日曜日, 5月 12, 2024

娘と父と、それから戦車《ことばのおはなし》69

【コラム・山口絹記】最近、どういうわけか、夜な夜な娘と戦車のプラモデルを作っている。 一時期、戦車のアニメにはまっていた娘のために、妻が気まぐれで買ってきたのだ。しかし、箱を開けてみると接着剤が必要なタイプのプラモデルである。デフォルメされているといっても部品が結構細かい。 私はプラモデルは全く作らないのだが、私の父がその道に大変造詣が深いため、小さい頃からその手のモノたちに囲まれて育った。特に戦車のプラモデルが多かった気がする。関心はないのに育まれるもの、というのが世の中にはいろいろとあって、親の趣味というのもこれに該当する。 見ればわかるだろう、ということで、おもちゃ屋に行って、見覚えはあるのに名も知らぬ、しかし使い方は知っている道具たちを一式買って手伝うこととなった。あれだけの環境で育ったのにも関わらず自分の趣味にはならなかった戦車のプラモデルを、自分の娘と突然作ることになるのだから人生は相変わらずよくわからない。 こういう時間を大切にする 手伝うと言っても、半分以上の工程は私が作っている。一緒に説明書を読んで、該当する部品を探して、ニッパーで部品を切り離していく。最初は早く完成させたがっていた娘も、最近は落ち着いて作業を進めるようになってきた。見ているだけでも案外楽しいらしい。 そういえば、小さい頃に私も、こうして父に手伝ってもらいながらプラモデルを作ったことがあったな、とふと懐かしい気持ちになる。 自分の手を動かしてやったことというのは、案外よく覚えているものだ。「親と一緒に」というならなおさらだ。娘もそうなるかはわからないが、少なくとも私は「娘と一緒に」作ったことは忘れないだろう。だから、こういう時間は大切にしないといけない。 それにしても、実際に作っていると、もう少し良い道具が欲しいとか、塗装ってやっぱりやったほうがいいのか、などと雑念がわいてくる。凝りだすと大変なのは、よくよくわかっているはずなのだが。(言語研究者)

最近知った「うれしい変化」《医療通訳のつぶやき》8

【コラム・松永悠】最近SNSで偶然、ある投稿を目にしました。投稿者がどこかのアウトレットで買い物をしていると、3人の中国人男性客が、持参したお酒とおつまみを取り出してプチ宴会を始めたそうです。 どうやら買い物中の奥様を待っている感じで、しばらくすると戻ってきた奥さんと合流しました。「ゴミをそのままにするだろうなぁ」と思っていたら、3人がバッグからゴミ袋を取り出して、全部片付けただけでなく、さらにウェットティッシュでテーブルを拭いて、きれいにしてから帰っていったそうです。 「これまで自分の中では中国人観光客=マナーの悪い人と決めつけていた」と投稿が続き、また「どの国にもマナーの良い人、悪い人がいると改めて思った」とも。偶然目にしたこの投稿を読んで、素直にうれしく思いました。 「マネーありマナーなし」は昔の話 医療通訳の仕事柄、日本在住中国人、治療目的で来日する中国人と一緒にいる時間が長いです。私からすると、マナーに関しては年々よくなっています。今でもはっきり覚えているエピソードがあります。10年くらい前に担当した人間ドックのクライアントが院内のゴミ箱の中に直接痰(たん)を吐き出したのです。あまりに突然のことで阻止できず、私も病院の方も仰天しました。 このクライアントは田舎から出てきたお婆(ばあ)さんです。話を聞くと、娘さんがビジネスに成功した方で、親孝行の一環としてお母さんを日本に連れてきて、観光と人間ドックをプレゼントしたそうです。恐らく「ちゃんとゴミ箱の中に吐いたでしょ、何がダメなの?」くらいの感覚です。 他にも、平気で予約時間に大幅に遅刻するとか、病院内で電話するとか、いわゆる「マネーありマナーなし」の人がいました。 しかし状況がどんどん変わってきています。今では丁寧にごあいさつしたり、常に病院に迷惑をかけないように心がけたり、感謝を繰り返したりと、病院も医師も私もみんなにとってありがたいクライアントがほとんどです。 いびきを気にして個室を希望 今年に入ってからあるクライアントを担当するようになりました。心臓病を患っていて、さまざまな検査を経て今週入院して来週開胸手術を受けることになります。かなり大掛かりの手術で、入院も1カ月かかると言われています。 外国でこんな大きい手術を受けるなんて、心配や不安がいっぱいだと思います。しかしこの患者さんは全くそれを出さず、いつも「先生のご判断を信頼していますし、しっかり治療してくれると信じていますので、ご迷惑になるようなことはしません。できることは何でも協力します」とおっしゃいます。 検査入院した時も、自分のいびきが他の患者にとって迷惑になるかもしれないので、個室希望と自ら申し出て、それを聞いた看護師さんたちが大変感動しました。 医師・患者である前に、みんなそれぞれ一人ひとりの人間です。温かみのある言葉でコミュニケーションを取れば、国が違っても心が通じると信じています。そんなお手伝いをするのは医療通訳なのです。素敵(すてき)な仕事だと思いませんか。(医療通訳) <参考> 医療通訳の相談は松永rencongkuan@icloud.comまで。

