水曜日, 8月 19, 2026
ホームスポーツ常総だから勝たなきゃではなく歴史つくるチームに 島田直也監督【高校野球展望'25】㊦

常総だから勝たなきゃではなく歴史つくるチームに 島田直也監督【高校野球展望’25】㊦

県内強豪校の名監督インタビュー最終回は、常総学院の島田直也監督。第107回高校野球選手権茨城大会開幕を控え、チームの仕上がりや手応えをお聞きした。

低めの投げ分けがうまい

―今年のチームについて教えてください。昨年と比較してどのような特徴を持っていますか?

島田 昨年は投手力、打撃力、守備力ともに個々の力が高かったのですが、今年は全体的に力が落ちます。投手も野手も、調子の良い選手を見極めながら起用しています。

エース右腕の小澤頼人投手

―投打の中心となる小澤頼人投手についてですが、秋は最速145キロをマークしながら、春は球速がやや落ちていた印象です。

島田 球速を求めすぎるとフォームが崩れ、コントロールが乱れてしまいます。春の大会ではその点を意識して、あえてコントロール重視で投げていたと思います。土台ができれば球速は自然と戻るもの。鋭いキレのあるボールを意識してほしいと伝えています。

―春の大会ではインコースとアウトコースの投げ分けが非常に効果的に見えました。

島田 そこが彼の持ち味です。低めへの投げ分けが非常にうまい。関東大会では少し高めに浮いて打たれましたが、夏に向けては修正して臨みます。

俊足の佐藤剛希捕手

―打撃陣では佐藤剛希選手と柳光璃青選手が印象的でした。

島田 調子を落とした選手がいる中で、この2人がしっかりとカバーしてくれました。小澤と佐藤剛希は昨年メンバー入りしており、今年の中心選手です。柳光も力がありましたがけがでメンバー入りできず、今年こそはチームを引っ張ってくれると期待しています。

次の代のチームつくる難しさ実感

若手の育成と課題

―春の県大会では1年生の出場も目立ちました。

島田 将来を見据えて、若い選手に経験を積ませました。上級生にも刺激になったと思います。

―秋・春の戦いを経て見えてきた課題は?

島田 実力ある代の次にチームをつくる難しさを改めて実感しました。監督1年目だった「大川・秋本・田邊世代」のあとも、結果が出なかった。今回も似たような状況で、最初は秋に勝てる気がしませんでした。ですが、そこからチームがまとまり、秋に4強まで進出できたのは大きかったですね。

―春は県大会3連覇を達成されました。

島田 3年生たちは1年時から優勝の景色しか見ていません。「3連覇を君たちの代で止めるのか」とプレッシャーをかけながら臨みました。達成できたことは大きな自信になると思います。

―関東大会では東海大相模に大敗。受け止めを教えてください。

島田 強豪校との対戦で悔しさを経験できたことは、選手たちにとってプラスでした。練習に対する姿勢も変わってきたと感じています。

采配を振るう島田直也監督(ベンチ中央)

自分の強みアピールしていた

―夏の組み合わせ抽選についていかがですか。

島田 Aシードでしたので抽選はありませんでしたが、会場で結果を見ていて童心に戻りました。「さあ、やるぞ」と気持ちが引き締まりました。

―これまで出会った指導者の中で、影響を受けた方はいますか?

島田 プロ4球団、独立リーグでも8年やってきましたが、特定の誰かというより、出会ってきた多くの指導者から良い部分を吸収してきたと感じています。

―ご自身の高校時代を振り返って、どんな選手でしたか?

島田 「絶対負けない」という強い気持ちを持っていました。与えられたチャンスは必ずものにするつもりで、自分の強み(肩・足)をとにかくアピールしていました。

―今の選手たちとの違いは?

島田 最近の選手は「どうしたら使ってもらえるか」を考える力が弱く、自主練でも好きなバッティングばかり。私は「守備や走塁、バントでベンチ入りできる」と伝えているのですが、なかなか行動に移す選手が少ない。逆に、過去には自己プロデュース力でベンチ入りをつかんだ選手もいました。社会に出ても大事な力ですので、今のうちから身につけてほしいです。

「常総学院の使命」転換点に

―常総学院は夏の甲子園から9年遠ざかっています。そのプレッシャーは?

島田 「常総は勝って当然」という空気が、選手にとってプレッシャーになっていると感じています。これまでは「気にするな」と言ってきましたが、今年は「楽しもう」という方向に意識を変えたいと思っています。

―「楽しむ」とは、どのような意味ですか?

島田 緊張感の中での本気の楽しさです。その感覚があれば自然と力が出せると考えています。

―センバツよりも「夏」にこだわりがあるということでしょうか。

島田 やはり「夏の常総」が周囲からの評価にも直結します。「甲子園で勝つ」ではなく、まずは「茨城を勝ち抜く」。そこに焦点を置いています。

―最後に、今年のチームに期待することを教えてください。

島田 「常総だから勝たなきゃ」ではなく、「自分たちが歴史をつくる」という意識を持って戦ってほしいです。甲子園出場はゴールではなく、その過程で得る経験こそが大きな財産。今年は、常総学院としても大きな“転換点”になる予感がしています。

【取材後記】過去4年間、夏を前にしたタイミングで島田監督に話をうかがってきたが、今年のインタビューではこれまでと少し違う空気を感じた。かつては「今年こそ」という悲壮感がどこかに漂っていたが、今回はむしろ“開き直り”にも似た落ち着きと、確かな覚悟が伝わってきた。選手たちに求めるのは「結果」ではなく「本気の中で楽しむ」こと。そこに、勝ち負けを超えた野球の本質がある。名門・常総学院の重圧を背負いながらも、今あるチームの可能性を信じて進む監督の姿は、頼もしくもあり、まさに“歴史をつくる”旅の先頭に立つ存在だった。今年こそ、夏の常総に新たな物語が刻まれるかもしれない。その瞬間の目撃者でありたい。素直に、そう思わせてくれる取材だった。(伊達康)

終わり

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