【コラム・坂本栄】前々回コラム(6月17日掲載)で予告した通り、土浦駅前にある図書館・古書店・新刊店のトップとの座談会が7月初めに実現しました。1館・2店の「売り」とコラボの可能性について聴く企画でしたが、実物の本を扱うお三方がネットの本屋(ネットで注文を受けて宅配/電子本を端末に提供するサービス)をどう見ているかも話してもらいました。

【土浦駅前「本屋」座談会】のやり取りは以下をクリックしてご覧ください。「駅ビルと近隣で進む『本のまちづくり』」(7月12日掲載)、「図書館+古本屋+新刊店による『ブック回廊』」(7月13日掲載)、「ネットとリアルの本屋は共存できる」(7月14日掲載)に3分割されています。

この企画、1昨年秋駅前に移った「土浦市立図書館」の入沢弘子館長の提案でした。5月下旬、土浦駅ビル「プレイアトレ」2階に新刊本屋「天狼院書店」がオープン。駅の近くには昔から「つちうら古書倶楽部」もあるので、図書館長と古書・新刊店主が会し、本をテコにしたまちづくりを議論したら面白いのではないか、と。当サイトがこのアイデアに乗り、実現したというのが舞台裏です。

新本宅配+貸本回収+古書発掘

天狼院の三浦崇典店主の話は愉快でした。同書店は、東京池袋、京都祇園、福岡博多に新刊を扱う店などを出していますが、そのモデルはユニークです。ひとつは、並べる本のジャンルを絞り込むセレクトショップ。もうひとつは、論文とか小説の書き方や写真の写し方などを教える講座を設け、本とリンクする体験を売りにしていることです。

三浦さんは、土浦店はオーソドックスな本屋にしたいと言っています。でも、かなり騒々しくなりそうです。というのは、入沢さんから駅を利用する高校生が多いと聞き、学生を活字中毒にしてしまおうと意気込んだかと思うと、本の宅配サービスを立ち上げ、貸出本の回収(図書館の仕事)と旧家に眠る古書類の発掘(古書店の仕事)も請け負う、3者コラボ案もぶち上げたからです。

このアイデアは、古書倶楽部の佐々木嘉弘代表の発言がヒントになりました。佐々木さんは体育館のように広い古書店を経営していますが、今は、古本の販売よりも古書類の買い取りが中心になっているそうです。著名作家の直筆手紙などを仕入れ、全国の好事家にカタログを送って販売する仕事です。

図書館をテコに駅前のにぎわいづくりを進める入沢さん。本をテコに知的ビジネスを構築する三浦さん。古本屋を古書骨董店に進化させる佐々木さん。土浦駅前の「本の回廊」は面白くなりそうです。(NEWSつくば理事長)

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