誰もが安心して暮らせる社会の実現を つくばでメーデー集会 

メーデーの1日、TXつくば駅前の中央公園で、第95回つくば中央メーデー集会(同実行委員会主催)が開かれた。つくば市をはじめ県南、県西地域の研究機関、民間企業、自治体の労働組合など14団体、148人が集まり、「働くものたちの権利を守り、労働環境の改善、市民生活の向上、安心して暮らせる街づくり」を目指すとのメーデー宣言を採択した。 降雨のため予定より1時間縮小しての開催となった。集会後には50人余りがつくば駅周辺をパレードし、賃上げの実現や介護職員の待遇改善などを訴えた。 雨足が激しくなる中、予定より15分繰り上げて9時15分に集会が始まった。冒頭で、主催団体のつくば中央メーデー実行委員会の前田啓委員長(39)がメーデー宣言を読み上げた。 宣言では、物価高騰などを背景に労働者の実質賃金の低迷が続くとし、増加する税金や社会保障費の負担、拡大する格差と貧困を前に、安定した雇用環境の実現、労働者への大幅賃上げを求めた。また、先進国最下位である日本のジェンダーギャップ指数や増加する性暴力(DV)被害を背景にジェンダー平等の実現、能登や台湾での地震とコロナ禍を踏まえて、命と暮らしを守るための体制強化や関係者の処遇改善のほか、研究者の待遇改善を求めることが盛り込まれた。 さらに、原発に依存しない持続可能なエネルギーや社会の実現、東海第2原発の再稼働反対、憲法と民主主義を守り全ての人々の自由と命と暮らしが守られる平和な世界の実現を目指すとし、「働く者の団結で希望の持てる社会を次世代に繋ぐ」と決意が述べられた。 参加団体からは、低下し続ける実質賃金に対する物価高騰に見合った適切な生活保障の確立や、悪化する労働条件の改善と人員の適正配置、不均衡化する研究費の公平な再分配などが求められた。 雨の中をパレード 集会後は約30分にわたりパレードした。筑西市から参加した新井慶治さん(24)は「職場の先輩に誘われて初めて参加した。メーデーの意味について知るきっかけにもなったし、これから職場の環境をより良いものにしていきたい」と思いを語った。 パレードの先頭で掛け声を上げた憲法9条の会つくば共同代表の石上俊雄さん(65)は「強い雨の中だったが、やってよかった。若い方の参加もあった。『何をやっても社会は変わらない』と思いがちだが、あきらめてはいけない。厳しい時代だが、市民が声を上げることがより重要になる」と語った。(柴田大輔)

