火曜日, 4月 30, 2024
ホームつくば「1基は無くてもよい」で一致 エスカレーター計画で市議会 つくばセンタービル

「1基は無くてもよい」で一致 エスカレーター計画で市議会 つくばセンタービル

つくばセンタービル(つくば市吾妻)のリニューアルで、市がセンター広場にエスカレーターを2基建設する計画を立てている問題(4月27日付)を扱う市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会(ヘイズ・ジョン委員長)が3日開かれた。エスカレーターを計画通り2基設置すべきかなどについて各会派が意見を出し合った結果、議会として、北側(ホテル日航つくば側)の1基は無くてもよいとする意見で一致した。

市は、今回の議会の意向を踏まえて改めて検討し直し、結果を議会に示す。3月時点では、エスカレーターを2基設置する内容の実施設計を6月にも発注する予定だったが、ずれ込む見通しだという。

一方、今回は「西側(クレオ側)のエスカレーター1基をつくって(2基目は)改めて検討する方がよい」などとする意見と、「つくばセンタービルは文化財的価値が高い建造物なのだから2基とも設置する必要がない」などの意見に分かれたほか、新たに「北側(ホテル側に)にエスカレーターではなくエレベーターを設置してはどうか」などの意見が出された。特別委では、市民活動拠点の配置なども含めて今後さらに検討する。

各会派の主な意見は次の通り。(鈴木宏子)

2基が妥当、妥協点として1基でもよい

つくば自民党・新しい風(発言者は黒田健祐市議)エスカレーターを2基つくるのが妥当だが、妥協点として1基でもよい。視認性、回遊性をみても2カ所が妥当。ソフト面とハード面、両輪で推進することを考えた場合、中心市街地まちづくり戦略全体の中で、ハード面が先行し、議論の的になっている。2基が妥当な考えだが、活性化した姿を前提に、まちづくり戦略を進めていく中で、1基造って様子を見て、もう1基つくるという考え方もある。市民活動拠点は原案通り。

2基ともいらない

自民党政清クラブ(飯岡宏之市議)2基ともいらない。市民への説明が足りない。市の顔である建造物をいじるのはいかがなものか。景観と費用対効果の観点から2基ともいらない。2階から1階に行く動線を考えても、市民がエスカレーターで1階に降りるということではない。エスカレーターを設置したから人が行き来するようになるかどうか分からないところに設置するのはいかがなものか。

ホテル側はエレベーターに

つくば・市民ネットワーク(皆川幸枝市議)北側(ホテル側のエスカレーター)は無し、西側(クレオ側)のみ1基だけつくる。障害当事者と現地を確認した。北側エレベーターはセンター広場の手前で止まってしまい(広場までは)スロープか階段で移動することになる。スロープは角度が急で、車いすの一人での上り下りは危険。その部分にエレベーターを設置する方が重要。(改修計画では既存のV字型の)階段をL字型にするが、手すりが設置できない。(既存の)階段に手すりを設置することを提案したい。▽市民活動拠点は、つくば駅周辺で住宅の建築が進むので、行政の案内をするコンシェルジュを置くことを提案したい。(市民活動拠点の)公共スペースは狭いという指摘があるので、(市役所の)窓口事務室をBiViつくば2階に移動させ、その分、キッズスペースを設け、子供連れの親子が集える場所をつくったり、授乳室を設けてはどうか。市民活動を増やしていく機能も求められる。吾妻交流センターの各部屋の利用状況を調査し、畳の部屋が必要か、調理室の使用頻度が高くないなら調理以外も利用できないか、ダンスも盛んなので音楽室の壁の1面全部に鏡を付けたりなどを検討すべき。

外観の改修行うべきでない

公明党つくば(小野泰宏市議)つくばセンタービルには(設計者の)磯崎新氏の深い哲学や理念があり、こうした下地があって、重要な文化財的価値がある。2階(ペデストリアンデッキ)から見る劇場型広場(センター広場)など、価値を市民に周知すべき。つくばならではの財産だ。動線は、既存のエレベーターの利便性を高めるなどするのが適切。外観に関わる大規模改修は行うべきではない。市民活動拠点は、概ね市執行部提案に同意する。

西側の1基のみでよい

創生クラブ(中村重雄市議)エスカレーターは西側(クレオ側)の1基のみでよい。北側はV字型の階段を残し、デザインや費用の面から、エスカレーターがよいか、エレベーターの方がよいか、数年後に検討すればよい。液晶パネルなどを使って、誘導・案内看板を増やし、動線を表示したらよい。市民活動拠点は市執行部提案に賛成。

