【相澤冬樹】霞ケ浦から得られる⾃然の恵み(⽣態系サービス)を経済的価値で見積もると、少なくとも年間1217億円に及び、単位⾯積当たりの試算では、世界の湖沼・河川の平均的な価値の約 4 倍⾼い-とする研究成果が10日、報告された。
経済評価は、国⽴環境研究所(つくば市)⽣物・⽣態系環境研究センター、県霞ケ浦環境科学センター(土浦市)、いであ(神奈川県横浜市)国⼟環境研究所の共同研究チームにより行われた。個別の湖沼を対象に、多様な⽣態系サービスの価値評価を統合的に⾏った研究は国内では初めてという。
複数の経済学的な評価⼿法を⽤いて、⽣態系から提供される価値を多⾯的に評価した。霞ケ浦の⽣態系サービスを供給・調整・⽂化的・基盤の4つに分類し、計25項⽬の指標を整理した。1945年から2018年までの各指標の推移をまとめたのが下表だ。
主に農産物や取⽔、洪⽔調節、環境学習、観光帆引き船など⼈間活動を豊かにする項⽬で増加したが、漁獲や養殖、⽔辺遊び、⿂種や植物など⽣物多様性や⼈々が霞ケ浦と触れ合うような項⽬では減少していた。経済的な価値で最も⾼かったのは洪⽔調節で、堤防整備や常陸川⽔⾨の設置等の⼈⼯資本の投⼊によってサービスが強化された結果とみられる。
市場価格がない⽣物多様性などの⽣態系サービスは定量化した評価が難しいため、アンケート調査で改善に向けての経済的価値(⽀払意思額)を測ったところ、良好な⽔質、⽔質の浄化機能、⽣物の⽣息は、他のサービスに⽐べて、特に⾼い傾向が表れた。⽔質を現在の状態からややよい状態に改善することに対して、全国では5829円、流域では5616円の⽀払意思が⽰されている。
これらから、霞ケ浦は1年当たり供給サービス463億円、調整サービス751億円、基盤サービス166億円、⽂化的サービス3億円で、計1217億円もの多様な⽣態系サービスを⽣み出していると算出された。世界の湖沼・河川の平均的な経済価値は年間1ヘクタールあたり147万円と⾒積もられていることから、霞ケ浦は約4倍高いことが明らかになったとまとめている。
研究の成果は、霞ケ浦の⽔循環、⽣物多様性や⽣態系の保全・管理に関する環境⾏政、多様なステークホルダーとの地域づくりへの活⽤が期待されるという。なかでもアンケート調査の結果から、⽔質の改善と⽣物の保全に関する⽀払意思額や意識が特に⾼かったことから、それらに答えるような施策の検討が必要と提言している。