身近にある?人生の楽園 《続・平熱日記》83
【コラム・斉藤裕之】斜め向かいのお宅。「ハクちゃん」と名付けた白い犬との散歩から帰ってきたとき、駐車場にバックしている若葉マークの車を見守るお母さんと出会った。
「免許とったんですねえ」「そうなんですけど、娘の運転、怖くて」。車を運転しているのは、小学生のときにうちに絵を描きに来ていた女の子だ。
生活の足しにと、難色を示すカミさんを説得して絵画教室を開いたのは10年ほど前か。そして、この春に3人の小学生が卒業を迎え、最後に残ったひとりが3年生のミーちゃん。ひとりでは寂しかろうということで、この際教室を解散することに決めた。いろんな子がいたなあ。電車オタク、まんが大好き、天才、おしゃべりな男子…。
そういえば、先日、土浦で小さな展覧会を開いたリサちゃんもうちに来ていた子だ。大学で地質や気象を学び、研究のために訪れた日本や世界各地の思い出を絵にしたためて展示していた。元々の才能に加えて、彼女の見たい世界が素直に描かれていてよかった。リサちゃんは、この春から高校の理科の先生になるというが、ぜひとも絵を描き続けてほしい。
ところで、「ミーちゃん好きなテレビはなに?」と聞いたことがある。「…人生の楽園!」「あんた、シブいな!」。確かに、ミーちゃんは絵を描くのも好きだけど、マッチを擦って薪(まき)ストーブに火をつけたり、木をくべたりするのが大好き。ミーちゃんには、この教室は「小さな人生の楽園」だったのかもしれない。
「食べられる粘土細工、ピザ」
コロナの影響も重なってか、都会からやや近郊のゆったりとした環境に生活の拠点を移す傾向があるとか。また若者の間で小屋暮らしや1人キャンプなんてのも流行(はや)っているそうだ。ペストが流行ったときのように、つまり人間回帰、「ルネッサンンス!」的な時代の流れの始まりか。
さて、最後の教室の日。ミーちゃんのリクエストと卒業生の門出を祝って、教室の名物となった「食べられる粘土細工、ピザ」を薪ストーブで焼くことにした。そもそも子供たちに絵を教えようと思ったこともないが、美味しいピザは必ず一度は食べさせた。なんともふざけた絵画教室だった。
こうして、なんとな~く、サイトウちゃんの絵画教室はお開きとなったわけだが、ミーちゃんの心残りは野良だったハクちゃんが懐いてくれなかったこと。
春の始まり。暖かい日差しの中、ハクちゃんと散歩に出かける。「サイトウちゃーん!」「はて、どなた?」。ハクちゃんを優しく撫(な)でるうら若き女性、それはミーちゃん。そんな日が来るといいね、ハクちゃん。楽園は意外に身近にあるのかもしれない。(画家)
車いすから見た世界を描くライター、川端舞さん
「障害者として堂々と生きていきたい」
そう話すのは、重度障害のあるライター、川端舞さん(29)だ。NEWSつくばでコラム「電動車いすから見た景色」を連載、市民記者としても活動し1年が経った。介助者のサポートを得て営む一人暮らしは11年目を迎えた。ありのままの自身の経験や日々の出来事を発信し、障害について考えるきっかけを読者に投げかける。
言語に障害があっても話していい
言語障害のある人は、「(自分は)話さないほうがいい」と思ってしまうことがあるという。自身も言語に障害のある川端さんは、積極的に発言することで、誰もが気楽に話せる社会を作ろうとする。
川端さんは生まれつき脳性まひによる障害があり生活に車いすが欠かせない。手足とともに口の筋肉や舌がうまく動かないことから、思うように発音することが難しい。会話によるコミュニケーションへの悩みを、以前は書くことで補っていた。荷物を出しに行く郵便局や買い物先の商店で、緊張する胸の内を隠しつつ、必要なことを書いた紙を相手に差し出した。話を聞いてもらえないのではないかと心配する言語障害のある人は多いという。だから川端さんは「会話」にこだわる。
「初めから聞き取れないと諦められることが一番辛いです。私が話しているのに、介助者と話し始めてしまう人もいます。『話してるのは私なのに』って思いますよね。聞き取れなければ、気を使わずに何度でも聞き返してもらえたらうれしいです」
