【コラム・坂本栄】今回は201「知事選の年、つくばの県立高問題は動く?」(2月3日掲載)の続きになります。茨城県全体としては県立高校が余っているのにつくば市では足りないというこの問題、もう少し検証する必要があると思うからです。
県、クラス増と広域通学で対応
前回の要点は、①県内12エリアで県立高が足りないのはTX沿線エリアだけである、②県はこのエリアに県立高を新設して中卒者と保護者の不安を解消すべきと私は考える、③ところが県は既存高のクラス増と近隣市高への通学勧奨で対処している、④知事はこういった場当たり策でなく抜本策を示すべきではないか―といったものでした。
その際、県がまとめた「県立高等学校の今後の募集学級数・募集定員の見込み試算」(2024年10月発表)に掲載された表(エリア別過不足一覧)と図(つくばエリア県立高一覧)を使わせてもらいました。この試算には上記③の正しさを立証しようとする表(今後8年の見込み、下に掲載)も載っています。

上の表を踏まえ、県は「(つくばエリア)7市(つくば、常総、つくばみらい、守谷、土浦、牛久、下妻)の中卒者が最大になるのは2028年であり、24年に比べると180人増える」「24年の筑波高校とつくばサイエンス高校の欠員は合計で194人」とし、今後増える中卒者は両高の余裕で吸収できるから「現行の募集定員で足りる」との結論を出しています。
つまり、サイエンス高の2学級=80人増(23年実施)、牛久栄進高の1学級=40人増(24年実施)、筑波高の進学コース設置(普通科3学級中の1学級、24年実施)、サイエンス高の普通科設置(科学技術科6学級中の3学級、25年実施)によって、つくばエリア県立高の量と質の問題は解決できるということです。
「下り坂の県」と「上り坂の市」
前回書いたように、県の見込みと不足解消策に対し「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡代表)と五十嵐つくば市長は異を唱えています。そして、TXつくば駅に近い進学校・竹園高校のクラスも増やすべきだと主張、市長は校舎増築費を市が負担してもよいと先の選挙で公約しました。県立高のキャパシティとそのコンセプトについて市と県が対立する構図です。
県全体を見ている県としてはTX沿線エリアを特別扱いできません。そこで、広域(つくばエリア7市)で問題に対処すると同時に既存高に少し手を加えるという策を立案しました。しかし、こういった場当たり策では成長エリア・つくば圏の魅力が損なわれるでしょう。
2年半前、洞峰公園問題と県立高問題を扱った139「上り坂の市と下り坂の県のおはなし」(2022年8月15日掲載)で、私は「県立高問題は、県を当てにせずに市立高をつくり、つくば市が自分で解決したらどうか」「県と市が置かれている状況と方向が違うのだから、市は県から『独立』したらどうか」と提案しました。
状況の違いとは、人口が減少し財政も楽でなくなった「下り坂の県」と、人口が増加して地域に活力がある「上り坂の市」ということです。こういった社会経済構造上の変化が県立高問題の根っこにあるような気がします。
「独立」の大風呂敷案としては、「上り坂」のつくば市を中核とする人口50万以上の政令指定都市を設け、「下り坂」の県から「独立」するアプローチが考えられます。神奈川県における横浜市のイメージです。県が示した「つくばエリア」7市の人口は合計約70万ですから50万要件はOKです。(経済ジャーナリスト)