水曜日, 4月 8, 2026

後半粘って土浦一 逆転で初戦突破【高校野球茨城’23】

第105回全国高校野球選手権茨城大会2日目の9日、J:COMスタジアム土浦では一回戦で土浦一が石岡一との一高対決、立ち上がりの失点から5回までに5点を失う苦しい展開となったが、5回と8回に3点ずつを奪い逆転勝ちした。 土浦一が後半に地力を発揮、因縁の相手に逆転勝利を収めた。「石岡一は春大会の地区代表決定戦で敗れた相手。そこから石岡一に勝つチームを目指して頑張ってきた。再戦となった今日は、絶対やってやろうという気持ちで臨み、今までやってきたことが報われた」と土浦一の中里洸介主将は胸を張った。 前半は石岡一ペースで、土浦一は5回までに5点を失った。だが各回とも最小限の失点でしのいだことが、勝利につながったという。「後半勝負はうちのペース。選手があきらめずにやってくれると思い、0-5でも気にせず戦えた」と柴沼剛己監督。 4回2死からマウンドに立った本間航平が流れを変えた。制球に苦しむ場面もあったものの、力の入れ具合などを調節しながら修正し、「決めるところは決めにいけた」という。8回までを1犠飛と1安打でしのぎ、5三振を奪った。 反撃は5回。相手投手の乱れから1死満塁の場面をつくり、本田雅樹の左犠飛でまずは1点。続いて大津翔吾の左前打が敵失を誘い2点を追加した。 8回には大関祐二朗と篠崎元彦の2連打から、遠山勇気の送りバントが相手投手の悪送球を招いて1点を追加。さらに2死満塁の場面で、小野瑛太の打球が左中間を破る2点適時打となった。 この日途中出場で9番に入っていた小野は、もともとは1番を打っていた。春大会で疲労骨折を起こしてから控えに回っていた。1点ビハインドで迎えた絶好機に「自分が打つしかない」との気持ちで臨んだ。打席に入って一塁に目をやると、走者の中里主将が自分の方を見ながら胸を叩いている。「決めてこい」というサインだと受け取り、相手投手の高めの直球を思いきり振り抜いた。「うれしいという言葉しか出てこない。一塁ベース上で涙が出てきた」 土浦一の2回戦は13日、ノーブルスタジアム水戸の第3試合で岩瀬日大と対戦する。(池田充雄)

土浦三 6失点を一気に挽回、コールド勝ち【高校野球茨城’23】

第105回全国高校野球選手権茨城大会2日目の9日、日立市民球場では一回戦で土浦三が科技学園日立と対戦、初回に大量6失点の土浦三は3回に打者一巡の猛攻で一気に逆転、7回までに16点を奪いコールド勝ちした。 初回に先発黒田が満塁ホームランなど6失点で降板した土浦三は、3回に反撃。2死満塁から関川、木口の連続適時打で2点を返すと、代打酒井がレフトオーバーのタイムリーで同点とし、続く中村のヒットでこの回大量7点を奪い一気に試合をひっくり返した。 続く5回にはランナー2人を置いて中村の三塁打で2点を加え、試合を有利に進めると6回、7回にも追加点。結局17安打16点の猛打で科技学園日立を7回ゴールドで圧倒した。 初回の大量失点後、2番手としてマウンドに上がり、逆転打を放つなど中村が投打に大活躍した。「点数は気にせずに自分のピッチングを心掛けた。ベンチ、スタンドからの応援で気分が楽になり力になった。自分の球種である直球、カーブ、スライダー、チェンジアップを上手く使い分ける事が出来た」と自身の投球を振り返った。 竹内達郎監督は「昨年秋の大会、市内の大会でも5点差を逆転されて投手陣が整備されていないので1年生を抜擢した。大きく変えることが大事だ。投手陣には課題を残したが打撃陣は初回に6点取られて開き直れた。選手は思ってたより焦りはなかった。打線がしっかり繋がった」と話す。 4年振りの声を出しての応援が解除されスタンドには応援団、チアリーダー、ブラスバンドを含む全校生徒が応援に駆けつけ選手に熱い声援を送った。チアリーダーの武田空来さんは「声出して応援出来るのはみんなで盛り上がれて一体感があっていい」と楽しんでいた。 2回戦の相手はAシード、霞ケ浦。13日、J:COMスタジアムでの土浦でご近所対決となる。中村は「自分の持ち味を出して全員で戦い勝つ」と力強く語った。竹内監督は「当たって砕けろでチャレンジャー、挑戦者で向かっていく」という。(高橋浩一)

