木曜日, 11月 13, 2025
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【筑波大、26年ぶりの箱根路】㊦ 最後の壁「意識の差」乗り越える

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箱根駅伝にエントリーした筑波大チームのメンバー=11日、筑波大学陸上競技場

【池田充雄】箱根への最後の壁となったのは、選手たちの本気度だった。6月下旬、全日本大学駅伝の関東地区予選会が開かれたが、その中に筑波大の名前はなかった。予選会の参加枠20校に入れなかったのだ。だが選手たちには悔しさを見せる様子もなかったという。弘山勉監督は「本気でやらないなら、自分が教える必要はない」と迫り、そこから選手たち自身による意識改革が始まった。

アクションを起こしたのは上迫彬岳主務。「5月からプレーイングマネージャーとして、少し離れたところからチームを見る中で、不足を感じる部分があった」という。選手一人ひとりから匿名で意見を募り、パワーポイント資料にまとめ、ミーティングで問題提起した。

「入学したときは本気で箱根を目指していた選手たちが、いつの間にか、国立であることを負ける言い訳にし始めていた。他の大学では自分たちより実績ある選手が、より恵まれた環境で、より一生懸命練習している。それに自分たちは本当に勝てるのか。箱根に出るためにどれだけのことを犠牲にし、どれだけ苦しい思いをする覚悟があるのか。その部分を確認したかった」

共同会見で話す大土手嵩主将㊧と上迫彬岳主務=11日、筑波大学

100%で打ち込むチームへ

大土手嵩主将は「上迫が中心になって動いてくれて、それぞれの競技に向き合う理由や、練習に取り組む意識など、全員の考えに触れられた。考えが甘かったと気付かされた」と感謝の言葉を述べる。

トラック種目を捨てて箱根一本に絞るのか、学業や就職に重きを置くのか。そうした自問自答の末、結果的に駅伝から離れる部員もいたが、チームの結束はかえって強まった。監督や主要メンバーによるミーティングを定期的に行い、強化方針や練習の意図、流れなどを話し合うほか、チーム内でも互いに改善点を指摘し合うなど、横の風通しも良くなった。

「今の3年は各自が責任を持って、能動的にチームを引っ張っていこうとする者が増えた。データ班やエントリー班、SNS班など、それぞれが自分のできる仕事を見つけて動いてくれる。やっとこういう体制が作れた」と、前年の駅伝主将だった川瀬宙夢は話す。

成功体験が与えた心身の充実

生まれ変わったチームは、夏合宿を経て着実に成長を重ね、10月の予選会を6位という予想以上の成績で突破。11月の1万メートル記録会でも、各選手がこぞって自己新を更新した。12月10日にはエントリーメンバーが確定し、本選まで残り3週間と迫る中、最後の追い込みをかける。

「夏合宿で順調に強くなっている感覚があり、それが予選会で確信に変わった。自分たちのやってきたことは間違っていなかったと、今は自信を持って練習に取り組めている。あとはけがや体調不良を出さないよう、細かいところを詰めるだけ」と大土手主将。

「予選会を勝ち抜いたことで、選手には大きな目標を成し遂げたという達成感が生まれている。この充実した気持ちの中でいかに本選を目指せるかがカギ。競技レベルに対し、体だけでなく心が追いつくことが肝心で、それにより調子を上げ、戦うパフォーマンスを発揮できる」と弘山監督。

目標は、翌年のシード権を獲得できる10位以内。復活から新しい伝統の創造へと、夢舞台での挑戦は続く。(おわり)

【筑波大、26年ぶりの箱根路】㊤ 伝統校復活へ 私学に迫る強化策

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夜更けまで練習に励む男子駅伝チーム=11日、筑波大学陸上競技場

【池田充雄】筑波大学陸上競技部が、来年1月2、3日に開かれる第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)に、26年ぶり61回目の出場を決めた。筑波大の前身である東京高等師範学校は、箱根駅伝の創始者として知られる“いだてん”金栗四三の母校で、1920年の第1回大会の優勝校でもある。だが近年は私大勢に押され、四半世紀も出場が途絶えていた。名門復活はいかにして成し遂げられたのか。

選手を見守る弘山勉監督

大会100年の節目に復活

悲願が成就したのは10月26日の予選会。参加34校から各12人がハーフマラソンを走り、上位10人の合計タイムで競う。10位以内なら本選出場となるが、これに筑波大は6位というサプライズ。弘山勉監督は「チームを箱根に引き戻すことができた。100年目の大会での復活は感慨深い。監督という立場を超え、OBとして純粋にうれしい」と語る。

箱根駅伝への出場自体は94年の第70回大会以来だが、このときは記念大会として予選会11位まで出場枠が拡大された結果。自力で勝ち取った出場権となると、弘山監督が選手として走った89年の第65回大会にまでさかのぼる。

筑波大は2011年に「箱根駅伝復活プロジェクト」をスタート。15年に弘山監督を迎え、以来5年間で予選会の成績は毎年アップ、今回の快挙につながった。ライバルとなる私大各校とは資金力、選手力、練習量などで大きな差があったはずだが、それらをどう克服していったのか。

環境改善へクラウドファンディング

まずは資金力の問題。国公立大学では私立大のような潤沢な強化費は望みようもない。そこで16年からクラウドファンディングを開始。得られた支援金を練習のサポートや食住環境の整備に充ててきた。「予想以上の反響に驚いている。これだけ多くの人に期待されているということ。お金がないと得られない環境はあるので、うまく力に変えていきたい」と弘山監督。

一例が、選手アパートでの食事の改善だ。以前は選手が回り持ちで調理当番をしていたが、そのため練習を早上がりしなくてはならず、体のケアもままならなかった。今は夕食を管理栄養士に任せ、選手のストレスが軽減。メニューの種類やバランスも向上している。

「合宿でも20人が行くと1回で100万円からかかる。それらを補助してもらえるのは大きい。私学との環境の差はどれくらいあるか分からないが、確実に縮まっていると思う」と上迫彬岳主務。

「勉強も箱根も狙える」大学

選手力の差を縮めたのは「復活プロジェクト」の影響が大きい。箱根を本気で目指せる大学という認知が広がり、入学してくる選手のレベルも高まった。「勉強も駅伝も続けられる大学。プロジェクトに引かれ、筑波で箱根を目指そうと入学した」と話す大土手嵩主将(3年)もその一人だ。医学群の川瀬宙夢(5年)は解剖実習や病院実習をこなしながら、猿橋拓己(3年)は理工学群で都市計画を学びながら、チームの主力として箱根に挑む。

金丸逸樹(4年、諫早高)や、相馬崇史(3年、佐久長聖高)ら、高校駅伝の名門校の出身者も増えた。「箱根を走るような高いレベルを知っている選手が今の世代にはそろった。それだけに、箱根と自分たちとの距離感もよく分かっている」と上迫主務。

