日曜日, 11月 27, 2022
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「イナリヤツ」とよばれる谷津田 《宍塚の里山》90

【コラム・嶺田拓也】土浦市の宍塚大池の西側には約25アールの通称「イナリヤツ」とよばれる谷津田があります。谷津田とは斜面林(里山)に囲まれた盆地状の地形に展開している田んぼを指します。イナリヤツは5枚の田んぼから成る谷津田で、昭和初期から地元の青年会によって稲作が行われてきました。 戦後、青年会の人数が減ってからは、地元自治会により耕作されてきましたが、1954年からは宍塚大池の近隣に住むお1人の方によって、ほそぼそと耕作が続けられてきました。しかし高齢化などに伴い、2001年以降徐々に休耕する田んぼが増え、2008年にはすべての田んぼが放棄されるようになりました。 イナリヤツは耕作が放棄されたあとも、周辺の里山に降った雨が地下に浸透して谷津奥部や台地斜面の下部からしみ出すことで湿地状態を維持し、通称イナリヤツ湿地と呼ばれていました。この湿地には希少な湿生植物も見られたことから、宍塚の自然と歴史の会では茨城県自然博物館などと共同して、2012年から定期的に湿地内の植生を調査しています。 これまでのところ、湿地全体で150種以上の植物が確認され、マルバノサワトウガラシやミズニラなど、全国や茨城県で絶滅危惧種に指定されている希少な湿生植物10種の生育が確認されました。一方、外来種のセイタカアワダチソウやキショウブなどの定着も認められました。また、ヤナギ類やガマなどの大型で繁殖力も強い植物が繁茂し、何も手を加えないと小型の希少な湿生植物が生育しにくい環境に移行していくこともわかってきました。 絶滅危惧種などをモニタリング そこで、絶滅危惧種の保全を目的に湿地の維持管理作業も行っています。具体的には、数年おきに刈り払いを行ったり、トラクターなどで部分的に耕したりすることに加え、定期的にセイタカアワダチソウやキショウブなどの外来種の除去も実施しています。

みんなで楽しく田んぼづくり 《宍塚の里山》89

【コラム・阿部きよ子】私たち「宍塚の自然と歴史の会」では、1995年から里山の中の休耕地となった谷津田で稲作りを開始し、1999年以降、子どもから大人までを対象とした「田んぼ塾」を開いてきました。そして、2015年からは、新たな稲作方法を研究開発する「自然農田んぼ塾」と子ども中心の「田んぼの学校」に分かれて、谷津田の稲作に取り組んできました。 田んぼの学校は、年度ごとに家族単位で「生徒」を募集し、①稲作と稲作に伴う伝統文化を学ぶ食農教育、②里山の自然や田んぼの環境について学ぶ環境教育―をしています。 今年度は、定員越えで数家族お断りしましたが、33家族で発足しました。豊かな生態系を持つ宍塚の里山の入り口の休耕田を地主さんからお借りし、機械化以前の方法で、肥料は米ぬかだけ、完全無農薬で稲を育てています。伝統行事の「ならせもち」用に、白、赤それぞれ1種類の餅米の品種と藁(わら)細工用の品種を栽培しています。 子どもが田植えや稲刈りに参加する「田んぼの学校」は各地にありますが、私たちの学校には、以下のような特色があります。 a.子どもも大人も主体的に取り組む、b.種まきから食べるところまで継続して稲と関わる、c.里山の四季の変化の中で感性や知性を駆使し、自然環境を体験しながら学ぶ、d.毎回、作業の意味や稲作の変化について学習し、日誌もつけ、ときには「宿題」もする、e.経験も知識も出身地も異なる老若男女、大人子どもが交流し学び合う―。 子どもは泥んこを楽しむように