甲子園で勝つため心血注いだ初のチーム 土浦日大 小菅監督【高校野球展望’23】

高校野球県南3強チーム監督インタビューの2回目は土浦日大高校の小菅勲監督。土浦日大は秋の県大会で優勝、春は準優勝し、2季連続で関東大会に出場して安定した強さを誇っている。盤石な左右のエースを有し、下級生から主力を務めたタレントぞろいの今年のチームは、今夏の優勝候補の一角とされる。小菅監督に大会への決意を聞いたところ、例年は「一戦必勝」と控えめな答えだったが、今年は意外な答えが返ってきた。 大勝して狂い生じた ―関東大会を振り返って、所感を教えてください。 小菅 関東大会でベスト4に入る目標を持って臨みました。心身ともに県大会の疲れがあり、あまりいい状態で臨めた大会ではありませんでした。特にメンタル面でモチベーションアップができなかった部分があります。相手の健大高崎(優勝校)に名前負けした雰囲気にならなかったのは良かったと思います。相手が強かったというのが一番の敗因だと思います。相手投手陣を打ちあぐねましたね。どの投手相手にもつなぐバッティングが出来なければ勝ちきれないという経験にもなりました。タイブレークは県大会決勝戦でも経験させていただきましたが、県大会では裏攻撃、関東大会では表攻撃でした。まず経験できたということが良かったと思います。延長10回からのタイブレークは息つく暇もなく試合が急展開します。それを経験できてしのぎ合いをした耐性というか、免疫というか、負けはしましたがこういったところが大きな財産になったかなと思います。 ―タイブレークで表攻撃と裏攻撃の2つの敗戦から何か教訓になったことはありますか。 小菅 取れるアウトを確実に取らないと、必ず最後に点数になって跳ね返ってくるということがありありと分かりました。本当に当たり前のことを当たり前にやる。凡事徹底がいかに大事か分かりました。失点は構わないのですが、相手に余計に献上してしまう進塁や点数があったので、6月はそうした部分を徹底的に修正しました。 ―春の県大会準々決勝ではプロ注目投手でもあるつくば秀英の五十嵐大晟投手から香取蒼太君が2打席連続ホームランを放つなど、9対1で大勝しましたね。 小菅 大会というのは微妙なものがありまして、まさに「好事魔多し」です。大勝してしまったせいで部員の中でちょっと過信してしまった部分が見られました。実は春はあの試合の後から少しチームの方向性に狂いが生じました。春はまだ後日談にできるので、しっかりとみんなで反省して立て直しました。おそらく部員にもいい教訓になったと思います。 ー準決勝の霞ケ浦戦はいかがでしたか。香取君の犠牲フライの1点で勝ちました。 小菅 霞ケ浦の木村優人投手が非常にいいので10三振をくらってもめげずにやろうと、2度や3度はチャンスが巡ってくるだろうと予想し、3点をもぎ取ろうと臨みましたが、1点を取るのが精一杯でした。本当に良い投球をされましたね。好投手相手には三振したから気持ちが沈むということがないように、バットにかすっただけで喜んでいくように気持ちをつくっていかないといけません。 ー決勝戦を振り返ってどうでしょうか。何が敗因ですか。 小菅 春の大会の常総学院は波に乗っていましたね。実力プラスアルファのものが出ているように見えまして、これは嫌だなという感じがしていました。あの状態の常総とよく戦ったものだと思います。よく1失点で最後まで来てと。ツキもなかったですね。中盤に太刀川幸輝のピッチャーライナーで打線の繋がりが途切れた時にこれはまずいなと思いました。7回の一死三塁の勝ち越しを機に3番の後藤陽人が狙い球を絞れなくて少し泳がされてセカンドライナーになってしまった。太刀川、後藤はうちの主軸ですので打順がどこであっても彼らが決めなくてはならない。敗因は決めきれなかったところですね。 次ページに続く 藤本のピッチングが勝敗の鍵 ー今年のチームについて監督さんの言葉で選手について紹介をお願いします。具体的には1年間どういう風に過ごして来て、今どのような立場にいてなど。まずは投手陣からお願いします。 小菅 小森勇凛は陽気でのんきな、いじられキャラです。2年生の夏が終わった頃から目の色が変わってきました。エースを奪るんだとようやくチームを背負ってピッチングができるようになりました。そうした自覚が生まれた1年間で高校球児らしくなってきましたね。実力と共に結果がついてくればそういった部分が開発されると思っているので伸びしろはまだあると思います。もちろん素材としてもプロのスカウトに狙っていただけていますが、大器晩成というかまだ伸びる部分が残されていると思います。体の中でも彼は強い部分と弱い部分があるので、ものすごく練習はしますけれど、苦手なこと辛いこと、例えば走り込みなどをようやく自分からやるようになってきましたので、本当にこれからが面白いなって思います。 ー球速が春にかなり上がったのですが、何がその要因ですか。 小菅 彼は細かい部分でトレーニングとか食事のことだとか体づくりのことだとかを自分のペースでやるんですね。それが合体してきたのではないかと思います。技術的にここが飛び抜けて良くなったとかはないんですが、心技体が安定してきたので、球速に現れたのではないかと思います。 ーもう一つの柱の藤本士生君についてお願いします。 小菅 彼は人間性が抜群です。本当にフォアザチーム(チームのために)でストイックに練習をやりますし、自分にもチームにも興味がある男なのでその辺のところは申し分ないです。ただ優しいところがありまして、例えば相手のインコースに投げきれなかったり、考えすぎてボールを散らしすぎたり、この部分は練習試合で打たれたり抑えたりをしながら6月になって上がってきたところです。大体彼が打たれて負けた試合が多いのですが、それも貴重な経験ですし、チームを背負っているピッチャーなので当然勝敗を背負うでしょう。夏も彼のピッチングが鍵を握る可能性が高いと思います。 次ページに続く 松田がラッキーボーイになれば面白い ー野手陣についてお願いします。 小菅 後藤は下級生の時からショートを守っていて、実戦のボールを捕るとか、プレーを完成させる球際の強さをすごく持っています。バッティングでもすごく良い当たりを打ったかと思えば、無様に凡退するバッターです。そこら辺が彼の課題でもあり魅力でもあります。去年まではチームを背負う気持ちがちょっと足りなかったのですが、最近はみんなで甲子園行こうねと言い出したんです。やはりこの1年間、後藤に対する要求も増えてきまして、それを真摯に受け止めてやってくれています。 太刀川はうちのチームリーダーです。うちは塚原歩生真と太刀川ってキャプテン2人体制です。塚原は俺について来い的なところがありますが、太刀川は細かいところに目が届く選手です。寮生活のこととか、チームの決まりごととか、ボールが落ちているというのを気がつく人間です。少しキャパオーバーまで頑張り過ぎてしまう部分があるのですが、野球の方に専念していって自分のプレーを楽しんでもらって最後を迎えさせてあげたいなと思っています。テクニシャンなところがあるので、それを最後に発揮してもらいたいなと思います。 松田陽斗は勉強面がクラスでもトップで、非常にクレバーに野球をよく見られる選手です。熱くなり過ぎないのが彼の良いところでもあるし悪いところでもある。そういうところって表裏一体ですよね。みんなが打てないところで打ったり、誰も狙ってないボールを狙ってみたりという意外性があります。