【ノベル・伊東葎花】
我が家はいわゆる「見える」家系だ。
パパもママも私も、生まれたときから幽霊が見える。
ただ、どういう訳かお姉ちゃんだけは「見えない」人だ。
霊感が全くない。
だからといって困ることなど何ひとつない。
霊なんて、見えないに越したことはないのだ。
そんな我が家に、ちょっと困ったことが起きた。
お姉ちゃんが、幽霊を連れてきてしまったのだ。
青白い顔の男の霊が、お姉ちゃんの肩に乗っている。
「どうする? パパ、ママ、教えてあげた方がいいかな?」
「あの子は怖がりだから、きっとパニックになるよ」
「悪い霊じゃなさそうだし、明日にはいなくなるでしょ」
お姉ちゃんはまるで気づかない。
「ああ、肩が重い。誰かもんでくれない?」
「お姉ちゃん、もんだくらいじゃ治らないよ」
「そうか。疲れがたまってるのかな。明日マッサージ行こう」
(マッサージでも治らないけどね)
翌日、お姉ちゃんに取りついた霊は、いなくなるどころか2人に増えた。
しかもまた男の霊だ。そして日を追うごとに、男の霊が増えていく。
「お姉ちゃん、会社で何かあった?」
「何かって?」
「男の人がいっぱい死んだとか」
「あるわけないでしょ」
「じゃあ、最近変わったことは?」
「何もないわよ。占いでモテ期到来って言われたけど全然だめよ。婚活はハズレばかり。私のモテ期はいつ来るの?」
いつもの愚痴が始まっちゃった。退散しよう。
とはいえ、放ってはおけないので、知り合いの霊媒師に来てもらった。
「おばば様、うちの長女はものすごい怖がりなんです。霊がついたと知ったら大騒ぎです。どうか寝ているうちに除霊してください」
「ふむ、見える家系に生まれたのに、見えない上に怖がりとは、ふびんなことじゃ」
お姉ちゃんの部屋に行くと、ベッドの周りに霊たちがふわふわ浮いている。
何も感じないお姉ちゃんは、すやすやと寝ている。
「悪い霊ではないな。どれ、話を聞こう」
おばばが、霊たちひとりひとりに話しかけた。
私たちには霊は見えるけど、声は聞こえない。
ここはおばばに任せて、隣の部屋で除霊が終わるのを待った。
30分後、おばばがお姉ちゃんの部屋から出てきた。
「終わったぞ。もう大丈夫じゃ」
「なぜ、あんなにたくさんの霊が姉に?」
「恋じゃ。あの霊たちは、あの子に恋をしたそうじゃ。しかし、しょせん、幽霊と人間の恋。かなわないと知って、みんな離れた。切ないのう。罪な女じゃ」
翌日、お姉ちゃんはすっきりした顔で起きてきた。
「今日は肩が軽いわ~」
「よかったね」
「次の婚活はうまくいくような気がする。私にもやっとモテ期が来るかも」
…お姉ちゃん、モテ期、来たよ。
生きてる男じゃないけどね。
(作家)






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