つくば市の過剰な管理職数の問題を考える《投稿》

現市政下で職員数と人件費が急増 【投稿・酒井泉】自治体の給与・定員管理などについては、総務省が示した統一の様式で公表されています。つくば市の場合は2013(平成25年)から22年(令和4年)までの数字が公表されています。以下、前市長時代と現市長下の職員数と人件費のデータを比較してみました。 ▽市原市長時代(2013年→17年)・人口: 1万1071人増(+5%)・歳出額: 128億4千万円増(+19%)・職員数: 11人減(-1%)・人件費: 2億6千万円増(+2%) ▽五十嵐市長になってから(2017年→22年)・人口: 1万9414人増(+8%)・歳出額: 192億8千万円増(+24%)・職員数: 206人増(+13%)・人件費:+30億3千万円増(+20%) 市原市政下では、人口と歳出額が増えても職員数と人件費は増えていません。ところが五十嵐市政下では、人口増を上回る割合で職員数と人件費が増えています。 ちなみに、24年度予算では、人件費は22年に比べ26億円増え(+14%)、人件費の総額は212億円に達しています。この数字は、市民1人当たり8.3万円になります。16年は7.1万円ですから、五十嵐市政下で17%も増えたことになります。 係長級以上が一般行政職員の半分 22年の一般行政職員数は926人です。その内訳は、部長14人、次長29人、課長88人、課長補佐124人、係長級236人、一般職員435人―となっています。つまり、係長級以上の役職は491人になり、一般行政職員の53%も占めています。半数以上が係長級以上ということですから、民間企業で働いている市民はその多さに驚くでしょう。 組織の単位は何人ぐらいが最適か? 1人の人間が一般的に管理できる人数は、様々な研究から、おおむね5~8人、最大でも10人程度と言われています。2人以下の議論では偏った結論になりやすく、仕事のチームが10人を超えると急激にパフォーマンスが下がるという研究もあります(J.リチャード・ハックマン)。 近年、アマゾンの最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏は、「チームの最適な人数は2枚のピザを分け合える程度の5~8人である」という『2枚のピザ理論』を提唱しているそうです。 こういった研究結果から、多くの会社や組織では5人前後を最小の単位の「係」とし、その上に「課」や「部」などの上部組織を配置するピラミッド型の人事組織を採用しています。 つくば市の管理職は「望ましい組織」の2倍 組織単位を最低の5人とした場合、4人の係員に1人の係長、4人の係長に1人の課長、4人の課長に1人の部長となり、1つの部の総数は85人になります。そこで、「1つの部の人数を85人。部長1、課長4、係長16、係員64」を望ましい組織と考えて、人員構成の健全度を測る物差しにします。 これで組織作りをすると、22年のつくば市の一般行政職員数は926人なので、85人の部を11部設定したとすると、望ましい管理職構成は、部長11、課長44、係長176、一般職員695になり、管理職総数は231となります。 これに対し、同年の管理職数は、部長と次長が43人(物差しの3.9倍)、課長と課長補佐が212人(同4.8倍)、係長級が236人(同1.3倍)ですから、係長級より上の管理職総数は491人(同2.1倍)となります。つくば市の管理職数は明らかに過剰です。 市民とのコミュニケーションが不足 つくば市の場合、係長の下に一般職員が2人くらいしかおらず、市役所内の情報の共有と相談・協力体制が十分ではありません。このため、市の職員は市民と情報を共有して議論することができません。 「人事規律」を無視して職員を処遇するために管理職を増やすと、組織が細分化されたタテ割りの身分制となり、市民と市役所の間のコミュニケーション(民主主義の基本)が機能しなくなります。これは深刻な問題です。(元高エネルギー加速器研究機構准教授、元福井大学教授、つくば市在住)