選手層だけでなく指導陣も手厚くなった。一昨年までは弘山監督が一人で練習から渉外、広報まで全部こなしていたが、今はアシスタントコーチらが付き、選手の状態を逐次把握している。

これらの成果が出始め、弘山監督は「今年は明らかにチャンスの年」と手応えを感じていた。1月の第95回箱根駅伝では、相馬が関東学連の一員として5区を走り、その姿を見た選手たちの間にも「ここで自分たちのタスキをつなぎたい」との機運が高まった。だが、実際に戦えるチームになるまでには、まだ大きな壁もあった。(㊦に続く)

13日からミツバチサミット つくば国際会議場で3日間

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ミツバチサミット実行委員長の横井智之筑波大学助教

【相澤冬樹】2年ぶり2回目となるミツバチサミット2019が13~15の3日間、つくば市竹園のつくば国際会議場で開かれる。主催は同サミット実行委員会(委員長・横井智之筑波大学助教)。「環境・食の未来を考える」をテーマに、ミツバチに関わる研究発表や情報交流のワークショップがあり、展示や販売も行われる。

横井実行委員長(40)は「ミツバチは産業になったり趣味になったり、生態が様々に解き明かされてきた。これからの環境と食を考えるうえでも興味深い生き物といえる。専門家たちの情報交換にとどまることなく、特に高校生や子供たちに魅力的なミツバチの世界に触れてほしい」という。

第1回の会場風景=2017年11月、筑波大学

2017年開催の第1回は筑波大学構内で2日間の開催だったが、延べ1000人近い参加者を集めた。今回は会期を1日延長し、つくば駅にほど近い国際会議場に会場を移した。茨城、つくばが特にミツバチや蜂蜜の産地というわけではないが、同大学や農研機構などあるつくばは研究者らが交流しやすい条件だった。

研究発表や「蜜蜂と遠雷」朗読会も

前回はセイヨウミツバチ、ニホンミツバチの養蜂関係者の姿が目立ち、飼養に関わる知識や技術情報の交換に多くの人だかりができた。今回は有料エリアを4つに区分して、「参加者の興味に応じて立ち寄れる構成にした」そう。①キッズ(子供たち向けのサイエンスカフェなど)②サイエンス(シンポジウムやポスターセッションなど研究発表を中心)③フェスタ(セミナーやワークショップなどイベント企画)④プロフェッショナル(農家や養蜂家に役立つ講習会など)の-4エリア。

日程を追うと、13日午後が基調講演「日本のミツバチ・研究・養蜂環境:最近の動向」佐々木正己さん(玉川大学名誉教授)の後、5つのシンポジウムが開かれる。全ゲノムが解読されたミツバチの“設計図”を読み解くなどがテーマだ。

14日には午後から特別講演「農薬の生態リスク評価最前線」五箇公一さん(国立環境研究所)の後、全国から集まった高校生、大学生による研究発表「全国学生養蜂サミット2019」がある。元NHKアナウンサー岩井正さんらが恩田陸著「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎刊)などを読む朗読会(入場無料、先着50人、整理券配布)も予定されている。

15日は午前中、つくば養蜂研究会などによる第1回ニホンミツバチの会全国大会「ミツバチ保護活動を考える」など。3日間で10のシンポジウム、50のポスター発表が予定されている。

入場料は高校生以下無料、一般は1日券1500円、3日券3000円(税込み)。蜂蜜や蜂蜜酒を販売するマルシェやブックカフェなど無料エリアも設けられる。イベント等詳しくは公式ホームページで。

➡ミツバチサミット既報はこちら

地元団体が観光案内所オープン つくば市小田の空き店舗に

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観光案内所「TAMARIBAR」を運営する(左から)ツックラの副代表で米国出身のコーツ・アンさん、代表の大類裕幸さん、副代表の磯山茂さんら=開店準備中の店内

【鈴木宏子】小田城跡や宝篋山(ほうきょうさん)に近いつくば市小田の旧市街地に15日、地元団体が運営する観光案内所「TAMARIBAR(タマリバ)」がオープンする。

空き店舗を改装し、地元産食材を使った軽食を提供したり、地元野菜や加工品を販売したり、観光案内をする。イベントを開催したり、土産品を開発したり、移住希望者向けに空き家の紹介をしたり、月に1度はこども食堂も開催する予定だ。

古民家の再生に携わってきた地元在住の建築士、大類裕幸さん(69)が代表を務める住民団体「TSUKKURA(ツックラ)」(NPO法人申請手続き中)が運営する。同会は、つくばで歴史や文化、自然を生かした暮らしを楽しむことを手助けしようと2018年に発足し、これまで筑波山麓の古民家でジャズライブなどを開催してきた。

空き店舗が増え、地元住民同士が交流する場だった店先がだんだん少なくなっていることから、人やものが集まり、語らいが生まれる場をつくりたいと、新たに住民同士が交流したり、観光客に地元情報を発信する観光案内所をつくる。

2011年に閉店した旧磯山商店の1階約40平方メートルを改装してオープンする。同店は雑貨と電気製品を販売し、駄菓子なども扱っていたため、かつては地域の子供たちのたまり場だったという。

開店準備をするスタッフ=9日、つくば市小田

大類さんが、同店3代目の磯山茂さん(66)に声を掛け、「地域のためになるならば」と磯山さんが応じた。大類さん、磯山さんなど小田地区の住民を中心に計約20人のメンバーで運営に当たる。

店の奥にある和室も開放し、地域のお年寄りや子供たちにも自由に出入りしてもらって、地域のたまり場になることを目指す。観光ガイドの養成にも取り組み、登山客や観光客、サイクリストを対象に、地元の宝篋山の登山コースを案内したり、中世の城跡がある小田地区の街歩きスポットを紹介などする。

大類さんは「子供がいて、お年寄りがいるたまり場をつくりたい。山登りの帰りに寄ってくれる人がいたり、いつでもだれか人がいる場所になってくれればいい。そのためのイベントも開催して長く続けられるようにしたい」と話す。

◆TAMARIBAR つくば市小田3094-2 土曜、日曜、祝日のみ開店。時間は午前8時~午後3時。

15日に「牛久の会」年間活動報告会 入管施設収容の外国人

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牛久の会の田中喜美子代表=つくば市高野

【崎山勝功】牛久入管センター(牛久市久野町、法務省出入国在留管理庁東日本入国管理センター)に収容されている外国人の処遇改善に取り組んでいる市民団体「牛久入管収容所問題を考える会」(つくば市)の年間活動報告会が15日午後1時30分から、つくば市吾妻のつくばイノベーションプラザホールで催される。

同会の田中喜美子代表は「外国人の人権を守ることが、日本人を含む全ての人たちの人権の保障につながる」と訴える。

同会では、昨年から今年にかけて同センターの被収容者がどれくらいの期間収容されているか調べたところ、収容者全体の約90%が6カ月以上の長期間収容されており、被収容の外国人たちは肉体的にも精神的にも疲弊しているという。

