日曜日, 4月 5, 2026

《雑記録》19 日米とも「賢い政府」出でよ!

【コラム・瀧田薫】19世紀初頭、フランスのジョゼフ・ド・メーストル伯爵は「いかなる民も、その器量にふさわしい指導者しか持てない」という言葉を残し、思想史上の人物となった。新しい1年、コロナ禍との闘いが続くなかで、政治に期待する以外に個々人にできることがあるとすれば、手洗いとマスクぐらいだろうか。しかし、メーストルの言葉をかみしめれば、問題の解決を政治家任せにはできない。せめて、あるべき政治を考え続ける1年にしたいと思う。 最近、アメリカの政治学者の間で「必要なのは大きな政府や小さな政府ではなく、賢い政府だ」と言われるようになった。その含意は、「大きな政府と小さな政府を時宜に照らして使い別ける智恵」がほしいということのようだ。 こうした見解が出てくる背景に、アメリカ民主主義の制度疲労があることは言をまたない。「アメリカ国民を真二つにした政治的分断と分裂」。これは一義的にはトランプ大統領のもたらしたものだが、共和党の少なからぬ下院議員が同大統領の「不正選挙をやり直せ」という主張に同調している事実が示すように、政治家個々の資質の劣化も深刻なレベルにある。 トランプは嫌だからバイデンに? さて、バイデン次期大統領だが、賢い政府を目指していることは見て取れる。しかし、政治的環境、経済状況、国際関係(対中国、対ロシア、対中東、その他)など重要課題が山積し、しかもそれらが絡まり合って解決の糸口を見つけることすら難しい状況にある。 彼の支持票の多くは、「トランプは嫌だからバイデンに」という、いわば消去法によるものとの見方が強い。新政権の常道として、成果がすぐ出そうな課題から取り組みたいところだが、今回ばかりはコロナ対策を最優先しなければならず、しかも短期間のうちに成果を上げねばならない。それができないと、バイデン支持者の期待は一転して失望に変わり、トランプ大統領支持者の新政権攻撃は激化する。 つまり、バイデン新大統領にとって、時間こそが最大のリソースであると同時に足かせなのだ。最初の3カ月、いや2カ月かもしれないが、そこで成果を上げれば、その後は比較的安定した政権運営が可能になるだろう。しかし、つまずこうものなら、2年後の中間選挙はすぐにやってくる。そこで民主党の敗北、さらにその2年後の大統領選へのトランプ氏の再出馬、そんな事態さえ予想される。 スガノミクスはスガノリスクに変異? ところで、われわれは菅政権に期待できるだろうか。12月27日、トランプ大統領がコロナ感染拡大に対応する総額9000億ドル(約93兆円)規模の追加経済法案に署名した。その途端、日経平均株価が700円超急騰、30年ぶりの2万7000円台を突破した。日本の証券市場で「米国のコロナ対策」が評価され、外国人投資家が買いに回る展開である。 折しも菅政権の支持率が急落中で、口の悪い市場関係者が「スガノミクスはスガノリスクに変異した」とコメントしている。どうやら、メーストルの言葉をかみしめ直すしかないようだ。(茨城キリスト教大学名誉教授)

《介護教育の現場から》3 シンガポールの外国人介護者

【コラム・岩松珠美】筆者は15年ほど前、学生のシンガポール海外研修に引率で参加したことがある。同国は多民族国家であり、マレーシア、インドネシアなど広くアジア圏から出稼ぎ労働者を受け入れている。その中で、家事労働(高齢者介護を含む)の出稼ぎ労働者は、住み込みで家族に準ずる形で仕事をしている。 家族主義の思想が強いシンガポールでは、高齢者介護は家庭で行うのが一般的であり、その手助けのために、外国人家事労働者が雇われている。また、子育て世帯の保育も住み込みで担っている。  これら外国人出稼ぎ労働者の活用を効果的に進めてきたことが、隣国マレーシアでの女性の社会進出の原動力ともなってきた。社会的地位を高めてきた女性たちは、子どもたちの多額の教育費を負担する。将来の老後の生活をきちんと支えてもらえるように、子供に教育という投資を惜しまない。 出稼ぎの家事労働者は、Sパスという雇用保険に準ずる社会保険制度も保障されている場合、賃金や身分保障は安定することになる。もちろん、本国で看護師などの資格を取り、シンガポールに出稼ぎに来るとSパス取得者とされ、退職年齢時までの雇用や家族妻帯もできる体制になっている。 高齢者向けケア施設は高額 シンガポールにも高齢者向けケア施設などがあるが、費用は高額だ。社会保障費用は、義務的な個人の積立基金から支出するのが原則で、経済成長以前に現役世代だった現在の高齢者には、十分な積立金がないという問題もある。高齢者介護には、月額数万円で雇える外国人家政婦を使う家庭が多く、政府も雇用税の優遇などで奨励している。 シンガポール政府は1970年代の終わりに、労働力不足の解消のため、女性の積極的な労働市場投入とともに、家事や育児、介護の仕事を外国人家政婦に任せる方針を打ち出した。その結果、今では5世帯中1世帯以上が家政婦を雇っているとされる。 家庭の中に高齢者介護を担う外国人家政婦の雇用することで、シンガポールは少子高齢化に対応している。これが、中国系、マレー系、インドネシア系、インド系と多種多様な思想や文化を持った国民への効果的な対応法となってきた。 また、多種多様な民族のために、イスラム圏の施設、キリスト教系の施設、華僑の施設など、バラエティーに富んだ介護施設や社会福祉施設を見学したことを思い出す。(つくばアジア福祉専門学校校長)

