土曜日, 12月 27, 2025
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2人世帯23%、4人世帯22%引き上げへ 水道料金値上げ条例可決 来年4月から

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水道料金を値上げする条例改正案の電子採決の様子。白が値上げに賛成の議員、青が反対の議員、灰色は欠席議員

つくば市議会閉会

つくば市議会9月定例会議最終日の4日、本会議が開かれ、水道料金を来年4月から平均15%引き上げる市水道給水条例改正(7月30日付9月3日付)のほか、市長退職金の金額をネット投票で決める市長給与特例条例など議案19件、認定7件などを可決して閉会した。

水道給水条例が改正されるのを受けて、水道料金の引き上げは来年4月から実施される。値上げは2018年以来。モデルケース別の試算では、一人暮らし世帯は15%、2人暮らしは23%、4人暮らしは22%の引き上げになるとされている。

水道料金の引き上げに対しては反対意見として小森谷さやか市議(市民ネット)から「今回の値上げ案の算出ベースとなっている企業債残高対給水収益比率350%と、資金残高30億円という数字を見直すべき。(350%は)世代間負担平準化のバランスのかじ取りの見極めが不十分だし、(30億円は)災害時の事業継続に必要な経費として確たる根拠はなく不十分。平均15%の値上げを10%に抑えることは十分可能。値上げ幅を抑えるため再考が必要」などの意見が出た。

山中真弓市議(共産)からは「水道事業会計は純利益が8億円、現金預金も22億円まで増えており、老朽管や電気設備の更新など施設改良費を自己資金でまかなえるほど豊か。公共設備は計画的に企業債を取り入れながら工事を行い整備すべきで、自己資金は料金値上げを抑えるために使用すべき。水道未普及地域の管路整備は福祉向上のため一般財源も繰り入れながら整備すべき。物価高で市民生活はひっ迫し、値上げは物価高で苦しむ市民生活をさらに圧迫することになり、中止すべき」などの反対意見が出た。

裁決の結果、賛成15、反対9の賛成多数で可決された。

下水道料金の改定も審議

市は現在さらに下水道料金の改定についても審議している。水道料金は5年ごとに見直しを検討するとしている。(鈴木宏子)

可否同数、議長裁決で可決 市長退職金額のネット投票 つくば市議会

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議場のモニターに写し出された電子採決結果。白が退職金額のネット投票賛成議員、青は反対議員、灰色は欠席者=つくば市役所議場

つくば市議会9月定例会議に五十嵐立青市長が提案していた、市長2期目の退職金約2000万円の金額をマイナンバーカードを使ったインターネット投票で決める条例案について(8月26日付)、同市議会最終日の4日、採決が行われ、賛成12、反対12の可否同数となり、五頭泰誠議長の裁決により可決された。

科学の街の務め

本会議では、賛成意見として「筑波研究学園都市は科学技術を世界に波及する先進地として建設された。退職金のネット投票は、選挙のインターネット投票の実証実験の意味も含んでいる。課題を抽出し新しい取り組みをより良いものにするのは科学の街つくばの務め」(木村清隆市議)、「つくばはスーパーシティとして全国に先駆けて先進事例にチャレンジする責務を負っている」(小村政文市議)などの意見が出た。

不公平、市長個人のため疑問

これに対し反対意見として「市長個人のために市民の税金をネット投票に使うのは疑問だし、市職員の仕事を増やしてしまう。マイナンバーカードは任意なのに、マイナンバーカードとスマホアプリを使っている市民しか投票できないのは公平性が無い」(橋本佳子市議)、「市長は8年前『1期ごとに2000万円、3期で6000万円の市長特権の退職金廃止』を公約に掲げて当選した。その後いつの間にか公約を変えてしまった。金額を市民に聞いて決めることと退職金廃止はまったく別もの。まず公約を改めると言うべき。マイナンバーカードとスマホアプリを使っている市民は1万9000人しかおらず不公平。(ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで行く)オンデマンド型移動期日前投票を実施したい(すでに実施見送りが決定=9月2日付)と言った時は『だれ一人取り残さない』とさんざん言っていた。市民の意見を正しく取り入れるなら3000人抽出すればいいし、どうしてもやりたいのなら、投票で決まった金額にネット投票の投票率を掛けて決めるべきだ」(飯岡宏之市議)との意見が出た。

採決の結果は、欠席議員を除く25人のうち、賛成が、最大与党の「つくば自民党・創生クラブ」の6人、「公明党つくば」の2人、1人会派の4人の12人。反対は「自民党政清クラブ」の5人、「つくば・市民ネットワーク」の4人、「日本共産党つくば市議団」の2人と1人会派の1人の12人となり、議長裁決となった。

窓口センターでも準備

一方、投票できる市民が1万9000人に限られている問題について賛成議員からも「市民窓口で対応できるよう工夫してほしい」などの意見が出た。五十嵐市長は「電子署名機能が付いたマイナンバーカードを持っている人は13万人おり、期日を決めて、スマホをもってないとか、持っていても操作が分からない人は、窓口センターで職員がサポートしながら投票できる仕組みを準備している」とした。退職金額のネット投票は11月1日~11日に実施される予定。

審議会審議や市民への説明ない

同条例をめぐっては、9月定例会議開会前に市民団体「新しいつくばを創る市民の会」から「ネット投票に参加できない市民が出て公平性に欠ける、2000万円の費用がかかる、審議会の審議や市民への説明もされていない、市長の評価は退職金のネット投票で決まるものではない」などから慎重審議を求める請願が出ていた。

本会議に先立って9月17日に開かれた総務文教委員会(木村修二委員長)では審議の結果、3対3の同数となり、委員長裁決で条例は否決となっていた。

一方、市民団体の請願についても審議が行われ、委員会は3対3と同数となり委員長裁決で採択、本会議は12対12となり、議長裁決で不採択となった。(鈴木宏子)

◆本会議の採決結果は以下の通り(敬称略、議長除く)。

賛成(12人)▷つくば自民党・創生クラブ=小村政文、高野文男、長塚俊宏、黒田健祐、神谷大蔵、小久保貴史▷公明党つくば=浜中勝美、小野泰宏▷新社会党つくば=金子和雄▽山中八策の会=塩田尚▷清郷会=木村清隆▽つくばチェンジチャレンジ=川久保皆実

反対(12人)▷自民党政清クラブ=宮本達也、木村修寿、塚本洋二、飯岡宏之、鈴木富士雄▷つくば・市民ネットワーク=川村直子、あさのえくこ、小森谷さやか、皆川幸枝▷日本共産党つくば市議団=山中真弓、橋本佳子▽新緑会=中村重雄

日本発の疾患概念「ひきこもり」《看取り医者は見た!》28

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写真は筆者

【コラム・平野国美】日本発の疾患概念として「ひきこもり」が米国精神医学会の診断基準DSM-5-TRに、2022年、「Hikikomori」と掲載されたという話を聞きました。DSMは精神科医にとって診断のためのバイブルのようなものです。そこに記載されたのは、名誉とか不名誉とかとの話を超えて驚きです。

調べると、確かに「Hikikomori」と記載されていますが、診断名としてではなく、「Cultural Concepts of Distress」(文化的苦痛の概念)の章で、日本特有の現象として説明されているのです。

厚生労働省などのガイドラインでは「ひきこもり」を様々な要因の結果として、社会参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外の交遊など)を回避し、原則的に6カ月以上にわたっておおむね家庭内にとどまり続けている状態―と定義されています。あえて、日本特有と記載されるのはなぜでしょうか?

