月曜日, 4月 6, 2026

付属中併設は泣きっ面にハチ 【つくば市に県立高校新設を】㊦

今春、土浦一高に付属中学が併設され、高校入試の募集人数が削減された。つくば市近隣の竜ケ崎一高(2020年度から)、水海道一高、下妻一高(いずれも22年度から)などでも次々と付属中が併設され、高校入試の募集人数が削減される。 つくば市内に全日制の県立高校新設を求めて市議会に請願している市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」代表の片岡英明さんは「県立高校の付属中設置による募集枠減少は、もともとあったつくば市の県立高校問題を新たな事態に押し上げ、つくばの子どもたちや保護者にとっては泣きっ面にハチの状況になる」と憂慮する。 土浦一高の付属中併設が発表された19年、つくば市議会は「つくば市の児童生徒数の急増に対して、土浦一高の門戸を狭くすることは、一部生徒のみならず、つくば市全体の生徒に影響を及ぼす」などとして、高校の募集規模を当面維持するよう求める意見書を知事らに提出した。意見書では「近年、つくば市から県外の私立中学への進学者も1割を超え、県外への生徒流出に拍車をかける」と懸念を表明したが、知事の耳には届かなかった。 私立に定員増 県全体の子どもの数が減少し県立高校の再編が進む中、急増するつくば市の生徒の高校進学を支えてきたのは、私立高校だ。片岡さんによると、県は以前は私立高校の定員厳守を求めていたが、これを緩め、19年からは私立の定員増を認めるようになった。19年度から20年度に増えた県内の私立高校の増加定員の合計は575人。そのうちつくば市近隣では常総学院が105人増、土浦日大が100人増、霞ケ浦が50人増、秀英とつくば国際が40人増、江戸川学園が35人増、茗渓が10人増えたという。 片岡さんは「私学の教育に魅力を感じて入学する判断は大事にしたい」としつつ、「県は、つくば市の小中学生の急増を、私学の定員増と、生徒・保護者の負担増でしのいでおり、公教育の役割とは何かを改めて考える必要がある」と指摘する。 既存校の定員増、通学の利便性増、市内に新設を こうした状況の中、県は県内を12のエリアに分け、つくば市を含むエリア10(つくば、牛久、常総、守谷、つくばみらい)では2学級増が必要だとして、23年度からつくば工科高校を2学級(科学技術1学科、1学級標準40人)増やす。 これに対し片岡さんは、県平均の中学3年生の生徒数に対する全日制県立高校の募集定員は76.3%であることと比べると、つくば市だけで868人、エリア10全体に広げても626人不足しており、まだまだ不十分だとして、具体策を提案している。 つくば市内の県立高校は▷竹園高校の定員を2学級増やす▷23年度から2学級増となるつくば工科にさらに普通科を2学級増やす▷全日制が廃止された茎崎高校に全日制の普通科を4学級を復活させるーなどだ。 市外の近隣の県立高校に対しても▷土浦一高の募集定員を減らさず6学級のまま維持する▷伊奈高校の定員を2学級増やす▷牛久栄進高校の定員を2学級増やす、など提案する。 通学の利便性向上も提案している。▷スクールバスの運行やコミュニティバス「つくバス」の路線見直しなどにより筑波高校、守谷高校の通学利便性を高める、などだ。そして、つくば市内のつくばエクスプレス(TX)沿線に県立高校を新設することを求める。 つくば市の子どもたちや保護者が直面している県立高校問題の解決に向け、まず「市民が課題を共有し、声を上げることが大切ではないか」と片岡さんはいう。(鈴木宏子) 第1部 終わり

