【コラム・坂本栄】つくば市政が滑稽なことになっています。広く意見を聴いて施策を進めるという五十嵐市政の基本がお留守になり、市民の関心が強い事業の策定作業がオープンになっていないと、市民グループから批判されています。五十嵐さんは執行部主導で施策を進めた前市長を批判する運動を繰り広げ、その勢いに乗って市長になった人です。ところが、その原点ともいうべきところを突かれるという、おかしな展開になってきました。
「住民監査請求」棄却理由が傑作
問題になっている事案は「つくばセンタービルリニューアル事業」(総事業費10億3800万円)です。市民グループが、この事業は10億円以上を費やす案件だから、策定に際しては広く意見を聴かなければならない大規模事業に当たるのに、その事業評価が不十分だったと、5月中旬、市に住民監査を請求しました。詳しくは「…18人が住民監査請求」(5月12日掲載)に出ています。
7月中旬、市監査委の監査結果が市民グループに郵送されましたが、市の見解を踏まえてまとめられた結論は「大規模事業評価の対象にしなくてもよい」でした。そのポイントは「監査請求を棄却…」(7月14日掲載)をご覧ください。
棄却理由が傑作です。再生事業を担う会社「つくばまちなかデザイン」への市出資金6000万円は事業費ではないから、この額をマイナスすると事業規模は10億円を下回り、大規模事業の定義(総事業費10億円以上)に当てはまらない、という理屈でした。しかも、出資金をどう扱うかは公表されておらず、市職員マニュアルに書かれていたというのです。アウトかセーフかを決めるルールが非公表では、野球も行政も成り立ちません。
自慢の「大規模事業評価」を回避
前市長の大規模事業(総合運動公園建設)策定が執行部主導であったことから、そういった閉ざされた策定作業を反面教師とし、五十嵐さんの手でまとめたのが「大規模事業評価」です。ところが、その事業評価を回避するため、(出資金も一般事業費も税金なのに)出資金は合計から外すという計算式で、市長自慢の評価作業から逃げました。五十嵐市政の(市民の声に耳を傾けるという)原点はどこに行ったのでしょうか。
センタービルリニューアル事業では、市案の「エスカレーター2基設置」も市民の反対に遭い、見直しを迫られています。事業策定だけでなく、事業内容そのものも「NO」と言われているわけです。市長在任5年。何か実績を残さねばと焦っているのでしょうか? 市民の関心が強い事業については評価作業を行う。これが五十嵐流だったはずですが。(経済ジャーナリスト)
追記:上記の展開については「つくば中心地区再生 出だしでつまずき」(5月17日掲載)でも取り上げました。ご参考まで。