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アメリカナマズを名物料理に 漁業者の思い知り市民グループが働き掛け
【ガチ中華で活用可能性】下
特定外来生物のアメリカナマズを食べて活用しようと、霞ケ浦のアメリカナマズを使った新メニューの提供が、つくば市内の四川料理店で始まった。提供に至るまでには、移入され肉食害魚となったアメリカナマズを地元の名物料理に変えて駆除したいという桜川漁協関係者の思いと、漁業者の思いを知ったつくばの市民グループ「桜川ナマズプロジェクト」(多賀井隆之、田中俊輔、松永悠 共同代表)」や、中国・北京出身でつくば市に住む医療通訳者の松永悠さん(50)の中華料理店への働き掛けがあった。
試食会参加しプロジェクト立ち上げ
つくば市を流れる霞ケ浦の流入河川、桜川で2022年7月、捕獲したアメリカナマズを唐揚げやかば焼きなどにして食べる試食会が開かれた。桜川漁協の鈴木清次組合長らが、害魚を、食べて駆除したいと開いたイベントだ。「桜川ナマズプロジェクト」の共同代表の一人、つくば市在住の高校教員、田中俊輔さん(45)は知人の紹介でイベントを知り試食会に参加。鈴木組合長の思いに触れ、1カ月後の同年8月、同プロジェクトを立ち上げた。「外来種としてのアメリカナマズへの問題意識がプロジェクトの始まり」と田中さんは話す。
活動の柱は「外来種としてのアメリカナマズを未利用魚から地域で消費される魚にする」こと。同時に「アメリカナマズの有効活用を通して、つくば・土浦地域を活性化することができたらうれしい」と田中さんはいう。
同プロジェクトは「つくば・土浦をナマズのまちにしたい」と目標を掲げる。すでにプロジェクトのキャラクターもあり、中学3年の嶋野葵さんがデザインした。
ガチ中華を日本に紹介
同プロジェクト共同代表の一人でもある松永さんは、東京を中心に「ガチ中華」を研究する団体「東京ディープチャイナ研究会」に所属する。ガチ中華は、日本人向けにアレンジせずに中国の本場の味を提供する店のことをいい、都内を中心に店舗数が増えている。松永さんは同研究会のライターとしてガチ中華の魅力を同ホームページなどで紹介してきた。
東京ディープチャイナ研究会などが主催し、22年9月に東京都新宿区の中華料理店で開催した「ナマズの中華料理試食会」では4種類のナマズ料理が提供された。「ナマズの甘酢あんかけ」「酸辣高菜ナマズ」「ナマズの醤油ベース煮込み」と「麻辣ナマズ」だ。松永さんは「最近、一度揚げた魚を煮込む調理方法が中国語圏で流行しておりナマズも適している。そうした食べ方は日本ではあまり知られていないので広めたい」という。
ガチ中華の調理法を地元のつくば市などにも紹介したいと思っていた矢先、松永さんは田中さんを通して、桜川漁協の鈴木組合長と出会う。
半年後の23年4月、田中さんと松永さんら「桜川ナマズプロジェクト」は、桜川で釣ったアメリカナマズを「ガチ中華」として調理し、その場で試食する会を開催した(23年4月25日付)。田中さんが漁協の協力を得てアメリカナマズの釣り方などを教わり、松永さんが都内の中華料理店の関係者をつくばに招いた。
松永さんはその後も、桜川で釣ったアメリカナマズを都内やつくば市内の中華料理店で調理してもらい、知人の日本人グループなどに呼び掛けるなどして数カ月に1回ほど食事会を開催している。田中さんはその都度、桜川でアメリカナマズを釣り上げ、中華料理店にサンプルとして提供してきた。
海外産の冷凍ナマズを生の霞ケ浦産に
松永さんは「ガチ中華ではとりわけ羊肉料理がクローズアップされてきた。しかしナマズ料理も決してそれに劣るものではない。中華料理店と協力し、ナマズ食を全面に押し出しプロデュースしていきたい」と語る。
さらに「現在ほとんどの中華料理店がベトナムなど海外の冷凍ナマズを使って料理を提供している。ガチ中華の店が協力してある程度まとまった仕入れができれば、霞ケ浦の生のアメリカナマズの卸売なども可能になると思う。そうした卸売が活性化すれば、地元の漁業に貢献できるだけでなく、多様な食文化を根付かせ、地域振興にもつながるのでは」とし、つくば市内の飲食店などと協力してアメリカナマズを利活用する方法を模索すると共に、試食イベントなどで普及も図りたいと意気込む。
爆発的に増加
アメリカナマズは特定外来生物に指定されている。有用な漁業資源を食い荒らしてしまう食害のほか、鋭いとげを持つことから漁網や漁獲物などへの被害が問題視されている。霞ケ浦に同種が持ち込まれたのは1980年代頃とされ、霞ケ浦・北浦では2000年代頃から爆発的に増加したといわれる。現在、定置網などで駆除が行われている。(山口和紀)
終わり
自立生活通し街が変わる 柴田大輔記者、障害者たちの挑戦つづる つくば
つくば市の障害者自立生活センター「ほにゃら」(同市天久保、川島映利奈代表)の歩みをつづった「まちで生きる まちが変わるーつくば自立生活センターほにゃらの挑戦」(夕書房発行、B5判、271ページ)が9日出版された。著者は、土浦市出身の写真家でNEWSつくばライターでもある柴田大輔記者(43)。
障害を持つ人々が施設や家庭を離れ、自分たちの住む地域で、自分の意志に基づいて介助サービスを活用しながら生活を営む「自立生活」がテーマで、四半世紀にわたり、共に支え合うインクルーシブ(包摂的)な地域社会づくりに挑戦してきた歴史が記されている。
柴田記者は現在、写真家およびジャーナリストとして活動しながら、介助者として、ほにゃらでも活動している。
障害者の自立生活運動は1960年代のアメリカで始まったとされる社会運動だ。重度な障害を持つ当事者たちが自分たちの手でセンターを運営し、障害を持つ人たちの「自立」をサポートすることが中核的な理念だ。当時日本で盛んだった日本脳性まひ者協会「青い芝の会」の運動の流れを部分的に引き継ぎ、80年代から日本でも広がりを見せた。脳性まひやALS(筋萎縮性側索硬化症)など重度身体障害を持つ人々を中心に、各地で自立生活センターが設立されていき、現在は全国に100程度の自立生活センターがある。つくば市のほにゃらは2001年に設立された。現在代表を務める川島映利奈さんや、ほにゃら創設者の一人で、現在も事務局長として活動をけん引する斎藤新吾さんも24時間の介助を必要とする。
著者の柴田記者は「つくばの人たちに読んでほしい。『筑波研究学園都市』という計画された都市の歴史に、障害のある人たちがまちをつくってきたという歴史があることを知ってもらいたい」と話す。
コロナ禍、仕事が激減し介助者に
柴田記者は20代のころに「写真と旅に夢中に」なり、写真ジャーナリストとして中南米の人びとの暮らしを撮影してきた。「半年間バイトの掛け持ちをして資金を貯めては、中南米、特にコロンビアに渡航するという暮らしをずっと続けてきた」という。そんな柴田記者が障害者の自立生活運動に出会ったのは2016年のこと。2年間ほどコロンビアで過ごし帰国した柴田記者は、都内の月3万円のシェアハウスに入居し、すさんだ生活をしていた。そこで東京都大田区で知的障害者の生活を支援するNPO風雷社中の代表、中村和利さんに出会い、障害者の外出や日常生活を支援するガイドヘルプの活動を行うようになった。18年、柴田記者は結婚を機に茨城に戻り、ほにゃらと出会った。同年10月に筑波大学で催されたほにゃらの「運動会」に写真撮影のボランティアに行くことになった。そこで見たのが障害のあるなしに関わらず、皆が楽しむことができる運動会の姿だった。しかしこの時は「障害者の自立生活運動について深く理解していたわけではなかった」と振り返る。20年、新型コロナ禍の影響で写真やライターの仕事が激減した柴田記者は、ほにゃらの介助者として活動を始める。「自立生活や介助、その運動の奥深さにそこで初めて出会った」という。21年秋、柴田記者は、ほにゃらの障害者と関わる地域の人々を撮影した写真展を、つくば市民ギャラリーで開いた。写真展をきっかけに、つくば市松代の出版社「夕書房」の高松夕佳さんと出会い出版が決まった。
茨城の障害者運動の歴史が凝縮
刊行に向けて3年前の2021年から取材、執筆を始めた。当初は「専門的なところまで、深く分かっていたわけではなかった」。コロナ禍で取材がうまく進まない時期もあったというが「ほにゃらの皆さんにいろいろな人をつなげていただき、話を聞いていく中で、ほにゃらができていくストーリーが少しずつ分かっていった」。
