木曜日, 7月 10, 2025

地域防犯願って青パト出発式 土浦市桜ケ丘町

【谷島英里子】土浦市桜ケ丘町の防犯パトロール隊が青色回転灯装備車両(青パト)を初めて導入し、29日に同町公民館で出発式を開いた。隊員のほか警察、小・中学校校長、児童らも参加し、地域の安心安全に向け決意を新たにした。 青パトは日本財団から車両の80%の助成を得て導入し、回転灯や白黒の塗装が施されている。2005年に同パトロール隊が発足した以降は自家用車に回転灯を設置してパトロールを行っていた。 式典には、土浦署荒川沖交番、市生活安全課、下高津小、土浦四中、同町子ども会など約55人が出席。那珂伸一区長(55)は「防犯活動のシンボルとして安心安全なまちづくりの一助になれば」とあいさつした。日本財団から贈られた青パト車の大きな鍵の模型も披露された。 隊員は50~70歳代の61人で、4グループに分かれて小中学生の下校時の見回りや犯罪抑止のパトロール活動を行っている。今後は青パトが町内で親しまれる存在になればと愛称を募集していく。 日本財団が土浦市内の町内会に青パト車(原則として軽自動車)の購入資金の助成をするのは、おおつ野自治会に続き2カ所目という。日本全国で約4万台の青パトが活躍し、同財団は約240台の青パト車助成支援を行っているという。

入館者50万人を達成 土浦市立図書館

【鈴木宏子】土浦市立図書館(同市大和町)の入館者数が29日、50万人になった。昨年11月27日に土浦駅西口前に移転、開館以来、約10カ月での達成となった。 開館以来、毎月約5万人が来館し、8月2日には年間目標の40万人を、予定より4カ月早く達成していた。移転前の旧館(文京町)と比べ、貸出者数は1日約600人と2倍、貸出冊数は約2000冊と2倍、新規登録者数は1日平均63人と9倍になっているという。 29日、同館2階入り口でセレモニーが催され、50万人目の入館者となった土浦市木田余東台の野口浩美さん(38)と、長女で真鍋小3年の陽向詩(ひなた)さん(8)、長男で幼稚園児の侑珠(ゆず)ちゃん(6)の3人に、入沢弘子館長からJA土浦のレンコンとグラジオラスが贈られた。 陽向詩さんは「すごくびっくりした」と話し、母親の浩美さんは「広くて、きれいで、とても使いやすいので、これからも使っていきたい」と話していた。毎月2回くらい家族で来館し、絵本や図鑑などを1人10冊ずつ借りるという。 入沢館長は「毎日多くの方にお越しいただきとてもうれしい。これからも利用者ニーズに応えられる運営をし、土浦の図書館ならではの特色を出すと共に、まちづくりに貢献するシティプロモーションの核として市民に喜んでいただける図書館にしていきたい」とコメントした。