《続・気軽にSOS》76 死ぬ前に後悔することは

【コラム・浅井和幸】あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。おかげさまで、私は自由奔放にコラムを続けることができ、やりたいことをできる範囲で行いつつ、健康に毎日を幸せに生きています。 世界一幸せに生きていると豪語している私ですが、じゃあ、明日死んでもよいか?と聞かれたら、もっともっと生きていたいと正直思っています。やりたいことも、たくさんあります。 希望、欲望は限りありませんので、後悔しないはずはないということも前提で、今回考えてみたいのは、「死ぬ前に後悔すること」です。「一年の計は元旦にあり」と言って、希望に満ちた明るいコラムの方がよいのでしょうが、ひねくれ者の私は、「今年の目標」ではなく、繰り返しますが「死ぬ前に後悔すること」です。 後悔先に立たずといいまして、今の時点で大切だと思っていることと別で、やっておけばよかったと思うことがあるらしいのです。私たちは、現代の日本の中で人の死に直面することが少なくなりました。人の死に目にあったことがない人も思ったよりいるでしょうし、自分が死ぬのはまだ先だと感じて生活しているのが当たり前だと思います。 そして、今できていないことも、先になればできるだろうと考える癖が人間にはあるようです。去年できなかった掃除は、来年はできるだろう。今やり残している仕事も、締め切りに追い詰められたらできるだろう―などなど。今日より来週、今年より来年の自分の方が、格段にパワーアップした自分がいるという感覚になりやすいらしいですから、気を付けなければいけません。 あなたの今年の抱負は何でしょうか? 話しを元に戻すと、コーネル大学のT・ギロヴィッチ教授は、人が最も後悔することは、義務や責任に関してではなく、「理想の自己」で生きられなかったことという論文を発表しました。 社会人として立派な仕事ができるべきとか、学校の成績はよくするべきとか、人とは仲良くするべきなどの義務は、その場を過ぎてしまえば少々の後悔で済む。しかし、自由に生きられる人間になりたいとか、人の役に立ちたいとか、上記のものでも義務ではなく、仕事ができるようになりたいとか、成績を良くしたいとかというように、自分の理想がそれであれば、こちらに近づくことをしないでいると、後悔は大きなものになるということなのです。 私たちは、毎日の生活で、「~になりたい」という希望や理想よりも、「~しなければならない」という考え方に縛られやすいものです。さらには、二つを混同してしまいやすいです。 もっともっと、自分自身の希望や理想を感じ直し、「しょうがないじゃないか絶対にしなければいけないんだよ」と勘違いしている、実はやらなくてもよいことを見つけ直してみてください。そして、希望や理想に近づく自分を意識して喜ぶことが大切です。やっとここまで来て、お聞きします。「あなたの今年の抱負は何でしょうか?」(精神保健福祉士)