特に1980年代以降の茨城における障害者運動の歴史が凝縮されている。63年に千代田村(現・かすみがうら市)上志筑につくられた障害者の共同生活コロニー「マハラバ村」は、重度の障害者たちが神奈川県で交通バリアフリーを求めバスの前で座り込みをした「川崎バスジャック闘争」(1977年)などで知られる脳性まひ者集団「青い芝」の会の、糾弾・告発型の運動の源流となった。柴田記者は「マハラバ村から下りることになった重度障害者の一部は、つくば市周辺で盛んに活動を続けた。そのときに湧き上がった熱量みたいなものが残り火のように引き継がれ、今につながっている」と説明する。著書には重度の障害者の想いや残り火がどのように引き継がれ、ほにゃらにつながるのかが記されている。さらに柴田記者は、今後も茨城、特に地元である土浦やつくばを拠点に介助や障害者の自立生活について考えていきたいと語り「介助という磁場があり、障害者が地域で暮らしていくことは『消えない運動』であり、『やめられない運動』でもある。自立生活を知りたければ、介助に入らなければならないと言われた。本当にその通りだと思う。人が肌と肌で触れ合う、この体温を知ってしまった以上は、今後も地元茨城の自立生活運動を一つの軸にしながら活動していきたい」と話す。(山口和紀)
◆本の出版記念写真展『ほにゃらvol.3 まちで生きる、まちが変わる』が21日から3月10日まで、東京都練馬区のカフェ&ギャラリーで開かれる。入場無料。詳しくはこちら。
インドのハンセン病患者を支援 筑波大学生団体
寄付募り住居5軒を建て替えへ
筑波大学の学生でつくる国際ボランティア団体「ナマステ(namaste!)つくば支部」(袴田裕菜代表=国際総合学類2年)は、インド国内のハンセン病患者への支援として、患者らのコロニー(集落)に家を建てるプロジェクトを行っている。2026年3月末をめどに計5軒の建て替えを目指す。
新規感染者が世界最多
ハンセン病は現在では完治する病だ。インドは今、ハンセン病新規感染数が世界最多と言われている。世界保健機関の調査では2021年のインド国内における新規感染者数は約7万5000人に上っている。背景にあるのは、衛生環境の問題とされる。インドでは差別がいまだ根強く、感染者や回復者、家族が暮らすコロニーが国内に点在している。数世代に渡って暮らしている場合が多いが、低賃金労働や物乞いによって生計を立てている生活者が多く、経済的問題から電気水道等のインフラも整っていないコロニーも多い。
そうしたインドでのハンセン病患者や、後遺症や差別に苦しむ回復者を支援しようと、ナマステはもともと、2011年頃に早稲田大学の学生らによって創設された。つくば支部は15年にスタートした。同支部の創設者は当時、筑波大国際総合学類に入学した酒井美和さんで、酒井さんは21年からインドでハンセン病コロニーを支援するNPO法人わぴねす(東京都中央区)の代表理事を務めている。現在のつくば支部はわぴねすとも協力関係にあり、協同してプロジェクトを行うこともある。
直接渡航し支援
つくば支部には現在30数人が所属する。創設以来インドに直接渡航し、ハンセン病差別の問題と向き合ってきた。渡航が制限されていたコロナ禍を除き、長期休暇で授業のない3月と9月の年2回、数週間程度滞在し支援活動を行ってきた。昨年12月まで代表を務めていた生物資源学類3年の長井絢香さんは「インドにはたくさんのコロニーがある。現在つくば支部が支援している西ベンガル州のビシュナプールコロニーもその一つで、西ベンガル州の州都カルカッタから電車で4時間ほどかかる場所にある」と話す。滞在中はコロニー内の学校施設を借りて滞在する場合が多かったが、コロナ禍以後はインド政府によって禁止され、コロニー近くのゲストハウスで寝泊まりをしている。
ビシュナプールコロニーは140人ほどが暮らすコロニーだ。村長のジョゲンナさんはハンセン病の回復者で、差別されホームレス状態にあった人たちに声を掛け共に暮らすようになり、徐々にコロニーが形成されていった。電気は通っているが極めて不安定で、飲料水は井戸に頼っている。男女比はほぼ同数で、90歳を超えた生活者もいる。23%が近隣の市場などで日雇い労働に従事し、40%が物乞い、そのほか多様な職業に就いているが「多くが低賃金労働で、生活環境は悪いまま」だと長井さんはいう。
学生としてできること
現在、つくば支部では26年3月末をめどに、ビシュナプールコロニー内の住居5軒を建て替えるプロジェクトを進めている。電気や上下水道、教育や就労などの支援ではなく、「住む家」に焦点を当てたのには理由がある。「コロニーに行って学生の私たちに何ができるかを聞くと、真っ先に出てくるのは雨漏りがひどくて安心して眠ることができないというような住居の具体的な問題。教育や就労の問題はあまり出てこない。お金を集めて家を建て替えることももちろん容易なことではないが、教育や就労よりも具体的な事業であり、学生としてできる最大限だと思った」と長井さん。コロニー内の住居は土壁が基本で崩れやすく、壁のない部屋もある。
23年の渡航時に地元の事業者に、家の建て替え工事の見積もりを行った。1軒あたり13万ルピー、日本円にして約23万円が工事費用としてかかることが分かった。そこで寄付型のクラウドファンディングで最も緊急度の高い1軒の建て替え工事費用を募ることにした。23年の11月25日からクラウドファンディングキャンペーンをスタートさせた。12月初めには目標金額10万円に届き、最終的に19万円を集めることができた、足りない分はさらに寄付を募るなどして工面したいという。
長井さんは「自分たちにできることは小さいと思う。それでも一歩踏み出す勇気が身に着いた。団体には行動力のある人が多くアクティブ」と話す。つくば支部での活動を経て、国際開発関係の進路を選択する学生も少なからずいる。長井さん自身も「将来は、国際的に社会の基盤を支えるような仕事に就きたい。直接的に国際開発の仕事に就きたいと考えているわけではないが、つくば支部での活動が影響を与えていると思う」と話す。つくば支部の長期的な活動目標は、支援するコロニーを増やすことだ。つくば支部では現在、実質的に支援しているのはビシュナプールコロニーのみ。「インド国内には数多くのコロニーがある。ビシュナプールコロニーだけでなく、他のコロニーへの支援をすることを長期的な目標にしたい」と長井さんは話す。(山口和紀)
◆ナマステつくば支部のX(旧ツイッター)はこちら
サンタがプレゼント、今年も継続 スタッフ不足乗り越え
コロナ禍影響
ボランティアがサンタクロースにふんして子供たちにプレゼントを届ける活動が今年もクリスマスイブの24日、つくば市で実施される。コロナ禍を経た今年は、支部の運営スタッフが確保できず、継続できるか不透明な時期もあった。「クリスマスを祝うことも難しいような経済的に困難な家庭の子供たちに、思い出を届けたい」というスタッフの熱意で継続できることになった。
NPOチャリティーサンタ(東京都千代田区)つくば支部による活動だ(2020年11月27日付)。事前に応募があった家庭にサンタ姿のボランティアが、保護者があらかじめ購入したプレゼントを届けに行く。子供たちにはサプライズでサンタが自宅にやってくる。経済的に困難を抱える家庭の子供たちには無料でプレゼントを手渡す。その費用は、他の家庭の寄付金でまかなわれる。
つくば支部が立ち上がったのは2017年で今年7年目になる。現在、支部の代表を務めるつくば市在住の会沢和敏さん(59)は、20年度の活動でも代表を務めた(20年11月10日付)。「今年度は運営の中心を担う代表者が5月頃まで決まっていなかった。ここで活動が休止になってしまっては、サンタが来る街をつくば市から広げていくという夢もかなわなくなってしまうと考え、代表に立候補した」と話す。会沢さんは20年度に続き、2度目の代表を務める。
「クリスマスを祝うことも難しいような経済的に困難なご家庭もある。そうした子ども達にとって、サンタが家に来て祝ってくれることは一瞬のことかもしれないが、未来まで明るくするものでもあるように感じる。小学校低学年のときに訪問した子どもが、中学校に上がっても毎年のようにサンタが来た思い出を話しているということも聞いた」と会沢さんは語る。
スタッフ不足の原因として「コロナ禍の影響も少なくなかった」と指摘する。21年、22年も、人と人との接触を極力避けることが求められる中で、サンタ活動を継続していくことは難しい場面もあったと振り返る。
今年は運営を担うスタッフが会沢さんを含めて4人、当日のボランティアは10人ほどが参加する。当日ボランティアは事前の講習会を通してチャリティーサンタとしての活動内容や注意点などを学び臨む。
筑波大学医学類の山田夏鈴さんも運営スタッフの一人だ。「子どもの年齢や性格に合わせて対応することを心掛けている。子どもたちや両親の笑顔を見ると、こちらも素敵なプレゼントをもらった気持ちになる」と活動を継続することの意義を話す。(山口和紀)
◆チャリティーサンタつくばはX(旧ツイッター)で情報を発信している。NPO法人チャリティーサンタのホームページはこちら。つくば支部では今年の当日ボランティアの募集は締め切っているが、来年度に向けての運営スタッフを募集している。来年の当日スタッフは10月頃に募集を行う予定だ。
クリスマス間近 金管ハーモニーを 筑波大生らが企画・運営
