月曜日, 4月 6, 2026

土浦一高付属中の人材育成 《令和楽学ラボ》16

【コラム・川上美智子】今年度より中高一貫校となった土浦第一高等学校付属中学校を先日、視察しました。土浦一高は、卒業生の皆様であればよくご存知のように、県南の最難関県立高校であり、このほど設立された付属中も同様に、難関受験を突破した生徒が集う学び舎(や)です。 学校案内には、勉学にいそしみ、友と交流し、高い志と社会の規範となる、自負・自尊・矜持(きょうじ)の「ノブレス・オブリージュ(地位の高い人の義務)の精神」をもって学校生活を送ることが掲げられ、付属中の教育にもこの精神と、目の前のことに全力で挑戦する「一高スタイル」の追求、すなわち6年間を通じて日々の授業、部活動、学校行事をとことんやり抜くことを求めています。 さらに、卒業後、これからの社会が今よりも幸せになるため、日本のどこかで、世界のどこかで、自分が「役立っている」「支えている」「貢献している」と、自ら確信を持てる人材に育つことを願うとしています。 中澤斉(ひとし)校長先生からは、次世代で活躍する礎(いしずえ)をつくるGLP[グローバルラーナーズ(広い視野で学ぶ人)プロジェクト ]の特色ある取り組みについてご説明いただきました。GLPは「知とつながる」「人とつながる」「社会とつながる」の3つの構成から成ります。 「知とつながる」の1つは通常より10分長い60分授業とし、生徒相互で授業内容を振り返る「ピア・レビュータイム」を設け、思考力・判断力・表現力の強化を図るものであり、もう1つは「+English(プラスイングリッシュ)」で全ての教科で自分の考えを英語で表現する英語の発信力を磨くものであります。 「人とつながる」は、生徒主体、生徒が主役の交流活動で、グループで企画する修学旅行や水戸一高付属中との『土水交歓会』などが予定されています。「社会とつながる」は、卒業生との『土一ネットワーク』を活用した探究活動で、プレ海外探究のための国内英語キャンプや、探究活動総まとめの卒業研究発表会のプレゼンなどが企画されています。 授業を楽しむ余裕の生徒 4月に入学したばかりの中学1年生の授業を見学させていただきましたが、社会の授業では、生徒も先生も一体となってICT(情報通信技術)を駆使してグループごとの熱気あふれる真剣な取り組みに、そして英語の授業では短期間の間に立派に英語で自分を表現できるようになった生徒たちの姿に、人材育成の神髄を見た思いがしました。 それでいて、授業を楽しんでいる生徒の余裕の姿も見ることができました。多分野への学びのモチベーションを上げ、学びの質改善に取り組む先生方の熱意にも圧倒されました。 校舎は今までの高等学校の教室をそのまま使用しているため、きれいとは言い難いのが残念でしたが、茨城の全ての子どもたちにこのような学びの機会を与えることができたなら、もっともっと子どもたちの未来は明るくなるだろうなと強く感じました。 最後に、国の重要文化財である旧校舎を見学させていただき、創立124年の歴史の重みも実感し、充実した視察の時間となりました。(茨城県教育委員、茨城キリスト教大学名誉教授)

