【コラム・坂本栄】つくばセンタービル改修で市の迷走が続いています。市にはこの程度の事業も企画・実施する力がないのかと思ってしまうほどです。久しぶりにこの問題を取り上げ、首をかしげざるを得ないところを整理してみます。

3カ月前の「五十嵐つくば市政 揺らぐその原点」(8月2日掲載)では、広く市民・市議・識者の意見を聴いて事業を進めるという五十嵐市政の原点が、センタービル改修事業では失われているのではないかと指摘しました。市政の基本スタンスを自ら崩し、それをどう繕うかと焦り出したことが、迷走の背景にあるようです。

市民を軽視 議会も軽視

市報10月号を見て思わず笑いました。センタービル改修説明の下に、この事業について意見を募集しているとの告知があったからです。現施設の一部解体が10月半ばから始まるというのに、今ごろ意見募集とはおかしなことです。五十嵐市政の基本からすれば、事業立案段階で市民の声を聴かなければならないのに、着手後に意見を聴くとは順番が逆ではないでしょうか。市民軽視です。

市の議会対応にも笑いました。記事「『資金調達現在進めている』 改修工事費用でまちづくり会社」(10月16日掲載)によると、議会(全員協議会)に呼び出された第3セクター(センタービルの一部改修と施設運営を担当する会社=市が筆頭株主)の専務(市から派遣)が、改修の資金計画を示すよう迫る市議の質問から逃げ回ったというのです。議会軽視です。

市議の議決行動にも笑いました。一部の議員が「センタービル工事を議会や市民に説明なしに拙速に進めないことを求める決議」を議会(臨時議会)に出したところ、そんなことをやっていると改修工事が遅れると、否決されたというのです。市民に選ばれたはずの議員の多くは、市民の方ではなく、市執行部の方を向いているようです。軽い議会です。

設計した著名識者も軽視

市の常識の無さも笑いました。改修する建物や広場を設計した著名人にろくな挨拶もせずに、その文化的価値を壊すような図面を描いていたからです。記事「市長、磯崎さんに面会熱望」(10月8日掲載)を読んで驚きました。情報開示請求で明らかになったメールのやりとりによると、市職員が磯崎事務所を訪れたのは1回だけ、市長はまだ面会もしていない、というのです。識者軽視です。

この問題を点検していて、市民・市議・識者の意見を大事にするという五十嵐市政の基本が吹き飛んでいることが分かりました。センター広場改修に反対する活動をしている冠木新市さん(脚本家)には、「喜劇・センター騒動」を書いてもらいたいものです。市に税金を納めている市民にとっては悲劇ですが。(経済ジャーナリスト)

参考 <拙速に進めないよう求める決議への市議の賛否(敬称略)

賛成:飯岡宏之、宮本達也、木村修寿、塚本洋二(以上自民党政清クラブ)/橋本佳子、山中真弓(以上日本共産党つくば市議団)/金子和雄(新社会党つくば)/小村政文(創生クラブ)

反対:黒田健祐、長塚俊宏、神谷大蔵、五頭泰誠、久保谷孝夫(以上つくば自民党・新しい風)/小森谷さやか、川村直子、あさのえくこ、皆川幸枝(以上つくば・市民ネットワーク)/小野泰宏、山本美和、浜中勝美(以上公明党つくば)/高野文男、中村重雄(以上創生クラブ)/塩田尚(山中八策の会)/木村清隆(清郷会)/川久保皆実(つくばチェンジチャレンジ)

欠席:ヘイズ・ジョン(つくば自民党・新しい風)/鈴木富士雄(自民党政清クラブ)