ファーストというポジションも彼に合っています。もう少しボールを丁寧に扱ってもらいたいなということを彼には要求として言っていますね。非常にマイペースで、打順とか立ち位置からして結構夏は彼が鍵を握るというか、彼がラッキーボーイになれば面白いかなと思います。 中本佳吾は次世代のリーダーです。いろんな部分を頑張りすぎて空回りすることもあるんですが、人間的に非常に優れていますし、学校の成績も優秀です。今は守備もバッティングも覚えている最中です。一つ一つ食らいついてくれるので、必ずいつか伸びると思っていますし、来年はリーダーとして期待しています。 香取蒼太はダイヤの原石です。磨けばダイヤになれるけど、その存在に誰も気が付かずに終わるかもしれない。そんな選手です。今30本くらい打っていますかね。あれだけの飛距離ってなかなかないんですよ。飛ばす力を秘めていますのでこの先も非常に楽しみです。 去年のトラウマ大きかった ー最後に捕手の塚原君についてお聞かせください。 小菅 塚原はもう野球小僧っていう言葉が一番似合う選手です。もういろんな経験をしてしまった。キャッチャーは、打たれたことが怖い経験になるんですね。この3カ月はずっと迷いっぱなしだったんです。去年の夏の(明秀日立との)決勝のトラウマと言いますか、最後の一打(サヨナラ被弾)、あれが大きかったと思うんです。それをピッチャー陣と話しながら、お前が全責任を背負うんじゃないんだよって言い聞かせていますね。彼はよく私とコミュニケーションを取ってくるタイプなんですね。心の整理整頓が付かないまま話しているところが彼の面白いところで、この最後の1カ月くらいは心の整理整頓がついてから私と話すようにと言っているところです。整理されれば力を発揮してくれると思います。 ー新聞で「配球に自信がついてきた」とコメントしているのを見ました。 小菅 普通は塚原ほどのレベルだとそんな弱音や本音を吐かないと思うんですが、よく正直に素直にそう言えたなと思います。何でそういう配球にしたのとか、理由を聞いても高校時代は完成しないで終わると思うんですよ。そういう中での配球だと思うんですね。後悔だけはしないでくれと毎試合よく話しています。 ー打順が結構目まぐるしく変わっていますが、調子を見て決めているのですか。 小菅 やはり調子は大事な要素ですね。あとは相手ピッチャーとの相性です。意外にこちらがこういう打順にしたいと思っても、相手からしたらどうなのかなという視点を持ち合わせていることも大事ですね。向こうがやりづらい嫌な打順を組むことも方法の一つです。打順はあえて固定しないです。 次ページに続く 活躍出来て輝ける環境求める ーどんな打順になるのか毎試合楽しみにしています。今年は特に実力者ぞろいの代ですが、どのような経緯で県外から土浦日大に入学しているのでしょうか。 小菅 本人がうちの環境を気に入って希望して来てくれていますね。高校野球をやりたいと考える最近の中学生は、ただ実績のある強いところというよりも、自分が活躍出来て輝ける環境を求める傾向にあるのかなと感じています。本校は練習環境が抜群ですし、自主性をうたっているので自主練習でいろいろなことができます。勉強もしっかりやれるし、自分で体づくりが出来るのを魅力に感じてくれますね。親御さんも環境をすごく気にされているように思います。ご縁があって希望して本校に集まってくれてこのチームがある。私はこういうのを「球縁」と呼んでいます。球縁の話はミーティングで頻繁にしますね。 ー相手チームの投球や打線を分析するデータ班は監督が個別に任命するのですか。 小菅 日々部員を観察して、野球を知っているなとか、面白い考えを持っているな、分析力があるなというような選手を任命しています。最初は当てずっぽうに近いですけど、やらせると結構当たっているんですね。データ班の人間たちは自分の意見をしゃべれますし分析力もあります。今はちょうど2年生が主軸になってやってくれています。1年生も何人か担当しています。 ー今スタメンで出ているような選手でデータ班出身者はいますか。 小菅 太刀川と塚原ですね。2人とも試合に出るのが早かったですが、考えながら試合を見る目があります。 次ページに続く 昔は型に当てはめがちだった ー指導観が劇的に変化したタイミングやきっかけってありましたか。 小菅 昔は高校野球はこうあるべきだと型に当てはめて考えがちでした。ひと山いくらで見ていたといいますか、一人一人に合った指導をしていませんでした。しかし自分に子供が出来て、子供の成長と共に考え方が変わってきました。やはり一人一人を親御さんから預かっている訳ですから、自分も親になってそういう感覚が分かるようになりました。また、昔は親御さんとは一線を画していましたが、今は親御さんとも一定の距離感は保った上で積極的にコミュニケーションを図っています。毎年12月のオフシーズンに選手と親、私の三者で面談を行うのですが、本人からはこれからどういう風に高校野球に関わっていくかの未来像を話してもらい、それに対して親御さんの意見を伺います。私からは選手の現状や課題、学校生活、育成方針などをお話しし、ざっくばらんに意見交換してコミュニケーションを図っています。 ー中学生に求める選手像や人間像を教えてください。 小菅 素直であって欲しいですね。野球が伸びる1番の要素はこれだと思います。あと野球を好きであって欲しい。たくさん練習して欲しいし基礎基本を大事にしてほしいですね。指導者に言われるままの受け身の子が今の時代にも多いです。間違った指導は疑って欲しい。自分でエビデンスに当たって欲しいです。高校2年生くらいになればみんなができるようになるのですが、それを中学生の頃からやれたらより高校野球にスムーズに入ってこられると思います。 ー野球人口が年々減少していると言われていますが、それに対して何か具体的な動きをされていますか。 小菅 問題意識は持っていますが、実は現場の人間にとってそこが一番欠けている部分だと思います。たくさんの子供たちに野球を好きになって欲しいという考えはもちろんありますけども、私がやれることは魅力的なチームを作って、土浦日大に入りたいとか、高校野球に憧れる子供を一人でも増やすことです。選手たちの青春時代を預かっている限りはそこに全力を注がないと、選手たち、あるいは親御さんの期待を裏切ることになりますよね。ですからあえてこの問題には目を向けないようにしています。 現場の人間には難しいので、そうした危機的状況を組織の上の方が捉えてアイデアを考えて、現場にこういうことをやってくれとか、この小中学校を指導してくれとかいうのがあれば惜しみなく協力します。 次ページに続く ワクワクしながらやってる人間は強い ーWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)をやっている期間は監督も選手も全試合ご覧になったんですか。 小菅 全試合見ました。プロの最高峰の人たちが真剣勝負するというのは最高の材料ですからね。いくらプロでホームランを打っているとはいえ別のプレッシャーがかかるし、ああこの人センター返しするといとも簡単にヒットが出るんだとか。あの人たちが日の丸を背負ってつないでつないでと、心も技も凄く勉強になりました。 ーミーティングでWBCに触れたりもしたんですか。 小菅 もちろん触れました。大谷翔平のセーフティバントどう考える?