ランニングで快適に認知機能向上 筑波大学 初めて実験で証明

10分間の中強度(ややきつめ)のランニングが快適気分を誘発すると同時に、脳の活動を促進し認知機能を⾼めることが初めて実験で証明された。筑波⼤学体育系ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP、つくば市天王台)の征⽮英昭教授らの研究成果として22日、学術誌にオンライン発表された。 ランニングは、⼈類の⽣理的・解剖学的進化に強く関係していると⾔われてきた。しかし実験室の運動負荷試験で得られた知見の大部分は、ペダリング運動(自転車などを漕ぐ動作)によるものだった。このため全⾝をリズミカル、かつダイナミックに使うランニングが、ヒトの脳にどのような影響を与えるのかについての知⾒は不⾜していた。 征矢研究室は今回、トレッドミル(屋内でランニングやウオーキングを行うための健康器具)を⽤いて運動強度を厳密に規定し、中強度に相当するランニングが脳の前頭前野を基盤とした認知機能や快適気分に与える影響と、その背景にある脳内神経機構について、脳の局所的な⾎流の変化を捉える機能的近⾚外分光分析法(fNIRS、※メモ参照)を⽤いて検証した。 実験には26⼈の健常若齢成⼈(⼥性8⼈、男性16⼈)の⼤学⽣・⼤学院⽣が参加した。実験参加者は運動条件か対照条件にランダムに振り分けられ、別の日に残りの条件の実験に参加した。ランニング条件では、最⼤酸素摂取量の50%となるトレッドミルスピード(ややきついと感じる1分当たり心拍数140拍程度)で10分間ランニングしてもらった。対照条件は何もせずに座位安静を維持した。各条件とも実験前後に覚醒度と快適度に関する8項⽬の質問に回答してもらい、またストループ課題を行った。 ストループ課題は、文字の色の情報と文字の意味が持つ情報、それぞれ2つの持つ情報が矛盾している場合、答えを導き出すまでに時間が掛かってしまう現象を利用した課題を設定して行うテスト。課題の回答中には、fNIRSを用いて前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度変化を測定した。 その結果、ランニングは安静に⽐べて覚醒度と快適度を向上させていた。過去の研究ではペダリング運動によって覚醒度は顕著に増加したが快適度は変化しておらず、ランニングはより快適気分を誘発しやすい運動形態である可能性が示された。またストループ課題の回答にかかった反応時間を安静前後とランニング前後で比較したところ、ランニング前後の方が有意に減少していた。 さらにストループ課題回答中にfNIRSを用いて前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度変化を測定した結果では、安静時と比べランニング条件で脳活動(不一致課題の脳活動と中立の脳活動の差)が有意に増加した脳部位が、ペダリングを用いた先行研究と比べて両側の外側前頭前野で活動していることが分かった。(上図参照) スローなランニングは海馬を活性化 今回の実験は中強度という「ややきつい」と感じる強度で行われたが、これよりも軽い運動でも効果がある可能性があると征矢教授は話す。「動物(ネズミ)研究では、スローペースのランニングが海馬を活性化させたり、長期的に続けると海馬の一部の神経を新しく生み出したり記憶力が向上することがわかっている」 今回は大学生・大学院生を被験者にした結果だが、中高齢者にも同様の効果が十分に期待できる。一方で若者と中高齢者とでは脳内機構は異なる可能性があり、征矢教授は今後の検証が必要と考えている。(如月啓) ※メモ 機能的近赤外分光分析法(fNIRS)脳イメージング法の一つ。近赤外光を利用し、血中の酵素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの濃度変化を捉えることで、神経活動によって引き起こされる局所的な脳血流の変化を計測する。

