8月8日 つくば
詩の朗読や音楽を通じて15年目を迎える東日本大震災の記憶を継承する「15年目の『いのり』2011–2026『詩の礫(つぶて)』」が8月8日、つくば駅前のコンサートホール、ノバホールで開かれる。登壇するのは、自身も被災経験を持つ福島県出身の詩人で高校教員でもある和合亮一さん、震災以降、被災地への思いを込めた楽曲を作るロックバンド・アジアン カンフー ジェネレーションのボーカル後藤正文さん、筑波大出身の舞踏家で山海塾の岩下徹さん、土浦市で生け花教室を主宰する華道家の小春丸さん。ステージ上には、つくば市在住の写真家で、震災直後から東北や関東の被災地域の撮影を続けてきた齋藤さだむさんの作品がスクリーンに投影される。
主催団体で、県南地域で芸術文化活動を企画・運営するウォーミングアップアートプロジェクト代表(5月25日付)の野口修さんは「会場では、公募した詩を、作った方が登壇して朗読する市民参加のステージもある。8月は祈りの季節でもある。1000人を収容できる空間で、観客も参加する企画を通じて、会場にいるすべての人が祈りを通じて他者との時間を共有する機会になる。震災から15年がたつ中で、来場する観客を含めた空間そのものが作品になるはず」と思いを述べる。

「自分自身と向き合う場」
今回の企画の出発点について、野口さんは「震災後ずっと、いつか和合さんをつくばに呼びたいと思っていた」と振り返る。これまで何度も打診してきたが、実現には至らなかった。震災から15年という節目を迎えた今年、「今やらなければ難しい」と考え、本格的に企画を動かしたという。
「できるだけ多くの人に、自分自身の思いを持って会場に来てもらいたい。お盆の時期に、言葉を聞き、花を見て、身体の表現に触れ、音楽を聴く。その中で、自分のことを考える時間が生まれるんじゃないかと思った」

野口さんが重視したのは、震災を「知識として学ぶ」場ではなく、表現を通じて自分自身と向き合う場にすることだった。きっかけの一つは、水俣病に関するイベントに参加した経験だという。「水俣の話を聞いているのに、気づくと自分のことを振り返っていた。あれは何なんだろう、とずっと考えていた。震災についても、和合さんの朗読を聴きながら、聴く人が『自分も当事者として考える』ような時間をつくれないかと思った」
会場では、和合さんと後藤さんのセッションに加え、公募で集めた詩の朗読も行われる。応募者の中から選ばれた10人ほどが自ら登壇し、自分の詩を読む予定だ。「市民の声を聞きたい。プロの表現ももちろん大切だが、普通の人が自分の言葉を読むことも観客の心にしみいるのではないかと思っている」
朗読の間には、華道家の小春丸さんが花をいけ、背後のスクリーンには出演者や会場の様子、そして齋藤さんの写真が映し出される。最後には、出演者全員による即興のフリーセッションも予定されている。野口さんは、このイベントを「完成された作品の鑑賞会」ではなく、「会場にいる人全員でつくる空間」だと考えている。「お客さんが表現を見ながら、自分自身を考えることができればいい。記憶を振り返るだけでなく、これからどう生きていくか、その『いのり』につながってくれたら」と語る。
被災地に向き合う写真家・齋藤さだむさん

会場で、被災地を撮影した写真によるスライドショーを上映するつくば市在住の写真家・齋藤さだむさん(77)は、震災直後から東北沿岸の撮影を続けてきた。2011年3月、震災発生直後に県内の被災地を訪れ、その後、福島県南相馬市出身の詩人・若松丈太郎さんに関する書籍制作に関わり、福島県内から、さらに青森から千葉まで広範囲の被災地を巡った。「南相馬の原町駅から海の方へ向かっていくと、普通の風景だったものが、だんだん建物が減って、崩れていく。その変化が本当に衝撃的だった」と振り返る。テレビで見た津波の映像とは違い、現地では「人の目の高さ」で破壊を体感したという。
1977年から現在のつくば市に暮らす齋藤さんは、筑波研究学園都市の形成のほか、ダム、原発、石油備蓄基地など、国内外の巨大エネルギー関連施設を長年撮影してきた写真家でもある。人間がつくり上げた巨大構造物を見続けてきたからこそ、津波によって一瞬で消し去られた沿岸の風景は特別な意味を持った。「人間の力があれば何でもできる、という世界を見てきた。でも津波は、人間の意志とは関係なく、冷徹にすべてを消滅させてしまう。その対比を強烈に意識させられた」
震災から15年がたった現在も、撮影は続いている。今回の上映に向けて、15年間の写真を改めて見直していると話す。
野口さんは「観客を含めた空間そのものが作品になる」と語る。震災を直接経験していない世代も増えている。15年前に生まれた子どもたちは、今では中高生だ。「震災を経験していない人にとって、想像力の問題は大きい。東日本大震災という未曾有の出来事があり、その後の社会の中で私たちは生きている。だから何度でも『生きる』ということを考え直す必要があるはず」と語る。(柴田大輔)
◆「15年目の『いのり』2011–2026『詩の礫』」は、8月8日(土)午後6時から、つくば市吾妻1-10-1 ノバホールで開催。出演は、和合亮一さん(朗読/詩人)、後藤正文さん(ボーカル・ギター/アジアン カンフー ジェネレーション)、岩下徹さん(ダンス/元山海塾)、小春丸さん(生け花)、齋藤さだむ(写真)。入場は一般4000円、学生・障害者3000円、高校生以下2500円。チケット販売は、ノバホール窓口のほか、イープラス、主催団体のウォミングアップへ。また専用サイトでは7月21日(火)まで、震災にまつわる詩を募集している。詳細はイベント公式サイトへ。






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