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2023
洞峰公園の用心棒《映画探偵団》61
2023年2月12日
【コラム・冠木新市】洞峰公園の野球場の青いベンチに座っていると、黒澤明監督作品『用心棒』(1961)が思い浮かぶ。絹市が立つ宿場町でやくざの跡目争いが起き、組が二つに分裂し対立し合っている。その荒廃した町にふらりとやって来た浪人の桑畑三十郎(三船敏郎)が、2人の親分を競い合わせ全滅させ宿場町を整理するお話だ。 三十郎は町の真ん中にある居酒屋に陣取りあれこれ思案し、飲み屋の親爺(おやじ)と状況を分析する場面が面白おかしく描かれる。 いま洞峰公園は、県から市への「無償移管」でグズグズと煮えてきている。昨年末、大井川知事が「無償移管」をつくば市に持ちかけ、公園を引き取らなければ改修計画を進めると言ってきた。私は始め、これは嫌がらせかなと思ったが、いやいやグランピング計画に反対の声が多いので、撤退するための提案かもと好意的に解釈した。 しかし、つくば市はなかなか返事をしない。そんな中、1月27日、近隣の2つのマンション組合が、県案に賛同する要望書を知事に提出した(つくば市にも提出)。受け取ったのは知事ではなく、都市整備課長だった。 そして、1月30日、つくば市の担当課は電話で県の担当部署に、31日夕方には五十嵐市長がツイッターで、受け入れに前向きな姿勢を示した。いくらスマートシティだからといっても、簡単な文書を送るべきではなったかと思う。2月3日の市長会見でも、この方向を確認した。今後、県と市とのやり取り、市議会と市民への説明会が続くことになる。 反対活動した人たちはどう出る? 2006年、『複眼の映像一私と黒澤明』(橋本忍著)が出版された。脚本家・橋本忍が黒澤明とのシナリオ作りの内幕を描いた本である。そこに貴重なエピソードが紹介されている。 「『用心棒』がスタートした時、東宝の製作の総師である、森岩雄氏が脚本を読み、既に撮影が始まっているのに中止を命じた。『この脚本はよくない、黒澤君の撮るべきものじゃない。今、やめると会社の損失は大きい。しかし、黒澤君の名誉には代えられない。即刻中止すべきである』…」 しかし撮影は続行され、大ヒットし、世界的な評価を獲得した。森岩雄はシナリオライター出身のプロデューサ一であり、脚本の良し悪しは分かる人だ。だが、こういうことがたまに起きる。特に演出力がずば抜けている場合、単調な場面を面白く見せてしまうことがある。『用心棒』では、居酒屋の状況説明の場面がそれにあたる。 これから、市議、県議、市民が意見を表明することになるだろう。そうそう、昨年、盛んに反対署名活動した人たちが何を思っているかも気になる。果たして、つくば市に『用心棒』に匹敵する物語が生まれるかどうか、「乞うご期待」といったところだ。サイコドン ハ トコヤン サノセ。(脚本家)
大きなマップケース 《続・平熱日記》127
2023年2月11日
【コラム・斉藤裕之】その日は朝から冷えていた。さて何をしようかとアトリエを見渡していたら、大きなマップケースの中が気になってごそごそと引っ張り出し始めた。これは20数年前、東京のある出版社が引っ越すので不要になったものがあるからと友人からの知らせがあって、のこのこ取りに行ったものだ。 大判の用紙からメモのようなものまで、とりあえずこの中にぶん投げとけばホコリもたからないので、無造作に5段の引き出しに入っている。あれだけ探したけど見つからなかったパンフレット、幼い日の子供たちが描いた絵、描きかけのデッサン…。その中に、フランス留学中に描いたドローイングやエスキースがあった。 少し厚手の紙に色を塗って、それらを切って何枚も貼り合わせたもの。その頃は抽象的な作品を描こうとしていて、セーヌ川の見えるアトリエの壁に貼って描いては切って貼りを繰り返していたことを鮮明に思い出す。その中から、青く塗られた1枚を手に取って眺める。 と、なんだ! 今描いている絵と変わらないじゃないか。紙を切って貼ることが金網と漆喰(しっくい)に代わっただけで、笑ってしまうほど変わらない自分の絵。