出資会社作りクレオ全部取得を提案 子供向け科学体験型商業施設に再生 つくば市負担34億

【鈴木宏子】百貨店などが撤退し今年2月から閉鎖されているつくば駅前の商業施設クレオ(筑波都市整備所有)について、同市の五十嵐立青市長は28日、市が出資するまちづくり会社をつくってクレオの土地と建物全部を約38億円で購入する案を発表した。子どもたちが遊びながら科学を学べる体験型商業施設に再生し、出資会社が運営する。市が負担する費用は20年間の賃料なども含め総額約34億3000万円になるという。同日開かれた市議会全員協議会に示した。 新たな商業施設は、1、2階に食品スーパー、百貨店、地元の飲食店や物販店のほか、温浴・健康施設、自転車・アウトドアスポーツ拠点施設などを配置する。目玉となる3~5階は、子ども向け科学体験教育施設、世界のおもちゃ体験施設、書店などを入居させる。市は5階に子供や科学に関する本を集めた子ども科学図書館と市役所窓口を出店する。 体験施設の具体的な中身やどのようなテナントが入居するかについては現在、打診中でまだ決まっていないという。ただし東京・お台場と豊洲に新しいデジタルアートミュージアムを開設して話題のデジタルコンテンツ制作会社「チームラボ」、ロボットスーツを開発・販売する筑波大発ベンチャー企業の「サイバーダイン」、廃校になった小学校で世界のおもちゃに触れて遊べる体験型ミュージアムを運営する「東京おもちゃ美術館」など、注目を集める会社などと協議していると強調している。 商業施設を運営するまちづくり会社は、市が20億円、民間事業者が30億円を出資し資本金50億円とする。民間の出資会社はまだ確定してないがサイバーダインなどと協議中という。さらに金融機関から21億円を借りて計約71億円の資金を元に、約38億円でクレオを購入、約29億円で改修し、約4億円を初期の運転資金に充てるという。入居するテナントの賃料は、クレオの周辺相場が1坪(3.3平方㍍)当たり1~2万円程度なのに対し、3~7割安い7500円程度とし、開業2年目から約1億円の黒字になると試算している。 マンション建てるべきでない クレオはつくば科学博が開催された1985年に建築。地下2階、地上8階建てで、面積は約1万5000平方㍍、延床面積約5万6000平方㍍。 クレオの再生をめぐって五十嵐市長は6月、約22億円で5、6階に図書館など公共施設を入居させることを検討していることを明らかにした。その後、所有者の筑波都市整備が、年内にも売却を行いたい意向を示したことを受け、今回、新たな案が提示された。 年内に売却の場合、商業施設と併設して14階建てマンションが建設予定であることから、マンション建設をすべきでないとして、全部購入する案としたという。さらに6月時点では標準耐用年数を超えている施設をすべて更新した場合、51億6200万円かかると試算されていたが、あと20、30年は使えるとして長期改修を15億円程度にとどめる。 市の新たな案について筑波都市整備は「市の案が出たということなので、中身を見て確認したい」としている。 10月16日まで市民の意見を募集 市は今回の案を市ホームページで公表、さらに10月7日ごろに市広報臨時号を新聞折り込みなどで配布して、29日から10月16日まで市民の意見を募集する。市民説明会は10月14日午前10時から市役所2階で開く。 アンケートなどで市民の合意が得られれば、10月下旬に市議会臨時議会を開き、20億円の出資の是非について諮る。議会で可決されれば11月中にまちづくり会社を設立、12月中旬にクレオを購入するという。 一方、市議会全員協議会では「さまざまな課題がある中、なぜクレオを優先するのか」「周辺部にどれだけ波及効果があるのか」「公共性があまりにも少ない」「テナントが埋まらないというリスクはないのか」「拙速に進めるべきでない」などの質問や意見が相次いだ。

キャンパス内に商業施設 10月1日筑波大に開店 支払いキャッシュレスに

【鈴木宏子】筑波大学(つくば市天王台)のキャンパス内に10月1日、スーパーとカフェを併設したショッピングプラザ(仮称)がオープンする。 スーパーはカスミ(同市西大橋、石井俊樹社長)が運営する同筑波大学店(箱田直美店長)で、同社初の取り組みとして現金のやり取りを行わず、クレジットカードや電子マネーで買い物するキャッシュレス化の店舗となる。 スーパーの建築面積は約1000平方㍍。生鮮食料品や日用品を販売するほか、留学生が多いことから、アジア各国の調味料など輸入食材や、イスラム教の戒律に沿って調理・製造されたハラール認証の食材なども豊富に取りそろえる。学生向けのため、商品価格は他の店よりやや安めにするという。 店舗には、その場で飲食できるイートインコーナー(店内33席、テラス44席)を設置。無料のWi-Fiが使用できるようにする。さらに簡易キッチンを備えた多目的スペース(8席)を設け、学生や教職員がミーティングなどで利用できるようにする。イートインコーナーには一誠商事のセルフ不動産検索機を設置し、新居探しもできるという。 店舗入り口付近にはスマートフォン充電シェアリングサービスを設け、店舗横に宅配便ロッカーを設置し宅配便が受け取れるようにする。自転車の無料空気入れスタンドも設置し、パンク修理も対応する。 学生、教職員計約2万2000人と周辺住民約3200世帯を対象に、年商3億4000万円を目指している。 カフェは、サザコーヒー(ひたちなか市、鈴木美和子社長)が運営する筑波大学アリアンサ店で、建築面積は約200平方㍍。同大と共同開発したコーヒー豆、アリアンサコーヒーのほか、ドイツ製の焙煎機で焙煎したこだわりのあるコーヒーなどを提供する。 同大は、学生と教職員の福利厚生と利便性向上を目的に、平砂学生宿舎北側に食品スーパーを中心にした商業施設を整備することを計画。昨年7月、運営会社を公募した。鹿島リース(東京都港区、稲葉仁社長)が施設を整備し20年間運営して、同大が土地の賃料を得る仕組みで、整備が進められてきた。 ◆カスミ筑波大学店の営業時間は平日が午前8時~午後9時、土曜・祝日は午前10時~午後7時。日曜定休。サザコーヒーは平日午前9時~午後9時、土・日・祝日午前10時~午後7時。10月1日のオープン時間はカスミが午前10時45分、サザコーヒーが同11時の予定。

