【崎山勝功】児童虐待防止の啓発活動「オレンジリボン運動」を広める「子どもを守ろう!オレンジリボンたすきリレー2020」の出発式が6日、土浦市役所うらら屋外広場で開かれた。今年は新型コロナウイルス感染防止対策として従来のリレー形式に代わり、児童施設職員4人が広報車に乗って、ゴールの県庁(水戸市)に向かって出発した。
出発式で児童養護施設「窓愛園」(土浦市殿里)の上方仁理事長は、コロナ禍で家庭内の児童虐待が増えている現状に触れ「今年も(リレーを)止めるわけにはいかない」と訴えた。
同リレーは、県児童福祉施設協議会、県要保護児童対策地域協議会が主催して開かれ、今年で8回目。
コロナ禍で潜在化か 休校明けに通告増加
県警人身安全対策課によるとコロナ禍の今年は、1月から6月末までに「児童虐待や虐待の疑いがある」として、警察が児童相談所に通告した件数は798件と、前年同期比で95件増加した。県警の担当者は、一般論と前置きした上で「児童虐待の認識が広まったためではないか」と分析する。
土浦児童相談所の中林貴紀所長は「4、5月は学校が休みで、子どもたちの所属する集団が活動していなかったので通告件数はあまり増えなかった」と述べた。学校や保育所が再開した6月以降から通告件数が増え始めたという。「4、5月は(休校のため虐待が)見えなかったのが、6月以降、上がってきた傾向がある」と指摘した。
その上で中林所長は「誰かがきちんと(虐待を)見付けてあげないといけない。見付けたらためらわずに通報してほしい」などと呼び掛けた。
過去最高を更新
県青少年家庭課の統計などによると、つくば、土浦市など県南14市町村を管轄する土浦児童相談所管内の2019年度虐待相談対応件数は1116件(全相談件数2182件中51%)。県全体でも3181件(全相談件数6754件中47%)といずれも過去最高を更新している。
土浦児童相談所によると、19年度の虐待相談の内訳は▽心理的虐待584件、52%(県全体は1844件、58%)▽身体的虐待362件、32%(同856件、27%)▽ネグレクト(育児放棄)155件、14%(同439件、14%)▽性的虐待15件、1%(同42件、1%)―となっている。
県内では、県子どもを虐待から守る条例が19年4月から施行され、児相の体制が強化された。土浦児相は副所長が配置され、職員が7人増加した=3月31日付。一方で、児童虐待死亡事件が相次いだ千葉県では、県社会福祉審議会が今年6月に松戸市周辺など人口の多い地域に児相を2カ所新設し、計8カ所に増やすことを答申した。柏市と船橋市はそれぞれ市独自の児相を立ち上げるという。
※メモ
【オレンジリボン運動】04年、栃木県小山市で当時3歳と4歳の兄弟が、同居していた父親の友人から暴行を受けた末に川に投げ込まれて死亡した事件を受けて、05年に同市の市民グループ「カンガルーOYAMA」が事件の再発防止と児童虐待防止を目指して始まった。
【県子どもを虐待から守る条例】児童相談所や市町村間での適切な引き継ぎの実施や警察との連携強化、児童福祉司などの専門職員の増加を盛り込んだ議員提案条例。18年12月県議会で成立し、19年4月1日から施行された。