火曜日, 7月 9, 2024

《沃野一望》21 正岡子規『水戸紀行』追歩(1)

【コラム・広田文世】灯火(ともしび)のもとに夜な夜な来たれ鬼我(わが)ひめ歌の限りきかせむ  とて。 明治22年、文科大学(現在の東京大学文学部)国文科に籍をおく学生が、寄宿舎のある本郷から水戸へ向け、徒歩で出立した。国文科の学友で水戸人の菊池謙二郎訪問を、ふっと思いついた。足にまかせ行ってみるかと、明治時代の学生は、気楽に歩きはじめる。 学生の名は、正岡子規。22歳。ただし正確には、この時点でまだ子規の号を名乗っていない。水戸から帰ったあと大喀血(かっけつ)し、「鳴いて血を吐く」子規を号することになる。しかしここでは子規、と使わせていただく。 子規は、水戸から帰ると発病、壮健だったときの旅の思い出を『水戸紀行』としてつづった。あのときは、元気だったなあと、回想している。 さて、その『水戸紀行』のコース。 東京本郷の寄宿舎を出立し、はるか前方に筑波山を遠望しての北千住、松戸、我孫子。我孫子の先で利根川を渡り茨城県に入り、取手、藤代、牛久と水戸街道を北上、土浦から石岡を経て水戸、さらに大洗にまで足をのばしている。帰路は、水戸線と東北線の汽車を乗り継ぎ(当時、常磐線はまだ開通していない)上野へ戻る4泊5日の日程の、ほとんどが徒歩だった。 子規先生、気負いなく歩きとおした。なかなかの健脚だ。病弱で知られ36歳の短命だったが、子規をふくめ明治初期の人の旅行は、まだまだ徒歩があたりまえの時代なのだ。 子規が歩いてから130年… 『水戸紀行』を興味深く読んだ。水戸街道歩き、馴染(なじ)みの地名のオンパレードに、よしそれならば私にも追歩できるかと、令和版我流『水戸紀行』に挑戦してみた。 子規は、「春十日許(ばか)りの学暇を得ければ」水戸へ向かったのだが、令和版は、正月前の年末休暇を利用することにした。 さて、令和版のコース。 ビールではないが、とりあえず、いや大きなビール工場のある取手から6号国道沿いに北上、土浦から石岡を経て水戸へ至り、その先、子規先生を追歩し大洗へ足をのばし、先生も眺めた太平洋の海岸まで、…、行けるか? 12月28日。 午前7時過ぎ、夜が明けたばかりのJR常磐線天王台駅に下車する。天王台駅は、千葉県我孫子市。ここから出立し利根川を渡り茨城県の南端からスタートする徒歩行を演出してみた。 天王台西口駅前からの直線路が、新興住宅街を貫通している。平日の通勤時間帯ならば、通勤通学の人波が足早にホームを目指す駅前通りだろうが、年末休暇の早朝で人影は見当たらない。もちろんこのあたり、子規先生の時代は、住宅など一軒も見当たらなかっただろう。思えば子規が歩いてから130年が経過している。景色も人も、どれほど変わったことか。 ともかく令和版我水戸紀行は、静穏なスタートとなる。(作家)