20年来の作品を初お披露目 土浦市民ギャラリーで「木目込み人形展」

【鈴木萬里子】土浦市の亀城プラザを拠点に活動している「木目込・手芸同好会」(代表・中野かすみさん、島田幸子さん)による初の作品展「木目込人形・手芸同好会展」が、28~30日の3日間、同市大和町の市民ギャラリーで開かれる。 会員10人が、20年来、活動を続ける中でそれぞれ作り上げ、箱に入れて家の中にしまっていた作品を、今回、市民ギャラリーがオープンしたのをきっかけに初お披露目する。1人10点以上を持ち寄り、100体を超える作品が並ぶという。 会は20年以上前に結成された。会員は現在、60代半ばから83歳までの10人。当初は講師の指導を仰いでいたが、講師が高齢になり、3年前から経験の長い会員が教え合うなどしている。 木目込み人形は、木製の人形に、衣服の形に筋彫りを入れ、布を押し込んで衣服を着ているように仕立てた人形。約250年前の江戸時代中期、京都上賀茂神社が発祥といわれる。 会員らは、既成の人形を土台に、自分の仕上げのイメージに合わせて筋や溝を彫り、衣装を着ているように仕立てる。「十二単(ひとえ)を着たおひな様の襟元を合わせるのが特に難しい」と会員の一人は話す。人形の衣装は、古布、絹の端切れや化学繊維までいろいろある。溝の彫り込み方や着物の柄などに作り手の個性が色濃く出るという。 島田さんは「これだけたくさんの木目込み人形が並ぶのは珍しいと思う。是非見てほしい」と話し、中野さんは「伝統技能なので次の世代に残していきたい」と語る。 ほかにハワイアンキルト、ちぎり絵、パッチワークのバックなど会員の多彩な手工芸作品も展示される。 ◆同展は30日(日)まで。開館時間は午前10時~午後6時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは同ギャラリー(電話029・846・2950) ◆会の活動は毎月第2、4月曜午前10時~午後3時、土浦市亀城プラザ。見学自由。問い合わせは同プラザ(電話029-824-3121)

釣り針からみ衰弱 谷田川のコブハクチョウ

【橋立多美】つくば市森の里団地の脇を流れる谷田川にすみつくコブハクチョウが、釣り人が放置した仕掛けが足にからまって傷を負ったが、団地住民と市環境保全課の連携プレーで事なきを得た。 コブハクチョウの写真を撮り続けている同団地の富樫次夫さん(67)が26日夕方いつものように撮影に行くと、生息している7羽のうちの1羽が左足にからんだ針と糸を取ろうと必死にもがいていた。 すぐに倉本茂樹自治会長を通じて市環境保全課に連絡し、同課の職員2人が捕獲用の網を持って駆け付けた。ところがビックリしたコブハクチョウに逃げられて捕獲に失敗した。 翌27日午前9時半、住民が見守る中で2度目の捕獲が成功した。ペンチで足に絡まった糸と足の付け根に刺さった針を除去し無事救出作戦が終わった。同課職員は「針を取ろうとくちばしで引っ張ったせいで、くちばしの一部が引きちぎられて血が出ていた。疲れ果てたのかヨタヨタした状態だった」と話した。 その後コブハクチョウは同団地の住民から餌をもらい、安心した様子で仲間のところに泳いでいった。富樫さんは「ここはブラックバスやコイを釣りに来る人が絶えない。これまでも釣り人が持ち帰らない釣り針や糸がからんで死んだコブハクチョウがいる。放置せずに持ち帰ってほしい」と力を込める。 同課は、今回のような人為的な出来事に対処しており、「釣り人のマナー向上」を呼びかける。