古民家「百年亭」再生プロジェクトがスタート 宍塚の自然と歴史の会

土浦市を拠点に、宍塚大池周辺の里山保全活動に取り組む認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」(森本信生代表)が、新たな活動拠点の一つとして古民家を改築し利用する「百年亭再生プロジェクト」をスタートさせた。 里山保全活動の交流拠点に 土浦とつくばを結ぶ県道24号線(土浦学園線)沿いに、使われないまま時間が経った古民家がある。残存する記録から、少なくとも築100年以上の歴史があると考えられるという。ちょうど売りに出たのを、同会副理事長の佐々木哲美さん(69)は知り、会の活動拠点に古民家利用を考えた。佐々木さんは、会の活動をより多くの人に知ってもらいたいと考えていた。 「宍塚の自然と歴史の会」副理事長の佐々木哲美さん 同会は、古民家から徒歩数分のところから広がる谷津田や、その奥に位置する宍塚大池と周囲の里山で、林の整備や植生管理を通じた里山保全活動、外来生物の取り除きによる池・湿地の保全、野鳥の観察、田んぼや畑作業など、幅広い活動を展開してきた。活動を通じて、より広い人に里山への関心を持ってもらい、地域に残された100ヘクタール余の里山を守ることが目的だ。

太陽光発電に浸食される里山の危機 《宍塚の里山》78

【コラム・佐々木哲美】3年前、宍塚里山の南西部にある畑と森林が伐採され、太陽光発電のパネルが設置されました。その面積は約3.5ヘクタールにも及びました。土地所有者の権利の大きさを前に、里山を維持できなかった私たちは無力さを痛感。そこで、土地を取得するために、ナショナル・トラスト(文化財や自然風景地などの保全活動)の取り組みを検討しました。「宍塚の里山」約100ヘクタールのうち数ヘクタール取得すれば、行政も考えるのではないかと期待したからです。 太陽光発電の位置=全国農地ナビから作成 私たちは昨年1月、公益社団法人「日本ナショナル・トラスト協会」の助成金をいただき、改めて土地所有者の調査に入りました。11月には「里山保全のためにNPO法人は何ができるか」をテーマに学習会を開催しました。最近、学習会に参加した方の母親がお亡くなりになり、相続財産の中から50万円を寄付してくれました。また、当会が土地の寄付を受け付けていると知った方から、宍塚の里山に所有する67坪の山林を寄付したいとの申し出がありました。 また、当会が10数年整備してきた土地の所有者から「太陽光発電に土地を貸すか売らないか」と言われているが、どうしたらいいかとの相談もありました。周辺の土地所有者に当たって調べたところ、約2.7ヘクタールの事業が計画されていることが判明しました。その対応を考えているさなか、5月中旬、「上高津貝塚ふるさと歴史の広場」南側に発電設備の材料が突如運び込まれ、あっという間にパネルが設置されました。その後も周辺の草が刈られ、新たな施設建設の勢いは止まりません。 「再生可能エネルギー」が自然を破壊 経産省のホームページにFIT(固定価格買い取り方式)認定の計画は大小を問わず掲載されていると聞き調べてみましたが、確認できませんでした。また、茨城県のガイドライン(2021年4月改定)によれば、50キロワット以上の計画(面積換算700平方メートル以上)は市町村に計画を提出するように定められています。しかし、FIT認定外の情報は公表されていないため、市町村への問い合わせが必要ということでした。

《宍塚の里山》73 謎の広場に2匹のタヌキを発見!

【コラム・及川ひろみ】宍塚には不思議な広場がある。雑草がなぎ倒され、ぽっかりと空いた広さ20畳ほどの広場。谷津のくぼ地で、日当たりがよく、周囲は背の高い雑草に覆われ、人が近寄った形跡は全くない。しかも、謎の広場は展望台と呼ばれる高台から丸見え。何のための広場なのか不思議でならなかった。 謎の広場 1月3日の午後3時過ぎ、1匹の丸々と太ったタヌキが広場の隅で寝入る姿があった。日が落ち、寒くなってきたなと思った4時少し前、眠っていたタヌキがやおら起き上がり、広場の縁を歩き始めた。間もなく、草むらから呼び出されたかのように、もう1匹のタヌキが現れた。2匹はしばらくじゃれ合っていた。その後、1匹が近くの穴に入ると、残された1匹も同じ穴に勢いよく飛び込み姿を消した。 2匹は同じような大きさ。番(つがい)のようだ。それにしてもこんな広場、どうやって作ったのだろうか。展望台は五斗蒔谷津(ごとまきやつ)と呼ばれる宍塚大池の南側の先端にあり、散策路から少し入ったところ。ここは谷津が広く見下ろせる見晴らし抜群なことから、野鳥観察のポイント。これまで何度となく訪れた所だが、これまで広場が作られたことはなかった。 それにしても、この広場は日当たりがよく、北側は小高く、北風が遮られ、昼寝には気持ちよさそうなところ。宍塚にはタヌキの成獣を襲う動物がいないからか、その無防備さにちょっと驚く。この時期のタヌキは、疥癬(かいせん、皮膚病)に侵され、やせ細るものも多いが、今回見た2匹のタヌキはとも丸々と太り、色つやもよく元気そうだった。 アライグマ、ハクビシン、キツネもいる