オッチャンは、芸術家だ 《写真だいすき》2

【コラム・オダギ秀】そこらへんをただ歩き回っていると、「隣のオッチャン、ハイカイが始まったぜ」なんて言われる。だけど、カメラを持っていると、徘徊(はいかい)でなく、「おっ、おじさん、芸術づいてきたなあ」なんて言われる。 写真を撮るということは、思い出を記録するとか、何かの証明にするとか、その効用を言うことは多い。だけど、写真というかカメラのいいことっていうのは、そんなことだけでなく、もっともっとある。 感性が磨かれ、若くなる たとえば。少しでもいい写真が撮れないかと、ちょっとしたブラブラ歩きでも、辺りを見回し、おっ、こんな季節になったか、きれいな花が咲いとるなあ、とか、今日の天気は今の季節らしくない、などと、季節感が鋭くなり、それまでは通り過ぎていたものにも眼が向くようになり、感性や気持ちが豊かになる。 たとえば。歩いていると、ほほ~この建物も古くなったな、とか、あれ?ここはこんなに変わってしまったよ、あんな人がいたっけなあ、どうしているかなあ、などと、時の流れや歴史などに興味を深められる。 たとえば。現役を離れたりしていると、どうしても世界が広がり難くなるが、写真を撮る新たな仲間と知り合ったり、興味を持ったり持たれたりすることが多くなり、自然に世界が広がっていく。 たとえば。通りがかりの家の庭にきれいな花が咲いていたり、小さな子が遊んでいたりに出会ってカメラを向けて褒めたりすると、若いママと親しく話せるようになったりする。 たとえば。撮った、できのいい写真をプレゼントしたりすると、すごく喜ばれ、思いがけず、いいことした気分に即なれる。年配になると、気分のいいことしたと思えることなんて、そうザラにはないのに。 たとえば。カメラを持って、いい被写体がないかとウロウロ歩くことで、感性が磨かれ若くなり、体が鍛えられ、心が生き生き元気になる。 たとえば。気に入った写真が一枚撮れるごとに貼っていくアルバムなんか作っていると、そのアルバムに写真が増えるのが楽しみになり、大げさに言うと、目標のある人生の生きがいになる。やがて写真展でも開こうかなんて気持ちが湧いたら、もうワクワクしてたまらないのだ。 「うわぁ、大きなカメラ」 このように、写真を撮る効用は、たくさんある。あなたも、カメラを持って、出かけてみませんか。もっとも、時代は変わっているという経験を先日した。 公園を散歩していたら向こうから5歳くらいの元気な子が来る。で、いつも腰のポーチに入れている小さなコンパクトデジカメを向けた。アマゾンで3,500円で買った中古の小さなカメラだ。それを見たその子がいきなり言った。「うわぁ、大きなカメラ」。そんな時代だ。(写真家、土浦写真家協会会長)

環境省の「自然共生区域」に期待 《宍塚の里山》83

【コラム・佐々木哲美】認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」は、1989年の設立以来、緑豊かな宍塚の里山を次の世代に引き継ぎたいと活動してきました。私も30年間携わっていますが、振り返ってみると、保全活動が続けられたのは次の3点に集約されます。 1つは、宍塚里山それ自体の魅力です。ここに来ると、何かホッとする空間があります。2つ目は、多くの仲間に恵まれていることです。老若男女、様々な経験と知識がある素晴らしい人たちが活動しています。3つ目は、社会正義です。この素晴らしい場所を短期的な視野で開発させてはいけない、という使命感です。 宍塚里山保全の最大の課題は、その大部分が個人所有地だということです。数百人の土地所有者は、収入を生まない土地を抱え税金を払っています。この場所は幾多の開発計画が持ち上がり、頓挫(とんざ)してきた歴史があります。最近でも、太陽光発電所の建設が始まり、事業者の誘いに心が動く所有者の気持ちもわからないではありません。 我々、保全活動団体の最大の欠点はお金がないことです。そのために、里山の価値を多くの方に理解していただくために、地道なボランティア活動をしています。 太陽光発電所や残土処分場は困る 将来的には、法律で公有地化を図り、土地所有者の利益も守る。維持管理は、公社設立や指定管理者制度を採用、雇用の場を提供する。利用方法は、学識経験者にも関わってもらい、学校教育、市民団体、一般市民の活動の場としてもらうーと、私は勝手に妄想しています。 しかし、現在は保全に関わる法律はなく、所有者の意向で利用方法が決まります。そのため、太陽光発電、集合住宅、残土処分場―などに利用される脅威にさらされています。 そんな中で、少し希望が持てる話が持ち上がりました。2021年6月のサミット(主要7カ国首脳会議)で、生物多様性維持のため、2030年までに国土の陸域と海域の30%を保全・保護することで一致しました。これを受け、環境省は同年までに国土の30%以上を国が指定する自然保護区などとする方針「30by30」を示しました。 そのため、環境省は、従来の制度による区域を拡大するとともに、来年度から民間の土地などを生物多様性保全に貢献する場所として認定する「OECM(Other Effective area-based Conservation Measures、自然共生区域)」制度を試行的に導入するとしています。その対象は、寺や神社、企業が所有する山林・里山だけでなく、棚田のような農地も認定対象になり得るとしています。(宍塚の自然と歴史の会 副理事長)

