つくば市が計画しているつくばセンタービル(つくば駅前)のリニューアル事業について、同市は、改修に向けた実施設計の入札を9月7日に実施する。
センタービルは、プリツカー賞を受賞した建築家、磯崎新さんが設計し、ポストモダン建築の代表作として世界的に評価されている。市の改修計画に対しては、市民団体から見直しを求める要望書が出され、専門家からも「大がかりな改修をしてしまうと登録文化財の資格すら手放すことになる」など懸念の声が出ている。
リニューアルに向けた実施設計の一般競争入札は、5日に市ホームページで告示された。開札は9月7日に実施する。予定価格は4742万円(消費税抜き)、設計書などの作成期間は来年3月まで。
エスカレーター2基を設置するなどのリニューアル計画のうち、センター広場北側(ホテル側)のエスカレーター1基とV字型階段の改修は、市議会の意見を受けて取り止める。(4月27日付 6月3日付 6月22日付)
一方、西側(クレオ側)のエスカレーターは当初の計画通り新設する。
リニューアル計画の主な内容は、ほかに▽現在の1階ノバホール小ホールや廊下、市民活動センターなどに市民活動総合センターや交流センター、市民窓口をつくる▽ノバホール西側の外階段の半分をスロープにして土浦学園線から車両が出入りできるようにする▽現在の吾妻交流センターの内装を解体するーなど。
これに対し市民団体「つくばセンター研究会」(冠木新市代表)は6月1日、つくば市が進めようとしている計画は文化財としての価値を失うことになるなどとして、エスカレーター2基いずれも設置を取り止めるよう要望していた。(6月1日付)
さらに同会が6月27日に開催したシンポジウムでは、筑波大学の鵜沢隆名誉教授が「つくばセンタービルの中央広場は主要な動線から孤立した、閉鎖的な屋外空間であることが広場の大きな特徴であり、広場に降りていくことを目的とした人でないと降りていかない広場なのだから(市が目的に掲げるにぎわい創出などは)エスカレーターを付ければ解決できる問題ではない」「磯崎さんの設計意図は、1階と2階で交わされる視線の交差、視線を介したある種の劇場広場のようなものとしてつくられた」「最も特筆すべき点はフォーラムと呼ばれる中央広場であると評価されている」など建築の特徴を話し、市のリニューアル計画に懸念を表明した。(6月27日付)
神奈川大学の六角美瑠教授はシンポジウムで「つくば市の計画書には、磯崎さんが中央広場を『にわ』と言ったから『シェアガーデンにしよう』と書いてあるが、取り違えている。磯崎さんがいう『にわ』の意味はコスモロジーとしてのセンターであり、ここにしか展開できないようなスケールのものごとを起こせよ、と磯崎さんは言っているだと思う」などと指摘し、疑問を投げ掛けていた。(鈴木宏子)