って話もしました。夏の大会でああいう判断が出てくるかもしれないよねって。それこそフォアザチームじゃないですけどね。実はひょんなことからチケットが手に入りまして、これで大谷翔平を日本で見るのは生涯で最後かもしれないなと思って、中国戦を東京ドームに見に行ったんですよ。なかなかの迫力でしたね。私もこれだけ長く野球をやっていて、目で追えない打球って見たことがないんですよ。左中間にぶつけた当たりなんか、打った瞬間にボンって。普通は打ってしばらくしてボンなんですけど、あんな打球は初めて見ました。本当にすごかったですよね。三塁の横にいたので、本当にドンって感じの。 選手には「大谷は100年に一度の選手で人間性も良い」と、「引退して偉人伝になる前に今見ておくんだぞ」という話をしています。大谷君って結局は野球小僧なんですよね。やはりワクワクしながらやっている人間は強いなと。そして彼は結構チーム愛が強いですよね。勝ちたいってハッキリ言っていますもんね。大谷翔平の勝負にこだわるところは好きです。それこそ野球小僧ですよね。 ー大谷翔平が高校時代に練習試合で下妻二高に来ましたよね。 小菅 私が下妻二高の監督時代に交流があって行き来していましたね。その試合は0対1で負けました。 ースカウトが当時バッターとしても高く評価されていた大谷翔平をエースの諏訪洸選手(下妻二高-亜細亜大-トヨタ自動車)が見逃し三振にとって、諏訪の評価がかなり上がったという話を当時聞きました。 小菅 あの試合は忘れませんね。大谷君と握手してもらいました。これは間違いなく将来メジャーリーガーになる選手だと思いましたし、雰囲気から何から違う。華がありますよね。まさに頭抜けてました。技能じゃないですよ、華が。キラキラっていう華が。 ー大谷翔平と対戦経験がある監督ってたぶん県内見渡しても小菅監督以外にいないんですよ。 小菅 もしかしたらそうかもしれませんね。彼はその試合でセンターフライを打ったんですよ。対空時間が長くて全然落ちてこないセンターフライは初めて見ました。こちらがバントをする場面があったので、一番良いバッターにバントをさせてみたんです。でも出来なかったですね。ピッチャー正面のバントがゲッツーになりました。0対0で進んだ試合でしたが、最後に花巻東が1点をガムシャラにとりに来て、精神面の強さに気圧(けお)されて負けたんですけどね。ただあの年は大谷君は甲子園に行けなかったですね。 次ページに続く 部活制限、絶対的な時間足りない ー今の高校生が知らないような貴重なお話をしていただきました。公立高校の部活動の活動時間制限について、公立高校の教員でいらした小菅監督に伺います。週に2回休みを取らされて、土曜日と日曜日のうちどちらか4時間以内、平日は2時間以内の活動時間制限です。これで強くなれますか。 小菅 絶対的な時間としては足りないと思います。高校野球を3年間で仕上げようと思った時、週の練習時間としては絶対的に足りないですね。野球ほど時間のかかるスポーツはないですし、競技性とか特性を無視して活動時間を設定していますね。やはりそこは全ての競技が一律であってはならないと感じますね。 ー活動時間制限の中で強くなるためにはどうしたらいいでしょうか? 小菅 時間の制限がマストであるならば、今日はこのメニューだけやろうとか、選手と合意して、コンセプトを持って時間の足りない分を何かで補うように工夫します。頭脳やら練習目的やらそういったものを磨いていく。それしかありません。 主役は誰かってことですよね。本人たちは青春時代の全てをかけているのですから。部活動と勉強って青春の両輪ですものね。それが制限されちゃうって苦しいことですよね。親にとっても同じですよね。思う存分に高校野球をやって欲しい、部活動をやって欲しいと願っているのに。一体何から来ているのかってことをもう一回考え直した方が良いと思うんですよ。働き方改革だとか子供の安全面とか、パワハラだ、指導の行き過ぎが拡大解釈となってここに行きついているのではないでしょうか。これだけ議論があるのであればもう一回やり直した方が良いと思うんですけどね。昔に戻るってことはないにしても、もう少し緩和して、子供たちも指導者顧問も、話し合ってやるべきじゃないかなと思いますけど。 ーまさにこれは小菅監督にしか聞けない話なんです。部活動制限問題に出てくるのって公立学校の当事者ばかりですし、私立にとっては関係のない話なので、両方とも経験されている小菅監督ならではの意見を伺いたかったんですね。 小菅 私もこの問題には興味があって、ああ、こうなったんだって残念に思いました。ただ、私立もいずれそうなるかもしれないという危機感は持っていなくてはいけないと思いますね。高校の教員の方たちも、もしかしたら自分は転職するかもしれませんって話をされています。このままやっていても夢が持てないですって話をしていますね。そういった夢とか目標を奪っちゃうことになりますよね。 次ページに続く ー最後にいつもの質問です。夏に向けた意気込みをお願いします。 小菅 公立高校や、低迷していた土浦日大など、これまでは甲子園出場が目標の、茨城大会を勝つためのチームづくりをしてきました。しかし2018年に甲子園で松商学園に初戦敗退したのを機に状況が一変しました。甲子園で勝つ野球が必要なんだと強く意識し、甲子園で勝つためのチームづくりに着手しました。コロナがあり去年までは思う存分指導できませんでしたが、今年の世代は甲子園で勝つために3年間心血を注いだ、私の指導者人生の中でも初めてのチームなんです。ですから2023年茨城大会を勝つんだっていう意気込みは当然持っていますが、是非、甲子園に出て力試しをして、あそこで校歌を歌いたいっていう気持ちです。口が先走っているのではなく本気で思っています。甲子園で勝とうなっていう気持ちを持って入ってきてくれた部員たちなので、それを達成したいという思いが強いです。右往左往しても結果はもう決まっている。人事を尽くして天命を待つだから、結果はもう意識せずに、純粋に目の前の3秒を積み重ねて、ああ試合が終わったなという風にしたい。また一期一会を大切にして、この年に集まったこのメンバーで狙える甲子園なんだから、これはもう俺達チャレンジャーだろうっていう理屈ですね。こういう理屈を部員が落とし込んでくれれば強さを発揮できると思うんですけどね。勝ちたい、勝たなきゃならないという煩悩が入ってくると、ダメだと思うんですね。 ー戦いぶりを楽しみにしています。ありがとうございました。いや、今年もいい話が聞けました。いつもより全然長丁場で、お時間とっていただきましてありがとうございました。 小菅 高校野球ファンの人が最近増えたというか、戻ってきたっていうか、春なんかも大会場にかなり観客がいましたよね。最近はおのおのが独特の見方をしますからね。相変わらず古株のオールドファンはノーマルに見ていますが、やっぱりベンチのすぐ上の方で、スマホで速報したり写真を撮ったり、いろんな見方をされる高校野球でありスポーツですので、良いのかなって感じます。自分で楽しまれていますもんね。すごくそういうのって良いなって思います。自分がもし高校野球の指導者が終わったとしたら、たぶん観戦には行かないと思います。大会場ってやっぱり武者震いする場所なので、あそこでのんきにいいぞ高校野球ってことにはならないって思うんですよね。そうなるまで燃え尽きたいと思います。 (聞き手・伊達康)