田中代表によると、今年の5月10日から1人のイラン人被収容者が長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)を始めたのを皮切りに、同センターではハンストを行う外国人が続出した。大村入国管理センター(長崎県大村市)で6月24日にナイジェリア人の被収容者が拒食症になり餓死した事件が発生。牛久でも同様の事件が起きることを危惧した出入国在留管理庁側は7月上旬ごろから「ハンストを始めて約10日以上、体重が約10キロ以上減少」のハンストを行う被収容者に対して「仮放免を認めるからハンストを止めてほしい」と持ち掛け、仮放免を認めるようになった。

しかし、仮放免の期間が通常は1カ月で更新のところを2週間に短縮して、東京入管に仮放免の更新に訪れた仮放免中の外国人を次々と収容したことから事態は悪化。ハンストを行う被収容者が増えた上に、2週間の仮放免後に再度同センターに収容された外国人の中には、精神を病んで排尿コントロールができなくなったり、居室を大便で塗る行為をするなど、精神崩壊を起こしたケースが出てきたという。

田中代表は「雰囲気は最悪。今までに経験したことがない。誰にとっても厳しい状況」と明かした。

集会では、同センターでの1年間の面会活動報告をはじめ、難民申請者に対する処遇の違いを英国、韓国を例に挙げて報告する。著書「となりの難民」出版記念として、著者の織田朝日さんが、品川入管での面会活動やクルド人難民の子どもたちとの交流を含めた講演を行うほか、クルド人の子どもたちによる寸劇も披露される。会場では、同センター内で被収容者が描いた絵画や風刺画も展示される。

◆資料代500円。問い合わせ先は、牛久の会公式サイトで。

英語の読み書きを応援 クラウドファンディングで出資募る つくば

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これまでの「RISE英語罫線ノート」

【橋立多美】つくば市で不登校児を支援するNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所が、英語の読み書きへの苦手意識を軽減する「RISE(ライズ)英語罫線ノート」の改訂と普及を目標に、プロジェクト「英語学習のつまずきを防ぐノートを日本中に広めたい」を始動。ノート製作の資金をクラウドファンディングで募っている。

同研究所は、2000年から元教師らが不登校や学習障害(LD)児のための学びの場「ライズ学園」=5月29日掲載=を運営。子ども一人ひとりに応じた学習支援を実践しつつ、子どもが感じている困難さに耳を傾け、発達障害などへの対処法や成果をまとめ、独自の教材として販売している。

プロジェクトは、光過敏(まぶしくて見にくい)への配慮に重点を置くなど、既存の英語ノートにさらに工夫を重ねる。判型はA4判、小学校高学年から中学3年の利用を想定している。

目のちらつきを抑えて正しく文字を書くために4線内は目に優しい色をつける。また文字と文字の間隔を適切に空けて書けるように4線上部にドット記号を配置したり、語彙(ごい)を増すための学習のポイントを記すなど、つまずきを回避して学び取る力をつける工夫がされている。

公立中学の英語教諭を辞して同研究所を設立し、ライズ学園で英語を指導する小野村哲さんは「これまで出会った子は『みんな自分と同じように見えていると思っていた』と言う。目に見えない困難は当人さえも自覚できず、数学は100点なのに英語は0点というつまずきを生じてすべてに自信を失うこともある」と話す。

また「英語に限らず、入門期はとても大切です。転ばぬ先の杖として当研究所が開発した英語ノートを活用してほしい」と言葉をつないだ。

プロジェクト「英語学習のつまずきを防ぐノートを日本中に広めたい」のクラウドファンディングは目標金額は50万円、募集期間は来年2月27日まで。詳しくはこちら

◆認定NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(つくば市千現1-13-3)ホームページはこちら

地元出身の2投手に期待 BCL 茨城アストロプラネッツ入団会見

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2人で競い合い、学び合って来季の活躍を目指す大場㊧、井上両選手=つくば市二の宮

【池田充雄】プロ野球独立リーグのルートインBCリーグ(⇒メモ)で活動する、茨城アストロプラネッツの新入団選手発表会見が8日、つくば市二の宮の関彰商事つくば本社で開かれた。新入団選手7人のうち4人が県内生まれで、土浦市から常総学院高出身の井上真幸投手、つくば市から霞ケ浦高出身の大場駿太選手が入った。2人とも大卒ルーキーの22歳で、高校3年時の甲子園大会が大きな経験になっているという。

井上投手は小学生のとき土浦駒津ヤンキースで野球を始め、常総学院高に進むと2年時から頭角を現し、3年春のセンバツで全国デビュー。2回戦の今治西戦に4番手として登板、2/3回を無安打1三振で勝利に貢献した。「甲子園のマウンドは自分に合っていて投げやすく、思ったより緊張せず落ち着いて投げられた」と当時を振り返る。

神奈川大学では登板の機会に恵まれなかったが、186センチ85キロの恵まれた体格を生かしたダイナミックなピッチングは、即戦力候補との呼び声高い。スリークオーター気味のフォームで、最速150キロ近くのストレートと、120キロ台の切れ味鋭いスライダーを投げ込む。

「自分の売りはまっすぐ。スピードでバッターをねじ伏せる投球で、1つでも多くの勝ちに貢献できる選手を目指す。できるだけたくさんの試合で投げ、いち早くファンの人に顔を覚えてもらえるようにしたい」と話す。

大場投手は小学生のとき谷田部ジュニアスターズ(つくば)で野球を始めた。高崎中から霞ケ浦高へ進むが、同学年に綾部翔(元DeNA)ら好投手がそろっていたため、当時は野手としてプレー。3年夏にチームは甲子園に出場したが、大場はスタンドで応援団長を務めた。「自分ももう少し頑張ったら、このグラウンドでプレーできていたという悔しさが、その後のモチベーションになった」という。

大正大で本格的にピッチャーを始め、4年秋に4勝を挙げて東都大学リーグ3部優勝に貢献。東農大との入れ替え戦では第2戦に先発し、8回を投げてチームの2部昇格の原動力となった。

武器は140キロオーバーの直球に変化球を織り交ぜ、直球を生かすタイプ。テークバックが小さいため、打者からはタイミングが取りづらいという。「茨城でもう一度野球ができることが嬉しい。今季の目標はチーム優勝と日本一。そこで貢献できて初めて、個人としての夢も開けてくると思う」と話す。

お互い競い合う存在に

同じ時期に茨城の高校球界で、それぞれに歩んできた2人の道がここで交わった。互いにどのような思いを抱いているのだろうか。

井上「常総学院高と霞ケ浦高は、いつも県内で競い合い、高め合ってきた関係。その相手と一緒に野球ができることは、いい影響があると思う」

大場「井上くんはセンバツで見て、球が速いピッチャーだなという印象だったが、4年後に同じチームになるとは思わなかった。自分より経験を積んでいると思うので、それを学んでいきたい」