《宍塚の里山》71 コロナ禍で野外活動参加者が急増

【コラム・及川ひろみ】新型コロナ感染がまた広がっている。春ごろから、秋~冬には再拡大が心配と言われていたが、いきなり起こった拡大。私たちの会の活動に参加している会員も濃厚接触者になり、近隣施設でも感染者が出たそうで、コロナ禍が身近に迫っている。今回は、里山で何が起こり、会はどのように対応したのか、まとめてみた。 3~6月、全国の小中高が休校になり、保育施設なども休園した。そのころから、里山にやって来る人が急増。散策、写生、釣りを楽しむ親子が増えた。と言っても程よい程度で、その姿から、日ごろ「ゆっくり」「のびのび」することに飢えている人が多いように感じた。 会の活動は野外が主で、「三密」を心配するようなことは少ない。しかしコロナ禍で、月例テーマ観察会などに参加する親子が急増し、危険な状態になった。そこで、参加希望者は会のホームページから申し込んでもらい、参加人数を制限した。その際、在学校をまんべんなく選び、初参加者を優先した。活動人数は、スタッフを含め40人ほどに抑えている。 収穫祭など大イベントは中止 「大池の魚の観察会」には250人以上の申し込みがあり、自然体験欲求が強いことを感じた。多田多恵子さんを講師に依頼した「実と種観察会」では、「植物のたくさんの秘密を、実物を見ながら学べるなんて、なんて幸せなんだろう」との感想も寄せられた。 今年は特に、「田んぼの学校」(年間を通して田んぼに関する親子の活動)も参加者が増えた。三密にならないように、田植え、稲刈り、かかし作りも複数回ずつ行った。参加する親子に、モノの本質を見て考えてもらう活動の大切さを感じた。

《宍塚の里山》70 里山のドングリ

【コラム・及川ひろみ】ドングリの季節を迎えました。宍塚で一番多いのがコナラドングリ。次いで、アラカシドングリ、クヌギドングリ、シラカシドングリ。わずかですが、スダジイドングリも拾えます。 ドングリが落ちたところをよく見ると、気が早いものでは皮が割れ、地中に根を伸ばし始めているものがあります。ドングリは乾くと発芽率が極端に落ちますが、落下後、適当な水分があると間もなく発芽します。 しかし、多くのドングリが見られるというのに、育った若木を見ることがほとんどありません。乾燥で発芽しないドングリが多く、発芽しても、光量不足でコナラやクヌギは成長できないのです。 そこで、放置した里山では、これらの若木の更新がほとんど起こりません。シラカシやアラカシなどカシの仲間は暗い林でも発芽・成長しますから、幼木が見られますが、雑木林はコナラやクヌギ、カシ類の大きな木に覆われ、薄暗い林になっています。 明るい森づくりを目指している林、伐採が進んだ竹林など、会が活動する場所では、コナラやクヌギの若木が見られます。 ドングリの散布はほとんどが風によりますが、実は動物によっても行われています。植物は自ら動き回ることができませんが、風や動物を利用し、種子散布を行います。ドングリは大き過ぎて、風による遠方への散布は期待できませんが、実は鳥によってかなり遠くに運ばれます。