【つくば市に県立高校新設を】㊤ 市民団体が市議会に請願 全会一致で採択へ

つくば市内に全日制の県立高校を早急に新設することなどを求める意見書採択の請願を、元高校教員や父母らでつくる市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)が9月議会に提出している。10月1日の市議会最終日に全会一致で採択される見通しで、知事らに意見書が出される。 請願はほかに、つくば市と周辺の既存の県立高校の定員増を行うこと、既存校の通学の利便性を高めることを求めている。 6人に1人 代表の片岡さん(71)らがつくば市の中学生の高校受験の実情を調査したところ、2020年の県立高校入試では、中学3年生1928人のうち、市内の県立高校に入学したのは6人に1人の338人(17.5%)だった。ほぼ半数の895人(46%)が市外の県立高校に入学し、695人(36.1%)が私立高校などに通っていることが分かった。 子育て世帯の人口が急増しているつくば市では、特に中間の県立高校がないことが課題だと指摘されてきたが、「6人に1人」という数字が明らかになったのは初めてだ。 片岡さんは「調べて、自分でも驚いた」と話す。「子どもたちや保護者から『つくばは学園都市なので、子どもの教育が充実していると思っていたが、市内にはどうして県立高校がないの?』という疑問が出ている」とし、「気がつくとつくば市は、15の春に泣く学園都市になっている」と指摘する。 募集定員3分の1に 片岡さんによると、つくば市内の全日制県立高校は2008年以降、6校から3校に減り、募集定員が3分の1に減ったことが要因だ。一方で県全体の子どもの数が減少し続ける中、つくば市は増加を続け、昨年は小中学生の数が水戸市を抜いて県内一となった。 市内の県立高校は、つくば市が誕生した1987年は6つの全日制校があり募集定員は41学級(1学級標準40人)あった。その後、2008年に並木高校(8学級)が全県対象の中高一貫(募集は4学級)の中等教育学校となり、高校入学は行われなくなった。09年には上郷高校が石下高校と統合し、事実上廃校となった。12年には茎崎高校が定時制となった。 県立6校のうち3校で全日制の募集が行われなくなった結果、つくば市内の全日制県立高校の募集定員は、つくば市が誕生した1987年度は6校41学級1927人だったのに対し、去年の2020年度は3校15学級600人と3分の1以下に減った。片岡さんは「特に並木高校がなくなった影響が大きい」とする。 これに対し県内の他市町村をみると、2000年から2020年の20年間で削減された全日制県立高校の学級数は、水戸市は1.9%減にとどまり、日立市は21.4%減、土浦市は20.6%減にとどまっていた。つくば市の県立高校の学級数は61.5%減だ。 現在、隣接の土浦市や常総市は、市内の中学3年生の数より、県立高校の募集定員の数の方が多い。つくば市には6人の1人の募集定員数しかない。 片岡さんは「つくば市内の多くの中学生が、市外の県立高校や私立高校に入学し、通学費用や送迎などで生徒や保護者の重い負担となっている」とする。(鈴木宏子) 続く

芸術の秋始まる 《令和楽学ラボ》15

【コラム・川上美智子】茨城県芸術祭美術展覧会(県展)が10月2日(土)~17日(日)、茨城近代美術館で始まります。新型コロナウイルスの感染下にあって開催が危ぶまれていましたが、デルタ株も沈静化の方向で、無事開催の運びとなります。昨日、自分の作品の搬入を終え、発表の場があること、ありがたく思っています。 振り返ると、第23回国民文化祭茨城大会(いばらき2008)の実行委員会で、陶芸家の荒田耕治先生とご一緒したことがご縁で、先生の教室の生徒になり、それから毎年、県展と水戸市展には欠かさず出展し続け、今日に至っています。かれこれ、陶歴も13年。家の中には所狭しと、10キロの大型作品が30点余り鎮座しています。 県展で2回、水戸市展で1回、賞も頂戴し、いつか個展をやりたい、が夢ですが、60歳からのスタート、夢がかなうかどうかわかりません。荒田先生とは、実行委員としての出会いが初めてでしたが、私が結婚し茨城に移った1970年の笠間佐白山の陶器市で目に止まった、黒釉(こくゆう)彩のコーヒーカップセットを購入した時にお名前をインプットしていました。 今も、陶芸に興味をもたせてくれたそのカップは、マイセンやロイヤルコペンハーゲンのカップと並べて大切に飾ってあります。 陶芸の良さは、作品作りそのものが集中力と持続力をもたらしてくれる時間になることです。日頃のストレスフルな生活を忘れて、ひたすら土をこね、器の表面をきれいに仕上げる手仕事に傾注できることにあります。手指を動かすと、脳の感覚中枢や運動中枢の血流が10%くらい上がり、脳の広範囲の神経細胞が活性化すると言われています。 さらに、手順や段取りを考える、形を創造するなどの高次機能も発達させ、日頃と違う脳の使い方をさせてくれます。高齢者の認知症予防に効果があるため、介護領域ではリハビリのための陶芸療法という言葉も生まれ、高齢社会にピッタリの活動と言えます。 脳の発達や創造性を育てる粘土遊び また、幼児の粘土遊びも、手指の発達を促し、脳の発達や想像性と創造性を育てるのに効果があり、保育園などの教材としてお道具箱に納められています。男の子は恐竜を、女の子は食べ物と、性差を感じますが、集中して好きなものを作っています。 勤務する保育園ではアート活動に力を入れており、年長さんのクラスには、筑波大学の直江俊雄教授の研究室による絵画活動を導入しています。当方も幼稚園の頃から絵の教室に通い、小学校で大型の油絵を描いていた経験から、幼少期のアート活動が生涯のアートへの関わりにつながることを実感しています。 環境を整え、いろいろな技法を提供するのは園側の仕事ですが、子どもたちが自由な発想で描くこと、創ることを大事にして、多くの機会をつくりたいと考えています。 県内では、芸術の秋に向け、県展のほか、笠間陶芸大賞展、県近代美術館企画展、天心記念五浦美術館企画展など、展覧会が繰り広げられます。新型コロナ禍での巣ごもり生活を少し開放して、アートで癒やされませんか。(みらいのもり保育園園長、茨城キリスト教大学名誉教授)