つくば工科 開幕戦で敗れる【高校野球茨城’23】

第105回全国高校野球選手権茨城大会が開幕した8日、1回戦1試合がノーブルホームスタジアム水戸で開会式直後に行われた。つくば工科(つくばサイエンス)が登場したが、2ー9で下館一に敗れた。 つくば工科は2回に守備の乱れで失点するも、先発の矢口遼真が5回まで粘り強く投げ、追加点を許さなかった。しかし6回、下館一 横田健留の左中間を破るタイムリー三塁打などで6点のリードを許した。 6回まで下館一先発の海老澤歩夢にノーヒットに抑えられていたつくば工科の打線は、7回に先頭の横嶋翔太がセンター前に初ヒットを放つと、2死一、二塁から岡野修也、秋山昴の連続タイムリーで2点を返す。しかし反撃及ばず、投打で圧倒した下館一に敗退した。 チーム初ヒットを放った主将の横嶋翔太は「自分が長打を狙ってチームを楽にしたかったが、監督からヒットでいいと言われた。がむしゃらに必死になりホームに突っ込んだ」と振り返った。「入学した時から同級生は自分1人で、先輩5人とやってきた」とし、助っ人で大会に参加してくれた同級生、下級生に感謝を述べた。 タイムリーを放った岡野修也は「試合前は緊張していたが、先輩が引っ張ってくれて、回が進むごとに緊張がほぐれてきた。苦しい場面だったが、変化球を頭に入れつつストレートを狙った。点が取れて良かった。自分なりにやり切った」と話した。 佐藤将光監督は「5回までエラーがあっても粘ってくれたので選手たちは成長したと思う。3年生1人の横嶋が本当にチームをよく引っ張ってくれた。助っ人部員が参加してくれたお陰でずっと単独チームでできた。横嶋が本当に1人で頑張ってくれた」と健闘をたたえた。(高橋浩一)

高校野球茨城大会が開幕 4年ぶり全89チーム一堂に

第105回全国高校野球選手権茨城大会が8日開幕し、ノーブルホームスタジアム水戸で開会式が催された。新型コロナが5類感染症になったのを受けて、4年ぶりに96校89チームの選手が勢ぞろいし、開会式に臨んだ。26日まで、甲子園をかけた熱戦が展開される。 午前9時、大洗高校マーチングバンド部「ブルーホークス」の演奏が響き渡る中、昨年の優勝校、明秀日立を先頭に96校89チームの選手が元気よく足並みをそろえて行進した。スタンドからは拍手が響いた。 開会式では県高校野球連盟の榎戸努専務の開会宣言の後、深谷靖会長があいさつし、第101回以来、4年ぶりとなる開会式開催に感謝の言葉を述べた。さらに「甲子園という聖地を仲間と共に目指した経験が、皆を成長させ、生涯忘れることのない思い出になる。選手1人1人のプレーが大勢の人々に元気と勇気を与えてくれることに期待している」と述べた。 選手宣誓では霞ケ浦高校の新保玖和主将が「好きな野球に打ち込み、技術的にも人間的にも成長してきたことに感謝します。コロナ禍での3年間、思うように練習出来ず、試合の勝敗以上に苦しい思いをしてきた先輩方がたくさんいます。先輩方の思いを背負って、今までやり続けてきた夢を胸に、最後の1球まで全力プレーで全ての人に感動を与える戦いにすることを誓います」と力強く宣誓した。 霞ケ浦高校のプラカードを持って選手を先導した水戸女子高校の増田穂佳さんは「初めての経験でグラウンドから見る景色が広いし歓声に感動した。やって良かった」とうれしそうに微笑んだ。開会式の司会進行を務めた下館一高3年の関向日葵さんと境高校2年の塚田有真さんの2人は「緊張して間違えて噛んでしまって心残りはあるが、やって良かったし人生の良い思い出になった」と話した。(高橋浩一)