訪問診療していると、患者さんのご家族の中に「ひきこもり」の方が存在することをよく経験します。高齢の患者さんにとっては、同居する家族に介護的に経済的に頼りたいのだが頼れない状態なのです。これが8050(はちまる・ごうまる)問題と呼ばれるもので、50代の子どもたちが80代の親に経済的にも精神的にも依存しているという社会問題となっております。

50代の子供が自立した生活を送れないため、80代の親の年金に依存しているケースが多く、その資金を親の介護に使えない状態も多いのです。このまま親子ともども高齢化していくと、自動的に9060問題となっていくのです。このようなケースは、我々の仕事の現場で統計以上に出くわすものです。

日本の社会的・文化的病理

なぜ「ひきこもり」が増えてきたのか? よく考えることがあります。江戸時代には、こういったカテゴリーは存在したのか? 武士が罪を犯した際に蟄居(ちっきょ)という自宅に幽閉される刑罰はありました。また、隠遁(いんとん)と呼ばれ、俗世間を離れて静かに暮らすこともありました。これは、意図的に社会から距離を置き、精神的な修養や自己探求を行う意味などもあります。

「ひきこもり」は、いつ、どこから現れたのか? 他国にも存在するのか? 単なる個人の病的な資質なのか? 米国精神学会のDSMに「ひきこもり」が文化的苦痛の概念、日本特有の現象と書かれたのは、この現象が個人の資質によるだけの問題ではなく、日本の社会的・文化的背景が要因になっている社会病理と考えられているようです。

ちなみに、「ひきこもり」のような社会からの孤立は海外にも存在するようです。興味深いのは、家族主義がある韓国、イタリアでは「ひきこもり」の形態が多く、個人主義の米国、英国では子供が家から独立する傾向があるため、「ホームレス」の形態となるそうです。文化や生活習慣によって発症の形態が異なります。(訪問診療医師)

市議選43陣営が出席 つくば市で立候補届出書類の事前審査

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つくば市長選・市議選届け出書類事前審査の会場案内板

任期満了に伴って20日告示、27日投開票で行われるつくば市長選・市議選(定数28)の立候補届け出書類の事前審査が2日と3日、同市役所で行われ、市長選は1陣営、市議選は定数15人超の43陣営が出席した。

市長選は新人で自民推薦の星田弘司陣営が出席した。現職の五十嵐立青陣営は後日、書類審査を受けるとみられる。

市議選の43陣営は現職18、新人25。8月の立候補予定者事前説明会(8月18日付)は38陣営が出席しており5人増えた。今後さらに現職1人が事前審査を受けるとみられるほか、立候補を検討中の新人が複数いるとみられる。43陣営の男女別は男性31、女性12。

4年前の2020年の市議選は13人超の41人が立候補した。

霞ケ浦にハワイを見っけ! フラダンス8教室 土浦に集結

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出演ハラウ。 2023年の開催時に霞ケ浦総合公園の会場で撮影=ALOHA PARTY実行委員会提供

土浦、つくば両市にあるフラダンスの教室が20日、土浦市大岩田の霞ケ浦総合公園に集結、「ハワイの風景にそっくり」という湖畔の芝生広場を会場に、日がなフラのパーティーに興じる。

ALOHA PARTY(アロハパーティー)実行委員会による2回目の開催。ハワイ語でフラダンス教室の意味になる「ハラウ」8団体が集結する。

実行委員会を束ねる桑名美千代代表によれば「フラダンスのイベントは公民館とか市民会館とかで行われていたけど、コロナ禍以来みんなで集まりにくくなった。やっぱりフラは太陽の下踊るもの。騒ぎが癒えたら、屋外で集まりたいね」とよく話していたという。

そんなとき霞ケ浦総合公園にある国民宿舎水郷「霞浦の湯(かほのゆ)」の2階の窓から見える霞ケ浦の景色にびっくり。入り江の芝生広場が「ハワイの風景によく似ている」と昨年秋、土浦、つくば両市の各教室に呼び掛け、7団体の参加で1回目を開いた。

これが好天にも恵まれ、好評。今回は8つのハラウに拡大した。Kapā Hula O Kulia ikeākea(カパー フラ オ クーリアイケーア)、LANIKEA HULA STUDIO(ラニケア フラ スタジオ)、Hālau Hula ‘O Mino’aka(ハーラウ フラ オ ミノアカ)、Hālau Hula O Wailani(ハーラウ フラ オワイラニ)、Hoa Hele O Kuwana(ホア ヘレ オ クワナ)、Hula O Moana(フラ オ モアナ)、カラニ ハワイ フラスタジオ、土浦フラサークルの8教室だ。

20日は、受け継がれてきたハワイの宝を守る気持ちで踊る「He Lei Aloha」をオープニングに、朝10時から午後4時まで深まる秋の霞ケ浦に「常夏」のパフォーマンスを演出する。

3つのハワイアンバンドが出演するほか、ハワイアンアクセサリーや雑貨のマルシェも開催。出店するキッチンカーもすべてハワイアンフードでの味付けになるという。

桑名代表は「フラを学ぶ子供たち、保護者たちの交流の場として始めたが、地域の人たちにも参加してもらって輪を広げたい。ぜひお越しいただきたい」と呼び掛けている。雨天の場合は「霞浦の湯」で屋内開催となる。(相澤冬樹)

何かになりたい《ことばのおはなし》74

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】最近、ふと「今の仕事は、こどもの頃からの夢だったんですか?」と聞かれたことがあった。不意の質問だったので、「ええ、まぁ…はい」と答えてしまった。「よかったですね、やりがいがありますね」と言われ、なんとなく、もやもやとした気持ちになった。

私はこの「夢」ということばが好きではない。それが、なんらかの「職業」を指しているならなおさらだ。この「夢」ということばはカタチを変えて日常のそこかしこに潜んでいる。それは、「なりたい自分」とか、「自己実現」とか、「志望」とかいうことばであり、人生のそこかしこで、ふと目の前に現れては人の心をかき乱す。

一度ことばにして「夢」というものを自分の中で定義してしまえば、それはいとも簡単に自分の心の中に根をはり、場合によっては自らを縛る呪いのようなものになっていく。安直で雑な呪いだ。

実際のところ、ここで言う「夢」というのは、一時の状態でしかなく、その状態に行きつくまでは、頭の中のことばでしかない。そして、その「夢」がかなった状態になったとしても、当然のことながら続きがある。仕事であれば辞めるという選択肢があり、自分の意思とは関係なく辞めざるを得ないときがあり、そして、死ぬまで続けることができる仕事というのは限られているのだ。

どうなりたいか

一度「夢」という状態がかなったとして、その状態をやめるということは、「夢」を諦めるということにはなるまいか? かなった「夢」という状態が、いつかはしがみつく対象になることはないのだろうか? これはあまり健全な状態であるとは言えないだろう。

実のところ、これは「夢」と言うものの定義設定の問題であると、私は思うのだ。「夢」というものを一時の状態に設定しまうのは安易ではあるが、だからこそ何かがおかしくなってしまう。

大切なのは、何になりたいか、ではなく、「どうなりたいか」なのだから。「どうなりたいか」の途中に「何になりたいか」があり、何になるかについては、常に選択肢があり続けるのが健全だ。そして、どうなりたいか、という自分は、自ずとその時々の自分に寄り添って変わっていくだろう。

難しい話ではない。最初は、「優しくありたい」なんてことでよいのだ。いっそ単純なほうがよい。他人と同じでよい。小さい時は友達にやさしくあればよい。孤独な時は自分に優しくあればよい。大切な人ができたなら、その人に優しくあればよいではないか。単純だが、十分に難しいことでもある。

そして、一生をかけて、その優しさを自分なりに研ぎ澄ませていく。そうすれば、なぜ自分が「優しくありたい」と思ったのか、わかる日が来るかもしれない。私はそう考えている。(言語研究者)