西側の1基で足りる

つくばチェンジチャレンジ(川久保皆実市議)エスカレーターは西側の1基で足りる。費用対効果を考えると、エスカレーター1基のひと月当たりの経費は46万円。市民活動拠点1日当たりの利用人数は平均200人、働く人を支援する場は2000平方メートルなので1日当たりの利用者は多く見積もっても400人。計600人の利用人数のために2基設置するのは費用対効果から適切ではない。(エスカレーター設置の目的は)視認性や回遊性を高めるためということだが、市民活動拠点も、働く人を支援する場も、明らかな目的をもった人が行く場であり、雑貨店やカフェのような、目に付いたからふらっと行くというのは低い。エスカレーターで人を誘導するというのは低い。▽市民活動拠点は乳幼児の授乳室などはあるが、靴を脱いで上がれるキッズスペースがあったらいい。窓口センターの待ち時間に利用できるように設置してほしい。

シンボル壊す2基ともいらない

日本共産党つくば市議団(山中真弓市議)エスカレーターは2基ともいらない。つくばセンタービルは歴史的な価値の高い建造物であり、つくばのシンボルを壊してエスカレーターを設置するのは反対。センター広場には筑波山ジオパークを凝縮したような造形部分もある。エスカレーターを設置してほしいという要望が市民から多く寄せられているわけでもない。バリアフリーのためには案内板を設置して動線を行き来しやすいようにしたり、既存のエスカレーターを改修することで解決すべき。▽公共エリア(市民活動拠点)は面積が十分でない。市民の声が生かされている改修計画になっていない。市民の声を生かして、1階の(市民活動拠点の)面積を広げるべき。オフィスありきで考えるのであれば、吾妻交流センターや消費生活センターを生かすなど、いろいろ検討すべき。議会としても執行部も、市民の声を聞く場を設けるべき。

西側設置し様子見て

清郷会(木村清隆市議)エスカレーターの需要がどの程度あるか、西側(クレオ側)の1基を設置して、その後、様子を見て、検討すればいい。▽青少年や若者が集える場をより多くしてほしい。(つくばセンター研究会から出された要望書=6月1日付=に)「市民の意見を十分聞いてない」とある。市は、時間を掛けて市民の声に耳を傾けてきたと思うが、そういう声があることを真摯に受け止め、説明の仕方を工夫し、新たな周知の仕方をお願いしたい。

丁寧にやるべき

新社会党つくば(金子和雄市議)つくばセンタービルは今日まで40年くらい、つくばの中心的役割だったが、店舗が撤退したり、民間が出て行ったことは事実。そういうときにどうしたらいいか。歴史的建造物なので、どう改修するか、丁寧にやるべき。エスカレーターが必要か、必要でないかだけでは解決できない。今あるものをどうやって利用して(現状を)乗り越えていくかに力を注ぐべき。

【7日訂正】つくばチェンジチャレンジの川久保皆実市議の発言で「エスカレーター1基の1日当たりの経費は46万円」とあるのは「ひと月当たり」の誤りです。お詫びして訂正します。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

