【コラム・森本信生】市民の意思で土地を守る「ナショナルトラスト」と、国が認定する新制度「自然共生サイト」。歴史のある活動と新しい仕組みが、宍塚の里山で本格的に重なり合った。
ナショナルトラストの特徴は、市民が資金を出し合い、自然や歴史的環境を「自分たちの手で」次世代に引き継ぐ点にある。発祥は1895年のイギリス。急速な都市開発が進むなか、「失われゆく景観を市民の力で守る」ことが出発点だった。
日本でも1964年、鎌倉・鶴岡八幡宮裏山の開発を防ぐため、市民と市が協力して土地を買い取った例が最初とされる。現在、日本ナショナルトラスト協会に関わる団体の会員は計17万人、保全地は約1万5000ヘクタールに及び、市民による継続的な取り組みとして根付いてきた。
一方、自然共生サイトは、生物多様性の国際目標「30by30」達成のために創設された制度である。国立公園のような法的保護区だけでなく、民有地や市民団体が管理する森も、一定の管理水準を満たせば保全エリアとして国の認定を受けられる。科学的根拠に基づく評価と行政の審査が特徴で、信頼性の高い新しい仕組みといえる。
この二つが交わったのが、宍塚の里山だ。9月16日に自然共生サイトに正式認定されたのは、前回のコラム129で紹介したが、それに続き、9月25日には日本ナショナルトラスト協会から助成金の交付が決定。「キャンエコの森」と呼ばれる447平方メートルの雑木林を対象に、宍塚でナショナルトラストが実現した。
自然共生サイトに認定されたのは三つの森であるが、残る二つの森は、すでに会の基金や寄付によって取得済みなので、今回登録された自然共生サイトすべてが「自ら土地を持つ」形で保全される体制が整ったことになる。
市民と行政が自然を守る新モデル
宍塚における常磐自動車道路のスマートインターチェンジの設置決定や、つくばエクスプレス(TX)のつくば駅から土浦駅への延伸構想のなかで、宍塚の里山の保全をいかに図るかが課題となっている。このような情勢のなかで、宍塚で実現したナショナルトラストと自然共生サイトの両者の組み合わせには、意義があり、大きな相乗効果が期待できる。
市民参加と土地所有というトラストの強み、国の認定による制度的裏付けを提供する自然共生サイトの強み。これらが重なることで、価値のさらなる明確化、資金調達の安定性、企業・行政との協働の広がり、科学データの蓄積、地域ネットワークの強化など、多角的な効果が見込まれる。
宍塚の里山は、市民と行政が連携して自然を守る新しいモデルとして、その持続可能な保全がより力強いものとなっていくだろう。そして、その成果が、土浦の誇りとなり、日本全体、さらには世界に波及してくことを強く願っている。(宍塚の自然と歴史の会 理事長)






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