群馬でがんばってきた
群馬県出身の川端さんは、周囲のサポートを受けつつ地元の普通学校に通った。教室に障害のある生徒は川端さんだけだった。重い障害のある多くの子どもは特別支援学校や特別支援学級に通学し、一般生徒と分けられるからだ。
「周りに迷惑をかけてはいけない」「友達に手伝ってもらってはいけない」と学校で教師に言われていた。川端さんの言葉を聞いてくれない教師もいた。周りに迷惑をかけたくないから「言語障害のある自分は話しちゃいけない」と思ったし、「障害者は勉強ができないと見捨てられ、普通学校に通えなくなる」と本気で思っていた。
一生懸命勉強し、筑波大学に進学した。筑波大は障害のある学生へのサポートが整うことから母親も勧めていた。進学を機に大学宿舎で一人暮らしを始めた。福祉事業所から派遣される介助者が家事をサポートし、大学では学生同士が支援し合う制度を利用した。ただ、人の手を借りるのが嫌だったから、大学の制度は使わなくなった。「自分のことは自分でやらなければいけない」という考えが、川端さんを縛っていた。
「障害のためにできないことがあるから学習で補わないと、どの会社にも雇ってもらえず、お金も稼げない。つまり社会で生きていけない」と思っていた。大学卒業後は大学院に進学し同大で勉強を続けた。
つくばで出会った自立生活
「なんで一人で食べてんの? そんなの迷惑だからやめろよ」
衝撃的な一言だった。川端さんが現在メンバーとして活動するつくば市の「自立生活センターほにゃら」を大学院時代に訪ねて食事について話した時、重度障害のあるほにゃらメンバーから投げかけられた言葉だ。自立生活センターとは、障害者の生活を支援する当事者団体で、障害者が運営の中心を担う。
それまで川端さんは、スムーズではない自分の手を使い食事をとっていた。時間がかかっても、自分のことは自分でやるべきだと考えていたからだ。だがここでは「できないことは自分でしなくていい」というのだ。大事なことは、自分で行動を決めること。それを介助者に伝えて代わりにやってもらえば、障害者が自分でしたことと変わらない。それが「自立生活」なのだという。そして、こうも言う。
「川端さんが自分で食事をとることで、他の障害者もできないことを自力で無理してやる状況が続いてしまうでしょ?」
真逆の価値観だった。
ほにゃらのメンバーとなった川端さんは、「どんな障害があっても、自分らしく暮らせる社会」をつくる活動に関わり、自立生活する大勢の重度障害者と出会った。健常者の中で生きてきた川端さんにとって、初めてのことだった。
知的障害のある人との出会いは、群馬時代の同級生を思い起こさせた。同級生は特別支援学級に通学していた。普通学級の川端さんは当時「勉強できる自分は、彼(彼女)とは違う」と差別していた。「私は授業についていけないと見捨てられる。見下される側になるという恐怖感を抱いていました」と当時を振り返る。
多様な障害のある人々と出会い「学校の勉強だけがすべてではない」と気付いた。そして、「苦手なことは周囲に手伝ってもらえれば、どんな障害があっても社会で生きていける」と思い至ると、自分の心を縛っていた恐怖感から解放された。
障害当事者として活動に力を注ぐため、大学院は退学した。同じ教室に障害のある子どもとない子どもが一緒にいられる環境こそが、全ての子どもが無条件に「ここにいていい」と安心できる場所だと考える。そんな社会が当たり前の社会にしたいと思い活動を続けている。
自分もお金が稼げると自信がついた
昨年10月、川端さんの取材に立ち会った。その日は車いすに乗る障害者やその支援者ら約40人がつくば市内をデモパレードし思いを訴えた。パレードが終わり、川端さんが参加者にインタビューする。ゆっくり丁寧に質問を投げかけ返ってくる言葉を介助者がノートに書き取っていた。伝わりにくい言葉を介助者が「通訳」することもあったが、川端さんが自分の言葉で対話するのが基本だ。記事は自分でパソコンに打ち込むこともあれば、介助者が代筆することもある。こうして書いた記事は、翌朝にNEWSつくばのサイトで公開された=2020年10月1日付。
