火曜日, 10月 6, 2026
ホームスポーツ中軸不在、伝統の小技と走塁極める 常総学院・島田監督【高校野球展望’26】㊤

中軸不在、伝統の小技と走塁極める 常総学院・島田監督【高校野球展望’26】㊤

第108回全国高校野球選手権茨城大会が7月4日開幕する。今年も、強豪の常総学院と土浦日大の名監督にインタビューした。先頭を飾るのは、茨城県の名門・常総学院高校野球部。長年、県下をけん引してきた同校において、今、指揮官の島田直也監督は「未知の可能性」を秘めたチームと向き合っている。春の県大会では、強豪・土浦日大の前に屈したものの、監督の眼差しは悲観的ではない。中軸不在という課題を抱えながらも、なぜチームは強くなれるのか。投手陣の育成から、現代野球の是非を問うDH(指名打者)制、7回制の議論まで、島田監督の率直な言葉から「常総野球」の現在地をひも解く。

チャレンジャーとして挑む

―まず、春の大会を終え、チームの仕上がりをどう見ていますか。

島田 正直に言えば、過去2年と比べると戦力は劣ります。だからこそ、常に「チャレンジャー」の意識で戦う必要がある。春の反省点は、勝負どころでの得点力不足です。実戦になると練習通りのプレーができないもろさがある。特に投手陣は、「抑えなければならない」という重圧にさいなまれ、ストライク先行の投球ができていない。守備陣が間延びしてしまう悪循環をいかに断ち切るかが、夏の最大のテーマです。

―過去2年間とは異なる戦い方が求められそうですね。

島田 そうですね。チームに絶対的な中軸打者がいない。だからこそ、本校の伝統である小技と走塁を極めるしかないんです。これに尽きます。ただ、それが完遂できる時とできない時の波が激しい。夏に向けて、これら基本動作の徹底が勝敗を分けるでしょう。

「常総のエース」という重圧に負けてる

―投手陣の課題や、個々の選手の見立てはいかがでしょうか。

島田 自分自身が投手出身なので、投手には人一倍の思いがあります。しかし今の投手たちは「常総学院のエース」というプレッシャーに負けている印象です。「俺が抑えてやる」という強気な姿勢よりも、「抑えなければならない」という受け身の心理が働き、リズムを崩してしまっている。橋元大雅のような高いポテンシャルを持つ選手もいますが、実戦で投げてみないと分からないもろさがあり、現時点では軸として任せきれないのが実情です。

―チーム全体をまとめる存在として、誰に期待していますか?

島田 現時点では、キャプテンの水口煌太朗を筆頭にチームを鼓舞しようとする姿勢は見られます。ただ、チームがまとまっているのか、それともギクシャクしているのか、実は私にもまだ分からないんです。特徴がないと言えばそれまでですが、裏を返せば、一人ひとりが役割を理解して一つにまとまった時、去年、一昨年のポテンシャル重視のチーム以上の力を発揮できるのではないか、という期待も抱いています。

究極の決断―メンバー選考の苦悩

―ベンチ入りメンバーを決める際、何を最も重視されていますか。

島田 そこが毎年一番悩むところです。練習内容を日々注視し、「今のチーム状況なら、この場面でこの選手が必要だ」というピースを埋めていく作業です。守備固めや大事な局面でのバント、走塁など、特化した能力を持つ選手であれば当然ベンチに入る可能性があります。

打つだけであれば、仮に4打席4本塁打打てば別ですが、それ以外は確実性が全てです。打てなかったら終わり、という選手をベンチにはおけません。打撃一辺倒ではなく、チームの勝利にどう貢献できるかという役割を全うできるかを見ています。二番手以降の選手がレギュラーを脅かす競争を生み出せるか。そこがこの夏に、チームの真価を問う鍵になるはずです。

君たちが歴史をつくればいい

―常総は夏の甲子園出場から10年遠ざかっています。監督就任から5年、夏の甲子園への思いを聞かせてください。

島田 本校が夏の甲子園に出場することに対して、周囲の期待の大きさを常に感じています。私自身、就任してから春の選抜には二度出場させてもらっていますが、「常総が甲子園に行っている印象がない」と言われてしまいます。それだけ、夏の甲子園が特別だということですよね。