筑波大学の学生を中心に企画・運営されているクラシックコンサート「つくばリサイタルシリーズ」の第14回目となるコンサートが12月16日、つくば市竹園、つくばカピオ ホールで開催される。読売日本交響楽団(東京都千代田区神田錦町)の金管セクションが公演する。題名は「読響プラス―クリスマスに贈る金管のハーモニー」だ。
同楽団の金管セクションがつくばリサイタルシリーズに出演するのは、2019年1月14日に行われた第7回コンサートに引き続き二度目となる。出演者は、桒田晃(トロンボーン)、辻本憲一(トランペット)、次田心平(チューバ)、日橋辰朗(ホルン)、尹千浩(ユン・チョノ=トランペット)だ。
つくばリサイタルシリーズ実行委員の加藤千尋さん(同大障害科学類3年)は「金管五重奏のすばらしさがまずある。その上で、見ているお客様との距離の近さ、一緒に盛り上がる形のコンサートという点が特徴的だと思う。コロナ禍の制限が緩和している中で、演奏会ならではの魅力を感じられるコンサートになるはず」と話す。
新たに留学生や外国籍住民にも広報
2012年に始まったつくばリサイタルシリーズだが、10年以上が経ち、組織体制も充実してきている。筑波大学の学生を中心に運営がなされており、クラウドファンディングでの資金の調達や会場の運営なども学生によって行われている。現在、実行委員会のメンバーとして活動している人数はおよそ30人で、中心的に活動するメンバーも多くなってきているという。
今回、筑波大学に通う外国人留学生や外国籍の住民などに向けた広報を新たに始めた。「これまでも留学生などが来場することは多かった。しかし、日本語のみでの告知や案内だったので、そうした方にコンサートの情報が届きやすい環境はつくれていなかったと思う。委員会の体制が充実してきたこともあり、大学の留学生が多く住む宿舎などに英語のポスターを貼ったり英語での告知文を作成したりしている」と加藤さん。
つくばリサイタルシリーズの趣旨は、いままでクラシックになじみの薄かった人が気軽にクラシック音楽を楽しむ環境をつくることであり、そのための様々な工夫をこれからも行っていきたいと意気込む。
12月の開催となる第14回のテーマは「クリスマス」だ。「少し早いが、クリスマスのムードを楽しんでもらえたらうれしい」と加藤さんは語った。企画の創設者である同大の江藤光紀教授(比較文化学類)による新曲も披露される予定だ。(山口和紀)
◆第14回コンサートは12月16日(土)午後1時30分開場、午後2時開演。チケットは一般1500円(税込み)、大学生無料。事前申込必要。つくばリサイタルシリーズの情報は公式ブログで発信されている。現在、開催に向けたクラウドファンディングも実施中だ。
コロナ禍経て次は自販機で逸品を発信 つくばの飲食店主ら
駅前で冷凍食品販売
つくば駅前のつくばセンター広場(つくば市吾妻)2階ペデストリアンデッキに、県内の飲食店や食品加工会社自慢の加工食品を冷凍で販売する自動販売機が設置されている。コロナ禍、フェイスブック上で県内の飲食店のテイクアウト情報などの発信を続けた「旨がっぺTSUKUBA」(2020年4月10日付)が、同市中心市街地のまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(同市吾妻、内山博文社長)と立ち上げたプロジェクトだ。
つくば市竹園のうなぎ専門店「とよ長」を経営する豊嶋英之さん(46歳)が発起人となり、県内の飲食店有志数店舗と「旨がっぺTSUKUBA実行委員会」(川根せりな代表)をつくり運営する。今年の8月初めから販売を開始し、徐々に認知度も高まって販売数も増加しているという。
現在、自動販売機では、豊嶋さんのうなぎ店の豚なんこつの角煮、つくば市東新井のスペイン料理店「Spanish Bar Bonito(スパニッシュ・バル・ボニート)」のラムチョップグリルなどのほか、もつ煮、焼きサバずし、チャーシュー丼、ラーメンなど5店舗の6商品が販売されている。食品は電子レンジや湯せんで温めるなど簡単な調理ですぐに食べることができる。販売食品の種類は半年に1回程度、入れ替える予定だ。
プロジェクトの目的について豊嶋さんは「売り上げを上げるということよりも、茨城県のおいしい食材、食品を気軽に手に取っていただき、店舗に還元することで、地域を盛り上げていくことを目指している」と話す。コロナ禍のダメージ続く
コロナ禍、飲食店は休業を余儀なくされるなど利用が制限されることも多かった。豊嶋さんらのフェイスブック「旨がっぺTSUKUBA」は、飲食店が個々に情報を発信するのではなく、一定のまとまりの中で地域に情報を届ける役割を果たした。
今回、新たに自動販売機での販売に着手した経緯について「やはりコロナで飲食店はダメージを受けている。そのような中、人の往来が多いつくばの中心部で、県内の飲食店などの商品を販売することは、お客様に喜んでいただけるだけでなく飲食店を元気づけ、勇気づける効果がある」と豊嶋さん。
つくばまちなかデザインと共同でプロジェクトを実施することについては「まちなかデザインとは理念が合致している部分も多い。センター広場では日々、人の集まるイベントが行われており、そうした場でプロジェクトを行うことは意義がある」と話す。
実行委員長を務めるつくば市在住の川根せりなさん(26)は「コロナ禍をきっかけに始まったプロジェクト。新しい商品の企画などで飲食店と協力させてもらっている。よりよいプロジェクトをつくっていきたい」と話す。
「自動販売機への出品店舗は広く募集している」と豊嶋さん。自動販売機を通した販売にあたって、各飲食店は、基本的な利用料を支払う。商品が売れ、利益が上がった場合は、出店店舗側の利益となる。自動販売機の運営には、自動販売機本体のレンタル費用、商品の入れ替えや釣銭の管理にかかる運用費用、電気代などがかかっており、これらについては出店店舗が支払う基本的な利用料の中から支払いを行っている。(山口和紀)
◆問い合わせ窓口はつくばまちなかデザイン(電話029-869-7229)へ。
イベントのリアルタイム情報を配信 筑波大発ベンチャー ラーメンフェスタで挑戦
つくば市の研究学園駅前公園で7日から開催される「つくばラーメンフェスタ」で、筑波大学大学院生の熊谷充弘さん(22)が社長を務めるベンチャー企業「Palames(パラメス)」(つくば市吾妻)が、同フェスタの混雑状況や売り切れ情報などを同社の開発するプラットフォーム「dokoiko(どこいこ)」でリアルタイムに配信する。
dokoikoは「メニュー画像を通じて飲食店を探せる」を掲げるウェブサービスだ。ウェブページにアクセスすると、さまざまなメニュー画像が表示され、気になるメニューがあれば店舗情報を確認できる仕組みだ。現在はつくば市の飲食店を中心に情報が集まっている。熊谷さんは「イベントを中心にして、街が活性化していくことを応援したい」と話す。
授業で集まったメンバー
事業のきっかけは授業での出会いにある。大学が行う起業家を育成する講義「筑波クリエイティブ・キャンプ」の授業で集まったメンバーたちが「授業が終わってからもこのメンバーでなにかをやっていきたい」と意気投合し、会社設立に至る。
熊谷さんたちがまず考えたのは、食堂のデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。大学の食堂は、食券機で注文し現金で支払い、料理を受け取る形だ。それをスマートフォンから注文し、電子決済を行い、注文した料理が出来上がったら、スマートフォンに通知が届くようなシステムを発案した。しかし学生の力だけでシステムを開発することは技術的、資金的に困難であると考え、事業転換した。
続いて考えたのがdokoikoだった。熊谷さんは「若者はインスタグラムなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で画像から良い飲食店を探し、気になったところがあって初めてグーグルなどで検索をしてネット上を何度も行き来する。この行き来をせずにメニュー画像から直接お店を探せるプラットフォームがあったら便利なのではないかと考えた」と振り返る。
dokoiko内の店舗情報は、その店舗のスタッフがサービス内の画面から入力できる仕組みだ。
サービスの利用料は、店舗側も一般の利用者も基本的に無料だ。店舗側が利用者にメッセージを通知する機能があり、その機能の利用時には店舗側に料金が発生する仕組みになっている。来年までにつくば市の飲食店の30%が登録し、利用者数が1万人を超えることを目標に掲げている。
2020年の夏ごろから開発を始めた。今年4月に株式会社として登記をし、本格的な収益化に向けてスタートを切った。熊谷さんは今年の4月から同大大学院の理工情報生命学術院システム情報工学研究群知能機能システム学位プログラムに進学しているが、dokoikoに専念するために休学中だ。
現在、会社に関わっているメンバーは8人。そのうちの7人が同大の学生や卒業生などだ。熊谷さん自身もITエンジニアで、高校生時代には学園祭のホームページなどを作った経験もあるという。
イベント後も誘客