新入団会見に並ぶ7選手。前列左から大場、坂本俊輔、井上。後列左から板津上総、瀧上晶太、海老根拓弥、松浦大知の各選手=同

【メモ】ルートインBC(ベースボール・チャレンジ)リーグ
北信越5県と関東4県、東北1県、近畿1県を活動地域とするプロ野球の独立リーグ。東西それぞれ6、5チームの11球団で構成され、茨城は19年リーグ東地区6位(最下位)だった。

土浦消防は5位 県民駅伝 雨の中 選手ら力走

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【県民駅伝・職域対抗の部】雨の中、一斉にスタートする選手たち=ひたちなか市佐和の笠松運動公園陸上競技場

【崎山勝功】第36回県民駅伝競走大会(県体育協会主催)が7日、ひたちなか市佐和の笠松運動公園陸上競技場の周回コースで開かれた。職域対抗の部(50組エントリー、48組参加)で一昨年まで3年連続優勝し、昨年は3位に甘んじた土浦消防Aチーム(土浦市)は今年、首位返り咲きを狙ったが、総合タイム51分57秒で5位入賞となった。優勝は日立水戸A(水戸市)で48分52秒。

レースは、同公園の周回コース1周約3㎞を、走者5人がタスキをつなぎ、合計タイムを競った。雨天で路面状態が悪い中での競技となった。

土浦消防Aは、序盤の混戦状態から、2区走者の中泉英行が5位に躍り出た。その後もチームは上位をキープしつつ力走を見せるも、首位チームを追い抜くには至らず5位にとどまった。

【県民駅伝・職域対抗の部】5位でゴールした、土浦消防A・5区走者の中嶋和也=同

市町村対抗の部は表彰逃す

市町村対抗の部(22組、各チーム走者7人)には、県南から土浦、牛久、龍ケ崎市の3チームが出場した。土浦市は健闘及ばず総合タイム1時間14分13秒で9位と表彰対象外だった。龍ケ崎市は総合タイム1時間13分50秒で8位入賞。優勝は日立市Aの1時間08分30秒だった。

土浦市は、レース序盤に出遅れたものの、3区走者の宮代和騎(竜ケ崎一高)の力走で6位に浮上。その後も抜きつ抜かれつの展開を見せたが、表彰対象の8位までに入ることはできなかった。

【県民駅伝・市町村対抗の部】土浦市・4区走者の中島瑠七(左)にタスキを渡す、3区走者の宮代和騎=同

➡県民駅伝の過去記事はこちら

イルミネーションプロ部門全国9位に 県フラワーパーク

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県フラワーパークのイルミネーション(県観光物産課提供)

【山崎実】今年で5年目を迎える県フラワーパーク(石岡市下青柳)のイルミネーションが、夜景観光コンベンション・ビューロー認定「第7回イルミネーションアワード」のプロフェッショナルパフォーマンス部門で、全国第9位のランクインを果たした。

全国約5542人の夜景鑑賞士(検定の有資格者)を対象に、「実際に行ってみて良かった」国内施設アンケートを行い、得票ポイントでランキングを決定する。フラワーパークが初めてベスト10入りを果たした部門は、専門性、演出性の高い「光の演出」が特に評価の対象になる分野。

「『恋人の聖地』の夜が輝きだす」を今年のテーマに、昨年同様、約100万個のLED電球が、約100メートルの光のトンネル、広大な丘を彩る一面の光、輝くブーケの園(ダリアの園)など、園内が所狭しと飾り付けられている。

フィナーレの来年1月11日から13日までの3日間は、レーザーとイルミネーションの競演が楽しめ、「恋人の聖地にふさわしい大切な人と過ごしたい場所をアピールしていきたい」という。

県フラワーパークは電話0299-42-4111。

➡県フラワーパークの過去記事はこちら

食べきれないお歳暮は「きずなBOX」へどうぞ

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「きずなBOX」が設置されている市民活動センター=つくば市吾妻1丁目

【橋立多美】年の暮れが近づき、台所の片づけをしたら賞味期限を過ぎていないが使わないと思われる食品が出てきた、なんてことありますよね。そんな時はNPO法人フードバンク茨城(牛久本部)が設置している食品収集箱「きずなBOX(ボックス)」に寄付しよう。

企業やスーパー、農家、個人などからまだ食べられる食品を無償で提供してもらい、生活困窮者や福祉施設、こども食堂などに無償で届けて食の支援をするフードバンク。「もったいない」精神を追い風に、2011年に設立されたフードバンク茨城を含めて17年時点で全国80カ所以上でフードバンク活動が行われている。

社会的弱者の命を支える「きずなBOX」は、多くの人が利用する公共の場所に設置され家庭からの提供を待っている。県内ではフードバンク茨城が回収し、種類や賞味期限に基づいて仕分けして食品を必要とする家庭や施設などに届けている。

同茨城によると、きずなBOXを設置したいという協力申し出は年々増えており、今年10月時点でつくば市内8カ所、土浦市内13カ所を含め、県内で108カ所に設置されている。

18年度の同BOXでの受け取り量は約11トンで、前年より約3トン増えた。企業や団体からの寄付も含めた昨年度の受け取り量は県全体で109トン(約6500万円相当)。昨年12月から、企業が廃棄食品をフードバンクに寄付する場合、損金扱いできるようになったなどから、さらに増える傾向にある。

一方、企業からの寄付は飲料水など福祉施設向けのものが多く、レトルト食品や缶詰などすぐに食べられる食品を必要としている生活困窮世帯は、個人からの寄付が集まるきずなBOXが役立っている。

理事の田中健一さんは「年末の時期は、お歳暮をもらっても消費しきれず、たまってしまう家庭もあると思うので、食べきれないギフト食品はきずなBOXに入れていただけば」と話している。

ただし、寄付できる食品は▽未開封の食品▽常温可能な食品▽賞味期限が2ヵ月以上残っている食品に限られる。要冷蔵や冷凍、野菜やくだものは受け付けない。特に必要とされるのが缶詰や市販の米や玄米、カレーなどのレトルト食品、インスタント麺、うどんなどの乾麺だという。

◇つくば市の「きずなBOX」設置場所は次の通り。
市社会福祉協議会(筑穂1-10-4)/市役所1階レストラン前(研究学園1-1-1)/市民活動センター(吾妻1-10-1)/竹園交流センター(竹園3-19-2)/市民ネットワーク事務局(二の宮2-1-3)/並木交流センター(並木4-2-1)/ふれあいプラザ(下岩崎2164-1)/茎崎窓口センター(小茎320)

◇土浦市の「きずなBOX」設置場所は次の通り。
市役所1階福祉の店ポプラ(大和町9-1ウララビル)/市社会福祉協議会(大和町ウララ2ビル4階)/一中地区公民館(大手町13-9)/二中地区公民館(木田余1675)/三中地区公民館(中村南4-8-14)/四中地区公民館(国分町11-5)/上大津公民館(手野町3252)/六中地区公民館(烏山2-2346-1)/都和公民館(並木5-4824-1)/新治地区公民館(藤沢982)。

