【相澤冬樹】土浦市中央、千手院(せんじゅいん)で17日夕、和紙に包まれた明かりをともす「観音さまの花あかり」が催された。和紙灯籠の制作者、星崎雪之さん(つくば市)があらかじめ、同市内で制作していた10数点の明かりは、完成を待ってお堂に持ち込まれ、午後4時過ぎに点灯、雨の境内を照らし出した。
ねぶたの技法を生かした和紙灯籠を手掛けてきた星崎さんは今回、土浦にちなみ、ハスの花をモチーフに選んだ。針金で作った骨組みに和紙をまとわせていく手仕事の「ライブ」を公開することじたいが作品だとして、公開先の工房入りした8月以降、霞ケ浦周辺のハス田に足を延ばして観察を繰り返し、制作に取り組んだ。
工房にほど近い千手院は、室町時代の作と伝わる木造千手観音菩薩立像(市指定文化財)をまつる。普段は無住のお堂だが、毎月17日には中央2丁目町内会(高橋勤区長)により縁日がもたれ、千手観音像がご開帳となる。月例の縁日は「戦前からあるのは確かだがいつから始まったのかは分からない、それほど古い」(市村勇治さん)そうで、コロナ禍の中でも休止することなく続いた。
折からお堂の照明工事に入った業者が星崎さんに話をつないだところ、「仏様とハスの花というのも因縁と感じた。千手の中の一手はハスを握っている」(星崎さん)と完成披露の舞台に選らんた。ふだんの縁日は午後2時ごろには散会となるが、町内会は開催を午後4時まで遅らせて催事を歓迎した。

朝からあいにくの雨模様となったが、点灯の前後から三三五五人が集まりだした。地元からの参加者以外にも、工房に日参して制作を見守った人や常総市から来たという母子連れの姿などがあり、千手観音との初対面を果たした。
LED照明は白色光ばかりでなく淡いブルーや薄いイエローに発色し、和紙が光彩を和らげた。埴科ききさん(つくば市)のハープ演奏が流れ、参加者の談笑が続くなか、飛び入り参加の真言宗豊山派の尼僧による読経が行われる展開もあり、静かな盛り上がりをみせた。
星崎さんは「千手院での花あかり開催は1回限りだが、これがきっかけに新たな縁が生まれてくれたらうれしい」と語り、高橋区長は「毎月の縁日は地域住民限定ということではないので機会があれば覗いてほしい」と地域活動の灯をたやさぬ思いを新たにした。