つくば秀英が夏の雪辱果たす 霞ケ浦を破り初優勝【秋季高校野球茨城】

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初優勝を決め、スタンドに向かってガッツポーズをするつくば秀英の選手達

第77回秋季関東地区高校野球茨城県大会は2日、ひたちなか市民球場で決勝が行われた。夏の決勝と同じ対戦となった今回は、つくば秀英が霞ケ浦を5−2で破り、見事に夏の雪辱を果たし悲願の大会初優勝を勝ち取った。

第77回秋季関東地区高校野球茨城県大会決勝(10月2日、ひたちなか市民球場)
つくば秀英 013 000 100 5
霞 ケ 浦 000 002 000 2

つくば秀英の先発、中郷泰臣投手

試合前、つくば秀英の桜井健監督は「夏のリベンジを果たす考えは持つな。新しい代になり新チームで新たに勝ちに行く」と選手を送り出した。

つくば秀英先発の中郷泰臣は初回、霞ケ浦打線を3者凡退に抑えると、2回に先頭の知久耀がセンターにヒットを放ち出塁。さらに稲葉煌亮が送ってバントを決め2塁へ進んだ。2死後、沢畑悠斗がまっすぐを振り抜き打球はライトへのタイムリーヒットに。知久がホームインし先制した。

2回2死2塁、沢畑がライトへ先制のタイムリーを放つ

つくば秀英は3回に1点を追加、なお2、3塁のチャンスに、稲葉がセンターへ2点タイムリーを放って4−0とリードを広げた。

一方、5回まで中郷に2安打に抑えられていた霞ケ浦は、6回にヒットと四球、送りバントで2塁、3塁のチャンスをつくり、鹿又嵩翔のライトへのタイムリーで1点を返し、さらに満塁とする。西野結太が、代わったつくば秀英の2番手斎藤柾希から押し出しの四球を選び1点追加、2点差に追い上げた。

6回1死2・3塁。霞ケ浦の鹿又がライトへタイムリーを放つ

つくば秀英は、7回に稲葉が2本目となるタイムリーを放ち突き放すと、7回、斎藤が霞ケ浦打線を3者凡退に抑えた。8回、9回は羽富玲央が抑え、つくば秀英が3人の継投で霞ケ浦打線を5安打2失点に抑えた。霞ケ浦は9年ぶり5度目の優勝は果たせなかった。 

7回に追加点が入り盛り上がるつくば秀英ベンチ

優勝したつくば秀英の桜井監督は「夏の決勝を経験し、落ち着いて強い気持ちでプレーが出来た。関東大会までにワンランク強くしてレベルアップし、関東の強豪校相手にくらいついていきたい」と話した。チームに勢いをつける先制のタイムリーを放った沢畑は「関東大会ではチーム一丸となりベスト4以上を狙う」と意気込んだ。

霞ケ浦の大橋泰祥主将は「必ず優勝して関東大会に行く気持ちで試合に挑んだが、練習でやってきたことが出来ずミスが出た。関東大会では2回勝ってセンバツに行く」と誓った。

来春のセンバツ(春の甲子園)出場の選考基準となる秋季関東大会は、26日に神奈川県で開幕する。つくば秀英は初出場、霞ケ浦は2019年以来5年ぶりの出場となる。(高橋浩一)

夏から秋にシフト 国環研の一般公開 事前申込受付中

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地球温暖化をテーマに研究者と理解を深める体験イベントなどが開かれる(2023年撮影、国立環境研究所提供)

「夏が年々暑くなっている」判断から

今年創立50周年を迎えた国立環境研究所(国環研、つくば市小野川、木本昌秀理事長)の地域向け一般公開は今年、初めての秋開催に切り替えられ、10月19日午前10時から開かれる。入場は自由だが、「これからの50年」を見据えて、児童生徒向けのイベントを充実させ、事前参加申し込みを受け付けている。

今年の開催テーマは「環境をまもりはぐくむ。国環研の50年と、これからの君へ」。

国環研は1974年に国立公害研究所として開設され、90年に国立環境研究所に名称を変更。2004年から昨年まで「夏の大公開」として開かれていたが、「気候変動によって夏が年々暑くなっている」判断から秋の開催に切り替えた。

施設公開をはじめ、体験・展示コーナー、講演会の開催を予定している。

講演では、つくば科学教育マイスターの一ノ瀬俊明さんによるトーク「空から地面の温度を見てみよう」が4回予定されている。温度が見えるカメラ(赤外線サーモカメラ)をドローンに装着して、いろいろな場所の動画を空から撮影した。同市の洞峰公園や土浦花火大会、長野の山や茨城の海などの動画を上映しながら、クイズをまじえて各地の温度の特徴などの解説を聞くことができる。対象は小学5年生以上対象、各回先着順最大10人。

体験コーナーで事前申し込みが必要なのは、▽すごろく「気候変動適応への道」=遊びながら気候変動への適応行動を学べるすごろくゲーム。対象は小学生以上、会場は大山記念ホール▽研究者と話そう!「ココが知りたい地球温暖化」=小学5年生以上、同▽ エコチル調査を体験しよう!「体組成測定&食事習慣質問票」=測定体験により自分の身体や食事のバランスを知ることができる。小学5年~中学3年、環境保健研究棟など。それぞれ3回の開催が予定されている。

展示では、「田んぼダム」の仕組みを見てみよう=田んぼダムの仕組みを再現した模型に水を実際に流す実験を行う。4回、各回抽選で6人受付ーなどがある。(相澤冬樹)

◆事前申し込みの詳細はこちらから各申し込みフォームに。同ホームページでは当日整理券を配布するイベントの紹介もされている。

当日は自動車での入構はできない。つくば駅、ひたち野うしく駅から「環境研究所」行きの路線バスがあるほか、当日は「無料バス」を運行予定。

正しい自分を分かってほしい《続・気軽にSOS》154

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【コラム・浅井和幸】人は争うものです。小さなことから大きなことまで。個人対個人から国対国まで。時には前向きに捉えられる争いもありますが、ほとんどの場合、誰も得をしないのではないかなと思う争いが多いものです。

私が国の争いに首を突っ込むことはできませんが、個人間や団体内であったり、団体同士の仲裁や整理に立ち会うことはあります。全く意見が対立していることもありますが、意外に多いのは、目的が一緒であるのにちょっとした順番や言葉の行き違いです。みんな不安でおびえているのかもしれません。

そして、相手の言動が意味することに対する推測が大きく間違っているのです。自分に対してこのような言動をするのは自分をつぶしたいからだと推測をしているが、実は相手は褒めてほしいだけ―など。

残念なことに、私たちは戦略的によく考えてコミュニケーションをとっていると錯覚しているだけで、単に感情的であったり、目的に即した言動よりも思い付きでの言動で生活していることがほとんどです。特にささいなことでの争いは、自分を分かってほしい、そうしてもらわないと怖いという、不安に振り回されているものです。

私は間に入るときに、争わずに仲良く生きることがよいという価値観を伝えるつもりはなく、単純に各々の目的や感情などを整理したり通訳をしたりしているイメージで対応しています。それは、それぞれの事実と推測を分けて考えること。推測は確実ではないので、3つぐらい別の可能性を考えられるとよいですね。

共通の言語や相手の言葉で伝えること、例えば、出来るだけ頑張ると言ってもどれぐらいが「頑張っている」を指すのか分からないので、頑張って3日以内に回答するなど、数字で伝えられるとよいですね。

いくつかの可能性、筋道を考える

自分の目的に気づくこと大切です。もし自分を分かってほしいというのであれば、安全な状態で相手を分かってあげることですし、何かを達成したいのであれば、それに即した方法を考えるべきです。そして、自分の目的を達成するのに、たった一つしか方法に限定せずに、いくつかの可能性、筋道を考えてみることです。