手作りのランタンアート 14、15日 7000個がつくばの街彩る

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2018年のランタンアートの様子

【橋立多美】11年目を迎えるつくばの冬の風物詩「ランタンアート2019」が14、15日の両日、つくば駅周辺のペデストリアンデッキとセンター広場を彩る。

日が暮れたころ、市民手作りのランタン約7000個に明かりがともされ、街は華やかで幻想的な雰囲気に包まれる。つくば駅を中心とするセンター地区のにぎわい創出を目的とする、つくばセンター地区活性化協議会主催。

光源のろうそくは約3時間で燃え尽きてしまうが、師走のイベントとして待ち望む人が多く例年来場者は2万人に上る。

ランタンは2リットルのペットボトルを活用。障子紙に絵を描いたものと色画用紙を切り抜いた2種類の装飾カバーがセットされ、ろうそくの灯りを美しく演出する。

市民が手作り、ボランティア200人が支える

ランタンは市内の小中学校の児童生徒とワークショップ参加者などが手作りしている。今月1日、つくば駅前のBiViつくばイベントスペースでランタン制作のワークショップが開かれ、親子でランタンカバー作りに取り組む姿が見られた。サンタクロースと雪だるまを描いていた市内の小学5年の女子児童は「4年のときにクラスみんなでランタンを作って楽しかった。今年も作りたいと(ワークショップに)参加しました」と話していた。

親子で障子紙に水彩ペンで絵を描いたランタンアートワークショップ=つくば市吾妻のBiViつくば

ランタン制作のほか、主催する同協議会の会員や近隣小中学校保護者、筑波学院大の学生、市民サポーターなど約200人のボランティアが準備から撤収までを支える。

初日は点灯時間までに7000個のランタンを設置して着火具で一斉に火をともす。消灯後は消火を確認しながら、持ち去られないよう通路沿いのランタンの装飾カバーを外す。翌日は外したカバーを戻して点灯する。明かりが消えて来場者がいなくなると撤収作業に取りかかる。

希望者は自作のランタンに点灯することができるという。「点灯するのが楽しい」「ろうそくの温かい明かりに癒される」という声が事務局に届くという。

◇「ランタンアート2019」の点灯時間は14日(土)、15日(日)いずれも午後4時45分~同7時30分。問い合わせは、つくばセンター地区活性化協議会(029-883-0251)。

つくば市春日消防本部跡に患者宿泊施設や市児童発達支援センター 筑波大がPFIで検討

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春日消防本部跡地=つくば市春日

【鈴木宏子】筑波大学附属病院南側に隣接する、つくば市春日消防本部跡地(同市春日)約8200平方メートルを、同大がつくば市から賃借して、PFI(民間資金活用による社会資本整備)により医療複合施設の建設を検討している。3日開かれた市議会全員協議会で報告された。

同大によると、患者や家族のための宿泊施設や、つくば市による児童発達支援センター、民間の保健施設のほか収益施設の開設が検討されている。規模などは現時点で未定だが、おおむね2022年夏ごろまでの完成を目指しているという。

春日消防本部跡地は、市消防本部が2015年3月、研究学園の市役所隣りに移転した後、使われなくなった。一部が今年5月まで、水素ステーションや職員駐車場などとして利用されてきた。現在、敷地内には2階建ての旧中央消防署と、3階建ての旧筑南消防本部の建物が残っているが、解体し、さら地にして、同大がPFIにより施設を新設する。

宿泊施設は、同大附属病院の患者に限定せず、主に患者と患者家族が利用できるようにする。

つくば市が新施設内に入居して開設予定の児童発達支援センターは、発達の遅れや障害のある子供たちが通所して、日常生活の基本動作などの指導を受けたりする施設で、家族を支援したり、保育所などを訪問して支援する。同大附属病院と隣接することから、連携して事業を実施していく。切れ目のない支援体制を整備するため保健センターの母子部門や教育局相談部門の併設も検討する。

同跡地の利活用については、2017年11月に筑波大から市に利用計画が出され、市は18年から有識者や障害者団体関係者による「児童発達支援センターの在り方検討会」を設置して在り方や開設場所などを検討してきた。今年7月に提言が出され、市は賛成が最も多かった春日消防本部跡地に設置する方針だ。

今後は、12月中に市と筑波大が協定を締結、来年1月に市が住民説明会を開催する。3月には同大が実施方針を公表、4月に同大はPFI事業者の選定手続きを開始する予定。

種子条例を議員提案へ 県議会 対象作物にソバも

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稲刈りの様子

【山崎実】4日に開会する県議会第4回定例会に県主要農作物種子条例案が議員提案される。採択されれば全国で13県目の種子条例として来年4月1日から施行される。

稲(コメ)、麦、大豆3品目の種子を、国、都道府県が生産、普及する種子法が、民間活力の導入を理由に2018年4月に廃止されて以来、種子価格や安定的供給に対する危機感が農業関係団体などに広がった。県執行部は「茨城県稲、麦類及び4大豆種子の生産と供給に関する要綱」を定め、従来通り種子生産に取り組む方針を打ち出したが、県議会いばらき自民党政調会(伊沢勝徳会長)を中心に条例化の動きが加速し、パブリックコメントなどを実施してきた。

議員提案される県主要農作物種子条例案は、①県と関係者の連携協力による農業者の所得向上を図る礎となる種子生産②農業大県、茨城として種子生産に取り組むべき作物の位置づけと、優良な品種の育成③高品質種子の安定生産と必要な予算の確保―の3つの視点から施策を推進する。

県独自の取り組みとして、種子生産者など関係機関による種子生産、供給の連携協力、需要が見込まれる安全な主要農作物等を対象とした種子の生産、供給、施策推進のための財政上の措置―などが盛り込まれている。

特に注目されるのは、対象作物に稲、大麦、裸麦、小麦及び大豆に加え、ソバ、その他別に定める作物を位置付け、将来の奨励品種を目指した優良な品種の育成に取り組むことを明文化していることで、幅広い優良種子の生産、供給、確保の構築体制の確立を見据えている。

条例案は全15条から成り、目的、理念、県・種子生産者の役割、奨励品種の指定などのほか、種子法で規定されていた採種計画の策定、原種等の確保、指定種子生産ほ場の指定なども盛り込まれている。

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博物館の手話通訳ガイド3人が誕生 筑波技術大が育成支援

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研修成果を報告する手話通訳ガイドになった筑波技術大4年の西野弘二さん

【鈴木宏子】聴覚障害者や視覚障害者が学ぶ筑波技術大学(つくば市天久保)が今年度取り組んだ「博物館の手話ガイド育成支援プロジェクト」で、手話通訳ガイド3人が新たに誕生した。2日、同大でプロジェクトの報告会が開かれ、同大と共にガイドの育成に取り組んだ博物館など3館と、ガイドを目指して研修に励んだ3人が成果を報告した。