【多文化共生を支える】3 コミュニケーション力磨き助産師が奮闘

【橋立多美】9月中旬、妊娠後期の中国とインド出身の妊婦4人が夫と一緒に、分娩(ぶんべん)の仕組みや入院中のスケジュールについて助産師から説明を受けた。つくば市上横場の筑波学園病院産科病棟で年4回行われている外国人対象のマタニティクラスのひとコマだ。やりとりは全て英語。終始フレンドリーな雰囲気で時折笑い声が混じる。 指導する助産師は玉置利香さん(46)。座学を終えると分娩室や病室を案内した。日本人向けの母親学級で分娩室を見学することはない。「マタニティクラスはお産の知識を得ながら友だちができる場。妊娠の段階で良い出会いがあると安心して出産できる。分娩室の見学はお産をイメージしてもらうため」と玉置さんはいう。 サービスより親身なケア 玉置さんは同病院の産科病棟に勤務する。3年ほど前、外国人の妊産婦が、安全性が疑われる母国のミルクを持ち込んだり、タイやインド出身の母親が冷たい水で赤ちゃんを沐浴(もくよく)させようとする場面を目の当たりにした。日本人でも母親学級を通して妊娠や分娩への理解を深めて安心して出産を迎える。言葉の壁がある外国人が母親学級に参加することはなく、母国と異なる病院環境に戸惑いと不安を覚えていると感じた。 病院に、外国人対象のマタニティクラスの開設を提案。一方で、出産後の育児を支援する訪問型の助産院を自身で開院しようと決意した。病院が願いを聞き入れ、マタニティクラスを受け持たせてくれた。英語が話せる後輩の助産師、岩瀬和恵さん(38)と共に同クラスの運営に取り組んでいる。 現在は妊婦外来や助産師外来、産後2週間検診に携わり、主に玉置さんが外国人を担当している。お産は夫婦の共同作業という意識の表れから、ほぼ100%の夫が分娩時に立ち会うという。一方、外国人は産後の祝い膳やマッサージといったサービスより、安全な医療と親身なケアを求めていることも分かった。 同病院産科病棟の飯田ひろ美看護師長は「国籍に関係なく、患者の要望に添える看護を目指している。マタニティクラスは後継者が育ちつつあり見守っていきたい」と話す。 助産院開院し出産後の育児支援 週2日、同病院での勤務を続けながら、玉置さんは昨年4月、外国人をメーンにした「Aina(アイナ)助産院」を土浦市宍塚に開院した。 英語が通じる助産院の開院を知った外国人ママたちがSNSで発信し、利用する外国人が増えてきた。授乳指導や育児支援をするほか、赤ちゃんの予防接種に付き添い、問診票に記載するなどの支援もしている。料金は県助産師会の規定に基づき1時間4000円以上。玉置さんは「コミュニケーション力を磨いて彼女たちを応援したいが、私を雇えない人もいると思う。かゆい所に手が届いていない」と話す。Aina助産院の問い合わせは玉置さん(電話080-4007-4245)。 (終わり)