争いになっている状況で、相手のことは理解しようとせず、自分の意見だけを通そうとする。自分が普通であることだけを主張しても、争いは大きくなり溝は深まるばかりですから。(精神保健福祉士)

公共ライドシェア 来年1月運行 つくば、土浦など4市 ドライバー募集開始

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共同で記者会見しドライバー募集を呼び掛ける(左から)五十嵐立青つくば市長、安藤真理子土浦市長、菊池博下妻市長、沼田和利牛久市長=9月30日。つくば市役所

バスやタクシーなどの移動手段を確保することが困難な交通空白地で、自治体が運送主体となり、一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「公共ライドシェア」(5月29日付)について、つくば、土浦、下妻、牛久の4市長は9月30日、共同で記者会見し、10月1日からドライバーを募集し、来年1月から運行を開始すると発表した。

それぞれ公共交通の利用が困難な4市の4つのエリアで、時間帯や利用対象者を限定するなどして運行する。初年度の来年1月から3月までについては4エリア合わせて利用者600人、ドライバー登録者80人を目標にしている。運行期間は2027年3月末までの3年3カ月間。その後継続するかどうかは、結果を見ながら4市で協議する。

4市共同で、ドライバーの募集や管理、育成をするインターネット上のドライバーバンクと、AI(人工知能)を使って配車を手配するアプリを導入し、利用者の予約に合わせ、登録ドライバーによる送迎を手配する。

ドライバーバンクと配車システムはコミュニティ・モビリティ(東京都中央区、村瀬茂高社長)が開発し、同社が運営する。運行時のドライバーの点呼やアルコールチェックなどは、地元の交通事業者がリモートで実施する。2024年度の事業費はシステム開発費を含めて、国の交付金約2億5000万円と4市の負担金計約8000万円を合わせた約3億3500万円。

運行する4エリアの地域と運行時間、利用対象は①つくば市桜ニュータウンと隣接の土浦市天川団地周辺の「つくば・土浦エリア」は、平日と土曜日が午前6~8時と午後5~9時、日曜・祝日が午前6時~午後9時に実施する。エリア内出発ならだれでも利用でき、エリア外のつくばセンター、学園並木、県南病院、ジョイフル本田荒川沖店の4カ所に行くことが出来る。

②筑波山中腹のつつじケ丘、筑波山神社からふもとの筑波山口までの「筑波山エリア」は、平日、土日いずれも午後5~8時に実施する。エリア内での行き来のみ、観光客を含め誰でも利用できる。筑波山口からつくば駅方面などへはバスを利用する。

➂下妻市の国道125号から南側の「下妻エリア」は、エリア内で平日、土日いずれも午前10時~午後4時に実施する。

④牛久市の「牛久市エリア」は市全域で平日、土日いずれも午前8時~午後3時に実施する。利用対象者を、常磐線沿線などを除く市街化調整区域の住民に限定する。市内ならどこでも自由に行き来できる。

乗車料金は、距離にかかわらず①「つくば・土浦エリア」が大人1回600円②「筑波山エリア」が同1000円➂「下妻エリア」が同700円④「牛久エリア」が同700円。エリアにより子供料金や高齢者・障害者料金、直前予約料金などが設定される。支払い方法はクレジットカードによる事前決済のほか、現金でも利用できるようにする。料金設定は、タクシー料金の8割までという国が示す目安と、各地域の交通事情を加味したという。

歩合+報奨

一方、ドライバーの報酬は4エリア同額で、利用者1人当たり1回1200円の歩合に、月3回以上運行すれば1カ月当たりプラス3000円、5回以上はプラス5000円、10回以上はプラス1万円などの報奨(インセンティブ)を付ける。月3回運行すれば6600円、月5回なら1万1000円、10回なら2万2000円になり、時給2000円程度を想定したという。さらに一つの予約で利用者が複数の場合は、2人目から1人当たり半額の600円の報酬が加算される。ただし車のガソリン代、車両点検や整備費とスマートフォンの通信費などはドライバーの負担となる。

ドライバーの報酬は全エリアで利用者の利用料金を上回ることから、差額は各市が負担する。

募集条件は、普通自動車免許を取得して3年以上の21~69歳までで、過去2年以内に免許停止などの処分を受けていないことなど。エリア外からも応募できる。募集ページから、運行できるエリアと曜日、時間などを記入して登録してもらい、書類選考とオンライン面接をして選考する。

運行する自家用車にはドライブレコーターを搭載してもらい、無い場合は無償で貸し出す。車両表示ステッカーやアルコール検知器なども貸し出す。さらに登録者には講習を受講してもらい、タクシーなどが運転できる普通2種免許の取得を促すなどする。

来年1月の運行開始に向けた募集期間は10月1日から11月半ばまで。

つくば市の五十嵐市長は「2024年問題といわれるドライバー不足でコミュニティバスや路線バスが減便となっている。交通空白地の解消のため4市が連携して取り組みたい」などと話した。

◆ドライバー募集ページはこちら

決勝はつくば秀英、霞ケ浦との再戦へ【秋季高校野球茨城】

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5回表東洋大牛久1死満塁、1番・荒野洸飛の右飛に三走・小用蒼太がタッチアップするがホームでタッチアウト。捕手・稲葉煌亮(撮影/高橋浩一)

第72回秋季関東地区高校野球茨城大会は9月30日、ひたちなか市民球場(同市新光町)で準決勝2試合が行われた。第2試合のつくば秀英対東洋大牛久は、東洋大牛久が15安打、つくば秀英が10安打という打撃戦になったが、8-5でつくば秀英がシーソーゲームを制した。

第72回秋季関東地区高等学校野球茨城大会(9月30日、ひたちなか市民球場)
東洋大牛久 100210100 5
つくば秀英 20030030X 8

勝利したつくば秀英の櫻井健監督は「前半でミスをしたが、粘り強く後半勝負だと想定していた。追い掛ける展開で気持ちの強さを出してくれた選手たちに感謝している」と語った。敗れた東洋大牛久の長堀肇監督は「投手3人の継投で戦ってきたが、打たれるのがちょっと早かった。打線は粘り強く打ってくれたが、15安打で5得点は監督の采配ミスと言うしかない」と振り返った。つくば秀英は7残塁、東洋大牛久は12残塁を記録している。

4回裏つくば秀英2死満塁、3番・石塚が中堅へ3点三塁打を放ち塁上でガッツポーズ

先発はつくば秀英が中郷泰臣、東洋大牛久が佃大地。中郷は1回に1四球と2安打で1点を奪われ、4回に暴投と3安打で2点を失った。佃は1回に2安打2四球と暴投で2失点の後、4回に安打と四球、野選で満塁とされ、つくば秀英3番石塚大志の走者一掃の三塁打で3点を追加された。石塚は「打ったのは外のまっすぐ。ここまで調子が上がってなかったが、『思い切り楽しむことが大事』という監督の言葉に、甘いボールに積極的に行けた」とコメント。

5回から、つくば秀英は羽富玲央、東洋大牛久は坪田然がマウンドへ。羽富は5回に3安打で1点を取られ、7回にも盗塁と捕逸、暴投で1点を失った。「替わってすぐ取られたのは反省。2点目は力みやサインミスがあった。途中からはカットボールを有効に使い空振りさせた」と羽富。

つくば秀英の2番手・羽富

これに対し坪田は5・6回を無失点に抑えたものの、7回に3連打で2点を許し降板。続く3人目の片根悠哉も羽富の左越え三塁打で1点を追加された。勝ち越し打を放った松崎勇吾についてつくば秀英の櫻井監督は「夏までは投手メーンできたが、秋から野手に専念し、どんどん力をつけてきた。人が変わったように努力するようになった」と評している。