記事を書くことで、川端さんの手元に原稿料が入る。ライター業は川端さんにとって、定期的な報酬を得る初めての仕事だ。「仕事を評価してもらうのがうれしいし、自分もお金が稼げると自信がついた」と話す。だが、働き稼ぐという当たり前の営みは、重度障害者にとって簡単なことではない。介助制度の問題が立ちはだかるのだ。
川端さんのような重度障害のある人が社会活動を送るには、介助者の存在がかかせない。だが、現在の公的介助派遣制度は、その利用を就業中は認めていない。だから川端さんは取材中、1時間1200円の介助費を自費で介助者に支払っている。極端な話、お金がなければ働くことができないのだ。現在の制度は、重度障害者から働く機会を奪うという、極めて大きな問題をはらんでいる。
昨年、国は市町村の裁量で就業時の介助者派遣を認めた。だが、さいたま市のように実施する自治体はあるものの、全国的にはほとんどない。ほにゃらはつくば市に実施を呼びかけるとともに、経過モニタリングしている。
コロナ禍でも自分らしく生きる
川端さんの生活に周囲のサポートは欠かせない。人と人が触れ合うことが感染拡大につながる新型コロナウィルスは、生活の根底を揺るがした。感染は自身の健康にも大きな影響する。
「実家に帰るべきだろうか?」
不安とともに、そんな思いが湧いてきた。だが、こう思い直した。
「いや私にはここで築いた生活がある」
つくばに来て11年がたつ。群馬の両親も年齢を重ね体力が落ちた。実家で両親の介助を受けるのは心配だ。そして何より、親元を離れて来たつくばには、友人や地域の人と送る生活と仕事がある。それは自分が周囲と関わり築いてきた、代わりの効かない居場所なのだ。
「住み慣れた街で、いつも通りの生活をしたいと思っています」
コロナ禍にあって川端さんは、そう話す。
そして、ライターとしてこれから伝えていきたいことをこう話す。
「障害者が特別な人じゃなくて、普通の人なんだって思ってくれたらいいなと思ってます。テレビで取り上げられる『頑張っている障害者』ばかりじゃない。私たちも普通の人なんだっていうことを伝えたいと思っています」 (柴田大輔)
➡川端舞さんの記事とコラムはこちら
書評「人新世の資本論」《雑記録》22
【コラム・瀧田薫】斎藤幸平氏著の本書の核心は、旧来のマルクス理解を根底から覆し、エコロジーの視点からマルクスを解釈し直し、そこからさらに進めて、「人新世」(人類の経済活動が地球を破壊する環境危機の時代)を克服する方途、さらには豊かな未来社会に至るための実践論(「脱成長コミュニズム論」)を引き出したことにある。
読後感を一言でいえば、「宮沢賢治にこそ読んでもらいたかった1冊」であるということだ。宮沢と斎藤には時空を超えて共通する一つの思いがある。
すなわち、資本主義が追求する効率、利潤、経済成長を、環境破壊、労働疎外(個人は経済活動を担う歯車と化す)そしてコモン(共同体や共有財)解体の原因であると断じ、格差や生きづらさを生む資本主義社会から脱して、豊かな人間らしい生活と環境を求めようとする、その一点において両者は同じプラットフォーム上にある。
もちろん本書の狙いは、都市の生活や最新テクノロジーを捨てて農耕共同体社会に戻ることではない。21世紀の現実と向き合い、環境危機を克服し、「持続可能で公正な社会」を実現するための唯一の選択肢として、「脱成長コミュニズム」が提唱されているのである。そのことを確認した上で、宮沢の思想を本書読解のための補助線とする方法、その有効性を指摘したいと思う。
「人間と環境」に関する新しい知見
本書に対する批判の代表的な例は、「脱成長を標榜(ひょうぼう)する文明に繁栄などあり得ない」とする主張であろう。それに対する斎藤の反論については、本書を読んでいただくとして、それとの関連で、宮沢における「定常状態」(経済成長のない均衡状態)理解について簡単に触れておきたい。