問題解決と評価《続・気軽にSOS》149

【コラム・浅井和幸】日々、問題の解決や改善を繰り返していると、人とのやり取りの中で「まどろっこしいなぁ」と感じることが多々あります。心理相談の時は相手のペースに合わせるのであまり感じないのですが、事業や生活での従業員や家族とのやり取りでは「しょっちゅう」という感じです。 そこで、「話が進まないこの違和感はどこに原因があるのだろうか?」という疑問が湧いてきます。それをつかめれば、コミュニケーションを改善でき、話を前に進めやすく、物事の改善がスピーディーにできますから。 133「人のせいするという生き方」(5月20日掲載)にも書いたように、人には「自分は悪くない。他の人や状況が悪いのだ」という考えがあります。これは、物事を改善するには悪いところを無くす必要がある、だから悪い状況や悪い人が変わればよい、悪いことをしていない自分は何も変えない―という考えにつながります。 変えることは悪いやつだと認めることになり、善人である自分は変える必要がない、と確信しているからです。 ほめる、たたえる、感動する、感謝する より良くしていくという考えは、悪いことを良くするだけでなく、良い今よりもさらに良くするということも含まれます。この考えを持つことがかなり難しいということが一つの気付きでした。そして、そこには過去と今の評価を気にする、悪い評価を避けたいという心理が改善を妨げているということがあります。 未来を変えるには、今からの言動を変えていく必要があります。そして、どのように変えるかは、現状をより正確に把握する方がより効率がよいのです。ですが、人は質問攻めをされると、悪い評価を得るとか怒られるという不安に駆られるものです。人からだけでなく、自問自答を繰り返すと、気分が悪くなる人は多いのではないでしょうか。 ドラマの警察の取り調べのように質問を繰り返すと、回答しにくい状況になっていきます。なので、質問に対する回答があったら、ほめる、たたえる、感動する、感謝する言葉を相槌(あいづち)に混ぜ、「あなたを悪く評価していませんよ。高く評価しているよ」という気持ちを伝えることが大切なのです。 こちらからの質問に、「じゃあ、どうすればよかったんですか?」「私が悪いというのですか?」「何回も答えているじゃないですか」というような回答が出てきたら要注意です。現状把握をしたいだけで、責めているわけではないのに、そのような回答をもらいやすい人は、改善に対する考えが前のめりすぎる「せっかちなタイプ」かもしれません。(精神保健福祉士)

「竹」でイッポン! 並木中等6年生 保水性舗装研究引っ提げ米国へ

高校生たちが自由研究の成果を競うコンテスト「JSEC2023(第21回高校生・高専生科学技術チャレンジ)」で上位入賞した県立並木中等教育学校(つくば市並木、柴﨑孝浩校長)の野末紗良さんが5月、米国 ロサンゼルスで開かれる世界大会「国際学生科学技術フェア(ISEF)」に日本代表として挑む。竹材から取った繊維を舗装材に使うことで保水性を高め、都市部で気温が上がるヒートアイランド現象の対策に活用できる可能性を示した。野末さんは高校の3年生にあたる同校6年次生。昨年行われたJSEC2023に「竹繊維保水性舗装によるヒートアイランド現象への挑戦」をテーマに研究を発表した。全国174校の634人から、過去最多の343件の応募があり、審査でJFEスチール賞を受賞した。副賞として協賛社から学校に、100万円相当の位相差顕微鏡が贈られている。理数系のコンテストに数多く参加し県内きっての実績を誇る同校だが、野末さんは科学部所属ではなく、中学入学時から剣道部員という異色の理系女子だ。母親が民間企業の研究職という家庭で育ったが、夏休みの自由研究などに熱中し、ずっと独力で取り組んできた。剣道を始めて、竹刀を通じて素材としての竹に興味を持った。木刀と違って竹刀は打たれてもそんなに痛くない。竹がしなって衝撃を吸収するのは保水性のためと知った。入学しての3年間は素材研究に取り組み、竹を繊維化すると吸水性が向上し、繰り返し吸水できることを調べた。5年次になって、保水性を生かした竹繊維の実用化研究に取り組んだ。舗装のすき間に吸水・保水性のある注入材を使う「保水性舗装」は、路面温度の上昇を抑える機能が注目され近年施工例を増やしている。水分の蒸発時に気化熱を奪って温度を下げる効果、いわゆる「打ち水」の原理に通じる。コンクリートはセメントに砕石や水を加えて作るが、保水性舗装には吸水ポリマーやゼオライトなどの保水材を混ぜている。この材料を竹繊維に代えてサンプルを作り、吸水試験による他の吸水材との比較、経年劣化試験による耐候性及び疑似舗装を使った効果の検証を行った。水酸化ナトリウム水溶液で竹繊維を作り、電子顕微鏡で観察するなどの研究は学校の実験室で行い、ホームセンターで購入した材料でサンプルのコンクリートを作って自宅で実験を繰り返した。その結果、通常のコンクリートに比べ路面温度が約5℃低くなる効果を確認できたという。竹は周辺の竹林の孟宗竹、真竹を利用した。野末さんは「地域では(放置竹林が周囲に侵入、拡大する)竹害が深刻化している。竹繊維の利用を進めることでヒートアイランド以外の環境対策にもつながると思う」と語る。5月12日から18日まで開催のISEFへは、JSEC2023で上位入賞した10研究が派遣される。並木中等科学部の粉川雄一郎教諭によれば、同校からは9年ぶり2人目の参加となる。現地では審査員を前に2分間のスピーチを含む15分間のプレゼンテーションを行う。発表やポスター展示の資料はすべてが英語だが、これらも準備作業を終えた。「剣道では目立った成績は上げられなかったが、竹について真剣に5年間取り組めたのはよかった。アメリカでは竹への関心があまりないみたいなので、どんな反応が返ってくるか楽しみ」と野末さん。将来は「新素材・新材料の研究者になりたい」そうだ。(相澤冬樹)