ラーメンフェスタでは、熊谷さんらから主催者に対し提携の打診を行い、イベントのリアルタイム情報をdokoikoで提供することが決まった。提供情報は、ラーメンの売り切れ情報や、店舗のメニュー情報、混雑の度合いなどだ。
dokoikoでは、イベントに出店するラーメン店のイベント当日のメニューだけでなく、店舗の通常営業時の情報も紹介できる仕組みになっている。イベントで出会ったラーメン店に、イベントが終わっても足を運んでもらうためだ。
「今後の方向性として、イベント時の情報提供や決済を担うためのプラットフォームとしても機能を強化していきたいと思っている。既存のウェブサービスでは、固定店舗の情報を知るための機能は備わっているが、イベントやキッチンカーの出店についての情報を収集できるサイトはない」と熊谷さん。イベントで出店した店舗の通常営業を利用者に紹介することで、イベントが終わった後もその店舗を利用してもらうことを促すことができるのが、dokoikoの強みであるという。現在、会社の資金調達やさらなるサービス拡大、収益化に向けて活動中だ。ラーメンフェスタでの情報提供は、熊谷さんたちにとっても大きな一歩となる。(山口和紀)
◆dokoikoへのアクセスはこちら。Palamesのホームページはこちら。つくばラーメンフェスタの特設ページはこちら。
カイメンの自衛手段でフジツボ付着を防ぐ 世界大会に挑む筑波大学生サークル
生物学と工学の学際的研究分野である「合成生物学」を用いて、地球温暖化の問題を解決しようとする学生サークルが筑波大学(つくば市天王台)で活動している。4月に発足した「iGEM TSUKUBA(アイジェムつくば)」、生物学類2年の吉本賢一郎さんが代表を務める。
iGEMはマサチューセッツ工科大学(MIT、米国マサチューセッツ州)で毎年11月に行われる合成生物学の世界大会。世界中から約300チーム、約6000人の学生が集まり、研究成果を発表する。日本からは東京大学(東京)、京都大学(京都)、早稲田大学(東京)などが毎年参加しているという。これに筑波大学チームとして参加しようと、今年度から一般学生団体として立ち上がったのがアイジェムつくばだ。
同サークルが研究対象にしているのは、海洋生物のカイメン。主に海の岩などに付着して生息する動物で、これらは自分を守るための物質を藻類などの微生物に作らせている。この物質を、船底などに付着するフジツボの阻害に使えないかというテーマだ。
代表の吉本さんは「海に浮かぶ船の底にフジツボなどの生物が付着すると、重量や運航時の抵抗が増す。その結果、燃料の消費量を非常に大きくしてしまうが、除去にもコストがかかり問題になってきた」と話す。付着を阻害する薬剤が用いられてきたものの、自然環境の汚染などへの懸念から規制が強まりつつあるという。
これに対し、カイメンなどの「生物が作り出す物質」を微生物に合成させることによって、新たな生物由来の付着阻害剤を実用化することを試みていると話す。吉本さんによれば、生物由来であるために環境への悪影響が極めて少ないと考えられ、環境負荷を減らせる可能性がある。
「資金集めに苦労」
生物学類の学生の中で、昨年の1月ごろ「iGEM」に参加するチームを作ろうという計画ができた。当時、大学一年生だった吉本さんもその計画に参加していた。アイジェムつくばとして行うテーマを決めるとき、吉本さんは「授業の課題」から生物由来の付着阻害剤を着想した。
「科学概論」という新入生向けの授業で、生物由来の物質が生活の役に立っている例の紹介があった。その際に出された「授業では紹介していない例を挙げる」という課題を調べていく中で、一部の海洋生物がフジツボなどの付着を阻害する物質を体内で合成していることを知った。吉本さんは「生物が作り出している物質が、他の生物の『発生』を阻害することがあるのか」と興味深く思ったと話す。
同サークルには現在、約30人が所属している。多くは2年生で、生物学類や生物資源学類の学生が多い。4つのチームに分かれており、研究だけでなく、高校生への教育活動なども行っているという。
実験やそのまとめ、アメリカで開催される大会への参加など、資金も必要だ。それらの資金の獲得も、団体の活動として行っている。そうした役割を担う「総合運営班」のリーダーを務める石川風太さん(生物学類2年)は「やはり資金集めには苦労している。始まったばかりの団体だが、年間200万円ほどの予算が必要だ。企業の支援や、研究助成の獲得など、裏方も仕事が多い」と話す。
吉本さんは「iGEMは1年を通して、テーマを決め取り組む。1年というスパンは短くもあるが、大会では、研究成果に対するフィードバックや論文の執筆支援もあり、とても意義があるものだと思う。将来的には本格的な実用化に向けて頑張っていけたらと思う」と意気込みを話した。(山口和紀)
◇アイジェムつくばのHPはこちら
不用品の地域循環を 29日 筑波大学生団体と自転車店がマルシェ
筑波大学(つくば市天王台)の学生団体と、大学近くの自転車店が主催する「くるくる桜マルシェ」が29日、同自転車店で開催され、不用品のフリーマーケットや同大の音楽サークルによる演奏会などが催される。学生と地域との交流を通して困りごとの解決や地域活性化を目指す学生団体「かざぐるま」(青木日花代表)と、大学構内に放置されている自転車の活用を目指す「サイクルシックつくば(CYCLE CHIC Tsukuba)」(つくば市桜)が共同で開催する。
かざぐるまは大学の授業から生まれた。副代表で社会工学類4年の松浦海斗さんは「大学2年のときの授業が、大学の外に出て地域の人たちと共に活動するという演習だった。そこで出会った仲間が、授業が終わった後も市内の高齢者との交流などを続け、昨年、大学公認の学生団体になった」と話す。
「くるくる桜マルシェ」は今年2月18日に続き、2回目の開催となる。テーマは「もったいないを、シェアしよう。」だ。「使われなくなったものをもう一度使ってもらえるようにすることが、今回のテーマ」と松浦さん。自宅に眠るお宝や不用品のフリーマーケット、使わなくなった教科書の販売、JA谷田部の野菜配布などが行われる。
会場となるサイクルシックつくばは、同大職員だったつくば市在住の矢部玲奈さんが運営する自転車店で、同大の放置自転車を修理し、定額制で自転車を貸し出す試みを行っている(2022年6月8日付)。
去年の秋、かざぐるま代表で同大社会工学類4年の青木さんと矢部さんが地域の交流イベントで出会った。矢部さんは「学生の活動に協力したい」と考えており、くるくる桜マルシェを開催することが決まった。
「普段は大学の中で、教員や同じ筑波大の学生と活動することがほとんどだが、外に出てみるといろんな人とつながることができる。そういう機会を矢部さんと協力してつくっていきたい」と松浦さんは話す。
矢部さんは「サイクルシックつくばは、放置された自転車を修理して、また使ってもらえるようにしているお店。そこで大学生の皆さんと協力して、ものの循環を生み出すようなイベントができるのはうれしい」と語る。(山口和紀)
◆会場のサイクルシックつくばは、つくば市桜2-15-5。協賛企業のsusabiによるハンモックの出展などもある。「かざぐるま」のツイッターはこちら。サイクルシックつくばのホームページはこちら。
筑波大 学生有志が企画 注目のピアノ三重奏団、来月公演
筑波大生有志が主催するコンサートが来月21日、同市竹園、つくばカピオホールで開催される。第13回目の今回は「葵トリオー3人で奏でるシンフォニー」と題して、東京芸術大学(東京都台東区)出身のピアノ三重奏団「葵トリオ」が出演する。第67回ミュンヘン国際音楽コンクールで日本人団体として初めて優勝した注目のトリオで、ヴァイオリンの小川響子さん、チェロ伊東裕さん、ピアノ秋元孝介さんで構成する。
「本当にすごい方が来ていただけることがうれしい」と話すのは、同コンサートを主催する「つくばリサイタルシリーズ実行委員会」の同大障害科学類3年、加藤千尋さんだ。葵トリオのマネージャーが過去の公演を見に来ており、それが今回の公演実現につながったという。「今回念願かなって、ようやくお三方に出演していただけることになった」と加藤さん。
ピアノ三重奏は、ヴァイオリン、チェロ、ピアノによるアンサンブルを指す。演奏されるのはベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第3番」、ラフマニノフ「ピアノ三重奏曲第2番」と、つくばリサイタルシリーズを創設した同大の江藤光紀准教授による新曲の計3曲。
ラフマニノフの楽曲は演奏時間が50分にもなる重厚な楽曲で「ピアノ三重奏を味わうのにもってこいの楽曲」と加藤さん。江藤准教授の新曲はこれまでの公演でも演奏されており(2020年12月2日付)、今回は「ポップで楽しくて聞きやすい感じ」だという。