7回裏つくば秀英1死二塁、6番・松崎勇吾が右越えの適時三塁打を放つ

霞ケ浦とつくば秀英による決勝戦は2日午前10時から同球場で開催される。霞ケ浦には甲子園を賭けた夏の決勝で敗れている。櫻井監督は「当然、意識している。いちばん悔しい負けだった。『あの日を忘れるな』を合言葉に、しっかり粘れる野球をやりたい」とリベンジを誓う。(池田充雄)

試合終了後、スタンドに向けて勝ちどきを上げるつくば秀英ナイン

常総学院8回に暗転、霞ケ浦が決勝へ【秋季高校野球茨城】

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8回裏霞ケ浦1死満塁、鹿又が右翼へ2点適時打を放つ(撮影/高橋浩一)

第72回秋季関東地区高校野球茨城大会は30日、ひたちなか市民球場(同市新光町)で準決勝2試合が行われた。第1試合は常総学院と霞ケ浦が対戦、8-5で霞ケ浦が逆転勝利を収め、決勝へ駒を進めた。

第72回秋季関東地区高等学校野球茨城大会(9月30日、ひたちなか市民球場)
常総学院 201000110 5
霞 ケ 浦  00010106X 8

霞ケ浦の先発・市村

常総学院が8回に一挙6点を失って敗れた。「7回まではチーム一丸となってよく守り、いい流れだった。だが8回は3点のリードがあったのに、1つのミスをきっかけにエースの小澤頼人が突然乱れだし、普通の投手になってしまった。それまで良かっただけに替えるタイミングが難しかった」と島田直也監督。勝ちを拾った格好になった霞ケ浦の高橋祐二監督は「うちは逆転負けはよくあるが、このように逆転で勝った経験はない。一つの自信にしたい」と神妙なコメント。

常総学院の先発・小澤

詳細はこうだ。8回裏霞ケ浦の攻撃、先頭の代打・羽生伯が左前打で出塁。次打者の四番・大石健斗は二ゴロでゲッツーコースだったが、悪送球でアウトをまぬがれ、暴投と2連続四球で押し出しの1点を手にする。ここで小澤はマウンドを降りるが、負の連鎖が起こった。2番手の大木投哉も1四球と代打・羽賀龍生の左前打で2失点。3番手の広瀬龍太郎も四球で1失点の後、2番・鹿又嵩翔の右越え適時打でさらに2点を失う。「まっすぐを狙って打ちに行ったらチェンジアップだったが、右手一本でなんとか抜けてくれた。チームのためにつなぐ思いで打った」と鹿又のコメント。

序盤は常総が試合進める

序盤は常総学院が優位に試合を進めていた。初回、霞ケ浦の先発・市村才樹の変化球の制球が定まらないところへ直球に狙いを絞り、4番・柳本璃青の左前打で2得点。3回にも5番・佐藤剛希の中前打で1点を追加した。

3回表常総学院2死二塁、佐藤の中前打で渡辺康太が生還し3点目

その後は市村が「仲間の『絶対勝つぞ』という気持ちに応えなければエースじゃない」と奮起。直球とスライダーを効果的に使って4~6回を無失点に抑えた。「スライダーは秋からキレが増してきた。相手は甲子園で使ったカーブのイメージが残っているので、裏をかくことができた」と話す。

6回裏霞ケ浦1死一・二塁、西野が「完璧」と言った右中間への当たり

霞ケ浦は4回と6回、いずれも5番・西野結太のバットで1点ずつ返している。「第1打席は凡退したが、ベンチから観察して第2打席はタイミングが合うよう修正できた。第3打席は『変化球を右中間へ』という監督の指示で、打ったのはまっすぐだったが狙い通り右中間へ完璧にとらえることができた」と西野の振り返り。この2点を奪ったことが、終盤の逆襲につながったといえそうだ。(池田充雄)

6回裏霞ケ浦1死一・三塁、6番・村上聖のスクイズに三走・大石が本塁突入するがタッチアウト。捕手・佐藤

暫定目標値2.9倍のPFAS検出 つくば市上大島の事業所井戸

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つくば市役所

汚染源は不明 周辺民家の井戸水調査へ

発がん性など健康への影響が懸念される有機フッ素化合物のPFAS(ピーファス)について、つくば市は30日、地下水を水源とする井戸水を飲用に使用している市内の民間事業所を対象にPFASの一種であるPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)について調査を依頼したところ、同市上大島の事業所の飲用井戸から、暫定目標値の2.9倍のPFOSとPFOAの合算値が検出されたと発表した。

市内の飲用水から暫定目標値を超えるPFASが検出されたのは初めて。市環境保全課によると、同事業所を含め周辺には過去にPFOS及びPFOAを製造または使用していた事業所はなく、現時点で汚染源は不明という。健康被害などは確認されていない。

市は今月27日、検出された井戸からおおむね半径500メートル以内の周辺住民30数軒に周知した。今後、周辺民家の井戸水調査を実施する。ただし調査箇所は調整中としている。同地区には公共水道が供給されているが、井戸水を飲用に利用している民家もあるという。

国が実施している「水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査」に基づき、今年6月、地下水を飲用に利用している市内事業所38カ所を対象に市が検査を依頼した。そのうち14事業所が自ら検査し、7月18日、同市大島地区の事業所の井戸から、1リットル当たり暫定目標値の50ナノグラム(ナノは10億分の1)の2.9倍にあたる145ナノグラムが検出された。一方、同事業所が検査した近隣の井戸2カ所は暫定目標値以下だった。

その後9月20日、同事業所は蛇口から出る水を検査し、再び暫定目標値の2.1倍の105ナノグラムが検出された。蛇口に浄水フィルターを設置したところ不検出だったことから、今後、同事業所では活性炭入りの浄水フィルターを設置するという。

国は、全国の水道事業者などを対象に調査を実施。同日、県が発表した調査結果によると、県内ではつくば市のほか、筑西市内の事業所の計2カ所で暫定目標値を超える値が検出された。公共水道については暫定目標値を超える検出はなく、つくば・土浦市民が飲用する県企業局県南西広域水道の今年4~8月の検査結果は最大値が1リットル当たり8ナノグラムだった。

PFOSとPFOAは過去に泡消火剤や界面活性剤など幅広い用途で使用されていたが、現在は国内での製造や輸入は原則禁止されている。国は2020年に水質管理目標となる暫定目標値を設定したが、法的な規制対象となる基準値はまだ設定されていない。暫定基準値の見直しに向けては国の専門家会議で議論が実施されている。

「モノクロ語り・新川」 石川多依子さん 10月8日から土浦で写真展

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新5号橋の上で、旧5号橋の写真を持つ石川さん

土浦市在住の写真家、石川多依子さんの写真展「モノクロ語り・新川」が、土浦駅前の土浦市民ギャラリーで10月8日から開催される。新川は同市の市街地を流れる。2004年からフィルムカメラやデジタルカメラで撮り続けた新川の、上流から河口までのさまざまな表情を厳選し、57枚のモノクロプリントで展示する。

カメラと共に、時代を下り川下り

新川は、同市虫掛と田中町の間を流れる用水路の合流点を起点とし、真鍋や立田町、城北町、東崎町などを通り、霞ケ浦に注ぐ全長3.4キロの1級河川。土浦の街を散歩しながら撮り歩いている石川さんの、大きな撮影テーマの一つでもある。石川さんは2020年に「新川の今昔」という手記を書いている。

手記をもとに川筋をたどると、上流の消防署前の通りを過ぎたところの田中橋から、6号国道を渡る真鍋橋までの間には、2つの木橋がある。近くに旧・常陽新聞の社屋があった5号橋(通称・常陽橋)と、土浦二高前に架かる立田橋だ。「どちらも現在は橋脚部分が鉄骨ですが、以前は橋から橋脚まで全て木製だったので、とてもひなびた風情があった」と石川さん。5号橋は2018年に欄干が倒れ、しばらく通行できなかったが、昨年ようやくヒノキ材で再建された。立田橋の方はスギ材なので、ちょっと表情が異なるという。