通常登校を再開、時短営業など解除 10月1日から

国の緊急事態宣言が30日で解除されるのに伴って、県内では10月1日から、行動制限の要請が順次、解除される。 大井川和彦知事の27日の発表によると、リモート授業と分散登校が行われている学校は10月から、通常登校・通常授業を再開する。部活動や学校行事も感染対策を徹底した上で実施できるようになる。ただしコロナが不安で登校できない児童・生徒に対してはリモート授業を引き続き行い、欠席扱いはしない。 図書館や美術館を除き休館していた県の公共施設は、10月からすべて再開する。 午後8時までの時短営業及び酒類の提供終日停止としていた飲食店や大規模集客施設も、感染対策ガイドラインの遵守を要請した上で、10月から通常の営業を再開できる。 ただし大規模イベントのみ、解除後1カ月間程度の10月中は5000人以下または定員の50%以内とし、11月以降は人数制限を行わないとした。 緊急事態宣言の解除に伴って県は、厳しい状況にある観光事業者や飲食店を支援するため10月から、県内の宿泊旅行を割引で利用できる「いば旅あんしん割事業」と「GoToイートキャンペーン」を再開する。「いば旅」の支援対象者はワクチン2回接種済み者またはPCR検査など陰性の県民に限定する。 県内の現在の感染状況は、20日から26日までの1日平均の新規感染者数は44.7人と第5波のピーク時(8月23日)の7分の1に減少した。市町村別の人口1万人当たりの新規感染者数は、つくば市が1.48人と1.5人を下回った。一方、土浦市は2.83人。病床稼働率は現在、第5波のピーク時の3分の1、重症病床稼働数は2分の1に減少しているという。