民間売却可能に契約書変更へ つくば市旧総合運動公園用地 12月議会に提案

一括民間売却方針案が示された(11月11日付)つくば市の旧総合運動公園用地(同市大穂)約46ヘクタールについて、土地所有者の市土地開発公社と市が現在締結している契約書のままでは、民間に売却できない恐れがあることから、市は30日開会の12月議会に、土地取得目的を変更する議案を提案する。 同用地は2014年3月、市が債務保証し、金融機関から66億円を借り入れて市土地開発公社が都市再生機構(UR)から買い取った。取得の際、市と開発公社は契約書を締結し、用地の取得目的について、市の事業計画に基づいて取得するなどと限定している。現在の契約書のままでは民間に売却できない恐れがある。 契約書の条文を一部書き換える方法として、2014年2月に市議会で可決された用地取得の議案では取得目的に「総合運動公園を整備するため取得し、その後、事業計画に基づき、土地開発公社からつくば市がその土地を取得する」などと書かれていることから、当時の議案に「ただし、つくば市が取得しないものとした場合、土地開発公社は、市以外の第3者に譲渡できる」などのただし書きを加える案を、12月議会に提案する。 最終日の12月22日までに可決されれば、民間に売却できるよう、契約書を変更する。 68億4000万円はすべて返済 一方、総合運動公園用地の取得費約66億円と利子分の債務保証をしていたつくば市は、今年3月補正予算で約53億円を返済し、さらに今年度当初予算で約9億円を返済した。利子を合わせた残り約6億円について今年3月時点では2022年度に約3億円、23年度に約3億円ずつを返済する計画だったが、1年半前倒し、今年9月補正予算で約6億円を返済し、今年10月までに利子を含めた取得費総額の約68億4000万円をすべて返済した。金融機関に対する借入金は無くなり、市の債務保証も無くなっている。 前倒しして市の債務保証を無くし、さらに12月議会の議決を得て契約書を変更すれば、民間売却に向けた法令上の障壁はなくなる。 議会と市民の意見聞く 売却する場合の価格の目安について五十嵐立青市長は11日、取材に対し「市に損失を与えない簿価(取得価格である66億円)をベースに適正価格で売却する」との方針を明らかにしている。 さらに五十嵐市長は「議会や市民の意見をいただいて議論を積み重ねる」などと表明し、売却スケジュールを示していない。市民の意見は、12月15日までパブリックコメントを実施して意見を聞くほか、12月10日と12日に計3回、大穂交流センターと市役所で住民説明会を開く。議会に対しては、12月下旬にパブリックコメントや住民説明会の結果を報告する。(鈴木宏子)