2008年、新地橋の上で花見に興ずる人々(石川さん提供)

真鍋橋の先は、旧水戸街道・真鍋宿通りに架かる新川橋、つくば国際大学高校前の新地橋へ続く。「道路や川に垂れ下がっていた多くの桜の枝が大胆に切られてしまい、景観は悪くなったが、それでも土浦で新川と言えば、桜の名所に変わりはない。高校生が行うプロジェクトにより、桜並木の下に菜の花の咲く範囲が年毎に広がっており、手漕ぎ舟や貸しボートなども見られるようになった」

城北橋を過ぎると川は少し左へカーブし、川幅を広げながら、ケーズデンキのある国体道路に架かる神天橋へ。ここからは真っ直ぐな流れとなって水門へ向かう。「マンション・ホーユーパレスの対岸には、当時は何艘(そう)もの舟がつながれ、地面には雑然と多くの漁用の網が置かれていた。早朝老人が舟を漕ぎだす光景が思い出される」

2004年ごろ、神天橋下流の船溜まりで漁網を広げる人(同)

常磐線の鉄橋をくぐると、駅東の大通りに架かる天王橋。この手前から新港橋までの南岸には、かつて船溜まりがあった。「当時、停泊した幾艘もの舟や漁に使う網が干される光景があったが、今ではすっかりその姿を消し、現在では新川での漁は消滅したと思われる。河口先端では、鎮座する水神宮の鳥居が極端に傾いていた」

この鳥居は今では完全に倒れ、夏草に覆われたまま。歳月の流れを感じさせたという。(池田充雄)

2021年、当時は傾きながらも耐えていた水天宮の鳥居(同)

◆「石川多依子写真展 モノクロ語り・新川」は10月8日(火)~14日(月・祝)、土浦市大和町1-1アルカス土浦1階、土浦市民ギャラリーで開催。開館時間は午前10時~午後5時。初日は午後1時から、最終日は午後4時まで。入場無料、駐車料金は2時間無料(駐車券を事務室に提示)。問い合わせは電話029-846-2950(ギャラリー事務室)へ。

➡石川多依子さんの過去記事はこちら

内部告発で分かったつくば市政の実態《吾妻カガミ》192

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】つくば市の職員が、春まで属していた職場のいい加減な仕事振りを内部告発。新聞なども大きく報道する騒ぎになっている。この職員は、市管理部門への公益通報、市議会への請願、市監査委員への住民監査請求の3ルートを使い、実態解明と業務是正を求めている。

元社会福祉課の職員が議会に提出した請願書(下欄参照)を読むと、課内の様子がよく分かる。少し補足しながら引用すると、以下のような場面が出てくる。

現場のリアルな笑える場面

▼課内業務に問題があると管理職に指摘したら、「逆ハラスメント(上司いじめ?)だ」と言われ、その問題が隠蔽(いんぺい)されてしまった。

▼生活保護受給者の家を訪問したとき、担当者が暴行を受けるという事件が起きた。そのあと、市危機管理官(警察出身)による護身術講座があり、「間合いを取る、バインダーやペンで応戦する」と教わったが、現実的な対応とは思えない。

▼難しい生活保護ケースを議論する場で、管理職は「これは感覚の問題」と法令に基づく対応を無視したり、一度決めた保護開始を「取り下げさせろ」と命令したり。これでは福祉行政の体を成していない。

▼案件を法令通り処理したら、管理職から「法令通りにしか動けない職員は必要ない」と言われた。先輩からは「君も生活があるだろ。長いものには巻かれとけ」と、不適切処理に同調するよう諭された。

▼管理職席の後ろにある金庫から現金を取り出し、生活保護受給者に支給していた。ケースワーカーによる現金支給はダメなことを管理職は知っていたから、「記録に書いてはいけない」と指示された。

▼働いても、特殊勤務などの手当てがもらえない環境。暴行を受けても自分で身を守るしかない環境。法的正当性より管理職の感覚が勝つ環境。不正を指摘すると「村八分」を受ける環境。

▼管理部門の総務部にも、市としての最終的な自浄作用を期待して(今春)公益通報をした。しかし、受理までに3カ月以上もかかり、その後も不適正事案は改善されていない。

ガバナンス力が足りない市長

こういった実態はこの課だけなのか。他の部署も似たり寄ったりなのか。役所や企業には組織に流れる文化があり、類似の事例が他部署にもあると考えるのが自然だろう。

しかし、五十嵐立青市長、議会の対応を見ていると、問題解明を先に延ばしたいようだ。公益通報に対する調査について市長はあと半年ぐらい(通報から起算すると1年)かかると言い、請願を受けた議会特別委員会(長塚俊宏委員長)は市の調査結果待ちの構え。市長も議会も、この問題が市長・市議選挙(10月27日投開票)で争点になるのを避けているようだ。

1部署の実態調査に告発から1年もかかるとは驚きだ。集中してやれば2~3週間もあれば十分だろう。議会も市の報告書待ちとは驚きだ。関係者から直接聴取する能力もないらしい。今回の騒ぎによって、市長のガバナンス(管理)力不足、市議会のチェック(監視)力不足が明らかになった。つくば市政はかなり深刻といえる。(経済ジャーナリスト)

<資料と記事> 青字部をクリックすると表示されます。

▼市職員による議会請願書8月22日付

市によるミスの公表関連

・特殊勤務手当など未払い(5月9日掲載

・生活保護受給者に過払い(7月20日掲載

・過払い金、国に請求せず(8月21日掲載

職員による内部告発関連

・生活保護行政で議会請願(9月3日掲載

・生活保護問題で監査請求(9月7日掲載

・市職員請願は継続審査に(9月13日掲載

土浦 霞月楼所蔵の海軍予備学生 寄せ書き屏風に「全国で唯一残る貴重な資料」 

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トークセッションで話す高野史緒さん(左)と清水亮さん

作家 高野史緒さんと学者 清水亮さんがトーク

土浦の老舗料亭「霞月楼所蔵品展」(9月24日付)最終日の29日、作家の高野史緒さんと社会学者の清水亮さんによるトークセッション(9月9日付)が、土浦駅前のアルカス土浦1階 市民ギャラリーで催された。太平洋戦争末期の1944年、特攻に向かう海軍予備学生が霞月楼で催された送別の宴で、勇ましい言葉や芸者の名前などを寄せ書きした霞月楼所蔵の屏風(びょうふ)について、清水さんは「死と隣り合わせの兵士のいろいろな思いが書き込まれており、出征前の遺書にも書かない、20代前後の若者の、赤裸々な等身大の姿だ。(旧日本軍の基地があった全国のまちを調査した中で)土浦に唯一残されている貴重な資料」だと話した。

トークセッションはいずれも昨年、土浦を題材に本を出した高野さんと清水さんの2人が、「ツェッペリン伯号と湖都・土浦を語る」をテーマに異なる視点から土浦について語った。高野さんは昨年7月、土浦を舞台としたSF小説「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」(ハヤカワ文庫)を出版、清水さんは昨年2月、海軍航空隊があった戦前から戦後の阿見と土浦の地域史を紐解いた「『軍都』を生きるー霞ケ浦の生活史1919-1968」(岩波書店)を出版した。

会場の様子

何となく懐かしい感じがする

高野さんは、小説を書く上で自分が生まれる前の話である飛行船ツェッペリン伯号について詳しく調べたと言い、1929年に阿見町に寄港したツェッペリン伯号に同乗した大阪毎日新聞記者の円地与四松(えんち・よしまつ)の貴重な著書「空の驚異ツェッペリン号」を持参し、「高度400メートルから800メートルの低空を飛行し。東京上空を飛んで横浜の上空で旋回し土浦まで1時間で戻ってきた。結構な速さだった」などと話した。