《宍塚の里山》69 最近ヘビが増えた! 人気の親子観察会

【コラム・及川ひろみ】宍塚の里山では、今年はヘビが多く、日に数回見ることもあります。かつてはどこにでもいたヘビですが、最近は少なくなっている―そんな中での出来事です。 ヘビといえば、その言葉を聞いただけで、顔をそむける方もいると思います。しかし、ヘビ好きの方も結構多く、観察会で一番人が集まったのはヘビ観察会。200人の親子がやって来たこともありました。これは、当会が主催する各種観察会の参加者レコードです。 なぜヘビが里山に増えたのか? もちろん、餌になる生き物が増えたからです。以前、カエルが好みそうな湿地や田んぼを増やしたら、赤ガエルが6倍に増えたことがありました。赤ガエルは春先、水があるところに産卵しますが、その卵塊を数えれば大体の生息数がわかります。 カエルは生きているものしか食べないことから、環境の変化を捉えるバロメーターです。卵塊を数えることができる唯一のカエルがアカガエル。6倍に増えたときには、環境保全の意味が実感できました。 里山には3~4年前から、どこからやって来たのか不明なカエル、ヌマガエルが定着しました。その繁殖力は半端でなく、今ではあちこちでピョンピョン、踏みつぶしそうなほどです。その結果、それまであまり見なかったヘビが増え、人前でも見られるようになりました。普通、ヘビは人が近づく前に素早く身を隠しますが、それでも見られるようになったのです。 「マムシって、どんな虫ですか?」

《宍塚の大池》68 地元小学校や市民がオニバス保全活動 

【コラム・及川ひろみ】オニバスは春発芽し、夏には直径2メートルもの大きな葉を水面に広げるスイレン科の一年草の水草です。葉・茎など花弁と根を除き、全体に鋭く長いトゲがあることから、オニバスと呼ばれるようになったようです。環境省レッドリスト絶滅危惧II類(VU)の絶滅の危機にある貴重な植物です。 宍塚大池は太平洋側のオニバス北限生育地で1982年、約500株が確認されました。1990年、会が行った調査では36株、その後さらに少なくなり、2000年ごろから宍塚大池ではオニバスが見られなくなりました。 オニバス減少の要因について、環境省「日本の絶滅のおそれのある野生生物」(レッドデーターブック、2002年改訂版)は、湖沼の開発、水質の汚濁土地造成を主原因に挙げています。 オニバスを育てるために会では、大池堤防の下流にオニバスの生育地として「オニバス池」を掘りました。が、そこでアメリカザリガニがオニバスを食べ尽くす現場を目撃しました。残念ながらオニバスをオニバス池で育てることを断念しています。 種を採取し1990年から栽培 オニバスは水面で咲く花とは別に、水中で自家受粉するたくさんの「閉鎖花」を付け、種を付けます。

《宍塚の里山》62  モニタリング調査で分かったこと

【コラム・及川ひろみ】環境省による里地里山調査は2005年に始まり、現在、4期目の調査を行っています。昨年11月には、2005~17年の調査報告書が、環境省と市民団体の間に立ち取りまとめを行う(公財)日本自然保護協会から発表されました。 この中で明らかになったことは、身近にごく普通に見られた生き物が急激に減少していることです。たとえばチョウでは、全体の約4割もの種が絶滅危惧の評価基準の一つである減少率(10年で30%)になっていることが明らかになりました。チョウ以外でも、野鳥、ノウサギ、テン、ホタル、ヤマアカガエルなど広い分野で、その傾向が見られました。 WWF(世界自然保護基金)の「生きている地球レポート2018」では、「過去40年間で野生生物の個体数が60%減少」と報告されています。また、2019年国際機関IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学―政策プラットフォーム)は、「100万種が絶滅の危機」という衝撃的なメッセージを出しました。日本自然保護協会の報告書も「普通種が危機的な状況」と述べています。 行政も里山保全に積極的関与を 里地里山は、原生的な自然と都市との中間に位置する里山が集落とそれを取り巻く2次林、 それらと混在する農地、ため池、草原などで構成されています。農林業などに伴う様々な人間の働きかけが、1000年以上にわたり持続的に行われてきました。人の手が加わり続けることで維持されてきた林、田んぼ、小川、ため池など多くの環境要素が集まり、日本の面積の40%を占めていると言われています。