太陽フレアの情報② 《食う寝る宇宙》98

【コラム・玉置晋】10月29日0時35分に発生した太陽フレアは、「Xクラス」と呼ばれる大規模なものでした。発生後、日本の宇宙天気研究の中核である情報通信研究機構(NICT)から臨時メールが届き、僕はこの大規模太陽フレアの発生を知ったわけです。 すぐさま、人工衛星から得られた太陽の紫外線画像から、爆発の発生場所をチェック。地球から見て、正面よりやや南側の活動領域で発生したことがわかりました。その位置から、地球周辺に影響を及ぼす可能性があるため、情報収集を開始。朝イチで、僕が働く人工衛星運用現場に伝えられるように準備をしました。世界中の研究者がSNS上で情報発信をしていますので、それを参考にしながら。 この時点で、情報発信しているのは研究者など専門家の方々のみです。太陽フレアに伴い、コロナ質量放出(CME)と呼ばれるガスの塊が地球に接近していることは、一般の人は知るよしもありません。最初に報道が出たのは、発生から12時間後のお昼時でした。大手新聞社のウェブニュースに「太陽フレアの発生」と、一般的な影響が掲載されました。この記事がSNS上でシェアされて、ざわつき始めました。 14時15分、NICTからプレスリリースが出て、報道各社が太陽フレア発生を認識。記事が配信され始めました。そして、夕方の各局のニュースでは、「太陽フレア」の発生や電波障害といった影響、翌日に予想されるオーロラの発生などについて解説されました。多く人が太陽フレアの発生を知ったのは発生から約17時間後でした。 CMEは地球南方の宇宙空間を通過 大規模太陽フレアに伴い発生したCMEが地球周辺に到達したのは、10月31日夜でした。ところがこのCMEは、各国の宇宙天気関連機関が出したCME進路予想に反し、地球の南方の宇宙空間を通過していきました。そのため、地球周辺での影響はほとんどみられず、肩透かしでした。 しかし、これで終わりではありませんでした。11月1日、前回より小さい規模でしたが、新たに2発の太陽フレアが発生。それぞれから地球方向にCMEが放たれたのです。(宇宙天気防災研究者)

わらづと納豆作りに挑戦 《県南の食生活》31

【コラム・古家晴美】前回取り上げた「こも豆腐」に引き続き、今回も藁(わら)を使った食品を作ろうと思う。そこで「納豆」に挑戦した。他県の人から見た「茨城」のイメージとして、納豆は切っても切れないものかもしれない。 蒸し大豆を藁苞(わらづと)に詰め、納豆菌を繁殖させた「糸引き納豆」は日本独自のものだ。それまでは、中国から伝来した「塩辛納豆(浜納豆)」が寺院を中心に作られていた。糸ひき納豆の由来譚(ゆらいだん)は、八幡太郎義家をはじめ諸説あり、その出生は明らかではない。 しかし、江戸中期の『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』を見ると、たたいて豆腐と蕪(かぶ)青菜の汁に加え、芥子(けし)を放って食べるとおいしい、と記されている。そして、江戸末期になると、納豆売りの行商が盛んになり、醤油をかけて食べる方法も普及した。 茨城の小粒の納豆が注目されるようになったのは、明治22年(1889年)に水戸線が開通して以降のことだ。販売のための流通手段を獲得した水戸の「天狗納豆」は、現在に至る水戸名物としての地位を確立していく。 なんと納豆の糸が引いているではないか! 総務省の家計調査からも、2016~2020年の都道府県別納豆消費量は、「東高西低」傾向が依然見て取れる。2020年消費量は、東北諸県が上位に食い込み、茨城県は惜しくも5位になった。が、現在でも、納豆好きの県民が多いのではなかろうか。 納豆作りは県内全域で行われてきたが、煮た大豆を藁苞に詰め、発酵する時の寝かせ方は様々なようだ。藁苞を俵に詰めむしろを掛ける、藁苞をもみ殻の中に寝かせる、庭に穴を掘って火を焚いて土を温めてからむしろに包んだ藁苞を入れて土を掛ける―などの工夫が凝らされた。 マンション住まいの筆者には、俵ももみ殻も納屋もなく、先日こたつを処分した後だけに、ハードルの高い作業だった。結局、ひざ下にコの字型に立て掛ける学習用暖房パネルと電子レンジの発酵機能で挑戦した。前者は温度調節に毛布を掛けたり外したりを繰り返したが、結局、安全装置が働き、途中で電源が自動的に切れてしまった。後者は24時間継続して発酵機能を稼働させた。 出来上がった納豆は、匂いと舌で感じる酸味は紛れもなく納豆のものだったが、糸を引くには至らなかったので、成功とはいえない。最後に、藁苞だけでは不安だったので、粉末の納豆菌の力を借りたことを告白せねばならない。1回だけの挑戦だったが、現代人としての己の無力を痛感した。しかし、再度挑戦したい。 と、原稿を書き終わって帰宅したら、なんと納豆の糸が引いているではないか。昼間、暖かかったから、室内に放置したのが功を奏したようだ。やったー。(筑波学院大学教授)