フランスから帰国して何年が経過したかは、帰国直後に生まれた二女の年齢で分かる。ざっと30年。 例えば引っ越しのたびに捨てられずになぜか手元に残っているもののように、このマップケースの中にも、とりあえずしまい込んだものや捨てられなかったものが入っていて、この色の塗ってある紙切れたちも捨てきれずにフランスから持ち帰って、ここに入れた理由があったはずだ。 それが何なのかを言葉で説明する必要はない。というか、そこに残っている言葉こそが大事なのだと思った。 93年12月11日に描いた絵 それから、マップケースの中にノートほどの大きさの紙に描いた絵を見つけた。黒い空に三つの白い雲が描かれた絵。93年12月11日の日付がある。 なぜ空が黒い空を描いたのかも記憶にない。確かに、冬のパリは鉛色の空が美しいが…。あれだけうろついたパリの街だが、風景を描くことはほとんどなかった。またお腹の大きくなった妻を描いた絵も何枚かあった。当時、絵を描く私の横で無心で紙を切り刻んでいた長女。今そのお腹には2人目の子供がいる。 当時のパリでは寒波という言葉が使われていて、寒波に覆われると街の噴水が凍り、冷蔵庫の中にいるように冷えた。日本では以前は寒波という用語は使われずに、寒気団が云々と言ったような気がするが…。マップケースから取り出した何枚かの紙のドローイングを壁に画びょうでとめた。これに何か描き足してみたいと思ったからだ。 果たして、30年の時と場所を超えて何か描き足せるものだろうか。10年に一度の寒波がやって来た。大陸からの空気を運んで。(画家)
つくば駅“真上”に来秋移転 大和ハウス工業茨城支社
2023年2月10日
大和ハウス工業(本社・大阪市)の茨城支社(つくば市東新井、八友明彦支社長)が来年秋、TXつくば駅の社有地(同市吾妻)に移る。地下駅舎の真上に位置し、現在は駐車場として使っている場所。移転に合わせ、隣に店舗やオフィスが入る商業ビルも建てる。駅周辺はマンション、オフィス、商業施設の再開発が進んでいるが、同支社の移転で駅前の景色が少し変わりそうだ。 茨城支社、商業ビル、両施設とセットになる立体駐車場が建設されるのは、駅前の中央通りと市立吾妻小学校に挟まれた場所。用地は7590平方メートル(2300坪)と広い。隣接地には、つくば都市交通センターの北1立体駐車場(625台収容)がある。4月に着工し、来年9月に完成予定という。 隣接地に5階の商業ビルを建設 市の中央公園向かいに建設される新支社は4階建て。茨城支社のほか、大和ハウス工業グループの会社が入る。中央通り沿い、トナリエ・キュートの向かいに建設する商業ビルは5階建て。1~2階に物販・飲食店や診療所などが入り、3~5階をオフィス用として賃貸する。吾妻小寄りに建設する駐車場は5層6階になり、350台を収容できる。 用地の角には、つくば地下駅のA1出入口があり、駅までゼロ分の便利な場所。地下駅と商業ビル1階を2基のエレベーターでつなぎ、A1を使わないでも商業ビルに出入りできるようにする。現在駐車場になっている区画とトナリエ区画を結ぶ陸橋を商業ビルまで延ばし、同ビル2階にテラス風の回廊を巡らす。これにより、商業ビルとトナリエの往来がスムーズにできる。 新支社の建坪は現支社の2倍に 大和ハウス工業は、戸建てやマンションなどの住宅、ショッピングセンターやビジネスホテルなどの商業施設、工場や物流倉庫などの事業施設を手掛けている。つくば市では、大型ショッピングモール「イーアスつくば」を運営するなど存在感が大きい。昨年4月には、県内の業務を統括する茨城支社を水戸市からつくば市に移し、県南エリアの体制を強化した。 八友支社長によると、現支社が入る建物(南大通りが西大通りにぶつかる角)は2000年9月から使ってきた。新支社の建築規模は現支社(約1650平方メートル=約500坪)の2倍になるという。(岩田大志)
骨の量 《くずかごの唄》123
2023年2月10日