ツェッペリン伯号の船長だったエッケナーについて「ナチス嫌いで、世界一周の後、社会的地位を追われた。円地与四松が『乗組員に手のない人、足のない人がいる』と書いているが、エッケナーは第一次大戦の傷痍軍人を積極的に雇っていた。ツェッペリンの会社は平和の会社だった」などと語った。

「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」に土浦のまちの景色が詳細に描かれていることについては「土浦のことを書いている小説はほとんどないので、土浦を全国に見せてやろうという気持ちだった」と言い、土浦も茨城も訪れたことがない読者から「何となく懐かしい気がする」という感想が寄せられたと明かした。司会者からアニメ映画化が似合っているのではないかという質問が出て、高野さんが「今、口外できない」と答えると、会場から拍手が起こり、期待するムードが高まった。

明るさと暗さがある

一方、清水さんは、かつてツェッペリン伯号の工場と基地があり、現在は新型のツェッペリンNT号が観光飛行するドイツのフリードリヒスハーフェン市を昨年訪れたと語り、「ボーデン湖があり、霞ケ浦がある土浦と似ている。土浦市と友好都市になっていて、『9500キロ先は土浦』という看板もあった」と話した。

自身の研究テーマの基地と地域との関わりについては「明るさと暗さがある」とし、明るい面として「1920年代に霞ケ浦航空隊ができて、土浦は潤い、航空隊が空の港として土浦が世界とつながっていった」と話した。さらに会場から出た質問に答え、住民が基地に対してもつ印象がポジティブかネガティブかについて「基地が出来た時期が重要なポイントになった。大半は戦争末期に土地を強制収容してできたためネガティブだが、土浦は第一次大戦と第二次大戦の間の一息つく時期に造られた」などと話した。

「芋掘り」の一種

霞月楼専務の堀越雄二さんが、レプリカが会場に展示されている海軍予備学生の寄せ書き屏風について説明すると、清水さんは「屏風の寄せ書きは『芋掘り』の一種だった」と説明した。芋掘りは海軍の隠語で、料亭の二次会、三次会で兵士が乱暴を働くこと。堀越さんは「料亭の畳をひっぺ返し、畳を天井近くまで積み上げて、天井の板をぶち抜いて、天井裏をドタドタしたり、わざと芸者の着物に醤油をぶっかけて暴れることがあったが、次の日に(航空隊が)弁償金をたっぷり持ってきた」などと話した。

寄せ書き屏風について説明する霞月楼専務の堀越雄二専務

トークセッションの冒頭、安藤真理子土浦市長があいさつ。会場には100人を超える参加者が集まった。飛行船の歴史や文化史研究の第一人者でドイツ文学者の天沼春樹さんも登壇した。司会は霞月楼所蔵展実行委員会の坂本栄委員長が務めた。会場前のアルカス土浦の広場では「屋台村」が催され、もつ煮込みやスイーツ、ドリンクなどのほか、土浦ツェッペリンカレーが販売され、ツェッペリン伯号の紙芝居も上演された。

美浦村から参加した西山洋さん(68)は「清水さんとは連絡を取り合っていて、清水さんに高野さんの小説を勧められて読んだ。元々SFは読んでいないが、『グラーフ・ツェッペリンー』はとても面白く、難しい科学用語も気にならなかった。今日はとても良い催しだった」と述べた。

アルカス土浦前広場の「屋台村」で披露されたツェッペリンの紙芝居

➡動画「トークセッション ツェッペリン伯号と湖都・土浦を語る」

画業50周年の集大成 つくば美術館で斎藤茂男展

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28日開かれたギャラリートークで作品について話す斎藤茂男さん。作品は会場入り口正面に展示されている、ワーグナーのオペラ「二―ベンリングの指環」から着想を得て、26年かけて制作した4部作=つくば市吾妻、県つくば美術館

つくば市在住の洋画家、斎藤茂男さん(73)の画業50周年を記念した「画業五十周年記念―齋藤茂男展」(斎画舎主催)が同市吾妻、県つくば美術館で開かれている。油絵を描き始めた高校、大学時代から、渡欧しウイーンに拠点を置いた時代の作品、帰国後、安井賞展、白日会展、茨城県展芸術祭などに出展した作品など、画業50年の集大成となる油絵115点を一堂に展示している。

斎藤さんは同市安食生まれ。下妻一高、東京造形大学を卒業後、写実を標ぼうする公募・研究団体「白日会」に参加した。第2次世界大戦直後のオーストリア・ウイーンで興った幻想的レアリスム派と呼ばれる「ウイーン幻想派」をさらに学びたいと、1979年に渡欧し、ウイーンで制作活動をした。1982年に帰国後は、画壇の芥川賞ともいわれ新人洋画家の登竜門である「安井賞」に入選した。現在まで計27回、ヨーロッパ各国を取材旅行し、作品イメージの着想を得ながら、精力的に制作活動を続けている2020年から3年間は文科省の海外派遣で台湾に滞在しながら制作した。

ギャラリートークで話す斎藤茂男さん

作品は、ウイーン幻想派の影響を受け、細密な描写と鮮烈な色彩によって幻想的な世界を具象的なイメージで描いているのが特徴で、作品の背景に描かれた廃墟に、旧約聖書の創世記に登場するバベルの塔や、古代ギリシャやローマ建築の大理石の柱がモチーフとして登場する。

同展では、安井賞入選作品の「アポロンの丘」、1993年発行の単行本「ノストラダムス・メッセージⅡ」(角川書店)の表紙になった「久遠の預言者」など大型の作品を中心に展示している。ほかに、ワーグナーのオペラ「二―ベンリングの指環」から着想を得て、26年かけて制作した4部作や、地元の筑波山の山頂からふもとの景色を見て描いた6点の「古代賛歌Ⅰ」なども展示されている。

筑波山の山頂からふもとの景色を見て描いた6点の「古代賛歌Ⅰ」

28日は会場で作者自身が作品について解説する「ギャラリートーク」が催され、斎藤さんは「取材旅行しながらイメージの着想を得ている。色を付け加えたり、色で遊ぶことによって、自分で考えていた以上の形ができる」などと話した。廃墟の中にモチーフの大理石が描かれ、中心に赤いザクロやリンゴが置かれている作品については「絵に緊張感を与えるもの。自分の位置であり、自分がなぜ存在しているのか、なぜ絵を描いているのかの問いかけでもある」などと語った。

斎藤さんは制作活動について「結局は自分の存在はどうなのかということになる。私は絵描きなので、絵を通して表現している。描き方としては、旅行をしながら、常に動いたり感じたりすることによって、それをイメージしながら作品をつくり上げていく。連想ゲームのような形で仕上げていくと自分を超える作品になる」などと話す。

ギャラリートークの様子

市内から訪れた70代男性は「よくぞこれだけの作品を展示できたと、作品群に圧倒された」などと感想を話している。(鈴木宏子)

◆齋藤茂男展は10月6日(日)まで。開館時間は午前9時30分~午後5時。入場は午後4時30分まで。最終日は午後3時閉館。入場無料。月曜休館。

茨城の食材を使ってインドネシア料理《令和楽学ラボ》31

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インドネシア料理完成

【コラム・川上美智子】公益財団法人茨城県国際交流協会の事業の一つに「世界の料理ミーティング」というプログラムがある。今年度第1回目はインドネシア編ということで、インドネシアの留学生が故郷の料理を作り、交流した。

