【コラム・坂本栄】前回と前々回は五十嵐つくば市長の<元市議提訴~和解取り下げ>について検証しました。126「…市民提訴 その顛末を検証する」(2月7日掲載)では、杜撰(ずさん)な提訴など問題点を4つ指摘。127「…元市議の市政批判はウソだった?」(2月21日掲載)では、安易な目玉公約作りなど疑問点を3つ示しました。

こういった作業をしているうち、市長による元市議提訴が広報作戦の一環であったことに気付きました。今回はこの問題を取り上げます。

「発信の在り方を根本から検討」

2020年10月の選挙で再選された五十嵐市長は、選挙後最初の記者会見で「発信の在り方を根本から検討したい」と述べ、その理由として、①市の施策を知らない市民が多かった、②対抗候補も市政の基本を知らなかった、③市政について相当いい加減なことを書く人もいた―ことを挙げました。

詳しくは、記事「発信の在り方 根本から検討」(2020年11月5日掲載)、コラム95「つくば市長の『上から目線』」(2020年12月7日掲載)をご覧ください。

この会見は11月4日。元市議を名誉毀損で訴えたのが11月30日ですから、会見の時点で、ミニ紙「つくば市民の声新聞」(写真左)で五十嵐市政を批判した元市議(相当いい加減なことを書く人?)を提訴する準備が進んでいたようです。

2期目の市広報紙(写真右)を見ると、市民に市政情報を「PR色を抑え自然体」で提供するというよりも、「市民受けを意識した話題」が多く、割り引いて読むか、別の情報で補正する必要があります。市長は都合が悪い情報を隠すこともあり、コラム95(2020年12月7日掲載)、コラム126(2月7日掲載)の中で、その具体例を挙げておきました。

自慢話が多い市政広報。元市議提訴=批判封圧。五十嵐市長の広報強化と批判封圧はセットになっていたようです。コラム101「…市長の名誉毀損提訴を笑う」(2021年3月1日掲載)でも指摘したように、いずれも非民主国(中国やロシア)が好んで使う手法です。

広報紙と批判紙のセット配布を!

政策を批判されたら、「言論による名誉毀損にはまず言論で対抗すべき」という法理論に従い、言葉には言葉で応じるのが政治の作法だと、旧知の弁護士は言います。また、言葉で反論せず裁判に持ち込んだのは、批判者を萎縮させる狙いがあったのではないか、とも。

<元市議提訴~和解取り下げ>と<自慢話が多い市政広報>で、五十嵐市長の広報作戦は市民の信頼を失いつつあります。

そこで提案です。「対抗言論」の考え方を広報に導入し、市広報紙と市政批判紙(ミニ紙もその一つ)を一緒に市民に配ったらどうでしょうか。実現すれば、つくば市は民主市政のモデル都市「世界のあしたが見えるまち」になるでしょう。セット配布で、元市議提訴の失態を少し挽回できるかもしれません。(経済ジャーナリスト)