《宍塚の里山》61 環境省のモニタリング1000調査

【コラム・及川ひろみ】日本は、亜寒帯から亜熱帯にまたがる大小の島々からなり、屈曲に富んだ海岸線と起伏の多い山岳など、変化に富んだ地形や、各地の気候風土に育まれた多様な動植物相が見られます。 多様な生態系(高山帯・森林草原・里地里山・湖沼・砂浜・磯藻場干潟・サンゴ礁・島嶼)のそれぞれについて、環境省では全国1000カ所程度のモニタリングサイトを設け、基礎的な環境情報の収集を長期にわたって(100年)継続し、日本の自然環境の質的・量的な劣化を早期に把握することを目的に調査を行っています。 調査は記録を残すことだけが目的ではありません。結果を生かすことこそが大切なのではと、われわれは環境省のシンポジウムで質問しました。変化を捉えたなら、素早く保全に生かすことが調査の目的ではないかと主張しました。(環境省のHPには調査の目的に保全に生かすとは書かれていないことが残念です) モニタリング調査を行う環境省の方針のもと、里地里山の調査内容について、日本自然保護協会が専門家、市民2団体と調査・検討を開始したのは2003年のことです。昆虫・植物・土壌・動物・水質などの調査項目が挙がる中、生態系を捉える上で、昆虫より上位に位置する動物の調査が必要だと提案した結果、アカガエルの卵塊調査、哺乳動物調査の項目が入り、試行錯誤をしながら、調査を開始しました。 より正確に里山の自然環境を把握 環境省は里地里山モニタリング調査を、当初、専門家に委託することを考えていました。しかし、身近な自然環境である里地里山調査は、年数回やって来る専門家による調査より、専門性を持った市民が足しげく通って調査する方が、より正確な里山の自然環境の把握ができるのではないか―と思い、(公財)日本自然保護協会と当会が2006年2月、モニタリングシンポジウムを土浦市民会館で開催しました。

《宍塚の里山》60 白い花に覆われたウワミズザクラ

【コラム・及川ひろみ】コロナが社会を席巻(せっけん)している中ではありますが、そんな時こそ、ちょっと気分転換。4月中下旬、宍塚の里山には、こんもりと白い花に覆われたウワミズザクラが風に揺らぐ様子が、方々(ほうぼう)で見られます。 高さ10~20メートルにも及ぶ大木で、明るい林縁(りんえん)に多く見られるので、遠くからでもよくわかり、見応えがあります。花は写真のようにブラシ状です。桜のようには見えませんが、よく見ると5枚の花びらは小さな桜の花です。成長も極めて早いことから、里山の至る所で見ることができます。 ウワミズザクラはアンニンゴ(杏仁子)とも呼ばれ、若い花穂(かすい)を塩漬けにしたものをアンニンゴ漬けと言います。アンニンゴ漬けで有名なのは新潟県ですが、酒の肴(さかな)にすると、人から聞きました。 花の後、写真のような赤黒い実を付けます。この実の収穫は野鳥との競争です。特に、ムクドリが集団でやって来て実を漁り、あっという間に食べ尽くします。野鳥は美味しく実った時にやって来ますから、その直前に取るのが秘訣です。 黒い実は果実酒が最高 採った黒い実は果実酒が最高。アンニンゴ漬けもそうですが、この果実酒、いい香りがします。アンニンゴは、杏子(あんず)の種からつくるアンニン(杏仁)に似た香りがします。友人が数年前漬けたウワミズザクラのお酒を届けてくれました。「不老長寿の酒」と書いてあり、薬酒と言われています。