ソメイヨシノとヤマザクラが同時に満開 気象と開花の謎

【コラム・榎田智司】地球温暖化の影響なのか、今年も季節が早く進んでいる感じがする。筑波山麓では今春、ソメイヨシノとヤマザクラの開花と満開の時期がほぼ同時だった。 筑波山麓で活動するつくば環境フォーラムの理事、大塚太郎(54)さんは「今年はソメイヨシノとヤマザクラ、さらには桃までが、同時に咲いた印象がある。フキノトウ、タラノメなども一気に大きくなり、いきなり収穫という感じになった。近年の温暖化傾向はずっと続いており、今後の対策として12月に収穫するコメを作る計画をしている」と述べる。 ヤマザクラで有名な桜川市役所観光課に問い合わせると「毎年ヤマザクラはソメイヨシノよりも1週間ほど遅く開花していたが、今年はほぼ同時だった。暖冬傾向の中で3月上旬の気温が低かったためではないか」という。 水戸地方気象台の発表ではソメイヨシノの開花は3月31日、満開は4月8日。県内の開花は平年通りだったが、近年の温暖化傾向の中では、遅い桜とも感じた。一方、九州地方から東北地方南部までの開花の差が3日ほどしかなかった。 振り返ると2024年の年明けは比較的温暖で、2月中旬には春を思わせる気温となり、このまま暖かくなるかなと思ったら、3月上旬は気温が下がり雪が降ったこともあった。ソメイヨシノは2月1日からの最高気温の積算が600度に達すると開花するという法則があるといわれるが、今年の開花時は積算が768度になっており、62年ぶりに予想が外れたといわれる。テレビでは気象予報士の森田正光さんが、これも暖冬の影響で、冬の間に十分な寒さがないと「休眠打破」が出来ずに開花が遅れたのではないかと推測していた。 一般に、ヤマザクラの開花は関西ではソメイヨシノより早く、関東では遅いと言われる。仮説としてあげられるのは、ソメイヨシノは1本の木から生まれたクローンだが、山桜には多様な種類があるために起こる現象ではないかとも言われているそうだ。開花と気候をめぐる謎は深まるばかりだ。(NEWSつくばライター)

