【鈴木宏子】百貨店などが撤退し今年2月から閉鎖されているつくば駅前商業施設クレオ(筑波都市整備所有)の再生問題で、つくば市による市民説明会が9日から同市筑穂、大穂交流センターを皮切りに始まった。約50人が参加し、「出資もテナントもサイバーダイン1社に頼っていいのか」「なぜクレオが優先なのか分からない」など問題点を指摘する意見が相次いだ。
再生案について五十嵐立青市長は、つくば市が20億円出資するまちづくり会社などをつくって、クレオの土地と建物を取得し、71億円かけて子どもたちが遊びながら科学を学べる体験型商業施設に再生する案を示している=9月28日付け。
説明会は回数を増やし計4カ所で開催される。今後は▽11日午後6時~、茎崎交流センター▽14日午前10時~、市役所▽14日午後3時30分~、筑波交流センターで開かれる。
大穂交流センターでの主なやり取りは以下の通り。
参加者 (市の再生案の)ターゲット層が見えない。(例えば書店が入るとあるが)書店の特徴が見えない。
市長 子どもを基点に各世代が楽しめる施設にする。(市が示した)こういう組み合わせが最も効果的で可能性がある。(配置するテナントは)これまでのアンケートに基づいている。
参加者 (クレオ再生案について書かれた広報つくば臨時号が新聞折り込みで配布されたため)臨時号が手に入らない人がいる。まちづくり会社と建物を保有する特定目的会社の2つをつくるというあるが、事業スキームが分かりにくい。
市長 (臨時号を読めないという)おしかりをたくさんいただいているので子どもたち経由で渡せないか検討している。2つの法人をつくるのは税制上の優遇を受けられるため。
参加者 出資もテナントもサイバーダインに相当頼っている。1社に頼っていいのか。
市長 サイバーダイン(などがつくる投資会社)はキャッシュを300億円もっている。
参加者 つくばセンタービルがかなり空いている。磯崎新がつくった建物だ。なぜ優先度としてクレオなのかが欠けている。
市長 筑波都市整備は急に3棟(クレオとキュートとモグ)を売りたいと言っている。全棟マンションにしてはいけない。クレオとつくばセンタービルは双子のような施設。クレオが固まらないとちぐはぐになる。
参加者 子どもをターゲットに置くのは甘い考えだ。子どもたちが動いて親が動くのを期待するのは古いモデル。子どもが少なくなり競合にさらされる。年配者が再チャレンジする場とするコンテンツを増やしてはどうか。
市長 (再生案は)教育を柱にしている。教育には皆お金を使う。研究者OBが活躍する場を3、4階につくっていきたい。
参加者 子ども向け施設だと平日の日中利用する人は少ない。中心部は十分恵まれている。周辺部は公共サービスが足りていない。税金でやる事業の場合、一等地でやるのは理解が得られない。
市長 平日の日中は考えていきたい。中心市街地は公共サービスが根本的に欠落している場所だ。
参加者 食品スーパーとあるが同じようなスーパーでなく高級スーパーに入っていただきたい。
市長 中身はこれからいろいろ工夫していきたい。
参加者 市役所のサテライトオフィスをつくって情報発信するスペースや、市長と市民が同じ目線で議論できる機能がほしい。
市長 6階のミニシアターで市が取り組んでいることを紹介したり、トークショーなどができると期待している。
参加者 クレオが商業施設として不良物件になったのは立体駐車場であるという内的要因がある。車で行きやすいかどうかが命運を決する。つくばセンタービル付近は駐車場がどんどん減っている。(市の再生案は)ゲームチェンジャーにはならない。
市長 (立体駐車場の)1区画を広くする工事をしている。相当止めやすくなる。無料時間を延長する交渉をしていく。
参加者 企画書はひじょうによくできていて、説明は丁寧でよかった。
市長 つくば市の市街地のまちづくりは国とURがやってきた。市が主体的に動くタイミングは今しかない。今やらなければ行政として責任放棄だ。
参加者 筑波都市整備が民間事業者に売却した場合、民間事業者は旧西武側に商業施設と公共施設を計画していると解釈してよろしいか。
市長 ご指摘の通りだが、市の意向をまったく無視している。マンションが建つ建物に多額の投資をしていくことはできない。
参加者 20億の出資というのは市民1人当たり1万円負担になる。テナントに出ていかれるリスクを市が背負わない方がいい。クレオ1棟で中心市街地の問題は解決できない。無理に急がない方がいい。
市長 空き室率を5%に設定している(固く見積もっている)。