ワンコインで保護犬支援 #推しペットプロジェクト 筑波大生が立ち上げ

保護犬を気軽に支援できる仕組みをつくりたいと、筑波大学の女子学生3人が、ワンコイン(500円)から簡単に支援できるプロジェクトを立ち上げた。 「#推しペットプロジェクト」(浜野那緒代表=芸術専門学群4年)と名付けた。SNSで公開された保護犬の画像や動画を見て気に入った保護犬を選んでもらい、ワンコインを寄付すれば、選ばれた保護犬の画像をプロジェクトが拡散する。寄付した支援者にも画像をシェアしてもらう。寄付金は保護犬の薬代などに活用する。 代表の浜野さんは「保護犬を可視化し身近な存在として捉えてもらうことが大きな目標。そのためにSNSを通じて、保護犬を『推し』として応援できる仕組みを作ろうと考えた」と話す。 「推し」はアイドルグループなどに用いられている言葉で、「特に好きなもの」「他の人にも勧めたいほど好き」という気持ちを表す。「推しメン(応援している好きなメンバーの意味)」などと使われる。 プロジェクトのSNSでは「キドックスカフェ」(つくば市吉瀬)で保護されている犬たちの写真や動画を発信している。NPO法人キドックス(土浦市大畑、上山琴美代表)が運営する、保護犬らと触れ合うことが出来るカフェだ。 浜野さんらは、誇張のない保護犬のありのまま姿の発信を目指している。「たくさんの人にSNSを通じて保護犬たちを見てもらうのが最初の目的。『推し』が見つかったら、ホームページ(HP)からワンコインで支援することが出来る。寄付をしたという内容でSNSに投稿するのはハードルがあるが、『推し』の支援のシェアは気兼ねなくすることができるのではないか」と浜野さん。 HPから集まった支援金はキドックスに寄付され、保護犬の病気や感染症予防のためのの医療費やえさ代などとして用いられる。ただし、プロジェクトはキドックスとは別に独立して行っている。 コロナ禍のペットブームきっかけ プロジェクトを立ち上げたのは去年の夏。クラウドファンディングを通じてHPの制作費や運営費を募り、約7万3000円の支援金を集めた。 きっかけについて浜野さんは「昔から保護犬に興味があったというわけではなかった。コロナ禍で安易にペットを飼ったものの飼育が困難となり、手放してしまうケースが相次いでいるというニュースを見た。そのような社会的な課題に対しアクションを起こす人たちの存在を知り、調べるようになった」と話す。一方で「保護活動は、SNSで一部の過激な発信をする人だけが切り取られ、保護団体や保護犬に対し距離を取ってしまっている人が多いのではないかと感じられた」と語る。 そこで、保護犬支援の心理的ハードルを下げるためにSNSを活用するアイデアを思い付いた。浜野さんは、友人の和田すみれさん(芸術専門学群4年)と平石あすかさん(人文学群3年)に話をし、一緒にプロジェクトを立ち上げることになった。 「SNSはその特性からペットの『かわいい』部分だけが拡散される。一方で保護犬は『かわいそう』な印象の方が届きやすい。保護施設を訪問する中で、『かわいそうな存在』として保護犬と距離をとるのはこちら側の勝手な都合でしかなかったことに気づいた」と浜野さんは語る。(山口和紀) ◆プロジェクトのHPはこちら。インスタグラムはこちら。

宇宙天気キャスター 《食う寝る宇宙》93

【コラム・玉置晋】9月19日、地球に帰還した宇宙船「クルードラゴン」から降り立った4人は全員が民間人でした。民間人だけで宇宙旅行を行ったのは世界で初めてです。宇宙旅行産業の始まりを告げるものというコメントもあります。後の時代、2021年は宇宙旅行元年と呼ばれるようになるでしょう。そして、宇宙旅行の前にチェックしなければならないのが宇宙天気です。 僕たちが毎日見ているテレビのニュース番組で、お天気について解説する気象キャスター。この気象キャスターに宇宙天気をレポートしてもらいたい。僕がリーダーをしている宇宙ビジネスサロン「ABLab」宇宙天気プロジェクトのミッションの1つです。 宇宙天気キャスターは,宇宙天気情報を一般の方々に分かりやすく伝える未来の職業です。「昨日より太陽活動が活発で、地球周辺の放射線が増加しています。不要不急の宇宙旅行は控えましょう。明日には回復する見込みです」。こういった解説を茶の間で視聴する時代は、意外とすぐかもしれませんよ。 コラム78で紹介した宇宙コミュニティ「宇宙人クラブ」(代表:福海由加里さん)では、まさに宇宙天気キャスターの試験運用を開始しています。毎月1回、宇宙天気概況を説明しています。最近では、NHKニュースの気象コーナでおなじみの斉田季実治さんによるレポートを配信しましたのでご覧ください。こちらまで。 アナウンサーとキャスターの違い 斉田さんに3分宇宙天気を実施していただくにあたり、当初は宇宙天気アナウンサーと紹介される予定だったのですが、「アナウンサー」ではなくて「キャスター」としてくださいと要望させていただきました。 実は、アナウンサーとキャスターには違いがあって、アナウンサーは「原稿の通りに正確に情報を伝える」職業です。そしてキャスターは「原稿に独自の洞察を加え情報を分かりやすく伝える」役割です。 この違いは、ABLab宇宙天気プロジェクトの宇宙天気を独自に解釈できる人材を増やしていき、宇宙天気災害に備えるという目標に関わっていて、僕たちが生み出そうとしているのは、「宇宙天気アナウンサー」というより「宇宙天気キャスター」なのです。(宇宙天気防災研究者)

