らしい写真屋さんの配慮に感銘を受けた。 欠席された方は、自分がいない椅子だけ写った記念写真を、いつまでも大切にするだろう。関係のない者でも、空席の写った写真を見たら、心に残るだろう。その場に存在しない人も撮れるのだと学んだ。 土浦の医者だった 平本のじいさん 住井すゑさんが、牛久でお元気だったころ、住井さんの裏に住んでいた平本じいさんを紹介してくれた。じいさんは写真がすごく好きだから、と。ボクは、平本さんというじいさんは元医師で、それ以外の素性は知らずにいた。 じいさんはボクに、大切そうに写真集を拡げ、「ブラッサイ(ハンガリー出身の写真家)はいいなあ」と何度も何度も何度も言った。その時のじいさんの表情と、ブラッサイが撮った夜のパリの裏街の写真が忘れられない。医者だった平本じいさんは、ブラッサイのモノクロ写真に、何を見ていたのだろうか。自分の人生に、何か共鳴するものがあったのかも知れない。 そのころ、若いアンチャンのボクは、ブラッサイなんて知らず、適当に相づちを打つだけだったが、じいさんの中のロマンは、人生を振り返る大切なものだったのだろうか。平本じいさんは、自分がやっていた医院を土浦市に寄贈し(今の土浦一中地区公民館)、新治協同病院(今の土浦協同病院)の2代目の院長だったと、ずいぶん後になって知った。 心に残っているだけで価値があり、大切な写真が、たいていの人にある。1枚の写真が、半世紀もの人生を動かすこともあれば、写真を見ることで人生のその時の心情がよみがえり、あらたな活力になることもあろう。どんなに古くなってはいても、写真によってよみがえるのは、断片ではあるが、人生そのものなのではなかろうか。(写真家、日本写真家協会会員、土浦写真家協会長)

アストロプラネッツ、巨人3軍と交流戦 土浦では逆転負け

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツが、日本プロ野球(NPB)の読売巨人軍3軍との交流戦2試合に臨んでいる。28日にJ:COMスタジアム土浦(土浦市川口町)で行われた第1試合は、終盤に逆転され4-5で敗れた。第2試合は29日に笠間市民球場(笠間市箱田)で開催される。プレーボールは午後1時の予定。 茨城アストロプラネッツ-読売巨人軍3軍(28日、J:COMスタジアム土浦)巨人 000001004 5茨城 002001010 4 茨城は3回裏、野中大輝が敵失で出塁、高橋駿の二塁打で二・三塁の好機を作ると、安田寿明の中堅への犠牲フライで1点を挙げ。さらに内山竣の適時打で1点を加えた。 先制打について「インコースのまっすぐを狙った。相手投手は力があるので振り負けないことと、低めの変化球を振らないことを心掛けた」と安田。相手の駒田徳広監督は四国アイランドリーグ高知時代の恩師なので、いいところを見せたいと気合いが入ったという。安田は8回にも四球で出塁し、好走塁で1点をもぎ取った。「佐久田は必ずバットに当ててくれるので、ボールが地面に付いたら即行こうと。日頃から練習してきたプレーが出せてよかった」 投手は先発の楢嵜塁が3イニング、2番手の福田夏央が2イニングを受け持ち、ともに2安打でまとめた。だが6回から潮目が変わり始める。3人目の渡辺明貴は2アウトまでは順調だったが、四球と野手エラー、暴投で二・三塁とされ、1ヒットで1点を失ったところであえなく降板。この場面では兼任コーチの巽真悟が火消しに立った。 7、8回は外国人のペレズとDJが登板、共に制球に苦しみながら1イニングずつを務めた。9回にマウンドに上がったのはクローザーの森祐樹。しかし四球と3安打で1点を失いなおも1死満塁。ここでピッチャーゴロをホームへ悪送球し、2点を献上してしまう。救援に向かった高橋国杜も中前への適時打を浴び、ついに逆転を許した。 「森は信頼して後ろを投げさせているが、三振を取ることで頭が一杯になってしまい、どこでアウトを取るか整理できていなかった。反省はしても引きずらず、次の試合で貢献してミスを取り返してほしい。外国人投手は日本のマウンドにまだ慣れてなく、試合で使いながら経験を積ませていきたい」と巽兼任コーチ。 「シーズンはこれからが山場で、栃木との合同チーム戦やオールスター戦なども控えている。ファンやスカウトの目に止まる機会も自然と増えるので、選手がいいパフォーマンスを発揮できるようバックアップしていきたい」と松坂賢監督は話している。(池田充雄)

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