つくばリサイタルシリーズは主に学生にクラシックに親しみを持ってもらうことを目指し、毎年第一線で活躍する演奏家を招きコンサートを開催している。今回の公演も学生は無料で見ることができる。同大の学生主体で運営されており、助成金やクラウドファンディングによる寄付を募るなどして開催する。加藤さんは「今年から私たちの学年が実行委員会の幹部になる。良いコンサートをつくっていきたい」と話す。(山口和紀)
◆「葵トリオー3人で奏でるシンフォニー」は5月21日午後2時開演。チケットは学生無料、一般1500円。全席指定。チケットの案内はつくばリサイタルシリーズ公式ブログへ。
学長選めぐり 教員有志が人権救済申し立て 筑波大
2020年に行われた筑波大学(つくば市天王台)の学長選考過程で、同大や同学長選考委員会に法人規則を遵守しないなどの瑕疵(かし)があったなどとして、同大の教員有志でつくる「筑波大学の学長選考を考える会」(共同代表・竹谷悦子教授、吉原ゆかり教授)は14日、県弁護士会に人権救済申立てをした。考える会は同学長選で、大学の自治をないがしろにする手続きがあったほか、対立候補への言論弾圧の疑いがあったなどとしている。
2020年の学長選考では、当時現職2期目だった永田恭介学長が再選された。それまで2期6年が最長とされた学長任期上限の規則改正が2020年に行われ、その結果、永田学長が再選された形だ。申立てでは、この規則改正が法人規則を遵守せずに行われたとする。
さらに、選考過程で実施する教職員を対象にした意見聴取では、永田学長が584票、対立候補の松本宏教授(当時、現在は名誉教授)が951票と1.6倍程度の差があったにもかかわらず「学長選考会議はそれを無視して永田氏を再選させた」などとし、これらの過程が「大学の自治をないがしろにする瑕疵」だったと主張する。
ほかに、対立候補の松本教授が作成したウェブサイト上での発言に対し、2020年10月15日、同大が検証委員会を立ち上げ、それが学長選考とは関係のない人事上のことでも不利益な事項として考慮されたなど、「正当な言論活動を強度に委縮させる弾圧が行われた」と同会は指摘する。
松本教授は学長選考にあたって自身のウェブサイトで所信表明や教職員からの意見などを掲載していたが、「学内外への情報発信」に問題があるとする報告が同大の「教育研究評議会」においてなされ、その後、検証委員会が設置された。検証の結果、検証結果の手交及びウェブサイト上での発言について「筑波大学ソーシャルメディアガイドライン上、問題があった」ことを同教授に伝達することが決まっていた。考える会は、この経緯が松本教授のその後の名誉教授選考の場でも持ち出され、不利益な事項として考慮されたと指摘する。
考える会はこれまで、学長選考のプロセスについて2020年の学長選考の時期から、その選考プロセスの問題を批判してきていた(2020年10月21日付)。
申立てに対し同大は「報道において人権救済申立てが行われたことを知った。申立ての内容そのものについては把握しておらず回答できない」としている。
「無関心 そこが問題」
2020年の学長選をめぐっては昨年11月、同大の学園祭「雙峰祭」で、学生有志による「2020年学長選考を振り返る」とする展示企画が実施された。人文学類3年の男子学生が主催した。企画は2020年の学長選考のプロセスを批判する内容だ。会場を使って対面で行われ、学長選考プロセスを振り返る動画の放映や、聴衆からの意見を付箋で集める企画などが行われた。当日使われた動画も公開されている。
主催した男子学生が入学したのは2020年の4月で、入学して半年後に学長選考があった。「ちょうど入ってすぐにリアルタイムで学長選考があった。今の学類生の1、2年生はそうした動きがあったことすら知らない」と男子学生。
「企画をやる中で、学長選考の重要なことに学生がアクセスできないことを感じた。たとえば、教職員に対する『意見聴取』は教職員の専用サイト内でのみ情報が開示され、一学生にはアクセスできなかった」という。
企画の反響は予想外だった。男子学生は「割と冷ややかな目線を予想していた」というが、学年が上の人からは「忘れていたけどこういうことあったよね」、下の学年からは「こういうことがあったのは驚いた」などという声が聞かれた。学長選考に批判的な立場の学生や教員などからは「よくやってくれた」という声もあった。
男子学生は「人権救済申立てなど、こういう活動があるというのは好ましいことだと思うが、学長選考についてはほとんどの学生が無関心。そこに問題があると思っている」と語った。(山口和紀)
桐朋学園オーケストラ招き「つくばリサイタル」 来年1月、初のインカレ企画
筑波大生有志が主催するコンサート「桐朋学園オーケストラ×つくばリサイタルシリーズ~共に描く未来の音楽~」が来年1月21日、同市竹園、つくばカピオホールで開催される。今回は桐朋学園大学の桐朋学園オーケストラを招く初のインカレ企画で、コロナ禍により入学時から大きな制約を受けてきた学生同士、励まし合い、力を合わせ、共に乗り越えていきたいという願いが込められているという。
同コンサートは、筑波大生有志でつくる「つくばリサイタルシリーズ実行委員会」が、学生や市民に手ごろな価格で気軽にクラシックを楽しんでもらいたいと、毎年トップクラスの演奏家をつくばに招いて開催している。2012年にスタートし、今回が12回目となる。
桐朋学園大学(東京都調布市)は、日本を代表する音楽大学の一つで、指揮者の小澤征爾さんを始め、世界的な音楽家を輩出してきた。同オーケストラは、桐朋学園音楽部門の学生らで構成される。
桐朋学園の名前にある「桐」は、東京文理科大学・東京高等師範学校に由来する。筑波大学の紋章である「桐」紋も東京高等師範学校に由来するなど繋がりがあり、かつて戦後の混乱期を共に協力して乗り越えた歴史があるという。
公演には、桐朋学園大学の学生の中から総勢17人の弦楽オーケストラが出演し、世界的に活躍する気鋭の指揮者でバイオリニストとしても知られる清水醍輝さんが指揮する。清水さんは、第57回日本音楽コンクール第1位、1998年から2001年まで新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターを務めたことでも知られる。
実行委員で筑波大学人間学群障害科学類2年の加藤千尋さん(20)は、学生オーケストラを公演に招く背景にあるのはコロナ禍だと話す。実行委員会の多くのメンバーが新型コロナが始まった後に大学に入学している。以前はあったイベントがなくなり、自粛を強いられる大学生活を送ってきた。
「学生オーケストラを呼ぼうとしたのは、学生同士で活力のあるイベントがしたいという思いがあった。コロナに打ち勝つではないが、家に閉じこもらないで、エネルギッシュな活動をしていきたいというメッセージがある」と加藤さん。
加藤さんもコロナ禍で「自身も周りの友達も家に閉じこもっている時間が続いていた。高校生のころに放送部で活動していたこともあって、舞台を裏側から支える活動がしたいと思っていた」と話し、偶然に実行委員会を知り、2年生になった今年度から実行委員会に入った。
同実行委員会の活動も原則としてオンラインで行われてきた。「ミーティングはこれまで全面的にオンラインだった。最近は図書館の部屋を使って、オンライン併用ではあるが、感染対策をしながらミーティングをすることもできるようになってきた。うれしい変化」と加藤さんは話す。
同実行委員会では現在、7万円を目標にグラウドファンディングを実施している。(山口和紀)
◆「桐朋学園オーケストラ × つくばリサイタルシリーズ ~共に描く未来の音楽~」は2023年1月21日(土)、つくば市竹園、つくばカピオホールで開催。開演は午後2時。プログラムは、モーツァルト作曲、ディヴェルティメントK.136ニ長調、江藤光紀作曲、アドレッセンス(初演)、グリーグ作曲、ホルベルク組曲。入場料は一般1000円、学生無料(いずれも事前申し込みが必要)。チケット申し込みはは同実行委員会HPへ。
列車内の無線Wi-Fiサービス 23日で終了 TX
つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区、柚木紘一社長)は、列車内での無線Wi-Fiサービスを23日で終了する予定だと発表した。駅構内での無料Wi-Fiサービスは継続する。NTTドコモのd Wi-Fiサービスの終了に伴うものという。
TXは、駅構内や改札付近だけでなく、列車内でも無料通信が利用できる体制を開業当初から早期に整えた先駆的な公共交通だ。列車内の無線Wi-Fiは、通勤ラッシュ時などは接続しにくくなっていた時もあるなど、利用者は少なくないとみられる。個人の端末通信を使用すればスマートフォンやパソコン通信は引き続き利用できる。
同社によると、これまで列車内では2つの無料Wi-Fiが提供されていた。エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(東京都千代田区)が運営し、TXの利用者全員を対象として提供されていたTX Free Wi-Fi(ティーエックスフリーワイファイ)と、NTTドコモ(東京都千代田区)が運営し、同社のdポイントクラブの会員向けに無料で提供されていたd Wi-Fi(ディーワイファイ)だ。どちらも23日に終了し、列車内での無料Wi-Fiの提供は無くなる。