当方は毎回、調理サポートとしてこの活動を楽しんでいる。今回は、県立産業技術短期大学の留学生2名と茨城大学大学院農学研究科農学専攻アジア展開コースの留学生4名の茨城県留学生親善大使が参加し、指導役の短大生ディアナさんの指示に従い、2時間かけて料理3品、飲み物1品を仕上げた。

このプログラムには、JICA茨城デスクとJA茨城中央会が協力をしており、JAの情報発信基地である「クオリテLab」(水戸市、JA会館1階)のキッチンが使われている。JAにとっては、茨城のおいしい野菜や農産物を発信する機会でもあり、県産品が異文化とコラボする機会にもなっている。

一緒に料理をしながら、ハラル認証の調味料の購入方法を教えてもらったり、普段は何を食べているのか、日本に留学した理由や卒業後の進路を聞いたり、学びの多い時間でもあった。

昔、母校、お茶の水女子大学食物学科の恩師の食品や調理の先生方とジャワ島を一周し、茶畑やジャスミンティー製造工場を見学し、大学などを訪問したことに思いをはせながら、留学生と時間を共有することができた。

インドネシア料理の材料

Gado-gado、Nasi Goreng、…

出来上がった料理メニューは、ハラル店舗で購入したガドガドソースをかけた前菜「Gado-gado(ガド ガド)」。ゆでた野菜(トウモロコシ、もやし、白菜、さやいんげん、ジャガイモ)にソースをかけたものである。

2品目はインドネシアの焼き飯「Nasi Goreng(ナシ ゴレン)」。長粒米を真っ白に精白したジャスミン米をやや硬めに炊飯器で炊き、ゆでたエビ、小松菜、ネギと一緒にサラダ油で炒めて、ナシゴレン用の調味料を加え仕上げたおいしい焼き飯である。これに目玉焼、レタス、トマト、きゅうりを添えるのが定番のようである。

3品目は「Salad Buah(サラダ ブア)」。果物に加糖練乳をかけたものである。この日は、茨城の梨と巨峰を使ったが、どちらも皮付きのままで食べているとのことでビックリした。飲み物は「Asem Gula Jawa(アセム グラ ジャワ)」。とても酸味の強いタマリンド(マメ科の常緑樹の実)を使った飲み物である。黒糖と砂糖で適度に甘みを加え、ホットでもアイスでも飲める梅ジュースのような味であった。

故郷の料理に喜ぶ留学生を見て、ともにインドネシアを旅した気分になれた貴重な1日であった。多文化共生とか国際交流とか言いながら、まだまだこのような機会が少ないのが残念である。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)

「聴こえるハザードマップ」土浦市が公開 視覚障害者や高齢者にも届く情報を 

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9月12日から市の公式YouTubeチャンネルで公開されている「聴こえるハザードマップ」

土浦市が今月12日から、音声で伝える「聴こえるハザードマップ」を、市の公式YouTubeチャンネルで公開している。これまでは、被災想定区域や避難場所などを活字や地図などで示したハザードマップを印刷物や市ホームページで公開していた。今回、障害者や高齢者など目が不自由な人にも届くようにと、市として初めて、音声で情報を得られるハザードマップを作った。

市防災危機管理課は「ここ数年、各地で水害による被害が増えている。8本の河川と霞ケ浦がある土浦市でも、多くの方にハザードマップの内容を周知し、防災につなげたいという思いで作成した」と語る。

聴こえるハザードマップは、水害や土砂災害が発生した際に想定される被災想定区域の地区名、市内各地の避難場所や避難手順、緊急時に情報を入手できる情報発信元などを音声で発信している。「洪水ハザードマップ」と「土砂災害ハザードマップ」の2種類があり、「洪水」は水害時の心得、避難情報、浸水想定区域、避難場所、情報収集について、「土砂災害」は避難手順、危険箇所、避難場所について、それぞれ1分から5分程度の内容で五つの音声データに分け、わかりやすい言葉でゆっくりと人の声で情報を読み上げている。

すでに印刷物として配布している「土浦市洪水ハザードマップ」と「土浦市土砂災害ハザードマップ」の2種類を元に作成している。印刷物は、イラストや表、地図とともに、異なる大きさの文字や複数の色を使い分けることで、必要な情報を視覚的にわかりやすく表現している。今回作成した聴こえるハザードマップでは、既存の文字情報を読み上げながら、地図上に色分けされている浸水想定区域や土石流の発生、斜面の崩壊などが想定される区域について、河川ごとに地区名を細かく読み上げることで、聞くだけで位置が特定できるよう工夫をした。

同課は「視覚にハンデのある方にもわかりやすい情報をという要望が届いていた。視覚に障害のある方、高齢の方などにもわかりやすく情報を届けたいという思いで作成した。災害が起きてから危険な場所を知るのでは遅いので、視覚障害のある方、高齢の方、それぞれのご家族に是非、音声のハザードマップを利用し日頃からの備えにしていただければ」と呼び掛ける。(柴田大輔)

◆「聴こえるハザードマップ」は市の公式YouTubeチャンネルで無料で公開されている。今後、同じ内容を録音したCDを作成し、個人や団体に向けて貸し出しできるようにする。詳しくは同市のホームページへ。

農家と協働「田んぼさわやか隊」《宍塚の里山》117

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田んぼさわやか隊。写真は筆者提供

【コラム・福井正人】今回は、私たちの会と地元農家との協働作業である「田んぼさわやか隊」について紹介します。この隊は、毎月第3日曜日の午前中に活動しています。活動エリアは宍塚大池を水源とし備前川に流れ込む、流長約2キロの農業水路流域にある水田(休耕田を含む)と水路になります。この農業水路については、一昨年春、フナののっこみとその水路で見られる魚たちについて書きました(22年3月25日掲載)。

上流域には里山の中心をなす谷津田が、中流域には耕地整備されたものの、貴重な土水路が残された水田が広がっています。

さわやか隊の活動の意義として、①地元農家と非農家の協働作業である、②活動のメインエリアである水路中流域の水田地帯が里山を守るように広がっている、③活動地域のほとんどの水路が土水路として残されており、たくさんの生き物を育む場所となっている、④休耕田を復田して、貴重な湿地を増やす―の4点が挙げられます。

なかでも、地元農家との協働作業であることが、田んぼさわやか隊の最も大きな活動意義です。ほとんどが非農家の当会会員にとって、さわやか隊は貴重な農作業を体験できる場であり、地元農家の側からは、高齢化や離農で人手不足が進みつつある現在、多少なりとも作業の軽減につながっています。

農家とWIN-WINの関係

このように、WIN-WIN(ウィン-ウィン)の関係が、里山における「人」を中心としたパートナーシップの構築に役に立っています。活動中の我々の姿を見て、「ありがとう」と言ってくださる地元の方に会うと、とてもうれしくなります。会員の中には、月1回のさわやか隊の活動に限らず、地元農家の方と、田植えや稲刈り、除草作業などを行う人もおり、活動の幅は広がっています。

また、さわやか隊の活動は、生物多様性の保全にも大きく寄与しています。特に農業水路が土水路として残されているため、デコボコができ、水の流れには緩急ができて、さらに植物も生えることから、生き物にとって過ごしやすい場を提供します。

もしこれが三面コンクリートの水路であったら、大雨の際には激流となって小さな生き物は隠れる場所もなく流されてしまいます。もちろん管理はコンクリートのほうが楽です。だからこそ、貴重な生き物の生息場所を守るための手間を、地元の農家だけに負担させるのではなく、保全団体の我々も積極的に関与しなくてはいけないと思っています。

最近では、当会が始めた里山体験プログラムにおいて、さわやか隊の活動が必修科目となり、大学生などの若い参加者も増えています。少しでもさわやか隊の活動にご興味を持たれた方は、活動に参加してみてください。(宍塚の自然と歴史の会 副理事長)