《茨城鉄道物語》7 TXの8両化施策に想う

【コラム・塚本一也】今回はつくばエクスプレス(TX)の8両化について書かせていただきます。TXでは現在、車両を6両から8両へ増設する施策を実行しています。鉄道の増車というと、車両を連結するだけかというと、そうではありません。まず、車両の増設に合わせてホームを延伸しなければなりませんし、それに伴い、線路の改良、上家(うわや)の増築、出発信号の移設など、関連する工事がたくさん発生します。 しかも、工事は深夜の限られた時間内に施工しなければなりません。ゆえに、お金と時間が、一般の工事よりもかなりかかります。これは鉄道に関わる工事の宿命と言えます。 そこで、鉄道の新線を敷設する場合は、開業当時から将来を見込んで、ある程度の準備をしておきます。TXの場合も、ホーム延伸のための用地は確保してあり、線路も改良しなくて済むようにしてあります。また、ホームの床板を受ける桁を施工してある駅もありますし、なるべく省力化で対応でき、かつ過剰投資にならないような体制で開業しました。 開業後、順調に利用者数も伸びて、混雑緩和対策としての8両化が求められるようになりました。しかし、TX側の今の予定では、工期に10年かかるということであり、2030年の利用開始という説明です。これでは、あまりにも時間がかかりすぎます。鉄道事業で「旅客サービス向上」のための施策は、いつやるかというと、「今でしょ」という回答になります。 一斉老朽化を見据え今から準備を 私が在籍していたJR東日本でも、30年ぐらい前、「山手の11両化」という施策がありました。工事内容としては、ホームの延伸も線路の改良も含まれていましたが、29駅を2年ぐらいの工期で完了させたと思います。 当時は、混雑時に立席だけの車両を増設するということで、世間の注目を集めていた施策であり、決められた工期内に完了することが至上命令でした。そのためには、例えばクレーンを使わないで済むように軽量鉄骨を採用するなど、それぞれのセクションが知恵を絞りました。 TXによると、保守用工事車両の出入り口が限られており、工事間合いが確保できないために、工事に時間がかかるということです。しかし、点検や修繕などを主とする保守工事と、新たに鉄道設備を造る建設工事を同じ考え方で取り組むというのは基本的に間違っているような気がします。 例えば、建設用の仮構台を設けて資材の搬出入を効率化するとか、快速の停車駅だけを先行して開業するとか、旅客サービス向上のために最大限の努力をすべきです。 TXは開業後15年が経過しましたが、同じ時期に施工しているので、電気設備や信号設備などは間もなく一斉に老朽化の時期を迎えます。また、その他の駅舎や線路設備なども、ある時期に同じような劣化が発生することになり、その時には大規模な改良工事が必要になってきます。将来を見据えた施工体制を今から準備しておくべきと思います。(一級建築士)

コロナ禍、資金供給最大に 筑波銀行中間決算

【鈴木宏子】筑波銀行(本店 ・土浦市、生田雅彦頭取)は13日、2021年3月期第2四半期決算を発表した。新型コロナに見舞われた半年間(20年4~9月)について、中小企業への貸出金が前年度末と比べ501億円増加するなど、預金、貸出金ともに中間期ベースの1年間の増加額としては、同行誕生(2010年)以来、最大となった。 預金は、個人の特別定額給付金(1人10万円)の入金のほか、地元中小企業の手元資金確保などにより大幅に増加し、前年度末比1427億円増の2兆3944億円になった。貸出金は、コロナ関連融資に力を注いだ結果、中小企業貸出金が前年度末比501億円増の7021億円、貸出金全体でも同比621億円増の1兆7478円となった。 貸出金は業種に関係なく万遍なく増えているという。一方、コロナ倒産は現時点で限定的だとしている。 生田頭取は「第1フェーズが(地元中小企業への)資金供給だとすると、資金供給のピークは過ぎた。これから第2フェーズとなる」とし、「これだけ膨らんだ融資を(企業は)今後、返済しなくてはいけないが、(収益が)元に戻っただけでは返済できない。元に戻して、プラスアルファの超過収益を得るためにどうしていけばいいかを一緒に考えないといけない」「販路拡大、業態転換、事業継承支援など、超過収益が得られるようビジネスモデルをつくらないといけない。できることはたくさんあるので、いろいろな手段を使いながらお客さんと向き合っていきたい」などと話した。 第2四半期の業績(連結)は、銀行本来の業務の収支である業務粗利益は、投資販売手数料や法人関連手数料の増加により役務取引利益は増加したが、有価証券利息配当金の減少により資金利益が減少したことなどから前年同期比12億2500万円減の141億800万円となった。 銀行の通常の活動から生じた利益を表す経常利益は、営業経費や与信関係費用の減少に加え、株式関係損益も改善したが、業務粗利益の減少により、前年度期比5700万円減の13億6500万円となった。