バリ島は土地が肥沃(ひよく)であったことから、島民は朝夕それぞれ2~3時間働くと、その日の残りは絵画、彫刻、音楽、ダンスなど、それぞれの好む創作活動に当て、そのパフォーマンスを神へのささげものとすることで、日々の安息を得ていたとの事例報告がある。つまり、バリ島共同体をいわゆる「定常状態」に近いものとして理解した例である。
宮沢は、彼の著書「農民芸術概論」、その他において、このバリ島に強い関心を寄せている。ちなみに、井上ひさしは「バリは農業と芸能と宗教の島である。大切なのは、一人一人の人間がそれぞれ農業人と芸能人と宗教人との三つの人格を一身に兼ねていることで、宮沢賢治が見たらおそらく涙を流してよろこんだであろう」(エッセイ「演ずるバリ島」)と書いている。
井上は、1人3役をこなすバリ島人の生き方に、宮沢における「理想の人間像」を重ね合わせていたのだろう。ともあれ、今後、宮沢の思想と斎藤における「脱成長コミュニズム」思想が対比され、そこから「人間と環境」に関する新しい知見が生まれれば、それは21世紀を生きる人々にとってこの上ない贈り物となるだろう。(茨城キリスト教大学名誉教授)
つくば市長の名誉毀損提訴を検証する《吾妻カガミ》103
【コラム・坂本栄】今回も五十嵐つくば市長の名誉毀損(きそん)提訴問題を取り上げます。というのは、前々回の「つくば市長の名誉毀損提訴を笑う」(3月1日掲載)に多くのアクセスがあり、関心の強さを実感したからです。3月の市長会見も、提訴は「表現の自由」に照らして違和感があると問う複数の記者に、五十嵐さんは「(ミニ新聞の市政批判)記事はフェイク(虚偽)だ」と応じ、ホットなやりとりになりました。
市長批判記事は「フェイク」?
この問題の概要、原告=五十嵐さん、被告=ミニ紙「つくば市民の声新聞」発行人・亀山さんのコメントについては、本サイトの記事「つくば市長の五十嵐氏 名誉毀損で元市議を提訴」(2月17日掲載)をご覧ください。五十嵐さんのSNSや訴状によると、提訴理由は、数多くの虚偽の内容を記載し、正しい情報を伝えずに選挙に重大な影響を与えた、ゆがんだ情報による選挙結果は自治体を混乱に陥れる―ということです。
私は先のコラムで、この件について3つの視点を示しました。1つは、政治家たるもの記事には言論で対抗すべきであり、裁判沙汰とは市長らしくない、と。2つ目は、名誉毀損訴状の最初の箇所(総合運動公園用地返還公約の未達を指摘する記事への反論)は明らかに「逃げ」の論理で構成されている、と。3つ目は、「表現の自由」抑制を是とするような訴状の論述は看過できない、と。
以上、おさらいです。以下、記者会見で「フェイク」の例として挙げた「谷田部給食センター建設計画」についての記事が、本当に虚偽なのかどうか検証します。
市長の政治力不足が明らかに
ミニ新聞は「前市長の計画を破棄し、新たに再設計を行い、県からの『補助金なし』に切り替えてしまった」とリポート、給食センターが市の予算だけで建てられたと指摘しました。これに対し訴状は、県に予算を付けるよう要請したが、補助金の交付が認められなかった―と反論しています。つまり、最初から「補助金なし」だったのではなく、結果として「補助金なし」になったという主張です。
いずれにしても「補助金なし」だったことは事実ですから、「フェイクだ」と騒ぐような話ではありません。それよりも、訴状の論述によって、五十嵐さんには(県からおカネを引っ張ってくるという)市長に求められる政治力の不足が明らかになりました。訴状で自ら名誉を毀損してしまい、何か冗談のような話です。
また記者会見では、同様の提訴を前市長も行っていたと、前例があることを強調しました。確かに、病院経営者だった前市長が、市長時代に市営病院を廃し、自分の病院に患者を誘導した―といった趣旨のビラがまかれ、前市長は発行者を名誉毀損で訴えました。しかし、その内容は市政を利用して個人的利益を図ったという中傷であり(判決は前市長側の勝訴)、市政の出来不出来を点検したミニ新聞の記事とは別物です。(経済ジャーナリスト)