宇宙へのあこがれ 80mのアートに 今井義明さん 1日から県つくば美術館

画材一式を背負って世界各国をめぐり、現地で人間や環境をテーマにしたアート制作に取り組んできた画家の今井義明さん(81)=かすみがうら市在住=の展覧会が1日から県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まる。宇宙への思いのたけを幅1メートル×タテ1.7メートルのパネル80枚に描き、全作を横並びに連ねて展示するというスケールの大きな展示会で、「ゴールデンウイーク中の子供たちに観てほしい」と来場を呼び掛けている。 143回目となる展覧会は「未来へ宇宙オリンピア」がテーマ。人類の宇宙へのあこがれに、想像力を羽ばたかせたアクリル画80枚を展示室の中空に吊り下げる。1枚1枚のパネルを屏風状に連ねて吊り下げるため、美術館保有のワイヤーでは不足が生じ他館から調達して間に合わせるという前代未聞の展示法になる。 1960年代に画業をスタートさせた今井さんは車に画材や生活用具一式を積み込み、全国各地で野外絵画展を開き、93年までに全国47都道府県を巡回した。97年からはバックパッカーとなって世界各国をめぐり、中国を皮切りに5大陸を踏破して 2006年には世界一周達成展を開催、20年の「万葉集・花展」までに142回の展覧会をこなし、人類や環境をテーマとしたアートを発表し続けてきた。 さらに宇宙へとイメージをふくらませた展覧会を東京五輪に合わせ20年に企画したが、折からのコロナ禍で断念。今回は早々につくば美術館のゴールデンウイーク中の日程を押さえ、4年越しの開催に漕ぎつけた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙センターが所在し、つくばエキスポセンターも最寄りに立地する美術館で、是非とも開きたかった会場という。 「宇宙への夢を実現するのはいつも子供たちだから、この奇想天外な世界に遊びに楽しんでほしい」と今井さん。4年前の制作物を描き替え、描き加えてパネルの総延長は約80メートルになる。照明を落とし宇宙に見立てた80メートルの空間を、子供たちが聖火トーチを持って走るイメージの趣向も考えているそうだ。(相澤冬樹) ◆今井義明展は5月1日(水)~6日(月)、県つくば美術館。入場無料。電話0299-59-4152(アートセンターイマイ)

乳がんについて知っておきたいこと《メディカル知恵袋》4

ありふれた病気 【コラム・乳腺科医師】乳がんは今や日本人女性の9人に1人が発症する時代となりました。好発年齢が40代および60代と社会や家庭で活躍する年齢層であり、乳がんの発症によりその重要な役割を充分に果たせなくなることは社会問題であると言えます。 罹患率こそ女性第1位でありますが、5年相対生存率(あるがんと診断された場合に治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標の一つ)は92.3%(2009~11年:がん情報サービスがん統計より抜粋)と決して低くありません。ただし病期(ステージ)が進むにつれ治療も難しくなるので早期発見・早期治療が肝心です。 初期治療 乳がんの初期治療には、手術、放射線療法といった局所療法と薬物による全身療法があります。最適な治療方針を決定するためには組織診断と画像診断が不可欠です。乳がんが非浸潤(ひしんじゅん)がんか浸潤がんか、リンパ節やほかの臓器に転移をしていないかなど、がんの進行度や特性に応じて治療を行っていきます。 非浸潤がんは、乳管・小葉内にがんがとどまっている状態を指し、局所療法のみで根治可能です。浸潤がんは乳管・小葉周囲にがんが広がった状態であり、すでにリンパや血液の中にがんが潜んでいる可能性があることから、それらを根絶するために全身治療が必要となります。 局所療法 乳がんの手術は乳房と領域リンパ節にある病巣の切除からなります。乳房の手術は乳房をすべて切除する全切除と、病巣を切除する部分切除(乳房温存術)があります。乳房温存術は病巣が小さい、限局しているといった適応となる条件があり、術後は残った乳房に放射線療法を行う必要があります。全切除では、乳房の喪失感を補うために乳房再建術を同時に行うことも保険適用で可能です。 領域リンパ節の手術は、術前に明らかなリンパ節転移を認めない場合に「センチネルリンパ節生検」を行います。センチネルリンパ節とは、リンパ流に乗ったがん細胞が最初に転移するリンパ節のことです。センチネルリンパ節に転移を認めなかった場合にはそれより奥のリンパ節の郭清(根こそぎ切除する)を省略可能であり、上腕の浮腫や知覚鈍麻の発症を防ぐことができます。術前からリンパ節に転移を認める場合やセンチネルリンパ節に転移を認めた場合にはリンパ節を郭清(かくせい)します。 全身療法 薬物療法には、ホルモン療法、化学療法(抗がん剤治療)、分子標的薬療法、免疫療法があります。乳がんの約7割はホルモン受容体陽性で女性ホルモンの一種であるエストロゲンにより増殖が促されるため、エストロゲンを抑える治療を行います。  HER2(がん細胞の増殖に関係するタンパク質)陽性乳がんには、抗HER2療法を用います。化学療法はがん細胞に対する効果が期待されると同時にがん以外の正常な細胞に影響を与える可能性があり、適応や使用には十分に注意します。 脱毛や悪心などに代表される副作用に対する支持療法も発展してきています。近年では、ホルモン療法にCDK4/6阻害薬という分子標的薬を併用したり、化学療法に自己の免疫を賦活化させる免疫療法を併用させたりすることで、再発予防効果が高まることが知られています。 遺伝も関連 乳がんの5~10%はその発症に遺伝が関連していると言われています。親から子に受け継がれる遺伝子に変化を認めることで、がんを発症しやすくなる体質のことを遺伝性のがんといいます。 その中でも、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変化を認めることを「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)」といい、乳がんの約5%でみられます。生涯にわたり乳がん、卵巣がんを発症する確率が高いほか、前立腺がんや膵(すい)がんの発症とも関連していることがわかっています。HBOCの場合、がんを発症していない側の乳房や卵巣の予防的な切除や遺伝子の変化に対応した治療薬による治療を行うことが可能です。 1人ひとりに合った治療を提供 このように、乳がん治療は多岐にわたります。それに加え、仕事や学業、妊娠・出産、子育てなどの生活との両立に悩まれる方も多いのではないかと思います。治療のためだからといって、すべてを諦める必要はありません。必ずあなたに合った治療があると思います。私たちは、1人ひとりの患者さんに合った治療を提供していけるよう、日々診療を行ってまいります。(筑波メディカルセンター病院 医師)