誰もが分かりやすい展示と案内によって情報のバリアフリー化を進め、みんなが楽しめる博物館を実現していこうと、同大産業情報学科の生田目美紀教授(感性科学)の研究室がクラウドファンディング(資金調達)を実施し、約150万円を集めて6月から約半年かけて取り組んだ(7月24日付)。

ガイドになった3人はいずれも聴覚障害者で、上野の国立科学博物館などで約2カ月間、研修を受け、同館スクールプログラムの手話通訳ガイドになったつくば市に住む同大4年の西野弘二さん▽千葉市科学館で研修を受け同館のガイドになった千葉市に住む宮崎有佐さん▽アクアワールド県大洗水族館で研修を受け、同館のガイドになった那珂市の小林裕美さん。3人は今後、利用者から要望があれば、それぞれの博物館などで手話通訳ボランティアとして活動する予定だ。

「子供たちの視野広げるきっかけになる」

2日の報告会では、ガイドになった西野さんと宮崎さんらが、3館の担当者と共に研修内容や課題などを報告した。

このうち国立科学博物館で研修した同大4年の西野さん(22)は、同館が小中高校や特別支援学校の児童・生徒向けにもともと用意している体験学習プログラムの一つを活用して手話通訳に挑戦した。ばらばらになった骨で人体模型を組み立てるという体験プログラムで、西野さんは、同館に通って実際にプログラムを体験したり、自分で骨について調べ専門用語をあまり使わずに説明する方法を考えた。同大は、手話だけでなくタブレット端末を見せながら説明する画像などを新たに用意した。約2カ月間の研修後、聾(ろう)学校の生徒を対象に同博物館で手話通訳ガイドを実践した。

福井県出身の西野さんは子供の頃、親に連れられてよく県立恐竜博物館に足を運んだという。しかし視覚的情報しか得られず「見て『すごいなー』と感じて終わりだった」。親はその後、何度も、西野さんを恐竜博物館に連れて行ってくれたが、西野さん自身は毎回「すごい」と感じただけで終わりで、そのうち疲れてしまったと振り返った。

一方、今回、手話通訳ガイドとして国立科学博物館で体験プログラムの案内をしたことで、人の骨について学んだ聾学校の生徒が、動物の骨格と人の骨格を比べたり、なぜキリンの首は長くなったのか興味をもつようになったなど「すごいと感じて終わりでなく視野を広げられるようになった」と感じた。西野さんは「聴覚に障害のある子供たちが、自分で調べる姿勢を育むきっかけをつくることができれば」と話す。

同大は来年度、手話ガイド導入を検討している博物館や水族館、動物園などと、手話を生かして活動したい個人をつなぐ活動を続ける予定だ。生田目教授は「両者をつなぐお手伝いをして、施設がより親しみやすいものになれば」と話す。

小さな芸術品「蔵書票」を展示 再開したつくばの古書店

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店内のショーケースに展示された18点の蔵書票=つくば市吾妻3丁目、古書店ブックセンター・キャンパス店内

【橋立多美】つくば市の古書店、ブックセンター・キャンパス(同市吾妻)で、「紙の宝石」と言われ収集の対象になっている蔵書票を紹介する「日本の蔵書票展」が1日から始まった。

蔵書票は本の見返し部分(表紙の内側)に貼って、その本の所有者を記す小紙片のこと。木版や銅板、石版などが用いられ、著名な芸術家が制作を手掛けている。単なる紙片ではなく、版画技法で制作された趣のある小さな芸術品だ。

木版画家・斎藤清の蔵書票を持つ岡田さん=同

日本に蔵書票が広がったのは1900年ごろ。当時の文芸雑誌「明星」が西洋の蔵書票を紹介したのがきっかけ。それまでは本の持ち主を示すものとして朱肉による蔵書印が用いられていた。現在では書物に貼るという本来の目的よりも、小版画としてコレクターの間で交換による交流が行われている。

店主の岡田富朗さん(83)は「蔵書票は本の所有者が作家の得意な絵柄に任せて依頼し、数百枚単位で作成されていたと思う。一色刷りからカラフルな多色刷りまであるが、いずれも趣のある作品ぞろい」と話す。当初の大きさは、切手大からシガレットケースほどだったが、人気が出てからは大きなサイズの蔵書票が見られるという。

同店は会津の木版画家斎藤清(1907ー1999)、版画や彫刻など多彩に活躍した池田満寿夫(1934ー1997)など、高名な作家45人による382点の蔵書票を所蔵している。今展では12人の作家の木版と銅版18点を見ることができる。

前身は古書店街の1軒

岡田さんは、筑波研究学園都市の形がほぼ整った1990年代初め、同市天久保にあった古書街の1店舗を経営していた。5店の古書店が軒を並べ、文系、理系、美術系の古書がそろい、学生と多くの市民でにぎわった。

その後、岡田さんの店は閉店。4店舗のうち残った1店舗が昨年3月に閉店して、つくばから古書店街は姿を消した。

家族の勧めもあり、岡田さんは「つくばに古書店を再び」と思い定めた。今年、新刊本を売っていたブックセンター・キャンパスで20年ぶりに店舗営業を再開した。広さ約160平方メートルの店舗に江戸や明治、大正、昭和期の古書数万冊が顔をそろえている。

◆「日本の蔵書票展」の会期は12月30日(月)まで。営業は午前10時~午後4時、火曜日定休。同店はつくば市吾妻3-10-12(北大通り沿い)。店舗の裏に駐車場有り。電話は029-851-8100。

数万冊の古書が並べられた店内=同

だれもが利用できるUDタクシーに 障害者が運転手に通達手渡す つくば駅前

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タクシー運転手にチラシを渡す川端さん(手前)=つくば駅前

【山口和紀】車いすのまま乗車できるユニバーサルデザイン(UD)タクシーの普及が進む一方、車いす利用者に対する不当な乗車拒否が全国で相次いでいる問題で、つくば市の障害者支援団体「つくば自立生活センター ほにゃら」メンバーの障害者らが11月30日、つくば駅前で、タクシー運転手一人ひとりに「不当な乗車拒否は道路運送法に違反する」などの国交省通達が書かれたチラシを直接手渡した。

UDタクシーは、車いすの障害者や足腰の弱い高齢者、ベビーカーを使う親子連れなどが乗りやすいよう設計された新しいタクシー車両で、運賃も通常のタクシーと変わらない。国が認定制度を設け普及を推進している。

一方で、車いす利用者の乗車拒否が全国各地で相次ぎ、障害者の当事者団体「DPI日本会議」が10月に行った全国調査では、調査に参加したおよそ4分の1の32人が乗車を断られた。

こうした事態を受けて国交省は11月19日、全国ハイヤー・タクシー連合会に対し通達を出し、電動車いす利用者であることや、乗降に時間がかかることを理由として乗車を拒否することなどが、道路運送法に違反するとはっきり示した。