ロケ支援、大幅な落ち込み コロナ禍影響

茨城県フィルムコミッション推進室(県FC)は2020年度の県内ロケ支援の実績をまとめた。コロナ禍の影響で、作品数、撮影日数、経済波及効果いずれも、宿泊を伴うロケの減少などから大幅な落ち込みを見せた。 20年度に県内でロケが行われた作品数は344作品(19年度は515作品)で前年度と比べ33%減となった。撮影日数は633日(同1253日)で49%減少した。 ロケ隊による経済波及効果推計額は、19年度が5億1000万円だったのに対し、20年度は1億3000万円と75%も減少した。 20年度の主な支援作品は、映画が「うみべの女の子」(ロケ地は笠間、水戸市、大洗町など)「東京リベンジャーズ」(潮来、土浦市など)「ザ・ファブル殺さない殺し屋」(つくば市など)「賭ケグルイ絶体絶命ロシアンルーレット」(笠間市など)など。ドラマは「仮面ライダーセイバー」(テレビ朝日)、「極主夫道」(日本テレビ)、「青天を衝け」(NHK大河ドラマ)など。 昨年公開の興行収入10億円以上の邦画18作品のうち、茨城県がロケを支援したのは2作品という。 県FC推進室は2002年に設置された。本格的にロケの誘致、支援活動を開始して以来、18年間の支援作品は7367作品、累計経済波及効果推計額は84億5000万円以上という。(山崎実)

10年経っても変わらない東電の体質 《邑から日本を見る》96

【コラム・先崎千尋】学友・北村俊郎さんが今月初めに『原子力村中枢部での体験から10年の葛藤で掴(つか)んだ事故原因』(かもがわ出版)という長いタイトルの本を出した。 彼は1967年に大学を卒業し、現在再稼働が焦点になっている東海第二発電所を持つ日本原子力発電に入社。本社の他、東海発電所、敦賀発電所などの現場勤務を経験、主に労働安全、教育訓練、地域対応などに携わってきた。20年前から東京電力福島原発近くの富岡町に住み、福島第一原発の事故で帰還困難区域に指定されたため、現在も福島県内で避難生活を続けている。 原子力村の中枢にいたと言うのだから、立ち位置は私と真逆だ。しかし本書は、反原発の安斎育郎氏の推薦文にあるように「当事者だからこそ見える原発業界の危うい風景。福島の事故はなぜ防げなかったのか。その内幕を縦横に語る、気骨のある『内からの警告書』といえる。著者が日本原電にいて見たのは、政産官学や地方自治体、地元住民を巻き込んだ巨大な運命共同体が閉鎖的になっていく姿だった。 本書は、「福島原発事故は日本の原子力発電の帰結」「巨大組織は何故事故を起こしたのか」など6章から成る。著者は第1章の冒頭で「福島第一原発事故の背景には長い間に積もり積もった問題が多々存在していたのではないか。事故前に規制当局や原子力業界に定着していた考え方、慣習は事故につながる問題点が多く見られる。最近の柏崎刈羽原発再稼働に関する一連の不祥事も、体質、企業風土の問題がいまだに改善されていない」と指摘し、「東京電力は事故後10年経っても変わらない」と糾弾している。 子どもでもわかる汚染水処理の愚 第4章「処分出来ない汚染水と廃棄物」では、汚染水の処理問題を書いている。2015年に福島県漁連に「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と文書で確約しているにも関わらず、国と東電は一方的に海洋放出の方針を決めた。こうした動きに対し、「いくら困ったからといって、約束を破れば誰も東電の言うことを信用しなくなる。何故、こんな悪手を使うのか」とあきれ、「小出しにしてなるべく反発を抑え、後で修正するいつものやり方。こんな姑息(こそく)なやり方は不誠実であり、金の無駄遣い」と厳しく指摘する。 国と東電の方針では、年間の海洋放出は3万トン。しかし汚染水は現在でも年間に5万トン増え続けている。足し算、引き算すればどうなるかは小学生でもわかる。こうしたやり方が汚染水問題の解決にならないことをどうしてやるのか、私にはわからない。 最終章「原発の根本的問題は克服できるのか」では廃棄物の処分先未定、テロの不安増大など7項目を挙げているが、おそらくそのどれもが克服できないと著者は見る。問題の先送りで10年経った。ふるさとを追われた人々は今でも数万人いる。現時点では、菅首相の後に誰がなるかわからないが、誰が首相になっても、東電とその後ろにいる経産省の体質は変わらないのではないか、と私には思える。 本書は四六判239ページ。1800円+税。かもがわ出版に電話(075-672-0034)すれば送料無料。著者は事故後、『原発推進者の無念』(平凡社新書)も出している。(元瓜連町長)