【コラム・奥井登美子】「93歳ですか。骨の量、多すぎです。すごいなあ」夫が亡くなったが、コロナのクラスターを恐れて、葬儀など行事一切、私と3人の子供の家族だけで行うことにした。葬儀場の焼き場の職員に言われて、私もその量のすごさに驚いた。 「つぼに入り切れない。崩して入れていいですか」 「おいしそう。なめてみたいわ?」 私は指の先で骨を触って匂いをかいでみた。香ばしくて、炭酸カルシュウム独特のざらつきがあって、とても、いい香りだ。誰も見ていない。しめしめ、安心して指先ですくって、ちょっとなめてみた。香ばしくておいしい。 骨を維持するカルシウムを夫に食べてもらうのに、私がどれだけ苦労したか、誰もわかってくれない。しかし、そのお礼に、彼が私に最後にプレゼントしてくれた味だと思う。 昭和一桁は「もったいない」に弱い 76歳で大動脈解離。「いつ何があってもおかしくない体です」と、医者に言われてから、十数年たつ。「今日は何を食べてくれるかな」と、毎日毎日の食事が、私にとっては闘いの場であった。 牛乳とヨーグルトは、気にいった銘柄を、瓶で家に配達してもう。「ほら、瓶の牛乳がこんなに残ってしまったわ。もったいないから飲んでちょうだい」 昭和一桁生まれは、「もったいない」という言葉に、敏感に反応するのだ。病院の栄養指導で塩分は1日6.5g。コンビニなどで調理済みの食品を買って食べたら、1日15~12gになってしまう。「食べる子魚」「煮干し」「白魚」。魚の加工品は、塩分の少ないものを探すのが難しい。 塩分の多い魚は、家の庭石の上が猫の食事場。市役所の通報で野良猫に食べ物をあげてはいけないことになっているが、野良か、飼い猫かわからない奴がうようよ跋扈(ばっこ)している。 その猫にあだ名をつけて、「今日は珍しくチャツピイが来てくれたわよ」などと、彼の関心を猫に向けて、ごまかして、食べてもらっていた。(随筆家、薬剤師)
国産トリュフ「人工的な発生」に成功 茨城でも最初の8個
2023年2月9日
森林総合研究所(つくば市松の里)は9日、国産のトリュフであるホンセイヨウショウロの人工的な発生に成功したと発表した。国内では初の成功事例で、トリュフの人工栽培に向け、最初の一歩を踏み出した形という。 トリュフはマツタケなどと同じく、木の根元に生える菌根菌の仲間。一般に「キノコ」として見える塊状の部分は、菌類が胞子をつくる箇所で「子実体(しじつたい)」と呼ぶ。森林総研は今回、菌を人工的に共生させた樹木を試験地に植え、観察を続けたところ、昨年11月に初めて、茨城県内と京都府内の試験地で、合計22個の「子実体」の発生を確認した。 トリュフは、キャビア、フォアグラと並ぶ世界三大珍味の一つとして知られ、貿易統計上はマツタケを上回る高価格で取り引きされている。高級食材として大きな市場性を持つ期待もあり、森林総研は2015年度から国産トリュフの栽培化を目指した研究に取り組んできた。日本には20種以上のトリュフが自生しているが、野生のトリュフは希少で流通はしておらず、人工栽培技術の取り組みもなかった。 ヨーロッパでは樹木の根にトリュフ菌を共生させた苗木を植栽し、トリュフが栽培されている。森林総研の研究グループでは、国内のトリュフの自然発生地で調査を進めて、トリュフの生育に適した樹種や土壌環境を解明し、それらの条件を再現して国産種のトリュフを発生させることを目指した。 今回菌が使われたホンセイヨウショウロは、日本国内で採取された白トリュフで、森林総研などにより2016年に新種と確認された。ショウロ(松露)とは別の品種。ホンセイヨウショウロはヨーロッパ産の白トリュフと同様に独特の風味を有しており、芳じゅんな香りが特徴という。これをコナラ苗木に人工的に共させ、国内の4つの試験地に植えて栽培管理を行った。 その結果、茨城県内の試験地(17年10月植栽)と京都府内の試験地(19年4月植栽)で、22年11月に、それぞれ8個、14個の子実体発生を確認した。最大のもので9センチ60グラムのものが得られた。これら子実体の形態や遺伝情報に基づいてホンセイヨウショウロであることを確認したという。県内の試験地の場所を特定する情報は明かされなかった。 研究担当の山中高史森林総研東北支所長によれば「サイズ的にも不揃いで、流通に乗せるには程遠い。人工栽培に成功したとは言い難く、人工的な発生という表現にとどめた」そう。4つの試験地のうち、発生が確認できたのは2カ所であったことから、今後の経過を観察するとともに、土壌などの環境条件と発生の関係などを見定めるなどして、トリュフの人工栽培の技術開発に道すじをつけたいとしている。(相澤冬樹)