採石現場「石切山脈」へのプレミアムツアー 笠間に14日お目見え

【相澤冬樹】筑波山地域ジオパーク構成5市のひとつ笠間市に、地質年代的には6000万年以上、地表に表れてからでも120年以上という稲田石の採石現場「石切山脈」をめぐるツアーが、14日お目見えする。「茨城のグランドキャニオン」「地図にない湖」などとSNSで話題になったわが国最大級の採石現場を、専用ガイドと車でめぐる「プレミアムツアー」などが用意された。 ツアーは、現地で高級石材「稲田白御影石(稲田石)」の産出を行っている想石(そうせき、笠間市稲田、川畑真彦社長)が、新たに観光事業会社「U-A」社を立ち上げ、笠間名産の栗を使ったモンブランを石臼コーヒーで味わえるカフェの営業と合わせ、同日午前9時スタートする。 稲田石は白い石肌が特徴の花崗岩で、日本橋や東京駅、国会議事堂など全国有数の建造物に使われてきた。その岩石帯は東西約10キロ、南北約5キロ、地下1.5キロに及び、日本最大という。露天掘りによる採掘は1899(明治32)年から始まり、岩肌が石屏風のように切り立つ威容から「石切山脈」の名がつくようになった。 想石社によれば前山と奥山の2カ所にある採石場のうち、良質の石が採れなくなった前山では2014年に操業を止めた。その跡地に貯まった水が「地図にない湖」を作り、今では水深16メートルにもなっている。断崖から見下ろし撮影した景色などがSNSを通じ紹介され、話題になった。 筑波山地域ジオパークの活動では生産現場が除外されるため、奥山での操業を続けている石切山脈はジオサイトに登録されてはいないが、2019年には見学に約2万人が訪れた。同社では独自に、観光事業会社を立ち上げ、有料化して紹介の充実を図った。プレミアムツアーに同行するガイドとして、地元青年会議所や商工会青年部のメンバーが協力する。 見学できるのは毎日午前9時から午後4時。料金(税込み)は大人300円、中学生以下無料。車両で奥山の石屏風などを見て回るプレミアムツアーは要予約(電話0296-74-2537)、大人1000円、中学生以下500円。運が良ければ、ダイナマイトを使用した岩盤の発破シーンにも遭遇できるかもしれという。

《遊民通信》4 中心なき世界 アフター・コロナを生きる

【コラム・田口哲郎】前略コロナ禍は現実社会をI Tネットワークの中に呑(の)み込みました。網の目に中心はありません。社会は「中心なき世界」の到来に直面しています。しかし、人間の歴史は中心をめぐる物語です。集中と集積が人類の進歩の証でした。例えば、首都という中枢都市は古代からあり、徐々に拡大し、近代になって大都市になりました。 我々が当たり前だと思っている大都市は、19世紀に出現した比較的新しい社会機構です。産業革命で飛躍的に工業化が進み、農村人口が都市に流入しました。工業は富を生み、巨大都市の住人の食い扶持(ぶち)をまかなえるまでになったのです。近代国家にとって巨大都市は自国の勢力を誇示する格好の装置でした。しかし、大都市の特権的地位もコロナ禍の前には無力かもしれません。 古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、誤った思いこみである「ドクサ」に気をつけるよう人々に教えました。何でも中心に集めることが便利で効率的だという考えはドクサだったのではないでしょうか? 中心の周辺が肥大化し、中心に至るまでの過程と中心内の移動にムダやロスが多くなりすぎたのです。 それでも、私たちはついつい中心を求めました。ドクサが現実をつくり、その紛れもない現実が人々を真綿で締めつけていました。 自由ゆえの苦悩 中心が無ければ、ひとつのモードに縛られませんから、自由です。社会にゆとりが生まれるでしょう。良いことです。しかし、自由はただ気楽なものでしょうか? 自由には責任が伴い、往々にして不安を生みます。新しい生活様式では、ひとりひとりが中心にならざるを得ません。群衆のひとりだった私が中心になります。主役というものがどれほどの重責を担い、ストレスにさらされるか、私たちは知っています。 さらに、かつての中心は形を変えて人々を支配しようとするでしょう。ネットワークの隅々にまで入り込んで。支配というよりも管理と言った方がよいかもしれません。効率化されたICT(情報通信技術)管理社会で、各々は小さな中心として数々の選択を迫られるようになります。 こんな社会を予言していた人がいます。ニーチェです。「神は死んだ」で知られる哲学者は、神という中心がなくなった大衆資本主義社会に呼びかけました。人生はいわば一期一会なので、とにかく強い人間になろう、と。永劫回帰(えいごうかいき)と超人の思想です。 強くなることは頑張ることではありません。群衆のうちのひとりなら「頑張っています!」と言えば見逃されたものも、全員自らが中心になるのですから自己満足ではダメなのです。超人は自分の選択に揺るぎない確信を持ち、現実を創らねばなりません。過去でも未来でもなく今の創造です。 そんなの無理!と即答したくなりますね。でも、強くなる秘訣があります。新様式社会を生き抜くヒントです。紙幅がありませんので、それは次の便で。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