プロ注目のエース木村起点に役割分担 霞ケ浦 高橋監督【高校野球展望’23】

夏の高校野球県大会が8日開幕した。2019年から始まった県南3強チームの監督インタビューは今年で5回目を迎える。今回も常総学院、土浦日大、霞ケ浦の各監督から熱い話を聞かせてもらった。 1回目は霞ケ浦高校の髙橋祐二監督。霞ケ浦は秋(秋季関東地区高校野球県大会)の準決勝では常磐大高に、春(春季関東地区高校野球県大会)の準決勝では土浦日大に敗れたが、昨夏から3季連続で4強入りを果たしている。プロ注目の木村優人投手を擁してこの夏をいかに戦うのか語ってもらった。 ―毎年恒例のインタビューです。今年もよろしくお願いいたします。まずは春の大会の振り返りをお願いします。準々決勝の岩瀬日大戦は2対1とロースコアになりました。 高橋 春は全体的に打てませんでした。ファーストストライクを振りにいけない、どうしても消極的な場面が目立ちましたので、修正に取り組んできました。岩瀬日大戦は木村以外の2番手以降の仕上がりが課題になることが改めて浮き彫りとなりました。打者との戦いではなく、自分との戦いになってはね。心は熱く、頭は冷静にやっていかなくてはなりませんね。 ―準決勝の土浦日大戦は0対1とこれまたローゲームになりました。 高橋 打てませんね。木村が粘って最少失点に抑えてくれたんですが、攻め手を欠きました。夏は修正して臨みたいと思います。 木村は3段階くらいギア上がった ―今年のチームについて紹介をお願いします。 高橋 今年はキャプテンの新保玖和を中心としたまとまりのあるチームです。新保が私と同じ方向に向かって進んでくれて、強烈なキャプテンシー(統率力)で引っ張ってくれています。チームのことを最優先に考えてくれているんですが、少し根(こん)を詰めすぎるところがある。そこはバランスを取りながら、たまには引くことも大事だよと言い聞かせていますね。 ピッチャー陣はエースの木村優人が抜きん出ています。木村以外の投手陣の力量を見極めて起用の仕方を考えていきながら、なるべく木村に負担が掛からないように役割分担できればいいなと思っています。 打撃陣もやはり新保と木村が起点になります。ここに俊足の山崎隼人が絡んでくると面白い展開になるでしょうね。良い働きを期待しています。キャッチャーは何枚かいますので、ピッチャーとの相性を見ながら起用することになると思います。 ―木村選手はプロ注目投手として名前が上がりますが。 高橋 春は私としても驚くほど木村が成長を見せてくれました。ボールが明らかに強くなったし、3段階くらいギアが上がった感じがします。ただし、これは春だからこそできたことであって、夏の猛暑の中であのピッチングをするのは、いくら木村でも至難の業だと思います。最近メディアでよく取り上げていただいていますが、まだ18歳の高校3年生です。気持ちが浮足立って来ていることが見かけられましたので、そこはギュッと締め直すように、目の前のことに集中して勘違いしないようにと指導していますね。 次ページに続く 選手宣誓は運命的 ―今年は新保玖和主将が選手宣誓の大役を引き当てました。選手宣誓の文章はどうやって考えているのですか。 高橋 副部長の直井先生が国語科教員なので、新保と2人で相談して考えています。新保の気持ちをベースにした中で、いかに新保のオリジナルな言葉で、かつ新保が心の底から発した言葉になるようにと考えています。昨日(7月3日)ようやく本文が出来上がりました。本校の校長がそういうのが好きなんですよ。今は校長が最後の添削をしています。開会式の前日に職員室で朝会の時に、新保に本番さながらに選手宣誓をやってもらうことになっています。みんな学校では盛り上がってますよ。 ―準備は万端ですね。 高橋 本校の選手宣誓は2回目なんです。 ―そうだったんですか。前回はいつですか。 高橋 私が監督に就任して2年目の2002年です。太田浩之というキャプテンが引き当てました。私は2001年にバレー部の監督から野球部の監督になったのですが、春高バレーから帰ってきてすぐに野球部監督になった。その時のメンバーなので本当によく覚えています。太田君は立派な選手宣誓をしました。その太田の息子が太田翔都といって、今年うちの1年生にいる。これは何かの運命ですかね。私にとっての2度の選手宣誓に、太田が絡むという。彼が選手宣誓を引き寄せたのかもしれない。 ―なんだか運命的なお話しですね。 高橋 それと同時に、キャプテンの新保玖和の兄は、5年前の第90回選抜甲子園で瀬戸内高校のキャプテンとして選手宣誓を引き当てています。今回、新保が選手宣誓の大役を任されるということで、何か運命的なものを感じざるを得ません。本校への入学の経緯にしても、あらゆる縁が積み重なって新保と本校の糸がつながったという感じです。新保は人としてもみんなから好かれているし、もう素晴らしいと思います。 次ページに続く 応援、本当にありがたい ―もう新保選手が抽選前から引き当てることが決まっていたかのようなサイドストーリーですね。野球部員とブラスバンド部、チアリーディング部は交流があるのでしょうか。 高橋 うちは文化祭でも3つのクラブがコラボして応援メドレーっていうのを必ず発表しているので、3つの交流はよくやっています。一般生徒は終業式が終わったら応援に来てくれますが、吹奏楽とチア部は1試合目から来てくれます。今年は制限がかからないこれまで通りの応援ができるということで、今回の選手宣誓の文言にもきっちり盛り込まれているけど、やっぱり学校応援があって、普通の方々が来てくれると言うことは気持ちの高まりも違うし、本当にありがたいですよね。 費用負担抜きでは語れない ―公立高校で話題になっている部活動問題について、高橋監督の見解をお聞かせください。 高橋 どこかから聞いた話ですが、日本の部活動制度っていうのは、外国のどこにもない、学校に行っていれば貧富の差がなく平等に部活動の機会を得られるんですよね。他国は地域スポーツだっていわゆるアカデミーみたいなのを立ち上げてっていうとそこにはお金が必要で、お金を払ってチームに入れる。そういう制度になると、貧富の差で受けられなくなる可能性がある。日本の部活動というシステムはそういう側面では優れていたんだと思います。ところが、アカデミーになるとみんな平等に受けられていたことが受けられなくなる。中学も高校も、部活動の指導がしたくて教員になっている人がいっぱいいて、その先生達がやる分には問題ないと思うんだけど、やりたくない先生だっている。先生の働き方改革のためには、別の指導者を雇わなくてはならない。生徒の部活動の機会の確保と併せて費用負担抜きでは語れない問題ですね。 「こういうところを見習おうよ」 ―WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は全試合ご覧になりましたか。 高橋 全試合見ました。映画(「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」)も見ましたよ。1週間前に部員全員を連れてレイトショーを見てきました。選手たちも感動して良かったって言っていたみたいです。映画は特に勉強になりましたね。まだまだ試合が終わってないんだから泣いちゃダメだろうとか、同点に追い付いた後に勝ち越されて、その瞬間にベンチの中が静まりかえった。その時に大谷翔平選手が「大丈夫、大丈夫、大丈夫」って、ベンチ内を大声で練り歩くの。あれ見た瞬間、こんなやついるんだって驚きましたね。静まり返ったベンチが息を吹き返す。プレーだけじゃない。こういうところを見習おうよって、君たちにもできるよってミーテイングで話しました。 ―最後の質問です。大会に向けての意気込みを語っていただきたいと思います。 高橋 今までの経験上、勝ちたい勝ちたいと思っていない方が勝てているように思います。チームは完璧に力のある仕上がりにはなってはいませんが、かと言ってエース級が何人かいても上手くいくとは限らない。そこが難しいところですね。甲子園という素晴らし場所にいけるように選手達は頑張ってきたんだから、優勝したいねって話をしています。なんとか甲子園に出て校歌を歌えるようになれれば良いですね。 ―戦いぶりを楽しみにしています。ありがとうございました。 (聞き手・伊達康)