やさしい国家が人をしあわせにする 《遊民通信》58
2023年2月9日
【コラム・田口哲郎】前略 1789年のフランス革命のあとに、「人間と市民の権利の宣言」、いわゆるフランス人権宣言が採択されました。この宣言は世界各国に影響を与え、それは当然、日本の民主主義の根幹にかかわるものでもあります。 フランス共和国の人権宣言をごく簡単にまとめるとこうなります。人間は生まれながらにして自由と平等を保証されている。共和国が基本的権利を保証するのであって、ほかの団体などがその権利を侵害してはならない。つまり国家だけが、福沢諭吉が言ったところの「天は人の上に人をつくらず、人の下にも人をつくらずと言へり」を約束できるということです。国民と国家の信頼関係によってすべては成り立っているわけです。 規則と改革 そんなのあたりまえじゃないかと思ってきました。でも、よく考えると、わたしたちは基本的人権によって自由と平等をあるていど享受しているけれども、その自由と平等は完全ではありません。完全な自由と平等の実現はかなり困難でしょう。でも、それでも人権宣言の理念を目指していかなければならない。そのためには、規則よりも人間の真情に寄り添う姿勢が大切です。 そうなると対立するのは、規則と改革です。ある人が困っている。でも規則はその人の望みを解決することはできない。だからその規則を変えるしかない。いや、規則を変えることは国家の根幹を揺るがすので簡単にはできない。しかし、このままでは国家が保証すると約束したその人の自由がないがしろにされてしまう。 こうしたせめぎ合いはとてもむずかしいもので、簡単に答えは見つからないでしょう。でも、基本的人権の理想を実現してゆくためには、変えるべきところを変え、変えるべきではないところを見極めて、「新しく」なってゆくしかない気がします。国家は国民にやさしくする義務があり、それは国家が国家として存続できる条件です。たとえば国民の安全を守ることであり、困っている国民がいたらその声を聞いて社会を変えることです。 近代国家は国民に対して、実はものすごい権力を持っています。その権力を行使して幸福を生み出すのは、基本的人権の理念を理解したうえで、ひとりも取り残さないという難しい課題に積極的に取り組むやさしさです。このやさしさがなければ、国家は暴走して多くの国民を傷つけるだけになります。 天下国家を語るとき、頭でっかちになってもよいと思います。頭でっかちで、同時に手足も大きければ、多くの人をしあわせにできるからです。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)
知的障害者に一人暮らしの選択肢を 18日、つくばで映画上映会
2023年2月8日
市民団体「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(=いばけんつ、事務局・水戸市)が18日、筑波大学春日エリア(つくば市春日)で映画『道草』(宍戸大裕監督作品、2018年)の上映会を開催する。重度知的障害者が介助者の支援を受けて、地域のアパートで一人暮らしをする様子を映したドキュメンタリー映画だ。同会共同代表の一人、生井祐介さん(45)は「知的障害者が生活する場は、入所施設やグループホームだけでなく、支援を受けながらの一人暮らしという選択肢もあることを、多くの人に知ってほしい」と話す。 知的障害者の一人暮らし 「重度訪問介護」は、重度障害者が長時間、人によっては24時間の介助を自宅で受けられる福祉サービス。従来、対象は重度の肢体不自由者に限定されていたが、2013年の障害者総合支援法施行で、重度の知的障害者や精神障害者にも広がった。映画には、重度訪問介護を利用し、一人暮らしをする重度知的障害者が登場する。 