金井宇宙飛行士が市役所訪問 つくば市の応援に感謝

【鈴木宏子】国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士として昨年12月から5カ月半、宇宙に滞在し、今年6月帰還した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金井宣茂宇宙飛行士(41)が26日、つくば市役所を訪れた。打ち上げ時や帰還時につくば市の応援を受けたことに対し、五十嵐立青市長に感謝の意を伝えた。 金井さんはフライトエンジニアとして、ISSの維持管理や運用、宇宙環境を利用した科学実験などに取り組んだ。 宇宙滞在を振り返り「宇宙での生活は意外に快適で不自由なかった。宇宙食もおいしいし、肩凝りもないし、夜はハンモックに揺られるようにすやすや眠れた。普通の人が宇宙旅行しても生活するノウハウは蓄積されていると感じた」と話した。もの散らかっているのが嫌いな性格のため、他の宇宙飛行士が出しっぱなしにしているカメラなどを片付けるなど、片付け係だったというエピソードも披露した。 今年2月、アジアや日本の学生たちが筑波宇宙センターの運用管制ルームで生中継を見守る中、学生たちから提案があった8つの宇宙実験を行った際は「宇宙でも学生たちのパワーを感じた」と話した。 帰還後の6月、つくば市は、金井さんに送る「おかえりなさいメッセージ」を市民から募集し、市民の寄せ書きをつくば駅前の商業施設BiViつくばに展示した。筑波宇宙センターでリハビリ中だった金井さんは会場を訪れ、居合わせた市民から「お疲れ様でした」などと声を掛けてもらったことがうれしかったなどと語った。 29日は筑波宇宙センターで催される特別公開で子供たち向けの講演会を開く予定。さらに全国各地に出向いて帰還報告などをする計画という。「経験をいろいろな人にお話しすることで宇宙を身近に感じていただけば」という。 ◆筑波宇宙センターの特別公開は29日(土)午前10時~午後4時。金井さんは「教えて!金井宇宙飛行士」と題して、午前11時30分~、午後1時~、3時~の計3回、子供たちと対話しながらの講演会を開く。入場無料、先着順。問い合わせは電話050-3362-6265(同広報部)

【多文化共生を支える】2 通訳ボランティアが患者に寄り添う

【橋立多美】つくばで暮らす外国人は昨年10月1日現在9106人。増加に伴って医療機関を受診する外国人は増えているが、日本で医療を受ける最大の障壁は言葉の壁だ。病院が医療通訳を配置するのは極めてまれで、医療従事者も英語以外の言語に対応できることは非常に少ない。 病状重く派遣回数が倍増 日本人と外国人の交流や、外国人の生活支援を目的とするつくば市国際交流協会が、09年から医療通訳ボランティアの無料派遣を行っている。派遣回数は年平均40回で推移してきたが、昨年は88回と倍増した。病状が重い患者が多く通院が長期化する傾向にあるという。 医療通訳の国家資格はない。同協会が開催する養成講座を受講し選考試験に合格後、ボランティア登録をする。個人情報の保護や患者の権利擁護などの倫理規定を学び、言語能力だけでなく、患者に寄り添う人間らしさなどが問われて選考試験は狭き門。合格したが患者の命を支える重圧から登録しない人もいるという。 在日外国人の母語としてニーズが高い中国語、英語、ポルトガル語、スペイン語に対応する30人の医療通訳者が登録されている。その中から通訳歴4年以上の4人に話を聞いた。 中国北京出身で中国語通訳の松永悠さんは「医者の説明を通訳するが、患者が本当に理解しているか確認を怠らない」という。通訳者が勝手に補足するのはタブーで、理解していない時は別の言い方を医者に頼むことがある。 松永さんとパラグアイ出身でスペイン語通訳の岩﨑克司さんは、患者のルーツや宗教に応じた対応を次のように話す。「日本なら薬を処方される程度の小児の病気でも中国では点滴するケースがあり、同じように保護者に求められた時は医療者の説明を通訳して理解してもらう。薬も大量に処方されるのが当たり前で、日本での数日分の薬に『これだけ?』と。それだけに薬の飲み方や回数は丁寧に通訳する」と松永さん。 岩崎さんは「宗教によっては重篤な状況をそのまま伝えず、フィルターをかけたほうがよい場合もある」と話す。また「患者の不安感を和らげるために予約の30分前に病院内で落ち合い、生活環境や困っていることを聞くことにしている。リピーターから、病院は嫌だがあなたがいるから来ると言われ、やりがいになっている」と話してくれた。 英語通訳の清原朗子さんは「日頃から医療用語や病気についての勉強を怠らないようにしているが、通訳当日は持ち込みが許される辞書を持参する。でも見る時間がなくて辞書はお守りです」と笑みを浮かべた。 9年前は認知されず 当初から中国語通訳として活動している伊藤春華さんは中国広西省出身。「医療通訳がスタートした9年前は活動が認知されていなかった。今は患者との関係づくりに役立つと医者や看護師から感謝される。円滑な診療と外国人への有効な治療が進められるよう続けていきたい」と語った。 同協会の中村貴之係長は「病気が重い患者が多いため、通訳者が感情移入し過ぎると気分が落ち込むようになる。医療通訳者をどうケアして守るかが課題」と話す。 医療通訳ボランティア派遣は市内や近隣地域の病院からの申し込み制。医療通訳に関する問い合わせは、つくば市国際交流協会(電話029-869-7675)。