私学の学費補助590万円の崖《竹林亭日乗》6

【コラム・片岡英明】昨年11月の茨城県議会で、県の森作宜民教育長は「中学生の進路選択に影響がないよう学級増の計画を示す」と答弁し、中学生徒に期待を持たせた。そして3月の県議会で、星田弘司県議がその計画を示すように求めた。 すると教育長は、つくば市の中学生がエリア内外の県立高校のほか、「私立学校などを含めた多様な選択肢の中から学校を選んで通学している」と、県立高学級増の計画を示さず、足踏みの答弁をした。 生徒の声に応え、つくばエリア県立高の入学枠を県平均水準まで引き上げる決断を示す場面なのに、後ろ向きであった。まるで、①定員割れの県立高に行って②交通費がかかるエリア外の高校も考えて③授業料は高いが私学もある―と聞こえる。 県が焦点をずらしているので、私たちの学習も、県立高の魅力アップ、通学やスクールバス問題、さらに私学の学費問題へと広がった。そこで、今回は私学の学費補助について考える。 私立高への学費補助の現状 私学振興助成法が1975年に成立し、私学への経常費助成が始まった。主な私学助成は、①学校運営のための経常費助成②生徒への授業料補助③生徒への入学金補助―の3つから成る。 <経常費助成> 茨城の2023年度の経常費助成(私立高校生1人当たり)は、国からの35万4027円に県の2万3505円を加えて、37万7532円である。 公立高校は生徒1人当たり約120万円の経費がかかると言う。その運営経費と私学経常費助成の差が保護者負担となり、私学の高学費を生んでいる。 昨年の茨城の私立高校初年度納入金は平均81万9691円である(内訳:授業料38万4875円、入学金18万3958円、施設費25万0858円=文科省学校基本調査)。 <授業料補助> 国は2010年度からの年収910万円未満の世帯に11万8000円支給することを始めた。さらに2020年度から、私立高校生に対する就学支援策を拡充させ、授業料部分について、年収590万円未満世帯には39万6000円の学費補助を開始した。 <入学金補助> 国と連動して各県も入学金補助を始め、茨城の場合は2017年度から年収350万円未満の世帯には9万6000円、同590万円未満の世帯には4万8000円の入学金補助を開始した。 私学もあると言うなら「崖」の解消を 国の授業料補助が年収590万円を境に低下することから、「590万円の崖」が発生、保護者負担が急増する。そのため各県は国の支援策充実に合わせ、それまで独自に行っていた授業料助成の仕組みを変え、年収基準緩和、補助額アップなどにより、崖の解消に努めた。 関東都県を見ると(独自加算分は県内在住のみ)、▽東京:年収910万まで46万9000円、▽埼玉:同500万まで59万6000円、同700万まで38万7000円、▽千葉:同590万まで52万2000円、同800万まで24万1000円、▽神奈川:同590万まで45万6000円、同700万まで19万3000円、▽群馬:同590~910万まで16万5120円。 茨城は、それまでの県独自の加算を都・他県のように授業料補助アップに切り替えず、県加算をやめた。そのため、私学の授業料補助は国の就学支援のみとなり、都・他県と比べ「590万の崖」は急になった。 高校進学前の中学生に「私学もある」と言うのなら、県は「590万の崖」を全力で解消してほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

民間フリースクールに補助 つくば市が募集開始 不登校支援

つくば市は、不登校児童生徒の学習を支援したり居場所を提供する市内の民間フリースクールに、運営経費の2分の1などを支援する補助事業をスタートさせる。3日に補助金交付要綱を公表し申請受付を開始した。 家庭の経済的負担を減らし、民間フリースクールの経営を支えることで、不登校児童生徒の社会的自立を支援することが目的。特例として8月3日までに申請すると今年4月にさかのぼって補助金適用とする。 同市は、2021年12月に実施した不登校児童生徒の学習支援施設運営事業者の選定をめぐって迷走した問題を受けて、22年度に不登校支援のあり方について検討し、支援策の一つとして、民間事業者と利用者に支援する方針を決めた。 昨年、市内の小中学生が利用している民間施設8カ所を調査し、小中学生100人弱が利用している実態があったことなどから、今年3月、23年度当初予算として、民間への補助金4850万円と利用者への交付金2400万円の計7250万円を計上した。利用者100人程度への支援を想定している。昨年市内の小中学生の利用がなかった施設も含め、市内にある既存の民間10施設と、市に相談があった5施設に補助金交付について情報提供するとしている。 補助対象となるフリースクールは①月曜から金曜まで週3日以上開所する②午前8時から午後5時までの間に4時間以上開所し学習支援または居場所を提供する③不登校児童生徒の相談や指導に関して深い理解と知識、経験がある④学校との間に連携協力体制を構築できる⑤必要な施設及び設備がある、または準備できる⑥家庭と連携協力関係を構築できるーの6つの要件を満たすことなどが必要。 一方、フリースクール運営の実績や、スタッフの資格の有無や経験年数、施設の広さや設備など明確な基準は示されていない。これについて市教育局学び推進課は「フリースクールは発展途上で経験値はなく数字で推し量れない」とし、「(民間事業者は)手探りで多様な学習の機会を提供しようと活動されており、増加傾向にある不登校の児童生徒たちの居場所を広げていきたい」とする。 補助額には教員免許所有者の配置やカウンセラー配置、研修受講費などが加算される。施設の広さや設備については申請書に十分目を通して、確認の上で判断するとしている。 申請から2、3週間で補助金の交付が決まり、申請者に通知される。ホームページなどで公表はしない。一方、民間フリースクール利用者への補助事業は交付要綱を準備中で、まとまり次第、ホームページで公表するとしている。 21年度末の同市の不登校児童生徒数は592人で増加傾向にある。市内には民間フリースクールが10カ所程度あり、ほとんどが利用者の月謝や寄付金、助成金などで運営されている。昨年、市が8施設を対象に実施した調査によると、利用者が10人未満の施設が多く、利用料は1回1500円~2000円、月額は1万5000円~3万円が多かった。(橋立多美) ◆つくば市の民間フリースクールに対する補助事業の内容は市ホームページへ。