山麓の田んぼに「逆さ筑波」出現

田植えを前に田んぼに水が張られ、筑波山麓では「逆さ筑波」が現れ始めた。田んぼの水面が鏡となって筑波山が逆さに映る。 筑波山東側の石岡市に住む出版業、野末琢二さん(65)は、逆さ筑波を地域の魅力の一つとして捉え、2015年からフェイスブックで「逆さ筑波」の写真を募集し発信している。 毎年30点ほどの作品が集まる。二つ峰の逆さ筑波のほか、女体山が男体山に隠れて一つ峰になった逆さ筑波などが水面に映る。 野末さんは「田植え前に水が入る時期から、田植えが終わって早苗が成長して水鏡に山が映らなくなるまで、ちょうど4月下旬から6月上旬まで、わずかな時の逆さ筑波との出合いを大事にしたい」という。 野末さんが逆さ筑波を発信するようになったのは、11年の東日本大震災と12年の北条の竜巻災害がきっかけだ。「災害が2年続いて起き、精神的に落ち着かない日々だった。翌13年、桜の季節が終わり、田んぼに水が張られた頃、筑波山がぽっかりと水面に映っていた。逆さに映った筑波山がとっても新鮮で愛らしかった」と話す。逆さ筑波は毎年出現していたはずなのに、急に魅力的に感じられ、皆が撮った写真を募集してみようと思い立った。 山麓の同市神郡に住む肥田芳宣さん(58)は、地元をジョキングする合い間に逆さ筑波を撮影し、野末さんの呼び掛けに応じて毎年、写真を投稿している。 肥田さんによると撮影のポイントは「風が吹き始める午前6時前が狙い目。場所としては、西はつくば市寺具や筑西市赤浜、南はつくば市小田、北は桜川市樺穂まで」と言い、1枚の田んぼでは、水が張られてから田植えまで約1週間と、田植えから苗が成長するまで約3週間の1カ月間が撮影のチャンスだという。 筑波山麓ではほとんどが5月上旬までに田植えを終える。野末さんは間もなく、今年の逆さ筑波の写真の募集を開始する予定だ。 逆さ筑波は、風がない晴れた日に見ることができる。筑西市の母子島(はこじま)遊水池の逆さ筑波などが知られる。(榎田智司)

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