《宍塚の里山》59 春の美味しい草花いろいろ

【コラム・及川ひろみ】3月1日、モンシロチョウが飛び始め、3日にはアマガエルが鳴き、鶯(うぐいす)の初鳴きを聞いたのも、この日のことでした。初鳴きといっても、ホーホケキョと鳴いたわけではなく、藪(やぶ)から密やかに、鳴きたいな、鳴いてみようかなーとでもいうように、遠慮がちに。 2日後の少し暖かな日には、大分はっきりとさえずりました。それにしても、今年の生き物カレンダーは、初認日の更新がとても多い。 進む春、美味しい草花の成長も際立ちます。アマドコロは名前のように甘く、さっと茹(ゆ)でて酢味噌でいただくと美味しい、ユリ科の植物です。15センチほど伸びたものをスパッと白い部分から抜き取ります。野草を摘むときに大事なことは、来年も楽しめるように、根から掘り採るのはご法度(はっと)。 カンゾウも普通に見られる野草ですが、同じように、さっと茹でていただきます。両者とも癖がなく初心者向け。タラの芽は山菜の王様。鋭い大小の棘(とげ)が特徴の小木で、里山の方々(ほうぼう)に自生しています。膨らんだ芽だけをそっとむしり取ります。 ハリギリは棘(とげ)も芽もタラによく似た植物ですが、同じように食べられます。棘がタラより太く鋭い。タラもハリギリも天ぷらが香ばしい。どちらも、日が当たる林の縁に見られます。これも次年度を考え、取りすぎないように。 どちらも芽を取りすぎると、当たり前のことですが枯れます。食料用に改良されたタラに棘がないものもありますが、山野で育つタラは鋭い大小の棘が特徴です。以前、タラの芽と間違え山漆(ヤマウルシ)の芽を食べ、入院騒ぎを起こした人がいることはお伝えしました。 新鮮なうちに調理し食べ過ぎない ノビルは、地元の方は「ののひろ、エシャロット」などと呼び、これも昔から好まれた野草。さすが、年季が入った方は採るのがうまい。丸く膨らんだ根がうまく採れたときは、子どもも大人も思わず笑顔に。ノビルは繁殖力が強く、根から採っても翌年に影響することはありません。 そのほか、新芽が食べられる植物は多々。クサギ、ハナイカダ、ウワミズザクラ、クズ、サルトリイバラ、ハコベ、クコ、アザミ(いずれも新芽をさっと茹で、お浸しやあえ物に)、タネツケバナ(若い葉や花をサラダに)、ナズナ(根をきんぴらに)、ハハコグサ、カラスノエンドウ(天ぷらに)。 またまだありますが、ナズナを除き、どれも若芽が食べごろ。摘んだ芽は新鮮なうちに調理し、食べ過ぎないこと。苦(にが)い、辛(から)いは、植物の自衛から生まれた薬物、毒物です。人によい効果をもたらす、薬効のあるものも種々ありますが、食べすぎにはご注意ください。(宍塚の自然と歴史の会代表) ➡及川ひろみさんの過去のコラムはこちら

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ふるさと納税の顛末記 ① 《文京町便り》10

【コラム・原田博夫】年末になると、ふるさと納税でソワソワするお宅もあるかも知れない。魅力的な返礼品をめぐる話題である。しかし、これは、制度導入の経緯からすると、妙な話である。今回は、その顛末(てんまつ)を取り上げたい。 そもそも、高校まで地方圏で教育を受けた若者の相当数が、大学入学や会社就職で都会に出て、その後の社会人生活や結婚後もそこで過ごすのは、20世紀後半の日本社会では(都市部と農村地域の間で教育や就業のチャンスに濃淡がある以上)当然だった。 この若者には財政の観点からは、高校卒業までは地元自治体の教育支出が投入されていた。勤務先の企業は、法人税(国税)および法人住民税を(企業の所在地へ)納めている。会社員としては、給与・報酬から所得税(国税)と個人住民税を(居住地の県・市町村へ)納めている。この会社員も企業も、当該年度に関しては立派な納税者である。 しかし、この会社員を高校時代まで成育させた出身地では、この財政収支の流れはやや釈然としない。少なくとも、地方出身者の高校卒業までに投じた財政資金のある部分は、出身の市町村・県に戻してもらいたい。とりわけ、都市部に出た地方出身者が地元に残った同世代よりも高所得者になっている場合には、そうした矛盾を感じる。 故郷へ還元できる制度はないか? 地方交付税制度は、こうした気分を一部解消する制度でもある。主要な国税5税(所得税・法人税・酒税・消費税・地方法人税)の一部(3割強)を地方の固有財源とみなして、全国の地方自治体を対象に、一定の意基準に従って(地方自治体ごとに基準財政需要額と基準財政収入額を算定し、前者が後者を上回っている場合はその差額を財源不足とみて)財源保障のために一般財源として配分する、という制度である(うち、94%は普通交付税、6%は特別交付税)。