内閣府の2022年度版障害者白書によると、身体障害者における施設入所者は1.7%なのに対し、知的障害者においては12.1%と、施設入所の割合が高くなっている。昨年9月、日本政府は国連から「障害者の施設収容が継続され、地域で生活する権利が奪われている」と懸念され、「施設収容をなくすために、障害者の入所施設から、地域社会で自立して生活するための支援に予算を振り分けること」が勧告された。 全国各地の障害者団体などが国連の勧告を周知するために講演会を開催し、生井さんも何度か参加した。しかし、「一般参加者には内容が難しいのでは」と感じ、「幅広い人に、もっとわかりやすく伝える方法はないか」と考え、今回の上映会を企画した。「知的障害者も公的な介助サービスを利用し、一人暮らしができることはほとんど知られていない。その様子を映像として実際に見てもらうのが一番わかりやすいだろう」 反応に寄り添って本人らしい生活に いばけんつ共同代表で、障害者団体、自立生活センターいろは(水戸市赤塚)事務局長の八木郷太さん(26)は、4年前から重度訪問介護を利用し、一人暮らしをする知的障害者を支援している。「当初は、何に対しても反応が薄く、表情からも、本人がどうしたいのか読み取れなかった。しかし、介助者との一対一の関わりで、ひとつひとつの反応に寄り添い続けた結果、今は好き嫌いなども表現してくれるようになり、本人らしい生活ができている」 生井さんは「重度知的障害者が地域で生活するためには、地域住民の理解も大切。今回の上映会を通して、当事者やその家族はもちろん、障害と直接関わりのない人にも、一人暮らしという選択肢が知的障害者にもあることを知ってもらう機会になれば」と話す。 上映後は、映画に登場する重度知的障害者の父親で、早稲田大学の岡部耕典教授(67)が知的障害者の地域生活の現状について講演する。23日には、上映会の参加者を対象に、映画の感想共有会が開催される。(川端舞) ◆映画『道草』上映会&ミニ講演会 18日(土)午後1時~3時30分、筑波大学春日エリア情報メディアユニオン1階講義室。参加費無料。上映会には字幕、講演会には手話通訳がつく。申し込みは13日までにこちらから。 ◆映画『道草』感想シェア会 23日(木・祝)午前10時~11時30分、オンライン開催。参加費無料。申し込みは22日までにこちらから。
装着型サイボーグのサイバーダイン 《日本一の湖のほとりにある街の話》8
2023年2月8日
【コラム・若田部哲】多くの研究所が立地する科学のまち、つくば。今回はその中でも最先端企業のひとつ、CYBERDYNE社(サイバーダイン)についてのご紹介です。同社が開発した世界初の革新的技術・製品について、広報の片見さんにお話を伺いました。 サイバーダインは筑波大学の山海嘉之教授により2004年に設立され、世界初の装着型サイボーグ「HAL」をはじめとする機器により、医療をはじめとして様々な社会課題の解決に取り組んでいます。 HALは、装着するだけで「サイボーグ化」する身体装着型の機器。その仕組みは、体を動かそうとするときに脳から発生するごく微弱な信号をセンサーで検出し、認識した動作に合わせてパワーユニットが作動、装着した人の意思に沿った動きをサポートするというものです。 ここまでは、すごいなあと思いつつ、なんとなくイメージしやすいところですが、さらにここからが驚きです! HALが脳からの信号を読み取りアシストした後、その「動いた」感覚は脳にフィードバックされ、それを繰り返すことにより、身体機能の改善・機能再生が図られるそうです。 つまり、弱って動かなくなってしまった身体機能が、HALのサポートで繰り返し動かすことにより回復し、再度動けるようになるとのこと。日本では、神経筋難病という従来は治療が困難とされていた疾患に対し、機能を維持・改善する効果が認められ、病院で治療できるようになっているそうです。 また海外では、脊髄損傷や脳卒中などの治療にも使われているとのこと。介護などの作業支援用や医療用など、様々なタイプのHALが製品化され、世界20カ国で約2500台が稼働中だそうです。 