同社は「d WiFiを提供するNTTドコモから、d Wi-Fiサービスの終了に伴って、つくばエクスプレスでも運営を終了したいとの申し出があった。それを受けて、TX FREE Wi-Fiも同時に終了することが決まった」と経緯を説明する。
一方、構内のWi-Fiサービスの提供は継続される。列車内と同じく、駅構内で提供されている無料Wi-Fiサービスは、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームの運営するTX Free Wi-Fiと、NTTドコモが提供するd Wi-Fiの2つがある。23日にNTTドコモのd Wi-Fiは終了するが、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームのTX Free Wi-Fiは継続される。
TXのこれまでの利用者数累計や、サービスの維持管理にかかるコストについては非公表となっているが、TX Free Wi-Fiは通勤ラッシュの時間帯などに接続がしにくくなるなど、利用者は少なくなかったとみられる。今後の見通しとして首都圏新都市鉄道は「列車内における無料Wi-Fiサービス提供を今後なんらかの形で再開する予定は現時点ではない。駅構内のTX Free Wi-Fiは、今後も継続の見通し」としている。
鉄道の無料Wi-Fi 相次ぎ終了
今年6月には東京地下鉄が東京メトロのWi-Fiサービスを一部終了している。TXと同様に、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームの運営するMetro_Free Wi-Fiと、NTTドコモが提供するd Wi-Fiの提供が、契約期間満了によって終了している。東武鉄道でも今年、一部無料Wi-Fiサービスが終了したなど、鉄道の無料Wi-Fi終了が相次いでいる。
理由について、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームは「国内の鉄道事業で無料Wi-Fiサービスが相次いで終了している背景は3つある。1つ目は、訪日外国人観光客の利用を想定し、東京オリンピックの開催などに合わせて広がってきたが、コロナ禍でそうした外国人観光客の利用が著しく減っていること。2つ目は、コロナ禍の鉄道利用者数の減少に伴って、鉄道会社は収益性が低下し、コストカットを強いられていること。3つ目は、国内の『5G』に代表される高速通信サービスの進歩と『格安シム』と呼ばれるような安価なサービスの登場によって個々人の端末の通信は高速化し、Wi-Fiサービスそのものの需要が少なくなりつつあること。こうした背景から無料Wi-Fiサービスの提供を終了する企業が増えてきている」としている。(山口和紀)
染色家の協力で洋服アップサイクルに挑む 古着好きの筑波大1年生
たんすに眠っているTシャツなどの洋服を集めて、地元の染色家が地元産の農産物で染め、新しい服に生まれ変わらせて販売する洋服のアップサイクルを、つくばで実現しようと筑波大生が奔走している。筑波大学総合学域群第一類1年、大本裕陶さん(18)は、昨年NEWSつくばに掲載された記事をきっかけに、染織に興味を持ち、自分らしいイベントを開催しようと奔走する。
アップサイクルは、本来は捨てられるはずだったものに新たな価値を与えて使う取り組みをいう。「リユース(再使用)とリサイクル(再利用)のちょうど中間のような概念。リユースはもう一度使うこと。リサイクルは一度、細かく分解してから使うこと。アップサイクルは、ものを分解せず、そのままの形を活かしてさらに価値を加えることを指す」と大本さん。
古着と出会う
進学した千葉県の県立高校時代に古着と出会い、魅力に取りつかれた。「よく東京に行って、好きなアーティストが開いている古着の店に通った。映画に出てくる服とかも見て回った」2022年に筑波大学に入ってから、今ある仕組みやシステムにただ参加するのではなくて、自分で新しいことがしたいという気持ちを強く感じた。そこで自分が好きな古着で何かできないかと思うようになった。
現在の洋服の生産・流通・販売の仕組みは環境に大きな負荷をかけてしまっているとの問題意識からだ。大量の服がごみとして捨てられている問題などを知って、環境に負荷をかけずにファッションを楽しめる仕組みをどうにかしてつくれないか、もどかしさを抱えていた。
染織のことはよく知らなかったが、NEWSつくばの連載を読み、身近なつくばや土浦にも染織家がいることを知った。2021年10月27日~30日に4回連載の「染織人を訪ねて」は、つくばにゆかりのある染織家を追った記事だったた。
大本さんはアップサイクルの協力を依頼するため、土浦市板谷の染織工房「futashiba248(フタシバ)」(21年10月29日付)を訪れた。草木染を行う工房で、剪定された木枝や規格外で市場に出ない野菜・果物などを県内各地の農家から提供してもらい、農業廃棄物から取り出した染料を用いる草木染を特徴にしている。
「絶対断られるだろうな」と思いながら、自転車で1時間かけて染織工房に行った。「反応は予想外のもので、自分の話をとてもよく聞いてくれて、協力してくださることになった」
顔の見える関係
来年春、つくば市内で集めたTシャツなど衣服約30着を染めて売り出すイベントを開催する予定だ。資金はクラウドファンディングで集め、10月末までに12万円に達した。販売会場などの詳細は検討中だ。「今、友達に呼びかけて服を集めている。つくばで集めて、つくばで染めて、つくばで売る。自分が住んでいるこのつくばで完結することも大事なことだと思う」と話す。
大本さんにとって、顔の見える関係の中でアップサイクルを行うことが重要だという。「元々の洋服の持ち主、それを染めて加工する染色家、染め上げた洋服を販売する人、その人たちがアップサイクルを通じてつながるきっかけをつくりたい」という。「友人のなかには古着を汚いと思い、避けている人もいるけれど、アップサイクルには好印象を持っていたりする。アップサイクルに興味を持ってもらうことで、捨てられてしまう衣服が減ることになる」大本さんの目標は洋服のアップサイクルを普及させること。まずは染織によるアップサイクルの形を模索するが、染色以外の手法もこれから考えていく。「まだ大学に入学したばかりの18歳で、なにか実績があるわけでもない。いろいろな方の手助けをいただくことができたらうれしい」と話した。(山口和紀)
200億円の大学債を発行へ 筑波大
筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)は大学債権(大学債)を19日に発行すると発表した。発行額は200億円で、愛称は「筑波大学社会的価値創造債」。国立大学法人としては東京大学、大阪大学に次ぐ3例目となる。
自由度高い資金調達
国立大学法人による大学債は発行条件が厳しかったが、2020年6月の国立大学法人施行令の改正によって緩和された。改正前は、償還(返済)の見込みが十分に立った上で、附属病院の整備やキャンパスの移転などの目的でしか発行できなかった。改正後は発行条件の規制緩和がなされ、教育研究事業のための積極的な債権の発行が可能になった。大学としては、自由度が高い資金調達を行うことができるようになったといえる。
大学債は国立大学法人の新たな資金調達先として、すでに東京大学が一番手として、20年10月に200億円、21年12月には100億円、合計で300億円の発行を行っている。東大は大学債によって、10年間で1000億円の資金調達を目指すとしている。続いて今年4月には大阪大学が300億円の大学債を発行した。
地球環境や社会の課題解決に
3例目となる筑波大学は、調達する資金の使途について「本学が社会とともに新たな社会的価値に根ざした未来社会を創造するために取り組むプロジェクトに充当する」としている。地球環境や社会的課題の解決に使途を限定するもので、こうした債権はサステナビリティボンドと呼ばれる。サステナビリティボンドとしては国内で大阪大学に続く2例目となる。
永田学長は「大学債の発行は資金調達という意味から重要。さらに重要なのは大学債は筑波大学と社会とのエンゲージメント(誓約)の構築の方法であるということだ」とする。
資金の具体的な用途として同大は、大規模研究施設「未来社会デザイン棟(仮称)」、複合スポーツ施設「スポーツ・コンプレックス・フォー・トゥモロー(SPORT COMPLEX FOR TOMORROW、仮称)」をあげている。「未来社会デザイン棟」についてはすでに基本設計業務が発注予定となっている。
償還は新たな投資の収益など
