【コラム・坂本栄】日本自動車研究所(JARI)が研究学園駅の南側に保有している未利用地(つくば市学園南、約16ヘクタール)が売却されるそうです。この土地の活用案を公募する「サウンディング(良案収集)」が昨年11月に実施され、近く、取得希望企業から活用計画や購入価格を出してもらう「プロポーザル(事業提案)」が公募されるようです。年内には活用計画と開発企業が決まるのではないでしょうか。
つくば市に残された「一等地」
日本自動車工業会の関係組織JARIのつくば研究所には、楕円形の高速テストコースが設けられていました。ところが敷地内をTXが横切ることになり、2005年、テストコースは水戸市の左上に位置する城里町に移されました。建物などはまだ残っていますが、使っていない広い用地を処分することになったようです。
未利用地はTX線とエキスポ大通りに挟まれた場所にあり、「つくば市に残された一等地。坪(3.3平方メートル)50~60万円はする」(不動産業者)そうです。坪100万円以上する研究学園駅北側の駅前通り沿いに比べれば安いものの、16ヘクタールだと土地だけで240~290億円。これに建物などへの投資が加わると、かなりビッグな開発事業になります。
未利用地の取得を考えている開発会社によると、土地は準工業地域で、建蔽(けんぺい)率60%、容積率200%だそうです。この条件だと、戸建て住宅の建設は無理ですが、マンションは建てられるそうです。オフィスビル、商業店舗、ホテル、軽工業工場、物流倉庫などもOKということです。10数社が公募に応じるとの情報もあり、どんな計画が提案されるのか注目されます。
同地区開発に強い関心を持っている不動産業者は「価格優先で売却するなら、マンション開発業者か物流倉庫業者が落すだろう。事業の採算性を考えれば、どちらの業者も高い購入価格を提示できるからだ。ただ、JARIは売却額にこだわらず、つくばの都市づくりに配慮した開発提案を採用するのではないか」と予想しています。
「スーパーアリーナ」を望む声も
今のところ、研究学園駅南の開発に県や市が関与するとの情報はありません。先の不動産業者は「さいたま市の(スタジアムやホールなどが入る)スーパーアリーナのような公共施設が整備されれば、つくば市の目玉になり、東京からもTXで人を呼べる。県や市が主導してそういった施設を建てれば面白いが、県と市の(ギクシャクした)関係からすると、とても期待できない」と残念がります。(経済ジャーナリスト)
<参考>JARIに未利用地処分の詳細を問い合わせたところ、広報担当者は「公募の公平性に影響を与える可能性があるため回答が難しい」とし、公募については「4月上旬をめどに準備を進めている」と回答してきました。