終盤追い上げも届かず アストロプラネッツ ホーム開幕戦
プロ野球独立リーグのルートインBCリーグが開幕した。茨城アストロプラネッツは4日、水戸市見川町のノーブルホームスタジアム水戸でホーム開幕戦を迎え、栃木ゴールデンブレーブスに4-5で敗れた。追い掛ける展開から9回裏に1点差まで詰め寄ったが、あと1本が出なかった。
開幕投手を務めたのは1年目の濱矢廣大。昨年、横浜DeNAベイスターズで戦力外となり、茨城から再起を目指す28歳だ。この日は7回を投げて2安打に抑えたが、6四死球と制球が乱れた。四球や野手のエラーで走者を出し、許した安打が2本とも適時打になるという展開だった。「栃木は好打者ぞろいなので、際どいところを攻めていかないと打たれる。小さなミスを修正し、精度を高めていきたい」と試合後、次の登板での挽回を誓った。
4点を失って迎えた8回裏、ようやく打線が奮起を見せた。池田瞳夢(在籍3年目)と上田政宗(四国リーグ香川から移籍)の連続安打で一・二塁とすると、宮本のこの日2本目のヒットが左中間を抜き、2者生還。
9回表にもう1点を失うが、茨城の勢いは衰えない。山中堯之(つくば秀英高、共栄大卒)と池田貴章(四国リーグ高知から移籍)の安打から満塁押し出しで1点を奪い、さらに吉本光甫(霞ケ浦高卒)の二遊間を破る適時打で1点差に迫る。だがここで後続を断たれ、結果4-5で試合終了。
今季主将を務める大場駿太は「いい投手の投げ合いで、こういう試合では1つのミスが敗因になってしまう」と振り返り、「序盤劣勢でも気持ちが落ちず、終盤で力を見せられた。ここから逆転できるチームになっていければ」と、昨季との違いをアピールした。高校の後輩である吉本の活躍については「高卒1年目だが練習生から上がってきた。そのハングリー精神は尊敬している」と讃えた。
初采配となったジョニー・セリス監督は「開幕の緊張はあったがいい試合ができた。最後は逆転したかった。次はもっとバッティングを見せたい。リラックスしてエンジョイベースボールをすれば結果が出せると思う」と話した。(池田充雄)
先生はセラピスト つくばの陶芸工房に新学期
休止していたつくば市吉瀬の陶芸工房に、再び火がともることになった。4日から体験教室をスタートさせたKISE(キセ)ポッタリィ(根本陽子代表)。新任の先生はアートセラピー講師でもある陶芸作家、大久保シェリルさんらで、ウィズコロナの時代に、粘土と向き合う豊かな時間を提供する。
体験陶芸は手びねりがメーン。初心者向きにコイル(ひもと作り輪に積んで器状にする)、ピンチ(粘土の塊をくりぬく)、スラブ(板状の粘土を成形する)についてそれぞれ手ほどきする約2時間の工程。経験者向けにロクロのコースも用意した。
体験の後、陶器は乾燥期間をおいて素焼きし、釉薬(ゆうやく)を塗って仕上げるまで3~4週間程度かけて制作者の元に届く。毎週土・日曜に午前・午後の2回(要予約)開催するほか、会員になると毎週水曜日の午後2時間程度、工房を利用できる。
代表の根本さんによれば、「コロナ禍の1年、心静かに土と向き合う趣味として陶芸熱が次第に高まるのを感じた。約4年休眠させてしまった施設(陶芸舎)があったので、まずは初心者向け、少人数制の体験陶芸から再開させることにした」という。
ドリームズ カム トゥルーの場所
体験陶芸の指導には3人の女性講師があたるが、中心になるのは大久保シェリルさん。かつて陶芸舎の施設を利用し制作に励んでいたこともあったが、土浦市宍塚のアトリエに拠点「HEARTH(ハース)」を構えて活動するようになった。
米国ネブラスカ州出身、ニューメキシコ大学の修士課程で美術教育とアートセラピーを専攻していたとき、筑波大学出身のご主人と出会い、結婚して来日した。主に英語講師として働き日本在住は28年になるが、近年では筑波大学で「アートセラピー入門」を担当する。患者が描画などの芸術表現を通じ、心身の健康を取り戻す療法の日本では数少ない専門家だ。
