【コラム・坂本栄】今年はこれまでの秩序や構造が大きく変わる年になりそうです。関税を引き上げて国内産業を守ろうとするトランプさん(自由貿易システムの破壊)、武力で政治目標を達成しようとするプーチンさん(古典的な戦争論の復活)といった政治経済の話だけではありません。メディアの世界も大きく変わるような気がします。
ネットにかじを切る新聞社
昨年12月、新聞を読んでいて納得した記事が2つありました。日本経済新聞の電子版有料読者が100万人を超えたとの告知記事(10日朝刊)と読売新聞が米ダウ・ジョーンズ社と提携して電子版有料経済ニュースサービスを始めるという告知記事(17日朝刊)です。前者はネット経由で経済情報を入手する人が大台に乗ったということ、後者は発行部数トップの新聞社もネットサービスを経営に組み込む時代に入ったということです。
国内の新聞部数はピークの半分以下に減っています。21世紀に入り、情報を伝える主役が新聞からネットに移りつつあることが主因ですが、新聞社も経営資源をネットに振り向けるようになりました。
7年前、本欄25「…部数10年で2割減…」(2018年2月19日掲載)の中で、新聞の部数は早晩「絶望的な数字になろう」と書きました。減少のテンポは予想よりも激しいようで、新聞社のネット・シフトは当然でしょう。新聞で育った団塊の世代(1940年代後半生まれ)が世を去り、新聞をあまり読まないネット世代の時代に入りますから、新聞社は業態名の変更を迫られるかも知れません。
新聞やTV業界にとってショックだったのは、YouTube、Facebook、X(旧Twitter)といったSNSの影響力が伝統メディアのそれを上回るようになったことです。都知事選挙(昨年7月)や兵庫県知事選挙(同11月)では、個人やグループがSNS経由で発信する動画や記事へのアクセスが増え、大手メディアの影が薄くなりました。
ニュースの伝達手段をペーパーに依存する新聞社、電波やケーブルに依存するTV・ラジオには、経営上の問題(有料購読者と広告収入の減少)解決のほかに、ネット上の記事や動画を好む有権者(伝統メディア離れ)にどう対応するかが新たなテーマになりました。
動画/音声コンテンツも大事
本メディアは、地域紙の血を引き継ぐ本サイトを発信の拠点にしながら、各種SNSや有力プラットフォーム(GoogleニュースやYahoo!ニュース)経由でも発信しています。
運営と編集の特徴は、①商業メディアでなく非営利のNPOメディア、②経費は法人の寄付や会員の会費などに依存、③取材にはアマチュア記者の参加も可能、④つくば・土浦エリアの話題を中心にリポート、⑤行政の監視も編集方針の柱、⑥識者による寄稿(コラム)を歓迎、⑦他の地域メディアとも連携―などに整理できます。
今年は特に⑦に留意します。本サイトは当初、地域紙のコンテンツ(情報内容)であった記事と写真だけでなく、苦手な動画や音声も展開しようと、地域のFM放送局、ケーブルTV局、ネットTV局などとの連携を図りました。ところが、コロナ禍でコンテンツの受託や提供が中止あるいは縮小に追い込まれたこともあり、動画と音声コンテンツが少ないからです。
ネットメディアの特性は、サイト内で記事や写真をまとめて閲覧してもらうだけでなく、記事1本1本をSNSやプラットフォーム経由でも伝えられることです。このサイト発信と分割発信を動画・音声コンテンツにも広げるため、動画・音声メディアとの連携を再度強めるつもりです。(NEWSつくば理事長、経済ジャーナリスト)