「アマゾン」はまったく問題ない
―実は私、本についてはアマゾンにおんぶに抱っこなんです。現物は宅配、探すのはネット、急ぐときは電子本と。お店に行く必要がない。皆さんどう考えますか。
三浦 まったく問題ないと思います。僕も使っていますし。あんな便利なものはないですね。古本の流通にも便利ですし。われわれにとっては障害とかではなくて、お客さんの利便がすべてだと思っています。本はお客さんが選ぶもので、僕ら提供する側が選んではいけない。僕らが提供できるものは何か、お客さんの要望に注目していればいい。
―天狼院もネットを使ったビジネスを何かやっていますか。
三浦 ネットでも売れるときはかなり売れます。いろんなところに真似されちゃったんですけど、「天狼院秘本」という、タイトルを隠して販売するやり方で、1000冊ぐらい売れました。
―古本もネット販売が主流になりつつあるということですか。
佐々木 共存と言いますかね。古本カタログに載せる本はネットに出ないので、こういうジャンルでは、店に引っ張るというのが一つの考え方です。
電子書籍の普及で売れなくなったのは、料理本とか趣味の本です。20年前まで、古本屋には、料理本、文庫、漫画は欠かせなかった。それだけで食っていけるぐらい売れていた。そがぴたっと止まった。そのとき私は、くせもの(骨董品)を勉強したんです。古いものの市場に行って、ネットとの差別化を図った。
―図書館とネットの関係はどうですか。
入沢 電子書籍の貸し出しをやっています。350タイトルぐらいで多くはありませんが。ほかの公立図書館に聞いても利用者はまだ多くありません。現状では本を手に取って見る利用者が多く、電子本は図書館の主流にはなっていないと感じています。
本の宅配と古本店・図書館のコラボ
―佐々木さんには、土浦の旧家に眠っているものを掘り起こしてほしい。話を元に戻して、3業態のコラボ案、まだありますか。
三浦 まだアイデアの段階ですが、先に触れた配達を始めるときは佐々木さんとコラボできますね。配達先のお客さんから「古い資料があるんだけれど、足腰が立たなくて古書倶楽部に持っていけない」と言われれば、僕らが「いいですよ、一緒に持っていきます」と言える。
実は僕、昔、中堅書店の店長をやっていまして、本の仕事は雑誌とか漫画の配達から始まっているんです。美容室とか歯医者に本を届けるのは、地域の本屋さんが担っていました。今はほとんどなくなっていますが。でも逆に、今やったら面白いんじゃないかと。
そうすると、古書倶楽部とコラボできますよね。「古い資料ありましたよ、佐々木さん」と伝える。「図書館から借りた本の返却が大変」と言われれば、その返却を引き受け、図書館ともコラボできる。
―土浦でそうした分野でトライしてもらい、コラボモデルができると面白い。

「本の通帳」 大人にも広げたい!
入沢 土浦って、小学生が結構、本を読んでいるんです。もっと読んでほしいと思い、去年の秋から「本の通帳」というのを始めました。借りた本を記帳機で通帳に記帳するというシステムです。地元の4金融機関に計120万円を出していただき、通帳を5000冊作りました。
三浦 僕が今、全国的に勧めているのは、給料の1割を使って本を買えということです。「本の通帳」は大人にもすごくいい。
入沢 子どもに本を読んでもらいたいので、小中学生を対象にやっているんですが、大人には「自分で手帳に書いてください」と言っています。(笑)
三浦 だめです(笑)。僕らは、ゼミが終わったら、シールをお渡しする贈呈式を毎月、大人にやっています。修了証みたいなものを発行しているんですが、皆さん、拍手喝采です。「本の通帳」だと活字中毒になりますね。増える楽しみがあるじゃないですか。
なかなか手に入らない高級限定本
―キーワードは活字中毒ですね。これからの古書店のキーは何ですか。
佐々木 昭和以前の貴重な本を残していくというのが私の考えです。景気がよかったころ、京王百貨店でやっていた古本市では、1週間で億単位、1日数千万の売り上げがありました。(催事は)駅弁か古本かと言われたものです。開店と同時にお客さんが走ってきて、1冊しかない高級本を奪い合って…。
三浦 本の作り方も、そっちに行った方が面白いかもしれませんね。高級にして、100年残る本にした方がいいかもしれません。
佐々木 そういう本もあるんです。本革装で小口にマーブル加工されて限定10部とか。これからは、貴重だと思う本はそういう作りをした方がいいと思いますが、技術者がドンドンいなくなっているんです。手作り感がすごくあって本当にいいんですが…。
三浦 102歳で亡くなった、カメラマンの熊谷元一さんと本を作ったことがあります。熊谷さんの家に貴重な本、会員にならないと入手できない手作り本があったんです。そういった本は会員じゃないと買えないから、次の人は会員が亡くなるのを待っているんです。そういう世界をもう一回つくったら面白いかな。
―話が大分広がってきました。今日は有益なお話、ありがとうございました。(おわり)
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