その陶芸との付き合いは、高校生のときにロクロに触って以来で40年になる。最近は「練り込み」という技法に興味を持って作品を作っているが、身近に使える窯を探して陶芸工房再開の話を聞き再訪した。「ここにはスラブローラーっていう成形機もあれば、木から切りだした長いテーブルもある。何でもそろっていて、まさにドリームズカムトゥルー(夢は叶う)の場所」と講師を買ってでた。
大久保さんは「粘土に触っていると地球の柔らかさを感じる」といい、体験陶芸を通じその気持ちよさを多くに伝えたいと語る。
体験陶芸の開催日程や料金など詳細はKISEポッタリィのホームページまで。講師や生徒の作品を展示、販売するオンラインストアも設けている。(相澤冬樹)
住民意向は概ね好意的 独自の「つくばアプリ」開発 スーパーシティで説明会
国が進めるスーパーシティ国家戦略特区の指定を目指しているつくば市は3日、高齢化率が高い小田と宝陽台の2地区を対象にスーパーシティ構想の住民説明会を開催した。2地区とも、住民の受け止めは概ね好意的だった。説明会で市は新たに、市独自の「つくばアプリ」を開発し、同アプリを使って、インターネット投票や自家用車に頼らない移動支援サービスなどを展開する計画を明らかにした。
小田と宝陽台地区は、国の指定を受けた場合、AIやビッグデータなど先端技術を活用した事業が展開される市内4地区のうちの2カ所。住民説明会の開催など住民意向の把握は、国の応募要件の一つとなっている。
小田地区の説明会は約30人、宝陽台地区は約50人が参加した。五十嵐立青市長、森祐介政策イノベ―ジョン部長のほか、同構想全体統括者(アーキテクト)の鈴木健嗣筑波大教授らが説明にあたった。
自動運転一人乗り電動車(シニアカー)などを活用した移動支援のほか、自宅で遠隔診療を受け処方薬を移動スーパーで受け取る事業、普段の食事や運動習慣、病院の受診歴などのデータを提供し、その人に合った食材の自動配送を受ける事業、災害時に避難所が開設されたかや現時点の収容人数などが分かる避難所・被災状況の可視化事業などについて説明があった。
小田地区では参加した住民から「周辺部は幹線道路以外、整備されておらず、段差があったり、ぬかるんだり、道路から自宅の玄関まで距離があったりする。一人乗り電動車は安全に走行できる車両か」などの質問が出た。宝陽台では「電動車は一人乗りだが、(介助が必要なため)2人でないと行動できない人がいる。2人乗りにはできないか」「スマホやタブレット端末は貸し出すのか」などの質問や意見が出た。「避難所の場所の周知が不十分」「防災無線が何を言っているのか分からない」など日ごろの市政に対する意見も出た。
一方、スーパーシティに指定されれば、データ連携基盤を通して複数の分野で住民のデータが共有されることから、個人情報保護に関する質問も出された。質問に対し市は「個人情報の保護やプライバシーポリシー、倫理面での配慮も事業者に求めていきたい」などと答えるにとどまった。
国に応募するにあたって市は、個人情報保護やサイバーセキュリティ確保のほか、実証実験やサービス実装のスケジュール、事業を実施する主要な事業者候補、事業の費用や負担する主体、事業を実施した場合の経済的社会的効果などを説明しなければならないが、この日の説明会で、住民への説明はなかった。
市は、スーパーシティ特区に採択されれば、それぞれの地区でどのような事業を展開するか、地区住民による区域会議で詳細を決め、基本計画を策定するので、その際に説明したいとしている。合わせて住民投票や自治会または議会などでの決定など、住民の意向確認も求められる。
「つくばアプリ」今年度に利用開始