現在、同大の主な財源は運営費交付金、学生納付金、附属病院収入、寄付金等の外部資金がある。同大の21年度の事業報告書によれば、経常費用が約1023億円、経常収益が約1060億円と約44億円の黒字の状況だ。さらに同大の21年度の統合報告書によると、運営費交付金による収益は近年はほぼ横ばい、附属病院の収益および外部資金による収益は増加している状況だ。
大学債を償還するための財源としては、新たな投資対象事業の収益や業務上の余裕金等を充当するとしている。
「いきなりの決定」
一方、同大の大学債発行に対し、同大教職員などでつくる「筑波大学の学長選考を考える会」の吉原ゆかり教授(人文社会学系)は「大学債の発行をどこでどのように決めたのか、教職員にも学生にも明らかにしない、いきなりの決定だ。指定国立大学指定のプロセスと同様のパターンだと思う」と指摘している。(山口和紀)
◆同大の大学債の利率は年1.619%。償還年限は最大で40年。償還日は2062年3月17日。主幹事証券会社は事務主幹事として野村證券(東京都中央区日本橋)、共同主幹事が大和証券(東京都千代田区丸の内)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(東京都千代田区大手町)の2社。募集の受託会社は三井住友銀行(東京都千代田区丸の内)が務める。格付け投資情報センター(東京都千代田区神田錦)および日本格付研究所(東京都中央区銀座)による同大の格付けは、それぞれAA+、AAAとなっている。
1周年迎えるコワーキングスペース 5日に記念パーティー つくばROOMS
利用者間の交流を重視した共用の仕事・勉強の空間、コワーキングスペース「ROOMS(ルームス)」(つくば市苅間)が1日、オープン1周年を迎えた。5日には記念パーティーを予定している。サービスを立ち上げた筑波大学大学院2年の滝波俊平さん(25)に話を聞いた。
ROOMS(2021年5月6日既報)は、作業用の「個室」と「コワーキングスペース」の提供をメーンにしている。開業から1年が経った現在、個室を目当てにした利用者が主だ。利用者の多くは女性で「オンライン会議を静かなところでやりたい」という声が多い。ほかにも「アイドルのライブを一人で集中して見たい」という個室利用者の声もあった。
今年4月の利用者数は「個室」が37人、コワーキングスペース5人。これまでの累計利用者数でみても12倍ほどのひらきがある。月間の売上額はおよそ4万円で推移している。「コワーキングスペースの利用が伸びないのは意外だった。現在は、コワーキングスペースを別の形に転換することも検討している」という。
開業当初は個室とコワーキングスペースのみを提供していたが、現在は「キッチンスペース」と「イベントスペース」、「こたつ部屋」も始めた。利用者のニーズに応えるためだ。しかしイベントスペースはコロナ禍で利用する催しが少なかったため利用者はほとんどいなかった。キッチンスペースについては「クリスマス女子会やママ会などで数件の利用があった」そうだ。「お客さんの声を聞きながら少しずつ新しい挑戦をしてきた。これからも良い場を作っていくために試行錯誤していきたいと思っている」と滝波さん。
コロナ禍での開業だったが影響は少なくなかった。「感染者数が増加すると利用者も減り、減少すると増える。このサイクルがあった」。コロナ禍のリモートワークやオンライン授業などの需要で「個室」の利用が増えるのではないかと考えていたが、実際にはそうした利用者は少なかったそうだ。
「良い場を作っていきたい」
1周年記念パーティーは5日、ROOMSで開催される。つくば市天久保の喫茶店「ひととつむぐカフェ 縁counter(エンカウンター)」などが出店する。同店は滝波さんと同じく、筑波大学大学院に在籍しながらお店を経営する伊藤悠椰さんのカフェだ。滝波さんは「ROOMSのスタッフの方が伊藤さんと知り合いで、紹介をしてもらった。こういう風にいろいろなつながりを作ることができた1年間だった」と振り返る。
同市上郷でパパイヤ農園を営む柳下浩一朗さん(ジミーfarm合同会社)からは、パパイヤ茶の提供を受けた。普段からコワーキングスペースで飲むことができるお茶だ。「こういうコラボはありがたい。これからもつながりが増えていったらうれしい」と滝波さん。
記念パーティーでは滝波さんが「植本祭」と呼ぶ催しが行われる。利用者から「好きな本」を募集し、それをROOMSが購入する。当日、参加者でそれらの本を棚に移し、誰かが好きな本だけが集まる「本棚」を完成させるというイベント。「私自身も本が好きでこの催しを考え付いた。新しいつながりが生まれたらうれしい」と話す。
今後について滝波さんは、「現在は5年制の一貫制博士課程の2年目なので、まだ数年は大学院生として在学する。これからもROOMSを続けていって、良い場を作っていけたらと思う」と展望を語った。(山口和紀)
◆1周年パーティーは6月5日(日)午前10時から。営業時間は午前9時から午後19時。日曜定休。電話029-856-4155 。HPはこちら。
「間近で大迫力」のサロン音楽会 29日につくばリサイタル新シリーズ
筑波大学の学生中心に企画・運営されているクラシックコンサートのつくばリサイタルシリーズが、新たに「サロンシリーズ」を立ち上げる。シリーズ実行委員会主催による第1回は29日、つくばアルスホール(つくば市吾妻)で「塙美里サクソフォンが彩るクラッシックの世界」を開催する。
過去のシリーズとの違いは会場の大きさだ。これまで全11回のコンサートはカピオホール(つくば市竹園)などの大きな会場を中心に行われてきたが、今回は100人規模のアルスホールでの開催となる。「日常では味わえないような特別な空間を創ることを目指した」という。
実行委員会の須澤紗音さん(筑波大学比較文化学類3年)は、「カピオホールが現在改修工事中で、別会場を探していた。会場が変わるのだから雰囲気も大きく変えたいと思い、新しいシリーズとして立ち上げた」と経緯を話す。
「サロン」と命名したのは、貴族が友人を集めて小さな演奏会を開くイメージからの着想。「これまでから考えるとかなりの小さめの会場で小人数での開催になる。日常とはまったく違う空間を創出したいと考えてこの名前に決まった。間近で大迫力の演奏を生で見ることができる機会はそう多くはない」という。
出演するサックス奏者、塙美里さんは茨城県の出身。「今回の企画は委員会でも長年温めてきたもので、実現の運びになってとても楽しみにしている」と須澤さん。サックスとピアノの編成で19世紀以前のクラシックが演じられるのは珍しいそう。
実行委員会は立ち上げ以降、コロナ渦での不自由な活動を余儀なくされてきたが、明るい兆しもある。これまでの2年間は、筑波大学が開催する新入生の歓迎イベントが中止になっていたが、今年は開催された。実行委員会も新入生のメンバーを7人集めることができた。これまでの2年間で最も多い人数で、これまでに居なかった学類の学生や、大学院生の加入もあったという。(山口和紀)
◆塙美里サクソフォンが彩るクラッシックの世界(第1回つくばリサイタルシリーズ サロンシリーズ) 5月29日(日)午後2時開演。プログラムは、ビバルディ「フルート協奏曲」(作品10-2“夜”)、バッハ「バイオリン協奏曲」(二短調第1楽章)ほか。チケット(税込み)は一般1500円、学生500円。チケットの予約はこちら。つくばリサイタルシリーズ公式ブログはこちら。
追悼、里内龍史さん 障害者の権利獲得目指し闘い続けた
障害者の当事者団体「茨城青い芝の会」会長の里内龍史さん(土浦市神立)が9日、亡くなった。66歳だった。障害者の権利獲得を目指して闘い続けた。脳性まひがあり、車いすで市民運動の闘いの現場に出掛け、文字入力音声読み上げ装置を使って発言した。昨年6月には「茨城青い芝の会」60周年記念誌(21年7月29日付)を発行したばかりだった。
滋賀県の浄土真宗の寺に生まれた。1980年、かすみがうら市の閑居山(かんきょざん)にあった障害者のコロニー「マハラバ村」に移り住んだ。滋賀の共同作業所で働いていた頃、同僚から「作業所で働いて善人ぶってもしょうがない。現代の親鸞のような面白い人が茨城にいる。浄土真宗だから、その人のところへ行って、親鸞の悪人正機の思想を学べ」と言われたのがきっかけだった。
マハラバ村は64年、閑居山の麓にあった願成寺(がんじょうじ)住職の大仏空(おさらぎあきら)=故人=がつくった。後にマハラバ村を出た障害者が全国各地で「青い芝の会」を結成し、70年代に先鋭的な社会運動を起こした。マハラバ村自体は長続きせず、ほとんどの障害者が数年で村を出た。残る人が少なくなった状況の中、里内さんはマハラバ村に移住し、最後の大仏門下生となった。
その後、大仏住職は死去し、84年12月、里内さんは村を出て、土浦市神立で自立生活を始めた。
「きれいな目をしている大人」