通達を広く知ってもらおうと、タクシー運転手にちらしを手渡す活動に参加したのは、いずれも車いす利用者で、つくば市在住の川端舞さん(27)、川島映利奈さん(37)、鶴岡信也さん(23)。つくばエクスプレス(TX)つくば駅ロータリーで客待ちをしているタクシー運転手に話し掛け「このような通知が出ていますので、お時間のある時にお読みください」と約1時間半にわたって計15社の運転手にチラシを配った。

参加者した川端さんは自らの体験を振り返り「スロープを使って車いすで乗り込むのは、慣れてない運転手だと時間がかかる。乗り込むまでの時間を運賃に上乗せされた経験がある。それはやっぱりおかしい」と話す。

川島さんはUDタクシーに乗ろうとして断られた経験がある。つくば市内のタクシー会社に予約の電話をしたところ「UDタクシーを扱える運転手が一人しかいない。その日は出勤していないので無理」と言われたという。同じく川端さんも「前に乗ったことのある会社だったのに、電話をしたら『UDタクシーはない』と言われ断られた。おかしな言い訳だ」と語った。つくば市でも正当な理由なく乗車拒否が起きているのが現状だという。

川端さんは、運転手の研修が十分に行われていないことも問題だと指摘する。「障害をもった私たち当事者を研修に呼んでほしい。例えば関東鉄道バスは、当事者を交えた研修を行うようになってから対応がとても良くなった。声を掛けてもらいたい」と呼び掛ける。

川島さんによると、UDタクシーは「車いすのまま乗れる、介護タクシーと違ってタクシー会社がやっているから24時間いつでも利用できる、料金も通常のタクシー運賃と同じ」なのが利点だという。鶴岡さんも「駅に着いてすぐに(UDタクシーに)乗らせてもらえるのが一番いい。営業所などにわざわざ連絡しなくてはいけないはおかしい。普通にタクシーに乗りたい」とだれもが利用できるUDタクシーの在り方を訴えた。

チラシを手渡す活動をした3人=同

台風に負けない新そばデビュー 土浦・小町ふれあいまつり

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「スジがいい」とほめられながら手打ちに挑むそばまつり参加者=土浦市小野「小町の館」

【相澤冬樹】茨城県南きってのソバ産地である土浦市新治地区で30日、令和初の新そばを振る舞う「小町ふれあいまつり」が開かれた。台風19号で県北地方を中心に収穫直前のソバ畑が浸水し、壊滅的な被害が出た県産ブランドの「常陸秋そば」だが、新治地区では大事に至らず収穫出来たそう。会場の同市小野、小町の館にはもみじ狩りの行楽客も駆けつけて、地元のそば愛好会による手打ちそばなどに舌鼓を打った。

11回目を迎えたふれあいまつりのメーン行事が「そばまつり」。同市農業公社が新治地区で契約栽培する「常陸秋そば」を初めてお披露目する機会にしている。この日は好天に恵まれ、地元JAの農産物や加工品販売もあって、朝10時の開会を待ちきれないように車列が会場周辺を埋めた。

新治地区の下坂田、大畑の両そば愛好会が新そばを持ち込み、茹であげ、天ぷらそばなどにして販売するほか、そば打ち体験イベントや「小町の水車」の石臼挽きデモンストレーションなどが行われた。そば店には仕込み作業中から行列ができ、各店300~400食のそばを早々に売り切った。

新そばの常陸秋そばに舌鼓を打つ参加者=同

同公社は新治地区で15軒の生産者と契約し、加工したそば粉を販売している。その作付面積は73ヘクタールに及ぶ。矢口勉事務局長は「昨年一昨年と台風被害で契約数量が調達できない不作をこうむっていただけに、今年の台風19号には心配させられた。しかし花の時期が終わっていたため何とか被害を免れて、実のしっかり入った出来のいいソバの収穫ができた」という。

そば打ち体験イベントを催した下坂田そば愛好会のメンバーは「新そばは香りが大事。今年は打っていても香りが違うし、ややグリーンがかった色合いもいい。いいそばが打てそうだ」と評価する。体験イベントには毎年のように参加する常連が少なくない様子だが、「新そばは水加減が難しい」と言いながら手でこね、のし棒に巻き付けて延ばす作業に励んでいた。

新たに9品をブランド認定 筑波山地域ジオパーク

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今年度新たに認定された9商品=つくば市役所

【鈴木宏子】筑波山や霞ケ浦、関東平野などで構成される「筑波山地域ジオパーク」をPRする同ジオブランド認定商品として29日、ワインやクッキー、しょうゆなど7事業者の9商品が新たに認定された。

いずれも同ジオパーク地域内で採れた食材を使ったり、地域内で製造された食品で、食を通じて同ジオパークを発信することが期待されている。認定は昨年度に続き2回目。昨年度の認定商品11事業者13商品と併せ、認定商品は計22商品となった。

今年4月から6月まで公募し、応募があった8事業者10商品の中から選ばれた。29日、つくば市役所で認定証授与式が催され、同ジオパーク推進協議会会長の五十嵐立青つくば市長から7事業者に認定証が手渡された。

筑波山地域ジオパーク推進協議会会長の五十嵐立青つくば市長(中央)と記念撮影をする認定事業者ら=同

同ジオブランド審査委員会の田中牧子委員長は「各ゾーンのお土産がだいたいそろった。今後はグルメツアーを考えたり、販売方法を検討したい」と語り、五十嵐市長は「おいしいものがジオパークにつながっていることを知っていただく機会になる。各地で商品を宣伝していきたい」と述べた。

今回認定を受けたジャムファクトリー代表の大類由美子さんは「梅畑の隅に受粉木として植えられている小梅を使ってジャムを作った。認定をきっかけに、さらにいろいろな人に知ってもらえたら」と話していた。

認定商品は、筑波山ジオパークの公式ロゴマークを商品に付けて販売できる。各店の店頭やジオパーク関連イベントなどで購入できるが、現在、認定商品を一堂に展示・販売している店舗はないという。

新たに認定された7事業者の9商品は、▽筑波山麓のワイン畑、ビーズニーズヴィンヤーズ(つくば市)の赤ワイン「オーバードライブ」(750ミリリットル、4000円~4200円)と白ワイン「スパイラル」(同、3800円)▽久月総本舗(土浦市)の帆引き船をイメージした洋菓子アーモンドチュイル「帆引れんこん物語」(10枚入り、1425円)と、県産食材を使ったケーキ「常陸のスフレ」(8個入り、1857円)▽茨城産大豆を2年発酵熟成させた鈴木醸造(桜川市)の丸大豆しょうゆ「筑波山」(150ミリリットル、356円)▽霞ケ浦産のワカサギとエビの佃煮を使用した高月堂(土浦市)のクッキー「霞浦の恵み」(10本入り、2480円)▽小梅を使ったジャムファクトリー(つくば市)のフルーツソース「筑波山麓果実 小梅のフルーツソース」(140グラム、800円)▽北条米と筑波山地域で収獲された野菜と肉を使用した吉屋(つくば市)のつくば道弁当(1000円)▽石岡産甘柿の上品な味を凝縮させた三宝園(石岡市)のドライフルーツ(5袋入り、1500円)。価格はいずれも消費税込み。

