木曜日, 7月 7, 2022
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身近にある?人生の楽園 《続・平熱日記》83

【コラム・斉藤裕之】斜め向かいのお宅。「ハクちゃん」と名付けた白い犬との散歩から帰ってきたとき、駐車場にバックしている若葉マークの車を見守るお母さんと出会った。

「免許とったんですねえ」「そうなんですけど、娘の運転、怖くて」。車を運転しているのは、小学生のときにうちに絵を描きに来ていた女の子だ。

生活の足しにと、難色を示すカミさんを説得して絵画教室を開いたのは10年ほど前か。そして、この春に3人の小学生が卒業を迎え、最後に残ったひとりが3年生のミーちゃん。ひとりでは寂しかろうということで、この際教室を解散することに決めた。いろんな子がいたなあ。電車オタク、まんが大好き、天才、おしゃべりな男子…。

そういえば、先日、土浦で小さな展覧会を開いたリサちゃんもうちに来ていた子だ。大学で地質や気象を学び、研究のために訪れた日本や世界各地の思い出を絵にしたためて展示していた。元々の才能に加えて、彼女の見たい世界が素直に描かれていてよかった。リサちゃんは、この春から高校の理科の先生になるというが、ぜひとも絵を描き続けてほしい。

ところで、「ミーちゃん好きなテレビはなに?」と聞いたことがある。「…人生の楽園!」「あんた、シブいな!」。確かに、ミーちゃんは絵を描くのも好きだけど、マッチを擦って薪(まき)ストーブに火をつけたり、木をくべたりするのが大好き。ミーちゃんには、この教室は「小さな人生の楽園」だったのかもしれない。

「食べられる粘土細工、ピザ」

コロナの影響も重なってか、都会からやや近郊のゆったりとした環境に生活の拠点を移す傾向があるとか。また若者の間で小屋暮らしや1人キャンプなんてのも流行(はや)っているそうだ。ペストが流行ったときのように、つまり人間回帰、「ルネッサンンス!」的な時代の流れの始まりか。

さて、最後の教室の日。ミーちゃんのリクエストと卒業生の門出を祝って、教室の名物となった「食べられる粘土細工、ピザ」を薪ストーブで焼くことにした。そもそも子供たちに絵を教えようと思ったこともないが、美味しいピザは必ず一度は食べさせた。なんともふざけた絵画教室だった。

こうして、なんとな~く、サイトウちゃんの絵画教室はお開きとなったわけだが、ミーちゃんの心残りは野良だったハクちゃんが懐いてくれなかったこと。

春の始まり。暖かい日差しの中、ハクちゃんと散歩に出かける。「サイトウちゃーん!」「はて、どなた?」。ハクちゃんを優しく撫(な)でるうら若き女性、それはミーちゃん。そんな日が来るといいね、ハクちゃん。楽園は意外に身近にあるのかもしれない。(画家)

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