介助や運搬などに恩恵は多大 さて今回は、イーアスつくば内のつくばロボケアセンターで、高齢者向けのフィットネスプログラムとして、腰に装着するHALを体験させていただきました。ここからはそのリポートとなります。 腰部3カ所に電極を貼り付け、器具を腰と太ももに取り付けると準備完了。腰の装着部がしっかりしているため、それだけでウエートトレーニング時につける保護ベルトのようなサポート感があります。 おもむろにスクワットの動作を開始すると…。かがんで、足を伸ばして立ち上がろうとするや、その動きに合わせてHALが作動し、動きをサポートしてくれます。サポートは自分の動きより早くも遅くもなく、まさに意思と同時になされ、スムーズに立ち座り動作をサポートしてくれます。 その感覚に最初は戸惑いを覚えましたが、何度か繰り返すと、すぐに自然にアシストを受けられるようになりました。なるほど、介助や運搬など、常に腰に負担のかかる分野にあって、この恩恵は多大なるものであることが容易に感じられます。 お話を伺い、また体験する中で、このような技術が地元で生まれたことに誇らしい気持ちが湧いてきました。高齢化社会の進展にあたり、今後さらに人々の暮らしを支えるであろう、同社製品の活躍が楽しみです。(土浦市職員) ①サイクリストの宿(2022年7月8日付)②予科練平和記念館(8月11日付)③石岡のおまつり(9月8日付)④おみたまヨーグルト(10月6日付)⑤冷たくてもおいしい焼き芋(11月12日付)⑥阿見町のツムラ漢方記念館(12月9日付)⑦行方市でコイを養殖(2023年1月11日付) <注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えます。
筑波懐古から始まるおカイコライブ 18日に農研機構冬の一般公開
2023年2月7日
農研機構(本部・つくば市観音台)の「冬の一般公開2023」は18日、昨秋に続きオンライン開催で行われる。「光るシルクを生み出す家畜!? おカイコ」がテーマだが、最先端の研究現場をのぞく前に、ちょっと道草して古い縁起からひもとく趣向がある。ウィズコロナ時代のオンラインコミュニケーションに、少しだけ懐古趣味、地元回帰の要素を盛り込んだ。 今回の一般公開を担当するのは、生物機能利用研究部門の絹糸昆虫高度利用研究領域カイコ基盤技術開発グループ。笠嶋めぐみ上級研究員ら4人が進行役を務め、プログラムの冒頭は茨城県に伝わる養蚕伝承「金色姫」の話から始めるという。 同研究部門は、つくばに移転してきた1980年時点では蚕糸(さんし)試験場といい、88年の改組で蚕糸・昆虫機能研究所となり、2001年の独立行政法人化で農業生物資源研究所に改編されるまで「蚕糸研」と呼ばれた。絹を生み出すカイコの交配や生態解明を遺伝子レベルから研究してきた。 この経緯から、筑波山麓の同市神郡にある、養蚕をまつる蚕影(こかげ)神社を訪れる研究者が少なくなかった。所長を務めた木村滋さん(2022年死去)らだ。神社に伝わるのが「金色姫」の縁起で、天竺(インド)での受難劇、UFOを思わせるうつろ舟での漂着などの物語が作家や民俗学者らを引き寄せてきた。同様の伝承は県内の神栖市、日立市の神社にもある。 蚕影神社じたいは無住で荒廃久しいが、筑波山神社が春・秋に例祭を催しており、地域の女性たちが繭や真綿の手工芸品を作って奉納に訪れるなど、根強い信奉が見られる。 農研機構によれば、「養蚕の歴史が奈良時代からある茨城県で、新しいカイコ研究を行っている研究所というイントロダクションを用意した」そうで、御物法隆寺錦(正倉院御物)で聖徳太子の妃である膳妃(かしわでのきさき)の帯と伝わる蜀江錦の織物なども紹介するという。 オンライン公開は「ニコニコ生放送」とのコラボで18日午後1時から生中継。番組では普段見る機会のない実験室の様子、デモンストレーション実験などが公開される。クラゲやサンゴなどの蛍光タンパク質の遺伝子を利用して「光る糸を作るカイコ」をはじめ、新たな産業として期待されている研究が紹介される。 また、午前11時からは「ニコニコサイエンス」で「飼育観察ライブ」を配信する。午後5時までかけて、カイコの幼虫が繭を作る様子や繭から羽化する様子の観察する配信が行われるそうだ。(相澤冬樹) ◆農研機構「冬の一般公開 2023」特設ウェブページはこちら