いまどきの遊歩 これからの遊歩《遊民通信》29

【コラム・田口哲郎】 前略 江戸川乱歩がペンネームの元にしたエドガー・アラン・ポーというアメリカの作家がいます。「黒猫」や「モルグ街の殺人」などの推理小説で知られています。ポーは推理小説以外にも小説を書いています。私がバイブルのように思っている作品があります。「群集の人」です。 ロンドンのとあるカフェにいる語り手は、窓の外にある老人を見つけます。なんとも言えない奇妙な魅力を放つ老人を、語り手は追いかける。老人は当てもなく大都会を歩き回ります。さまよいは延々と続くので、語り手は追跡を諦めるというあらすじです。 何が面白いのかと思われるかもしれませんが、これは街を無目的に歩き回る遊歩者像と人間観察家である遊歩者像をズバリ書いた作品ということで、遊歩愛好家の間では隠れた名作となっています。 題名にもある「群集」は大都市だからこそあるもので、群集では個人が大勢の人に紛れます。田舎では個人は目立って紛れることはない。田園風景に人混みはないし、人が一人一人はっきりと分かりますからね。だから、推理小説は大都市ならではの作品だと言われます。犯人が群集に紛れて逃げることができるからです。 それはさておき、遊歩者を自称する私は群集の一人である老人や語り手を見習って、人間観察や街歩きに励まねばなりません。遊歩者というものは、大都市といういわば一冊の書物のさまざまな物語が繰り広げられる舞台を読み解く者なのですから。 ライブカメラとバーチャル 進化する遊歩 しかし、コロナ禍の昨今、そうそう不要不急なのに、街をうろつくわけにもいきません。そこで、便利な文明の利器が登場します。YouTubeです。 YouTubeには各地のライブカメラチャンネルがあり、それを見れば、世界中の今が映し出されます。我が国が誇る首都、大東京には複数のライブカメラがあります。私がよく見ているのは、渋谷のスクランブル交差点と新宿歌舞伎町のライブカメラです。 渋谷の交差点の角のビル2階にスターバックスカフェがあり、交差点を見下ろしながらコーヒーを飲める絶好の場所があります。でも、茨城から毎日通って、ひねもす群集を眺めるというわけにもいきません。コロナ前は遠い場所だった交差点が、今は自室のテレビに映ります。コーヒーを飲みながら、人波を眺めるのは至福のひとときです。 歌舞伎町は夜が面白い。コロナ禍で「焼け野原」になった歓楽街も、徐々に活気を取り戻しています。紅茶を飲みながら、世知辛い不夜城を行き交う人たちの生き様を垣間見る楽しさはなんともいえません。コロナ禍が大都市を変えようとしています。 Facebookが「メタバース」という巨大な仮想現実空間を構築すると発表しました。将来、大都市はバーチャルに入り込むでしょう。そこを遊歩者が歩き回る日も近いかもしれません。そうすれば遊歩者はリアルとバーチャルを渡り歩くのですね。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