ウクライナ避難民支援募金を大使館に寄付 日本つくば国際語学院

学校法人つくば文化学院(東郷治久理事長)が運営する日本語学校「日本つくば国際語学院」(同市松代)が、4月からつくば市内で呼び掛けていたウクライナ避難民支援募金(4月13日付)が9月末までに計24万5000円集まり、10月26日、東京都港区の駐日ウクライナ大使館に寄付した。 募金箱はグループ企業のサンスイグループ(東郷理事長)が運営する市内計8カ所に設置した。当初6月末までの予定だったが延長し、9月末まで寄付を募った。 8カ所は同校のほか、つくばグランドホテル(同市筑波)▽つくばわんわんランド(同市沼田)▽つくば国際ペット専門学校(同市沼田)▽つくば山水亭(同市松代)▽つくば山水亭別亭(同市吾妻、ホテル日航つくば2階)▽KEY’S CAFE(キーズカフェ)ララガーデンつくば店(同市小野崎、10月16日閉店)▽ミスタードーナッツ イーアスつくばショップ(同市研究学園)。特にKEY’S CAFEとつくば国際ペット専門学校に設置した募金箱には多くの寄付が集まったという。 今回の募金活動は「ウクライナ避難民の支援はまず日本語学校から手を挙げてやるべきではないか」という東郷理事長の言葉がきっかけとなった。寄付金を受け取ったウクライナ大使館の担当者からは感謝の言葉が述べられたという。 同校の森山英熙本部長は「みなさんに関心を持って寄付をしていただき、本当に感謝しています。寄付金が避難民の方々のお役に少しでも立てれば」と話し、「これからもウクライナ避難民で日本語を学びたいという人がいたら積極的に受け入れていきたい」と語る。

百年亭再生プロジェクトが進行中 《宍塚の里山》95

【コラム・佐々木哲美】宍塚の自然と歴史の会では、2019年7月に里山に隣接した築100年以上の住宅を購入し、「百年亭」と名付け、修復作業に取り組んでいます。その資金集めに、クラウドファンディング(CF)を使いました。期間は9月5日~10月21日、目標額は300万円としました。 建物の完成には800万円程度が必要ですが、CFに並行して、助成金申込みや様々な手法で、宍塚の里山の重要性を伝えながら資金を集めます。 CFの結果、223名の方から317万5000円の寄付をいただき、目標を達成することができました。どんな方から寄付があったかまとめたところ、会員から27%、非会員から73%と、非会員の寄付が多くを占めました。居住地別では、つくば市32%、土浦市15%など、県内で62%を占めました。 県外では東京都が14%と多く、関東全体では28%を占め、関東以外は9%でした。宍塚から離れると人数は減少しますが、県外からの寄付者が全体の37%にもなり、宍塚の里山保全への支持が全国に広がったことを示しています。 寄付額は1万円が119名(59%)と最も多く、次いで5000円が65名(29%)と続きます。10万円という高額寄付者が4名もいました。今回の成功のカギは、もちろん、寄付していただいた方、知人・友人に働きかけていただいた方、プロジェクトメンバーの努力ですが、ホームページ(HP)の役割も少なくありません。仲介業者READYFORの方々の親身なサポートもありました。 百年亭の創建年と大工名が判明

空気汚染の健康被害を知ってほしい 市民科学者、故 津谷裕子さんの著書を公開

有害化学物質による空気汚染の被害者で、2021年2月に92歳で死去した土浦市の市民科学者、津谷裕子さんが、化学物質による健康被害について知ってほしいと09年に執筆した著書「絵でとく健康への環境対策ープラスチックからの新しいVOC空気汚染」(A5判、98ページ、社会評論社)が、「忘れるな 杉並病・寝屋川病~プラスチックリサイクルで生活を奪われないために」と題したウェブサイト内でこのほど全面公開された。 公開したのは東京都千代田区の市民団体「化学物質による環境汚染を考える会」代表の森上展安さんだ。森上さんは1990年代後半、当時住んでいた東京都杉並区で津谷さんと共に、プラスチックなどの不燃ごみ圧縮・詰め替え施設で健康被害を受けた周辺住民の実態調査や原因究明に取り組んだ。「杉並病」と呼ばれた健康被害だ。 公開された著書は、アレルギーやアトピーなどの患者が増える中、身の回りのさまざまなところから、これまで無かった、ごく微量の揮発性有機化合物(VOC)が発生し、新たな空気汚染が広がっている実態を知ってほしいと執筆された。 東京都杉並区の施設周辺住民の健康被害の調査結果や、プラスチックごみの圧縮や詰め替えで揮発性化学物質がなぜ発生するかをまとめている。その上で「プラスチックは不完全な加熱や機械的処理では、多種類で多様のVOCが発生し、毒性がごく強いものに変質することもある」などと指摘し、今日推進されているプラスチックのリサイクルについても疑問を投げ掛けている。 予防、救済、解明へ