つくば市の不登校に関する児童生徒支援検討会議が29日午後2時から、市消防庁舎の多目的ホールで開かれた。昨年12月、不登校児童生徒の学習支援施設「むすびつくば」の運営事業者の選定をめぐり迷走した問題を受け、5月に設置された検討会議(5月17日付)の第11回の開催となる。
会議は森田充市教育長と市教育委員4人を委員に構成される。5月に始まった検討会の議論は終盤に近づき、市が2020年10月から22年3月末までNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、小野村哲理事長)と協働で実施した「むすびつくば」の事業に関する検証報告書が検討会議で承認された。同報告書は12月1日に市議会の文教福祉委員会(木村清隆委員長)に提出される。また、今後の市の全体的施策と方針の取りまとめについて意見が交わされた。
「むすびつくば」は、民と官が相互に協力、補完して増加する不登校児童生徒の個に応じたさまざまな学習機会の提供と、民間事業者の専門的知見を活用して新たな学習支援の知見を深めることを目的にスタートした。検証は、利用者の小中学生と保護者へのアンケート(6月~7月実施)や、協働事業者のリヴォルヴとつくば市による自己評価、利用者在籍校の聴き取りなどで得られた結果を基に分析と評価が行われた。
協働事業の分析では、①リヴォルヴは学習障害の傾向のある児童生徒への支援や、教科書学習に拒否反応を示す児童生徒には遊びの時間を設けるなど工夫して学習支援を行った②新たな支援方法の構築として、20年以上に及ぶ指導のノウハウを生かして一人ひとりの特性に応じた学習支援を行った③スタッフが児童生徒の目線で対応し、信頼関係を気づいて心理的な居場所づくりをした④保護者同士の交流と経験の分かち合いを目的にした「親の会」や教育相談を開催して保護者への支援を行った-など、リヴォルヴに対する保護者の満足度は高かった。
一方、アンケートでは「子ども同士の関わりが深まる放課後的な時間があると良い」という保護者の意見や、体験入所を利用したが「子どもが行きたくないと言った」ため入所しなかったケースもある。全体を通して児童生徒と保護者の満足度は高く、利用者の期待に応えられるような学習支援活動を提供していたと検証報告書は評価している。
リヴォルヴによる「むすびつくば」の運営は1年間延長されて来年3月まで。23年度以降どうするかについては検討会議で協議しているが結論は出ていない。
支援に8つの柱
検討会議ではまた、第9回会議で示された支援施策案(10月13日付)の要旨を伝える取りまとめが話し合われた。施策は、①校内フリースクールの整備②スクールカウンセラーの増員③スクールソーシャルワーカーの増員④市教育相談センター(同市沼田)の教育相談員の増員⑤不登校児童生徒の保護者への補助⑥民間の不登校児童生徒支援施設の運営者への支援⑦公設の不登校生徒支援施設の運営継続⑧家庭にいる児童生徒への支援-の8つの柱で構成されている。
不登校児童生徒の状況に応じて、担任やスクールカウンセラーなど学校関係者をはじめ、フリースクールなどの関係者が連携して支援することで、社会的な自立に向けた取り組みを行う枠組だ。この施策の基本理念を盛り込むため、検討会議メンバーが構成や文言に知恵を絞る形になった。児童生徒を主体に、幅広い支援を積極的に提案するものだが、予算のハードルは高く、内容が縮小される可能性も懸念される。
検討会議は来年1月に全体的な施策と支援方針をまとめる。次回の検討会は12月27日を予定している。(橋立多美)