新たに開発する「つくばアプリ」については、多分野のデータを共有するデータ連携基盤の開発と合わせて、つくばスマートシティ協議会が開発している。2021年度中に一部利用できるようにする予定で、スマートシティ構想のサービスが利用できるようにするほか、4地区以外の住民も利用できるよう、例えば、子育て世代の場合、保育所の入所手続きを知らせたり、予防接種の接種券をアプリで配信など、その人に合った市の情報を発信する機能を備えるという。
スーパーシティは4月16日までに国に応募する。採択されるのは5自治体程度で、結果は6月ごろ出されるという。現時点で25~30自治体くらいが応募するとみられており、倍率は5~6倍になる。(鈴木宏子)
➡スーパーシティの過去記事はこちら
「混迷する世に立ち向かえる力付けて」筑波学院大学で入学式
筑波学院大学(つくば市吾妻)で3日、入学式が催され、2021年度の新入生161人が緊張した面持ちで式典に臨んだ。
望月義人学長は、4月から経営情報学部に国際教養クラスを新設することに触れ、大学で身に着ける教養について「本を読む、ゼミや卒業研究、地域交流や友人たちとの交流などを通じて、ベースとなる教養をまず身に付けてほしい」と話した。
さらに海外の国々では軍隊とデモ隊が衝突するなど国際情勢が揺れ動いていること、日本国内でも新型コロナ感染拡大の終息にめどがついていないことに触れ「混迷する世の中の動きに我々はただ茫然と立ち尽くすわけにいかない。確かな教養力に根差す対応力を発揮するため、自身の全人格を賭けて立ち向かえる力を付けていただきたい」と式辞をのべた。
橋本綱夫理事長は「161人全員が、筑波学院大学で学んでよかった、最高の4年を過ごすことができたと思えるように教職員全員が支援をしていく。最高の4年を送れるように、自分の頭で行動して考え、相互にいい影響を与え合っていただきたい」とあいさつした。
これを受けて、新入生代表で福島県須賀川市出身の鈴木瑞穂さん(清陵情報高校卒)は「東京家政学院の建学の精神、KVA(知識の啓発、徳性の涵養、技術の錬磨)を継承した筑波学院大学で、知識・徳・技術を体得し、豊かな個性と知性を磨き、社会に貢献できる人間として羽ばたけるよう精進したい」と宣誓した。
新入生161人のうち留学生は52人。式典は、新型コロナ感染防止のため新入生と教職員のみで行われ、保護者の出席はなかった。新入生は入り口での検温と手指のアルコール消毒を行ってから入場、1席ずつ開けて着席し、会場は換気のため窓を開けた。(伊藤悦子)
英教育専門誌が見解発表 外国人学生数問題 平行線のまま 筑波大
筑波大学の教職員有志でつくる「筑波大学の学長選考を考える会」(顧問・指宿昭一弁護士)が、「(同大は)指定国立大学法人の申請にあたって、水増しした外国人学生数を文部科学省に報告していた」と指摘している問題で、世界版と日本版で異なる外国人学生比率を掲載した英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」(英タイムズ紙発行)は3月18日、この問題に対する見解(ステートメント)を発表した。
見解は「THEは筑波大学と共同で、世界大学ランキングに提出されたデータを理解し、今後のデータにどのような学生を含めるべきか提案するために作業を行った。私たちは、今後提出されるデータが我々の公表している定義に沿った一貫したものになると確信している。我々は今回の結果として筑波大学のランクに重大な影響が生じることはないと考えている」とした。
見解に対し、考える会は「THE社が、筑波大学に対し、定義上含めるべき学生のみを外国人学生に含めるよう勧告したことを明らかにした」ものだと述べた。
同大は昨年10月、指定国立大学法人に指定された。考える会は、指定国立大学法人の申請にあたって、「外国人学生数を水増しした」などと指摘、永田恭介学長はその責任を取るべきだとして、3月23日、萩生田光一文部科学相宛てに「次期学長に選出された永田恭介学長を再任用しないよう」に求める要望書を提出した。