桜川水害に備え代替警察施設 土浦署がつくば国際大と協定

【鈴木宏子】桜川の水害で土浦警察署(同市立田町)が浸水し使用できなくなった場合に備え、災害時に高台にあるつくば国際大学(同市真鍋)の一部を代替警察施設として使用する災害時協力協定が12日、同大学で締結された。 桜川の河口にある同市の中心市街地は、一帯が浸水想定区域に指定され、同署は想定できる最大規模の豪雨(48時間で746ミリ)に見舞われた場合、3~5メートル浸水する区域に立地する。 大学キャンパスは同署から2.2キロ北の高台にあることから、昨年10月の台風19号を機に両者で協議が行われてきた。 桜川の水害などにより土浦署の施設が使用不能となった場合、大学のラウンジ棟、学生食堂、体育館と駐車場が、同署や派遣部隊の活動拠点として使用される。3棟の面積は合計約1580平方メートルで、駐車場は830台分のスペースがあり、同署の車両や装備品を移動させる。 同署は地震などの災害に備えてこれまで、土浦市医師会会館(同市東真鍋町)、新治運動公園(同市藤沢)、かすみがうら市千代田庁舎(同市上土田)を災害時の代替施設として使用する協定を締結しており、同大学は4カ所目になる。 12日、土浦署の坂井誠署長と大学を運営する霞ケ浦学園の高塚千史理事長が協定書に調印した。 坂井署長は「被災者の救出、救助、避難誘導、犯罪者の検挙など大規模災害での警察機能に大きな支障があってはならない。桜川で大規模水害が発生した場合、近く、より安全な高台に警察機能を代替できる施設を確保することが喫緊の課題だった。霞ケ浦学園の好意で協定締結に至り、さらなる大規模災害や緊急事態に万全の対策を備え、安全安心な地域づくりに取り組みたい」などと話した。 高塚理事長は「学校としても地域のために少しでも役に立てるよう、できる限り協力したい」などと語った。

新型コロナ対策ステージ3に強化 土浦・桜町でPCR集中検査へ

新型コロナウイルスの県内の新規陽性者数が前の週の2.5倍に増えたとして県は11日、対策指針を同日から、感染が拡大している状態のステージ3に引き上げたと発表した。県南を中心に感染が拡大している。 さらに土浦市では、桜町の接待を伴う飲食店でクラスターが発生したとして、PCR集中検査を実施する。 11日確認された県内の新規感染者数は、4月1日の18人を上回り、過去最高の20人となった。市町村別では土浦市が7人、取手市が4人など。前の週(10月29-11月4日)は29人だったのに比べ、11月5-11日は75人と大幅に増えた。 ステージ3に引き上げても、外出自粛要請や休業要請などは実施しないが、県は、追跡アプリ「アマビエちゃん」の利用促進のほか、年末年始休暇の分散取得、クリスマスや大みそか、初日の出など主催者のいない催しで大人数が集まる季節行事の感染防止対策の徹底などを改めて呼び掛けた。 一方、クラスターが発生した土浦市桜町の飲食店は、同1丁目のパブHEAT(ヒート)とパブHEATⅡの2店で、11日までに2店の従業員や利用者10人程度の陽性者を確認した。 県は、市中感染につながる恐れがあるとして、地域への感染拡大を防ぐため無料のPCR集中検査を実施する。対象者は桜町1丁目と2丁目にある飲食店従業員と、10月26日から11月10日の間に同地区の飲食店の利用客。 検査希望者はコールセンター(電話029-830-3355)に電話することが必要。申し込みは11日から20日までの午前9時から午後5時。検査日時や検査場所は電話の際、伝える。