「エリザベスって何?」 土浦市展に高校生が新風

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写真部門などに高校生の出品が目立つ土浦市展=市民ギャラリー(土浦市大和町)

【相澤冬樹】第72回土浦市展(同市美術展委員会など主催)が28日から、市民ギャラリー(同市大和町アルカス土浦1階)で始まった。日本画、洋画、書など7部門に作品375点が出展されるなか、高校生の参加が増え、異色作も飛び出して、新風を吹き込んでいる。

市展事務局によれば、今回は写真と書道の両部門を中心に学生層の出展が増えた。特に高校生の参加が目立ち、書道部門では応募が前回の9点から19点に増え、前回ゼロだった写真部門では一気に21点も集まった。県立土浦二高、常総学院高、霞ヶ浦高を中心に出品があった。

1947年にスタートした同市展は、県内で最も歴史がある公募型の展覧会だが、近年は顔ぶれの固定化と老齢化が顕著になっていた。一昨年、会場を土浦駅前の市民ギャラリーに変更したのを機に、若い才能の発掘を意図して、高校生の出品料を無料にするなどテコ入れを図ってきた。

事務局の市教委文化生涯学習課によれば、今回は各校に直接連絡を取るなどして、出展を促す一方、市内の高校10校が参加した「学祭TSUCHIURA2019」の開催などにより、高校生の参加機運も盛り上がったという。

審査で優秀作に与えられる奨励賞にも写真で2人、洋画と彫刻で各1人の高校生が選出された。写真部門の審査では「奨励賞に選んだ内海優菜さんの作品に付けられた『エリザベス』って何なのか審査員の誰一人分からなかった。後でアニメのキャラクターだと分かってあ然とした」そうだ。

2年連続で奨励賞を受賞し、鑑賞に来ていた高橋政男さんは「写真は毎回似た顔ぶれで狭いスペースに押し込められていたのに、今年は広くなった上に2列で展示している。若い人の参加で活気が伝わってくる」と話していた。

土浦市展は12月8日まで。30日、12月1日、7日、8日の土日には、出品作の前で美術展委員らが解説するギャラリートーク企画もある。入場無料。問い合わせは同ギャラリー(電話029-846-2950)

サンタになって子どもたちに笑顔を届けたい つくばのボランティア活動

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チャリティーサンタの活動の様子。これから訪問の準備をする

【山口和紀】クリスマスイブの12月24日、サンタクロースにふんして家庭を訪問し子どもたちにプレゼントを手渡す活動がある。クリスマスの楽しい体験を通じて「子供たちに笑顔を」届けるのが狙いだ。サンタにふんして訪問するだけでなく、活動を通して得られた寄付金で貧困家庭や被災地を支援するチャリティー活動も行う。

この活動はNPO法人チャリティーサンタが取り組んでいる。同つくば支部(岸野史男代表)では、今年のクリスマスイブにサンタクロースに訪問して欲しい家庭と、サンタにふんして家庭を訪問し子どもたちにプレゼントを手渡すボランティアを募集中だ。

同法人は「世界中の子どもたちに笑顔を」というコンセプトのもと、幅広い活動を行う。現在26都道府県で活動しており、これまで1万5000人以上の大人たちがサンタとなって3万人を超える子どもたちにプレゼントを届けた。

市内NPOの活動に参加し子どもたちに絵本を渡している様子

同つくば支部は、つくばみらい市内在住の会社員、工藤咲希さん(25)が、つくば市にチャリティーサンタがないことを知り「子どもたちに、とっておきのクリスマスを届けたい」と2017年に立ち上げた。工藤さんは、大学時代からチャリティーサンタの活動に興味があり、いつか参加したいと考えていた。秋田県立大学を卒業後、つくば市に勤務することになり、そこで「つくばにチャリティーサンタがないのはもったいない。ないなら作ればいい」と思いたち、立ち上げを決めた。

子どもの頃、テレビで貧困の中にある世界の子どもたちのことを見た工藤さんは、クリスマスを前に「私のプレゼントはいらないので、世界の困っているこどもたちにプレゼントをあげてください」と手紙を書いて、家の窓際近くの、手紙が入る大きな靴下に入れたという。結局、その年は、英語で書かれた手紙と共にプレゼントが置いてあった。今思えば「お父さんが慣れない筆記体で書いた手紙だった」が、当時は「本当にサンタさんが来た」と、とてもうれしかったことを覚えているそうだ。

現代表の岸野史男さん(41)はフリーランスのライターでつくば市内に住む。つくば駅などで清掃活動を行う団体「グリーンバード」で活動をしている際に工藤さんからチャリティーサンタに誘われた。初年度からともに活動している。工藤さんは「(岸野さんなら)広い視野で、子どもたちのために何ができるか、どういう大人であるべきかを考えられる」と代表を引き継いでもらったという。

チャリティーサンタの主な活動のひとつが「サンタ活動」だ。申し込みがあった子育て家庭の自宅に、サンタの服装をしたボランティアが訪問し、各家庭が用意したプレゼントを届ける。単に手渡すだけではなく、家庭と事前に打ち合わせをし、一人ひとりの名前を呼びつつ、「頑張ったこと」「応援してほしいこと」などのメッセージを届ける。「(サンタ活動は)むしろ、やっているこちらが感動させてもらえる」と岸野さん。「子どもたちに特別な思い出を届けることができたら」と語る。訪問した家庭の子どもたちから、折り紙の裏に絵が書かれた手紙をもらい、「今でも大切にしている」とうれしそうに話す。

同団体では併せて、経済的な問題を抱える家庭を支援する活動「ルドルフ基金」も行う。訪問した各家庭から寄付金3000円を募り、集まった寄付金をもとに貧困家庭の子供たちにプレゼントを届けるなどの事業に活用している。市内で貧困家庭の子供たちを支援するNPOなどとも協力して活動しており、昨年12月にサンタを招いた団体のスタッフは「子どもたち一人ひとりに絵本を下さった。それも、一人ひとりに合った絵本を選んでくれた。とてもいい経験になったと思う」と感謝を述べる。

岸野さんは「活動には実際にやってみないと分からない魅力がある。少しでも興味があったら気軽に参加をして欲しい」と話す。今年度の「サンタ活動」のボランティアや訪問する家庭は募集中だ。

また他の地域のチャリティーサンタは学生が中心となりサークルのような形で行っていることが多いが、最初に始めた工藤さんが社会人だったこともあり、同団体を運営するスタッフは社会人を中心に5人。「筑波大学や筑波学院大学の学生など、若い力を貸して欲しい」と、学生の運営スタッフも同時に募集する。夏には被災地の子どもたちと自然体験ツアーを行うなど、クリスマスだけでなく1年を通じてチャリティーサンタの普及活動をしている。

サンタになりたい人、サンタを呼びたい家庭の申し込みはNPOチャリティーサンタHPへ。