舌を巻くグルーミングで育つ牛 つくば・農研機構のアニマルウェルフェア

【相澤冬樹】耳に「084」という黄色いタグをつけた子牛は、20年11月17日に生まれたホルスタインのメス、近づくと人懐こい仕草で寄ってくる。体重はすでに100キロを超えているが、まだ乳離れの最中だ。牧草を発酵させたサイレージ飼料に徐々に切り替えられている。 乳牛は通常、母乳では育てられない。母牛は搾乳のため子が生まれるとすぐに引き離され、子牛は母親のケアを受けない。肉牛となる黒毛和種でも早期の母子分離、哺乳ロボットの利用が増えつつある。この母子分離のストレスは、畜産業者にとって大きな経済的損失になると指摘するのは、農研機構畜産研究部門(つくば市池の台)の矢用健一飼育環境ユニット長(55)だ。 日本の畜産業では、乳牛に黒毛和種の子を産ませる受精卵移植が広く行われている。ホルスタイン種の子は40~50キロの体重で産まれてくるが、黒毛和種の子は30キロ前後しかなく、その分抵抗力に欠ける。しかもホルスタインの母乳は濃度が薄く、下痢や腸炎にかかりやすいため、引き離しの時期もさらに早められるという。 出生直後の母子分離は、近年のアニマルウェルフェア(Animal Welfare)の考え方からも問題視されている。家畜の誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、健康的な生活ができる飼育方法をめざす、欧州発の考え方。日本では「動物福祉」や「家畜福祉」と訳される。 母親の舌触りに近づける 矢用さんは、黒毛和種で母親が舌で舐めるグルーミングを受けた子牛ほど、下痢が少なく、より早く体重が増加するという研究報告(2012年)に目を留めて、疑似グルーミング装置を開発、実証実験に取り組んできた。 子牛が母親から受ける物理的刺激を代用する器具で、母親の舌触りに近づける工夫をした。プラスチック製の硬めのブラシを密植し、直径10センチ×長さ50センチほどの円筒状に巻いている。子牛が体をこすりつけると電動で回転し、ブラシの先端がザラザラと刺激する。実際の牛の舌(タン)も50センチほどの長さあり、ザラザラ感があるそうだ。 装置を飼育舎に吊るし、圧力や回転速度などを変えて子牛に継続使用させた。グルーミング装置を与えない対照群も同時に飼育し、効果を比べた。子牛は早々に装置を気に入り、毎日断続的に20分ほど、体をこすりつける行動を見せた。 これを離乳期まで続けると、目に見えて体重増加が大きく、病気にもなりにくかった。新しいものや出来事に怖がらなくなったともいう。 農研機構畜産研究部門には20年4月1日現在、乳牛100頭、肉牛48頭が飼われている。屋外の放牧地に行くと、サイレージを食んでいた乳牛の1頭が群れから離れ、矢用さんに近寄り鼻先を押し付けてきた。矢用さんは「こんなに人懐こいのは、グルーミング装置で育てられた牛に違いない」と笑顔で応じた。 実験は三重県や長野県の畜産農家への導入段階に進み、ライセンス契約による装置の生産も始まった。アニマルウェルフェア向上の一環として、畜産業界にどのように提案、普及していくか、丑年の課題となる。

《吾妻カガミ》97 あけましておめでとうございます

【コラム・坂本栄】今年もよろしくお願い申し上げます。昨年はコロナ禍に振り回され、今年もコロナで明けました。早く終息して、V字型の経済回復を祈るばかりです。明るい材料は、国際秩序混乱の元凶、トランプさんにサヨナラできることです。でも、かなり壊しましたので、その修復は大変でしょう。バイデンさんに期待するところ大です。 NPOメディア「NEWSつくば」を立ち上げてから3年経ちました。地域ニュースをネットで全国に向け発信しています。ご関心ある方は是非のぞいてください。これまでの実績と役割が認められ、昨年末、学園記者クラブに入会できました。これをテコに、つくば地域のニュースの発信力をより強化していきたいと思います。 以上の2パラグラフは、今年の年賀状からの転載です。年頭のコラムでは、昨年、一昨年同様、このパターンを踏襲しました。というのは、この文面に私の思いが込められているからです。 今年は「密な場」で編集会議! 皆さんも同様と思いますが、昨年は本サイトもコロナ禍に振り回されました。編集制作室がある筑波学院大体育館がコロナ対応で封鎖され、週1回の編集会議が「放浪の旅」になったことがその一つです。幸い、土浦市とつくば市のコミュニティセンターの広めの室を借りることができ、週1回2時間の会議はこなせたものの、従来のような熱の入った議論ができないのは残念でした。 もう一つ、NEWSつくばの「通信社機能」(地域の他メディアへのニュース素材提供)が影響を受けました。昨年から、本サイトはケーブルテレビ局への地域ニュース(映像と音声で構成)の提供を開始しましたが、コロナ禍の影響で同局の番組編成が大幅に見直され、年央から中断に追い込まれたからです。 「密な場」での議論はメディアの編集活動には欠かせません。また、ネットメディアは活字と写真に加え、音声と動画も扱うことにより、発信力を強化できます。コロナの終息によって、本サイトが持つ編集力、発信力を早期に取り戻せればと思います。 市民記者・コラムニスト 大歓迎 コロナ禍にもかかわらず、一般記事とコラムのライター陣は充実しました。昨年秋の私の最大の仕事はライター希望者との面接だったくらいです(年明け早々にも予定されています)。一般記事でいえば、学生ライターの活躍により、大学内のいろいろな話題を提供することができました。大学は研究学園都市の「核」ですから、地域が地域メディアを通じて大学の話題を共有することはとても大事です。 面接で感じることは、大学生ライター希望者でも、市民ライター希望者でも、コラムニスト希望者でも、問題意識がとても高いことです。こういった方々の視点を取り上げることは、われわれ地域ネットメディアの可能性を広げます。多くの方々の参加を歓迎します。(NEWSつくば理事長)

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