《映画探偵団》37 中心市街地活性化 変わる議論の方向

【コラム・冠木新市】『つくつくつくばの七不思議』と題して、2014年、筑波学院大学コミュニティ講座で話をした。テーマは「伝説と文化を活用したまちづくり」である。「中心市街地つくばセンタービル吾妻篇」では、イタリア人映画監督フェデリコ・フェリーニの『甘い生活』(1960)を例に取り上げた。 『甘い生活』の「ヴェネト通り」 この作品は、作家志望のジャーナリスト・マルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)が、取材対象を追ってローマをさ迷う話で、街が主役ともいえる3時間の大作だ。深夜、トレビの泉にマルチェロがグラマー・スター(アニタ・エクバーグ)と一緒に入るシーンは、流れ落ちる水の音と相まって神秘的なまでに美しい。 また、ローマの高級レストランやホテルが並ぶヴェネト通りが魅惑的に描かれる。道路には車が駐車、カフェには美女や文化人がたむろし、深夜までにぎやかな場面が映る。誰でも一度は行ってみたいと思わせるような場所に見えてくるのだ。 事実、映画が公開されると、フェリーニに何人もの外国人から電話がかかり、ヴェネト通りに連れていってほしいと懇願されたという。だがフェリーニ自身もめったに行かない場所だった。実は、ヴェネト通りは一部分を除き映画のセットとして建てられたもので、現実とはまるで異なる通りだった。架空の場所に近いといってもよい。 ところが、「映画の『甘い生活』に応じて本物のヴェネト通りが一変してしまい、私が映画のなかで与えたヴェネト通りに迫ろうと猛烈な努力をしたのである」(フェリーニ著『私は映画だ』)。つまり映画のイメージが現実のヴェネト通りに影響を与え、映画のような光景になってしまったわけだ。 つくば市の中心市街地活性化とは何を意味するのだろうか。ある場所に多くの人が集まり、楽しく過ごすことであろうか。これまで中心市街地活性化のイメージは、映画のヴェネト通りのような街を目指していたのではなかったか。昭和生まれで映画探偵の私には、強くこの思いが染み付いている。 市長・市議選の「争点」にならず 10月のつくば市長選挙では、新聞各社が「中心市街地活性化が争点」と報じた。しかし、五十嵐市長は簡単な公約を載せただけだし、他の2人には中心市街地への言及がなかった。市議候補者は、41名中4人がちょっと触れただけだった。つまり、「争点」にはならなかったわけだ。 何も批判しているのではない。新型コロナウィルスによって「三密」が否定されたことにより、「中心部と周辺部の活性化」の考え方に変容を迫られているように思えるからだ。これから、中心市街地活性化を目指して「まちづくり会社」が創られるようだが、その前に活性化の意味をもう一度考え直す必要があるのではないだろうか。 10年以上も続く「つくばセンター地区活性化協議会」のメンバー、2年半前に「つくば中心市街地まちづくりヴィジョン」を作成したアドバイザーの意見を聞いてみたいと思っているのは、私1人だけであろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