冬の足音 冬支度《続・平熱日記》98

【コラム・斉藤裕之】春にはタケノコが出なくて、なかなか口に入らなかった。しばらくして、20年間ほとんど花をつけたことがなかった庭のプルーンの木に、小さな白い花が満開となった。夏は道端にアザミが群れをなして咲いていたかと思うと、クズの花をほとんど見かけないまま夏が終わった。秋になって、金木犀(キンモクセイ)は2度もかぐわしい匂いを放ち開花した。 なんとなく草木の異変を気にしつつ、やがて駅前で年末恒例のイルミネーションを設置する季節となった。 いまさらながら、「アマビエ」のオブジェを作るという。どうせなら、牛久なのでカッパの遺伝子を組み込んでみたらどうかという意見が出た。どちらも水の中で暮らしているので相性がいいのか、なかなかキュートな「カッパアマビエちゃん」になった。作ったばかりで気の毒ではあるが、来年はお役御免になっていて欲しいとの願いを込めて、勝手に「トドメちゃん」と呼ぶことにした。 さて、作業を終えて軽トラで帰宅。家の近くの角を曲がると、フェンスいっぱいに薄水色と赤紫の朝顔が上を向いて元気に咲いているのに驚く。もう11月も半ばを過ぎているのに。それから日暮れが早くなったので、足早にハクちゃんの散歩に出かける。すると、今度は足元におびただしい数のドングリが落ちている。 温かいものでも食べよう 「春は訪れ」「夏空は広がり」「秋の気配」、そして「冬の足音」。季節の到来を日本語は実に豊かに表現する。「冬支度」という言葉もいい。 昔の人はこのころの季節になると、漬物をつけたり、柿を干したりして、冬に備えた。英語では「プリペア」という他にないのだろうが、用意や準備とはちょっと違ったニュアンスがある。旅行は準備、旅は支度。外出は準備、お出かけは支度。どうやら支度はひらがなと相性がよさそうだが、今と違って、冬は支度をしなければならない季節だったということだ。 それにしても、「ころころ」ではなく「ゴロゴロ」と落ちているドングリ。恐らく、この辺りだけでなく、あちらこちらのドングリもパラパラと音を立てて落ちているようだ。その上を避けようもなくゴリゴリと踏んで歩く。人も車もドングリをつぶしていく。「全くおかしな年だ!」と言って済ませていいのか。それとも、すでに始まっている天変地異に気づいていながら、知らぬ顔をするのをやめるべき時か。「お池にはまってさあタイヘン…」 見上げると、枯れ葉が舞い木々も冬支度を始めている。ロマンチックにも見えるが、実は新しい芽が役目を終えた葉を追い落としているのだと思うと、わが身と重なり感慨深げになる。日が落ちるとグッと冷えてくる。温かいものでも食べよう。さて夕餉(ゆうげ)の支度をするか。(画家)

TX茨城空港延伸へ調査着手を 7市議会期成同盟会が再要望

つくば、土浦市など7市議会で組織する「TX(つくばエクスプレス)茨城空港延伸議会期成同盟会」(会長・笹目雄一小美玉市議会議長)はこのほど、水戸市の県庁を訪れ、大井川和彦知事と常井洋治県議会議長に「TX茨城空港延伸に関する要望書」を提出し、実現を強く訴えた。 期成同盟会はつくば、土浦市議会のほか、小美玉、石岡、かすみがうら、行方、鉾田市議会で構成する。設立されたのは2018年5月で、以来、総会開催に併せ、要望活動を展開している。 設立直後の18年11月に策定された県総合計画「新しい茨城への挑戦」では2050年頃の将来像が描かれ、構想図ではTXの延伸ルートの一つに「茨城空港ルート」が含まれている。 同盟会要望運動の根拠もこの一点にあり、「ー終息が見えないコロナ禍による地域経済の低迷を回復させるには(TX延伸は)必要不可欠」と強調。大井川知事と常井議長に▽県総合計画に基づくTXの延伸について、茨城空港への延伸を強く要望する▽県が主体となって、国、関係機関連携による基本調査・研究の早期着手をーと訴えた。 TX延伸問題は県議会でも議論を呼んでいるものの、大井川知事は財源ねん出が難しいと釈明しており、前に進む策を見出せないのが実情だ。(山崎実)

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