献血活動、危機 緊急事態宣言が拍車

コロナ禍による外出自粛などから献血活動が危機的事態に追い込まれている。県赤十字血液センター(茨城町)は、献血事業へのさらなる理解を求める取り組みや、若者向けの協力要請に必死だ。最近では7月上旬から必要献血者数を下回る状況が続いており、緊急事態宣言の発令が不足に拍車をかけている。 献血バスの採血状況を見ると、今年7月7日から9月7日の期間で必要人数を733人下回る状況が続いている。 減少の要因としては、献血バス会場の6割を占める企業献血で、テレワークに伴う出社人数の制限、ワクチン接種(接種後48時間は献血不可)などに加え、緊急事態宣言により献血を中止する企業も増えているという。 中止による代替会場は大型商業施設などになるが、これも外出自粛により必要献血者数の確保が困難な状況だ。 学校献血は若年層の献血離れが危惧されている中で重要な役割を果たしているが、昨年は実施できていた高校献血も、リモート授業や分散登校などから、9月だけで予定していた12校のうち8校の中止がすでに決定している。大学・短大での献血も昨年度からほとんど実施できていない。 同センターでは、県内の学生に向けツイッターなどで現状を訴え、感染症対策にきちんと取り組んでいること、献血が必要な患者が全国で1日約3000人いること、献血は不要不急の外出には当たらないことを理解してもらう啓発活動を進めている。(山崎実) 問い合わせは県赤十字血液センター・献血推進課(電話029-246-5574)。

白い靴下 《続・平熱日記》94

【コラム・斉藤裕之】夏の間ビーサンで過ごした足も少しひんやりとしてきたので、靴下を買いに行った。底が厚手の黒いものを探したが、好みのものが見つからず、黒、白、グレーの3足組を買った。白い靴下を履くのは高校生のとき以来かもしれない。 ホワイトソックスといえば大リーグだが、レッドスキンズのチーム名が差別に当たるとして、名前を変えるというニュースを…。あれはアメフト? 先日無事に?終わったオリンピック。ジェンダーや宗教上の壁を取り払う努力はスポーツの祭典にふさわしい。難民選手団も頑張った。その一方で、そもそも、いくつかの競技には黒人選手がほとんどいないことに気づく。 例えば、集団で演技をする競技ではほぼ同じ肌の色の選手で演じられる。違う色の足ではいい色のメダルは取れないのか。それから、お金のかかる競技には黒人選手が少なく、逆にお金の稼げる競技には多い。体操や水泳には黒人選手は少なく、野球、バスケ、サッカーには多い。 間もなく始まる冬のオリンピックはもっと極端だ。もちろん貧しい国にはスケートリンクもないだろうし、雪も降らない国も多いが、欧米諸国には多くの黒人が住んでいるにも関わらず、例えば陸上競技の種目によってはほぼ黒人が表彰台を独占しているのに、スピードスケートではその姿をほとんど見かけない。フィギュアスケートは多分お金がかかるし、スキーやホッケーの選手も少ない。 お国柄や風土、歴史によって人気のある競技に偏りがあることを差し引いても、多民族の国家では、競技によって意図的な「色分け」があるような気がするのだが。かつて、「はだいろ」というクレヨンや、黒人の子供を主人公にした童話に誰も違和感を持たなかったように、目には見えにくい差別はまだまだ身の回りに潜んでいる。 茶色はカッコいい 高校の体育祭で柔道部の先輩が教えてくれた。「さいとう、あれが我が校の『茶色い弾丸』じゃ」。目の前を見事な前傾姿勢を保ちながら驚異的なスピードで走り抜ける、真っ黒に日焼けした女子の姿が目に飛び込んだ。女子ハンドボール部だ。当時、我が校のハンドボール部は全国制覇をするほどの実力で、部活対抗のリレーでは陸上部よりも速かった。 「茶色い弾丸」とは、確か、その昔オリンピックの百メートル走を制した黒人選手のニックネームだったと思う。私は素直にその比喩に感動した。つまり茶色はカッコいいと思ったのだ。 ちなみに、昔はユニホームが白だったので、靴下の色でチームがわかるようにしたそうな。レッドソックス然り。そういえば、洗濯した白い靴下がピンクや水色に染まって…。そんなことを思い出しながら、白い靴下を履いてみたが…。おじさんの足には白がまぶしすぎる。恥ずかしいので、部屋履きにすることにした。(画家)

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