知事との対話の芽―高校が足りない 《竹林亭日乗》1
2023年2月7日
【コラム・片岡英明】毎日、竹林と筑波山を見ながら散歩している。天声人語を読むと、コラムとは少し離れた視点で書くようだ。世相と少し離れたところから日記を書いた永井荷風を参考に、コラムの名前をつけた。 私は「出会ったところで考える」「対話で耕し合意形成」を心掛けている。その構えの方が疲れず、楽しいからである。では、どんなことに出会っているか。 1月27日のNHK首都圏ニュースのTX沿線特集で、つくば市は高校が足りないことを扱った6分ほどの放送があった。私たちは、2021年5月に「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」を立ち上げ、学習・懇談・署名などの活動を行ってきたが、当事者の受験生がマスコミに登場したのは初めてである。 取材された学生の「つくば市は結構人口も増えたので、もう少し高校を建ててもいいと思います」との発言に、「大人がこれに応えなければ」と感じた。 人口・子ども増「第3の波」 つくば市には「第3の波」が到来している。4町村が合併した1987年ごろ、第2次ベビーブーム世代の中学生増が「第1の波」。1989年をピークにして減少に転じた引き波が「第2の波」。多くの都市では、出生率低下により減少が続くが、つくば市は違った。TXが開通した2005年を底にして、中学生は増加に転じた。 TX沿線開発に伴い、2015年以降、つくば市では人口・子どもが増加し、「第3の波」が到来した。この事態への理解が問題解決の最初の鍵だ。 総務省人口移動報告(1月30日発表)によると、茨城県の人口は2年連続して転入超過になった。東京圏からTX沿線に移る人が増えたからだ。県としては、「第3の波」が続いていることへの対応が求められている。 私たちは、子ども増への対応について、県知事や教育長と対話を始めた。森作教育長は県民の声を受けとめ、つくばエリアの県立高校定員について、昨年11月の県議会で「進路選択に影響が出ないように検討し、その計画を示す」と答弁した。 大井川知事も、12月8日の茨城県総合教育会議で「通学圏のなかで学級数が足りないというのであれば、クラスを増やすなど、対応できるように県として努力します」と答えた。これは県との対話の芽である。 既存高の学級増か高校新設か 既存高の学級増か高校新設か? 新設高校は県立か市立か? 二者択一を迫る声もあるが、昨年の教育長と知事の答弁を基点に、まず、学級増の検討を始めてほしい。 教育長が言う「中学生の進路選択に影響がない学級増」とは、つくばエリアの全日制県立高の入学枠を広げ、県の平均収容率に合わせる努力をする「宣言」と考える。県平均に合わせるには、まず現時点で何学級不足か、さらに今後何学級不足するか―明らかにする必要がある。 県と市が生徒数や目標のすり合わせ作業をし、まず必要学級数を検討する。次に、その学級をどう増やすかがテーマになる。そのとき、学級増か高校新設か、県立か市立か―の問いは解消するように思う。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会・代表) 【かたおか・ひであき】福島高校卒。茨城大学農学部卒業後、太陽コンサルタンツ勤務。茨城大大学院修了。39年間、霞ケ浦高校勤務。主な著書は、英語Ⅰ教科書「WORLDⅠ」(三友社、1990年)、「たのしくわかる英語Ⅰ 100時間」(あゆみ出版、同)、「若い教師のための授業・HRづくり」(三友社、2016年)。現在、「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」世話人。1950年福島市生まれ、つくば市在住。
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