でも何年遠ざかっているかは今の選手には関係のないことであり、選手には「君たちがまた歴史をつくればいい」と常に伝えています。過去の伝統に縛られる必要はない。プレッシャーはすべて監督である私が背負う。選手には、自分たちが新しい歴史をつくるという責任を、前向きな自信に変えて欲しいと思っています。最後は笑って終われる夏にするために、その準備をするのが私の使命だと感じています。

コロナ禍で「一人で完結」に偏ったか

―近年、集まってくる選手たちの傾向に変化はありますか。

島田 以前に比べ、打撃には自信があるものの、守備や走塁をおろそかにする選手が増えてきたと感じます。コロナ禍で満足に集団練習ができない期間が長く、打撃練習のような「自分一人で完結できる練習」に偏ってしまった影響かもしれません。野球は9人でやるものです。守備やキャッチボールのように相手との対話が必要な技術を磨かなければ、本当の意味でのチームにはなれない。今の選手には、打つこと以外でも貢献できる技術を身につける重要性を繰り返し伝えています。

7回制移行には明確に反対

―春から導入されたDH制や、7回制への移行議論についてどう見ていますか

島田 DH制についてはメリット・デメリットの両面があります。打撃特化型の選手にチャンスが広がる点は良いですが、一方で代走や守備固めといった戦術的な手駒がより多く必要になります。

また、7回制移行には明確に反対です。9イニングという長い物語の中で起こるドラマこそが高校野球の魅力。現場の指導者や選手たちの声を無視して決めるべきではないと感じています。

選手たちへ「強さ」から「チームの力」へ

―夏の大会に向けた展望と、選手への思いを教えてください。

島田 組み合わせ云々よりも、とにかく、目の前の試合を一つずつ集中してやり切ること。それだけです。常総学院という過去の歴史が、選手たちに過度なプレッシャーをかけている側面もあるかもしれません。しかし私が選手に求めるのは、今この瞬間のプレーに魂を込めることです。

練習で培った小技や走塁は、決して裏切りません。個々の能力が未完成でも、チームとしての決まり事を徹底し、全員が同じ方向を向いた時、このチームは大きな化学反応を起こすと信じています。どんな苦しい展開になろうとも、選手一人ひとりが自分の役割を全うし、グラウンドで躍動する姿を期待しています。この夏、彼らが自分たちの力で新しい常総学院の野球を証明してくれることを願っています。

まずは自分たちの野球をやり切ることです。常総学院という看板がある以上、周囲からの期待もプレッシャーも大きい。しかし、過去の伝統をなぞる必要はない。選手には、ただ目の前のプレーに没頭し、最後は笑って終われる夏にしてほしいですね。

力発揮できるよう熱い応援を

―最後に、応援してくださっている皆様へ一言お願いします。

島田 常総学院という看板がある以上、大会では常に注目を集める存在です。多くの方々が期待を寄せ、時には厳しい視線を送ってくださることも承知しています。その期待に応えることこそが、私の使命だと思っています。

選手たちは、OBや地域の皆様の温かい応援を背に受けて戦っています。どうか、彼らが持てる力を発揮できるよう、変わらぬ熱い応援をお願いします。

【取材後記】インタビューを通じて感じたのは、島田監督の「厳しさと慈愛」のバランスだ。中軸不在と評し、選手の個々の未熟さを指摘する言葉の裏には、夏までに何とかして一つにまとめ上げたいという熱い指揮官としての思いがあった。打撃を「水物」と割り切り、小技と守備という「野球の根幹」を強調するスタイルは、伝統ある常総学院が再び甲子園の頂点を目指すための最短ルートなのかもしれない。10年ぶりの選手権大会出場へ。選手たちが監督の信頼に応え、勝利の扉を力強くこじ開けてくれることを期待したい。(伊達康)

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