金曜日, 9月 11, 2026
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見える人、見えない人 《短いおはなし》54

【ノベル・伊東葎花】

我が家はいわゆる「見える」家系だ。
パパもママも私も、生まれたときから幽霊が見える。
ただ、どういう訳かお姉ちゃんだけは「見えない」人だ。
霊感が全くない。
だからといって困ることなど何ひとつない。
霊なんて、見えないに越したことはないのだ。

そんな我が家に、ちょっと困ったことが起きた。
お姉ちゃんが、幽霊を連れてきてしまったのだ。
青白い顔の男の霊が、お姉ちゃんの肩に乗っている。

「どうする? パパ、ママ、教えてあげた方がいいかな?」

「あの子は怖がりだから、きっとパニックになるよ」

「悪い霊じゃなさそうだし、明日にはいなくなるでしょ」

お姉ちゃんはまるで気づかない。

「ああ、肩が重い。誰かもんでくれない?」

「お姉ちゃん、もんだくらいじゃ治らないよ」

「そうか。疲れがたまってるのかな。明日マッサージ行こう」

(マッサージでも治らないけどね)

翌日、お姉ちゃんに取りついた霊は、いなくなるどころか2人に増えた。
しかもまた男の霊だ。そして日を追うごとに、男の霊が増えていく。

「お姉ちゃん、会社で何かあった?」

「何かって?」

「男の人がいっぱい死んだとか」

「あるわけないでしょ」

「じゃあ、最近変わったことは?」

「何もないわよ。占いでモテ期到来って言われたけど全然だめよ。婚活はハズレばかり。私のモテ期はいつ来るの?」

いつもの愚痴が始まっちゃった。退散しよう。

とはいえ、放ってはおけないので、知り合いの霊媒師に来てもらった。

「おばば様、うちの長女はものすごい怖がりなんです。霊がついたと知ったら大騒ぎです。どうか寝ているうちに除霊してください」

「ふむ、見える家系に生まれたのに、見えない上に怖がりとは、ふびんなことじゃ」

お姉ちゃんの部屋に行くと、ベッドの周りに霊たちがふわふわ浮いている。
何も感じないお姉ちゃんは、すやすやと寝ている。

「悪い霊ではないな。どれ、話を聞こう」

おばばが、霊たちひとりひとりに話しかけた。
私たちには霊は見えるけど、声は聞こえない。
ここはおばばに任せて、隣の部屋で除霊が終わるのを待った。

30分後、おばばがお姉ちゃんの部屋から出てきた。

「終わったぞ。もう大丈夫じゃ」

「なぜ、あんなにたくさんの霊が姉に?」

「恋じゃ。あの霊たちは、あの子に恋をしたそうじゃ。しかし、しょせん、幽霊と人間の恋。かなわないと知って、みんな離れた。切ないのう。罪な女じゃ」

翌日、お姉ちゃんはすっきりした顔で起きてきた。

「今日は肩が軽いわ~」

「よかったね」

「次の婚活はうまくいくような気がする。私にもやっとモテ期が来るかも」

…お姉ちゃん、モテ期、来たよ。
生きてる男じゃないけどね。

(作家)

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