オンラインで沖縄修学旅行 つくば特別支援学校高等部3年生

県立つくば特別支援学校(つくば市玉取)の知的障害教育部門高等部3年生24人が11、12日の2日間にわたり、オンライン修学旅行「めんそーれ沖縄」を満喫している。 当初5月に3泊4日の日程で予定していた沖縄修学旅行がコロナ禍で中止となったため、沖縄を様々な形で体験、学習できるよう計画された。 この日に向けて教員らは、首里城の大きな絵を描いて教室の壁に飾ったり、段ボールで守礼の門を手作りして教室の入り口に設置するなどした。 11日はまず、修学旅行で訪れるはずだった首里城や美ら海水族館などをグーグルストリートビューを使って訪ねた。続いて、沖縄を代表する伝統的染色技法、紅型(びんがた)でバッグに色を付ける体験をした。 昼食は、近隣の沖縄料理店に注文し、沖縄そばや沖縄炊き込みご飯、ラフテー(豚角煮)、紅芋のコロッケ、サーターアンダギーなど8品を実際に堪能した。 午後からは、体長8メートルを超えるジンベエザメがいる沖縄美ら海水族館とライブ中継を結び、オンラインで水族館を訪ねた。「ジンベエザメはどれくらい大きいの」など、水族館スタッフのクイズに答えながら、水槽を泳ぐ魚を見たり、水槽の裏側の様子を見るなどした。スタッフがエサを与えると、ジンベエザメが海水と一緒にオキアミを一気に飲み込む映像を見た生徒たちからは「すごい」など、感嘆の声が出た。 2日目の12日は、沖縄の歴史を学んだり、伝統芸能エイサーを踊ったり、教員らが壁一面ほどの大きさに描いた首里城の絵の前で集合写真を撮るなどする。参加した後藤優和さん(17)は「沖縄だと感じ、結構楽しい。飛行機に乗ったことがなかったので(実際に行ったら)緊張したと思う」などと話していた。 オンライン修学旅行を準備した3年学年主任の赤平雅人教諭(52)は「生徒たちは入学当時から修学旅行を楽しみにしていた。去年の5月からは沖縄の文化や史跡、物産などを事前学習してきたので、沖縄に行けなくても沖縄の雰囲気を味わってもらいたい」と話している。

霞ケ浦の経済価値年間1217億円 世界の湖沼・河川の4倍高い

【相澤冬樹】霞ケ浦から得られる⾃然の恵み(⽣態系サービス)を経済的価値で見積もると、少なくとも年間1217億円に及び、単位⾯積当たりの試算では、世界の湖沼・河川の平均的な価値の約 4 倍⾼い-とする研究成果が10日、報告された。 経済評価は、国⽴環境研究所(つくば市)⽣物・⽣態系環境研究センター、県霞ケ浦環境科学センター(土浦市)、いであ(神奈川県横浜市)国⼟環境研究所の共同研究チームにより行われた。個別の湖沼を対象に、多様な⽣態系サービスの価値評価を統合的に⾏った研究は国内では初めてという。 複数の経済学的な評価⼿法を⽤いて、⽣態系から提供される価値を多⾯的に評価した。霞ケ浦の⽣態系サービスを供給・調整・⽂化的・基盤の4つに分類し、計25項⽬の指標を整理した。1945年から2018年までの各指標の推移をまとめたのが下表だ。 主に農産物や取⽔、洪⽔調節、環境学習、観光帆引き船など⼈間活動を豊かにする項⽬で増加したが、漁獲や養殖、⽔辺遊び、⿂種や植物など⽣物多様性や⼈々が霞ケ浦と触れ合うような項⽬では減少していた。経済的な価値で最も⾼かったのは洪⽔調節で、堤防整備や常陸川⽔⾨の設置等の⼈⼯資本の投⼊によってサービスが強化された結果とみられる。 市場価格がない⽣物多様性などの⽣態系サービスは定量化した評価が難しいため、アンケート調査で改善に向けての経済的価値(⽀払意思額)を測ったところ、良好な⽔質、⽔質の浄化機能、⽣物の⽣息は、他のサービスに⽐べて、特に⾼い傾向が表れた。⽔質を現在の状態からややよい状態に改善することに対して、全国では5829円、流域では5616円の⽀払意思が⽰されている。 これらから、霞ケ浦は1年当たり供給サービス463億円、調整サービス751億円、基盤サービス166億円、⽂化的サービス3億円で、計1217億円もの多様な⽣態系サービスを⽣み出していると算出された。世界の湖沼・河川の平均的な経済価値は年間1ヘクタールあたり147万円と⾒積もられていることから、霞ケ浦は約4倍高いことが明らかになったとまとめている。 研究の成果は、霞ケ浦の⽔循環、⽣物多様性や⽣態系の保全・管理に関する環境⾏政、多様なステークホルダーとの地域づくりへの活⽤が期待されるという。なかでもアンケート調査の結果から、⽔質の改善と⽣物の保全に関する⽀払意思額や意識が特に⾼かったことから、それらに答えるような施策の検討が必要と提言している。

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