1人暮らしをする里内さんを長年、介助し、支えた土浦市の天海(てんかい)国男さん(79)は、大仏住職と知り合い、マハラバ村に行くようになり、里内さんと出会った。「ある日、和尚に呼ばれてマハラバ村に行った。車いすの若い男の人に声を掛けられて、政治のこととか何か議論するようなことを言われた。大仏和尚にそのことを話すと『あれは滋賀県のお寺の坊主だ』と言われた。それが里内さんとの最初」と話す。
天海さんは「里内君と初めて会ったとき、子どものようにきれいな目をしている大人だと思った。そこから付き合いが始まった」と当時を振り返った。
里内さんは生前、天海さんとの出会いについて「閑居山に来る人の中に天海(てんかい)さんがいた。大仏和尚が亡くなる1カ月前に天海さんを閑居山の手伝いに呼んだ。大仏和尚は自分の死期を悟って天海さんに閑居山に残した私を託したかった」と茨城青い芝の60周年記念誌に書いている。
天海さんは「(マハラバ村を出た後)どうしているかと気に掛かり、里内君の家を訪れるようになった。当時は介助という制度があったわけではなかったが『介護をやってくれ』ということになり、やるようになった」と話す。
「塩辛を食べること」が掟
記者が筑波大学に在籍していた2021年年3月、里内さんのお宅に伺い、話を聞く機会があった。ちょうど「青い芝の会」をテーマに卒業論文を書いたこともあり、当時アルバイトをしていた介助事業所の関係者がつないでくれた。
里内さんは、マハラバ村での暮らしのこと、茨城青い芝の会の活動のことを、文字入力装置に打ち込み、伝えてくれた。「大仏和尚は塩辛が好きで、塩辛を食べることが村の掟(おきて)だった。掟を破ると村から追い出された」という話が記者の印象に残った。当時のことをなつかしそうに話す里内さんの姿から、最後の大仏門下生の生き様の一旦が、少しだけ分かった気がした。
87年には、脳性まひ者の折本昭子さん=故人=と大仏住職らが創設した「茨城青い芝の会」の会長に就任し、JR土浦駅のスロープ闘争、障害者だけの国立大学として設置が構想された筑波技術短期大学設置反対闘争、知的障害者に対する暴行事件である水戸パッケージ事件の糾弾闘争など、障害者の権利獲得のための闘いを続けた。
近年は、地元、土浦市のバリアフリーのまちづくりにも尽力した。バリアフリー新法が策定され、住民提案制度が創設されたのを機に2007年、里内さんは、市民団体「バリアフリー新法にもとづく基本構想の策定を実現させる会」の一員として全国で初めて、土浦駅周辺のバリアフリー化などを求める基本構想策定を土浦市に住民提案し、市が実施する道路や施設の整備にあたっては、障害がある当事者が計画策定に関わるという仕組みづくりを実現させた。
当時、里内さんと共に市に住民提案した市民団体「アクセス・ジャパン」(東京都板橋区)代表の今福義明さん(63)=当時はDPI日本会議常任委員=は「里内さんは基本構想策定のときに一緒に取り組んだ仲間。里内さんが当時からおっしゃっていた、神立駅近くの危険な踏切問題はまだ解決していない」とし「昨年以降、コロナでお会いすることもなかったが、NEWSつくばで茨城青い芝の会60周年の記念誌が発行されたのを知り、シェアした。訃報を知り、本当にショック」だと話した。(山口和紀)
2台ピアノで奏でるオーケストラ 年明けのつくばリサイタルで実現
「2台ピアノで奏でるオーケストラ~名曲を旅する」をテーマに、第11回つくばリサイタルシリーズ(同シリーズ実行委員会主催)が来年1月23日、つくばカピオホール(つくば市竹園)で開かれる。筑波大学の有志学生が「つくばの地で市民や学生に気軽にクラシックを楽しんでもらいたい」と毎年開催している公演。今回は、国内外で活躍する中井恒仁&武田美和子ピアノ・デュオを迎え、ピアノで奏でるオーケストラの名曲を聴く。
実行委員会の佐藤祐人さん(筑波大人文学類2年)によれば、「一流の演奏を一般1000円、学生無料という手頃さで堪能できるのは、つくばリサイタルシリーズならでは。普段あまりコンサートになじみのない学生にも、気軽に足を運んでほしい」という。
今回はピアノが主役で、管弦楽を中心的に扱ってきたリサイタルシリーズ10年の歩みにとっても新鮮な公演となる。国内外問わずその深く誠実な音楽性で高い評価を得るピアニスト夫妻、中井恒仁・武田美和子の連弾と二重奏が彩る。「中井さんと武田さんは日本のピアノデュオ界をけん引し続けている演奏家。プログラムにはベートーベン『歓喜の歌』をはじめ世界中で広く親しまれている名曲を取り揃えており、クラシック初心者から通な人まで楽しめるコンサートになっている」と佐藤さん。
実行委員会の岩永彩花さん(同 比較文化学類3年)は「前回の公演が終わってから、ピアノが主役のコンサートをやってみたいという声があがっていた。ピアノを自ら演奏する実行委員もいる。多くの人にとって身近な楽器であり、関心が強かった」と話す。「通常はピアノが1台のカピオに、さらに東京から1台持ってくる。カピオホールでピアノが2台というのは迫力の舞台になるはず。その響きをぜひ実際に体験してほしい」。
今回のテーマは「旅」。「プログラムの曲は、ウィーン、プラハ、パリなどヨーロッパの由緒ある美しい都市を彷彿(ほうふつ)させる。演奏を聴きながらまるでヨーロッパを旅している気持ちになれるはず。コロナ禍でなかなか旅行に行けないが、コンサートで晴れやかな気分になってもらえたらうれしい」と岩永さん。(山口和紀)
◆中井恒仁&武田美和子ピアノ・デュオ(第11回つくばリサイタルシリーズ) 2022年1月23日(日)午後2時開演。プログラムは、連弾でJ. シュトラウスII世「美しく青きドナウ」ほか、2台ピアノでベートーベン「歓喜の歌」(交響曲第9番第4楽章)ほか。チケットは一般1000円、学生無料。未就学児入場不可。チケットの予約はこちら。つくばリサイタルシリーズ公式ブログはこちら
ワンコインで保護犬支援 #推しペットプロジェクト 筑波大生が立ち上げ
保護犬を気軽に支援できる仕組みをつくりたいと、筑波大学の女子学生3人が、ワンコイン(500円)から簡単に支援できるプロジェクトを立ち上げた。
「#推しペットプロジェクト」(浜野那緒代表=芸術専門学群4年)と名付けた。SNSで公開された保護犬の画像や動画を見て気に入った保護犬を選んでもらい、ワンコインを寄付すれば、選ばれた保護犬の画像をプロジェクトが拡散する。寄付した支援者にも画像をシェアしてもらう。寄付金は保護犬の薬代などに活用する。
代表の浜野さんは「保護犬を可視化し身近な存在として捉えてもらうことが大きな目標。そのためにSNSを通じて、保護犬を『推し』として応援できる仕組みを作ろうと考えた」と話す。
「推し」はアイドルグループなどに用いられている言葉で、「特に好きなもの」「他の人にも勧めたいほど好き」という気持ちを表す。「推しメン(応援している好きなメンバーの意味)」などと使われる。
プロジェクトのSNSでは「キドックスカフェ」(つくば市吉瀬)で保護されている犬たちの写真や動画を発信している。NPO法人キドックス(土浦市大畑、上山琴美代表)が運営する、保護犬らと触れ合うことが出来るカフェだ。
浜野さんらは、誇張のない保護犬のありのまま姿の発信を目指している。「たくさんの人にSNSを通じて保護犬たちを見てもらうのが最初の目的。『推し』が見つかったら、ホームページ(HP)からワンコインで支援することが出来る。寄付をしたという内容でSNSに投稿するのはハードルがあるが、『推し』の支援のシェアは気兼ねなくすることができるのではないか」と浜野さん。
HPから集まった支援金はキドックスに寄付され、保護犬の病気や感染症予防のためのの医療費やえさ代などとして用いられる。ただし、プロジェクトはキドックスとは別に独立して行っている。
コロナ禍のペットブームきっかけ
プロジェクトを立ち上げたのは去年の夏。クラウドファンディングを通じてHPの制作費や運営費を募り、約7万3000円の支援金を集めた。
きっかけについて浜野さんは「昔から保護犬に興味があったというわけではなかった。コロナ禍で安易にペットを飼ったものの飼育が困難となり、手放してしまうケースが相次いでいるというニュースを見た。そのような社会的な課題に対しアクションを起こす人たちの存在を知り、調べるようになった」と話す。一方で「保護活動は、SNSで一部の過激な発信をする人だけが切り取られ、保護団体や保護犬に対し距離を取ってしまっている人が多いのではないかと感じられた」と語る。
そこで、保護犬支援の心理的ハードルを下げるためにSNSを活用するアイデアを思い付いた。浜野さんは、友人の和田すみれさん(芸術専門学群4年)と平石あすかさん(人文学群3年)に話をし、一緒にプロジェクトを立ち上げることになった。
「SNSはその特性からペットの『かわいい』部分だけが拡散される。一方で保護犬は『かわいそう』な印象の方が届きやすい。保護施設を訪問する中で、『かわいそうな存在』として保護犬と距離をとるのはこちら側の勝手な都合でしかなかったことに気づいた」と浜野さんは語る。(山口和紀)
◆プロジェクトのHPはこちら。インスタグラムはこちら。