「翻訳」に必要なもの 《ことばのおはなし》59

【コラム・山口絹記】前回の記事では、翻訳について考えるために、通訳と翻訳の考え方の違いについて書いた。今回は翻訳(英語から日本語)の難しい部分について、実例を交えながら書いてみようと思う。 さっそくだが、 "prom(プロム)"ということばをご存じだろうか。 これはアメリカのハイスクールの伝統的なダンスパーティーを指す単語なのだが、プロムを経験したことのある日本人は当然ながら少ない。今、私はニュースサイトのコラム記事を書いているわけで、"プロム"という文化について長々と連載記事を書いてもよいわけだが(記事としての価値があるかは別)、小説の翻訳となるとそうはいかないだろう。これは、文化の違いによる翻訳の難しさだ。 また、安易な引用は避けるが、宗教的なイディオム、テキストの引用、習慣や儀式を背景に持つ文脈の翻訳が難しいのは想像できるだろう。キリスト教圏においてどれだけの割合が聖書を読んでいるかはわからないが、日本人のそれよりも多いことは間違いない。これは「宗教の違い」による難しさ、ととらえてもよいのだが、もっとわかりやすく言うと「常識」の違いだ。 「常識」ということばの扱いもまた難しいのだが、例えば一般的に『桃太郎』のおおまかなストーリーを知らない日本人はかなり希少と言っていいだろう。普段から意識することはあまりないだろうが、日本に生まれ育った者であれば、『桃太郎』という単語一つでかなり多くの文脈を共有できる。"どんぶらこ"でも"鬼退治"でも"きびだんご"でもよい。ちょっとした単語から、私たちは多くの共通したイメージを共有できる。これって実はすごいことだとは思わないだろうか? 「英語力」ではない部分が試される では翻って、このコラムを読んでいる方の中に、『トム・ソーヤーの冒険』を読んだことがある方はどれだけいるだろう? 『ハックルベリー・フィンの冒険』は? その中に登場する文脈、センテンスが引用されたり、少しもじられたりしたら、どれだけの日本人が理解できるだろうか。これが誤解を恐れずに言ってしまえば「常識」の強さであり、その「常識」が共有できなかった場合は、相互理解のうえでおおきな足かせになることは想像に難くない。 実のところ私自身、海外小説を原文で読んでいると、いまいち何のことだかわからないことがままあるのだ。文脈から察するに、こういう場面が描かれているのだろうな、というのはわかるのだが、本当に理解しようとすると、いわゆる「英語力」ではない部分が試される場面が非常に多い。そしてこれは、海外の論文やニュースなどを読んでいる時より、児童文学を読んでいるときの方が多かったりするのだ。 あらゆる文化の違いを乗り越えて文章を理解するための知識と経験と想像力、そして、それを他者に伝えるための文章力が翻訳という行為に必要な最低限の資質だと私は考えている。次回は、ここからさらに一歩進んだ難しさについて書いていこうと思う。(言語研究者)

市民説明会 22、28日に4回開催 洞峰公園問題でつくば市 無償譲渡受ける方針など説明

無償譲渡を受けることが望ましいとして、つくば市が県と協議を進めている県営の都市公園、洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)について、市は22日と28日の2日間、洞峰公園と、市北部の大穂交流センター、市南部のふれあいプラザの3カ所で計4回、市民説明会を開くと市ホームページで発表した。 市公園・施設課によると説明会では、①県のパークPFI事業などこれまでの経緯②市民からこれまでに寄せられた声③無償譲渡を受ける市の方針と、④今後市が負担する維持管理費用や大規模修繕費用⑤公園の管理・運営について協議する協議会についてや、⑥今後のスケジュールなどを市が説明した上で、参加者の意見を聞いたり質問を受ける。 時間は各会場とも、市の説明と参加者の質疑を含めて2時間ほどを予定している。市民アンケートを実施するか否かは現時点で未定としている。 洞峰公園の無償譲渡をめぐっては、大井川和彦知事が昨年12月の知事定例会見で「つくば市が自ら公園を管理するのであれば、県としては洞峰公園を無償で市に移管したい」と発言したのを受けて、五十嵐立青市長は今年2月「無償譲渡が市全体にとって望ましい」として県に無償譲渡に向けた協議を要請、県と市の協議が始まった。市は6月23日に開いた市議会全員協議会で、毎年の維持管理費が約1億5100万円かかるほか、体育館・プール棟や新都市記念館など園内施設の中長期的な修繕費用に年平均3500万円かかり、年間費用負担は年約1億8600万円になるとする見通しを示した。議会からは「洞峰公園を普段利用しない市民から反対の声が上がっている」などとして市民説明会を開催するよう求める声が出ていた。 市民説明会の日程は、▽22日(土)午前10時~大穂交流センター(筑穂1-10-4)▽22日(土)午後2時~洞峰公園アリーナ棟(二の宮2-20)▽22日(土)午後6時30分~ふれあいプラザ(下岩崎2164-1)▽28日(金)午後6時30分~洞峰公園筑波新都市記念館(二の宮2-20)

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