【多文化共生を支える】1 言葉の壁越えるには 

【橋立多美】大学や研究機関、工業団地が集積するつくば市は、県内最多の外国人が住む多文化のまちだ。10年前と比べて約2000人増加し、留学生や研究者、就労者など143カ国の約9300人(市人口の4%)が暮らす。国が外国人労働者の受け入れ拡大に乗り出したことで一層の増加が見込まれている。 外国人のいる日常は今や当たり前になった。だが言葉の壁や文化、習慣の違いで彼らが戸惑ったり途方に暮れることは想像に難くない。彼らにどんな支援がされているのか。在日外国人の生活に密着した支援を3回シリーズで報告する。初回は、学齢期の子どもを中心とした言葉のサポートを紹介する。 半数が日本語指導必要 同市には日本語指導を必要とする小中学生が多く暮らす。市教委によると、市内の外国籍児童生徒は約350人で半数の約170人に日本語指導が必要という。主に市中心部の公立小中学校に在籍することから、小中9校に日本語指導の研修を受けた教員12人を配置している。学級を持たずに日本語指導に専念し、別教室で個別の指導も行われている。日本語が読めず、学校からの書類などが理解できない保護者とはスマホの翻訳機能を使ってコミュニケーションをとっているそうだ。 7月中旬、同市吾妻の筑波学院大学で来春の高校進学を目指す外国籍の中学生と家族が、通訳付きで日本の高等学校の仕組みを学んでいた。内容は小中学校との違い、高校の種類やカリキュラム、入試、偏差値、学費と多岐にわたる。台湾出身で龍ケ崎済生会病院の産婦人科医・陳央仁さんが高校進学体験談を語った後は個別相談に応じた。ブラジル出身の父親は「高校のことがよく分かり、娘の学力レベルと通学時間や経済面を考えて受験する高校を決めることができた」とほっとした表情を見せた。 国際交流協会が担い手に この「高校進学相談会」はつくば市国際交流協会(小玉喜三郎理事長)が主催。講師を務めた同大の金久保紀子教授は「子どもたちは日本に永住する可能性が高く、高校入試は避けて通れない。しかし日本の教育システムが分からず、公立の小中のように高校に入学できると思っている」と話してくれた。 夏休み期間中は小中学生対象の「こども日本語勉強会」が行われた。市内4地区の学校と公共施設で全12回開かれ、同協会のボランティアが指導にあたっている。つくばイノベーションプラザでの今夏最後の勉強会では、中国とインドネシア出身の児童5人が日本語を学んでいた。小2の男子児童の机の上には「けさはパンをたべましたか」など、日常会話を学ぶドリルが置かれていた。この勉強会は冬・春休みにも実施されている。 外国人とその家族を対象にした「日本語講座」も開講されている。初心者から上級者までの5段階で昼コースと午後6時30分からの夜のコースがある。同協会の中村貴之係長は「日本で生活するために日本語の習得は欠かせず、子どもは学習言語、大人は生活言語を学ぶ必要がある」と話す。 毎週水曜日には無料の「外国人のための相談室」も開かれている。家庭内のいざこざや給料未払い、DV(配偶者、恋人などからの暴力)などの相談が寄せられる。未払いやDVなど弁護士や専門家が介在すべき問題は、たらい回しされないよう確かな相談先に橋渡しをしているという。

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