他方、筑波大は「THEに提出した外国人学生比率の計算方法には大きな問題はなかった」との姿勢を現在まで崩していない。
問題となっているのはTHEに掲載された外国人学生比率(外国人学生の人数を全学生数で割り100を掛けた値)だ。世界版では同大の外国人学生比率は20%だが、日本版では12.60%で、実に7.4%もの違いがある。
考える会は「世界版においては本来含めるべきではない種類の学生を算入することによって、恣意的に外国人学生の比率を多く見せようとしているのではないか」と指摘する。
一方、同大学長補佐室長の池田潤教授(大学執行役員)=当時=は「最大の差を生み出しているのは『データの報告形式の差』。例えば、世界版では外国人学生の総数を報告し、日本版では学年別の人数を報告する。この際、学年という考えを持たない交換留学生が日本版からは漏れてしまう。形式の差がある以上は、数字上の差が出るのは当然のこと。恣意的な判断によるものではない」と反論した。
大学側の主張に対し考える会は「大学が示した計算根拠の表は、いかにして恣意的な水増しを行ったのかを丁寧に説明しているように読める」と批判する。「THEはフルタイム(通常のカリキュラムを受ける学生)ではない学生については、フルタイムの学生と比して数値を減ずることとしている。しかしながら筑波大学は単位の取得が出来ない『研究生』や他大学に所属をする大学院生で筑波大学では研究指導を受けるのみの『特別研究学生』を1人分として計算に入れている。これはTHEの示す基準に則っているとは到底言えない」と指摘する。
考える会が3月23日に文科相に提出した要望書は、THEのステートメントを受けたもの。要望書では「学長選考会は永田学長を『人格が高潔で、学識が優れ』『国立大学法人筑波大学の卓越性を高めることができる』として再選したが、その決定の正当性は失われているのだから、再選は適当ではない」と述べている。(山口和紀)
◆FTE換算について たとえば、通常4年で取れる学士を8年かけて長期履修し取得するような場合には、0.5人と換算するべきであるとされる。このように、パートタイム学生の数をフルタイム学生の数に相当するように標準化することを、FTE(Full-Time Equivalents=フルタイム等量)換算と呼ぶ。
1月以降インフルエンザ感染者ゼロ つくば・土浦保健所
インフルエンザの感染者が今シーズン、激減している。つくば・土浦保健所の定点報告では、今年1月4日から3月21日(第1週から11週)までの感染確認者はゼロだった。一方、昨年同期間の定点報告数は、つくば保健所が1543人、土浦が1592人だった。
つくば保健所の入江ふじこ所長は「新型コロナウイルス感染症の予防対策として実施されているマスクの着用や手洗い、手指消毒が、インフルエンザの感染者減少にも影響していると考える」とし「新型コロナの水際対策の強化により、通年でインフルエンザが流行する亜熱帯地域からの渡航が制限されているため、流行が起きにくくなっていると思われる」と話した。
インフルエンザの定点報告は各保健所が所轄する定点医療機関からの報告によって行われる。定点医療機関はつくば保健所管轄内で11施設、土浦保健所は11施設がそれぞれ指定されている。1月4日から3月21日まで、つくば・土浦保健所の定点医療機関で、インフルエンザの感染者が全く出ていない。
今年、全国で1月4日から3月14日(第1週から第10週)までに定点報告された患者数は555人。昨年の同期間(2019年12月30日から2020年3月5日、第1週から第10週)の定点報告数は全国で55万0752人だったから、前年のわずか0.1%だ。厚生労働省は、この時期までインフルエンザが流行入りしないのは、現在の方法で調査を始めた1999年以降初めてだとしている。
例年インフルエンザは11月下旬から12月上旬にかけて流行が始まり、1月下旬から2月下旬にピークを迎え、3月頃まで流行が続く。しかし、新型コロナの感染が拡大した今シーズンは、様相が一変した。(山口和紀)