107 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

107 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

「竹」でイッポン! 並木中等6年生 保水性舗装研究引っ提げ米国へ

高校生たちが自由研究の成果を競うコンテスト「JSEC2023(第21回高校生・高専生科学技術チャレンジ)」で上位入賞した県立並木中等教育学校(つくば市並木、柴﨑孝浩校長)の野末紗良さんが5月、米国 ロサンゼルスで開かれる世界大会「国際学生科学技術フェア(ISEF)」に日本代表として挑む。竹材から取った繊維を舗装材に使うことで保水性を高め、都市部で気温が上がるヒートアイランド現象の対策に活用できる可能性を示した。野末さんは高校の3年生にあたる同校6年次生。昨年行われたJSEC2023に「竹繊維保水性舗装によるヒートアイランド現象への挑戦」をテーマに研究を発表した。全国174校の634人から、過去最多の343件の応募があり、審査でJFEスチール賞を受賞した。副賞として協賛社から学校に、100万円相当の位相差顕微鏡が贈られている。理数系のコンテストに数多く参加し県内きっての実績を誇る同校だが、野末さんは科学部所属ではなく、中学入学時から剣道部員という異色の理系女子だ。母親が民間企業の研究職という家庭で育ったが、夏休みの自由研究などに熱中し、ずっと独力で取り組んできた。剣道を始めて、竹刀を通じて素材としての竹に興味を持った。木刀と違って竹刀は打たれてもそんなに痛くない。竹がしなって衝撃を吸収するのは保水性のためと知った。入学しての3年間は素材研究に取り組み、竹を繊維化すると吸水性が向上し、繰り返し吸水できることを調べた。5年次になって、保水性を生かした竹繊維の実用化研究に取り組んだ。舗装のすき間に吸水・保水性のある注入材を使う「保水性舗装」は、路面温度の上昇を抑える機能が注目され近年施工例を増やしている。水分の蒸発時に気化熱を奪って温度を下げる効果、いわゆる「打ち水」の原理に通じる。コンクリートはセメントに砕石や水を加えて作るが、保水性舗装には吸水ポリマーやゼオライトなどの保水材を混ぜている。この材料を竹繊維に代えてサンプルを作り、吸水試験による他の吸水材との比較、経年劣化試験による耐候性及び疑似舗装を使った効果の検証を行った。水酸化ナトリウム水溶液で竹繊維を作り、電子顕微鏡で観察するなどの研究は学校の実験室で行い、ホームセンターで購入した材料でサンプルのコンクリートを作って自宅で実験を繰り返した。その結果、通常のコンクリートに比べ路面温度が約5℃低くなる効果を確認できたという。竹は周辺の竹林の孟宗竹、真竹を利用した。野末さんは「地域では(放置竹林が周囲に侵入、拡大する)竹害が深刻化している。竹繊維の利用を進めることでヒートアイランド以外の環境対策にもつながると思う」と語る。5月12日から18日まで開催のISEFへは、JSEC2023で上位入賞した10研究が派遣される。並木中等科学部の粉川雄一郎教諭によれば、同校からは9年ぶり2人目の参加となる。現地では審査員を前に2分間のスピーチを含む15分間のプレゼンテーションを行う。発表やポスター展示の資料はすべてが英語だが、これらも準備作業を終えた。「剣道では目立った成績は上げられなかったが、竹について真剣に5年間取り組めたのはよかった。アメリカでは竹への関心があまりないみたいなので、どんな反応が返ってくるか楽しみ」と野末さん。将来は「新素材・新材料の研究者になりたい」そうだ。(相澤冬樹)

ソメイヨシノとヤマザクラが同時に満開 気象と開花の謎

【コラム・榎田智司】地球温暖化の影響なのか、今年も季節が早く進んでいる感じがする。筑波山麓では今春、ソメイヨシノとヤマザクラの開花と満開の時期がほぼ同時だった。 筑波山麓で活動するつくば環境フォーラムの理事、大塚太郎(54)さんは「今年はソメイヨシノとヤマザクラ、さらには桃までが、同時に咲いた印象がある。フキノトウ、タラノメなども一気に大きくなり、いきなり収穫という感じになった。近年の温暖化傾向はずっと続いており、今後の対策として12月に収穫するコメを作る計画をしている」と述べる。 ヤマザクラで有名な桜川市役所観光課に問い合わせると「毎年ヤマザクラはソメイヨシノよりも1週間ほど遅く開花していたが、今年はほぼ同時だった。暖冬傾向の中で3月上旬の気温が低かったためではないか」という。 水戸地方気象台の発表ではソメイヨシノの開花は3月31日、満開は4月8日。県内の開花は平年通りだったが、近年の温暖化傾向の中では、遅い桜とも感じた。一方、九州地方から東北地方南部までの開花の差が3日ほどしかなかった。 振り返ると2024年の年明けは比較的温暖で、2月中旬には春を思わせる気温となり、このまま暖かくなるかなと思ったら、3月上旬は気温が下がり雪が降ったこともあった。ソメイヨシノは2月1日からの最高気温の積算が600度に達すると開花するという法則があるといわれるが、今年の開花時は積算が768度になっており、62年ぶりに予想が外れたといわれる。テレビでは気象予報士の森田正光さんが、これも暖冬の影響で、冬の間に十分な寒さがないと「休眠打破」が出来ずに開花が遅れたのではないかと推測していた。 一般に、ヤマザクラの開花は関西ではソメイヨシノより早く、関東では遅いと言われる。仮説としてあげられるのは、ソメイヨシノは1本の木から生まれたクローンだが、山桜には多様な種類があるために起こる現象ではないかとも言われているそうだ。開花と気候をめぐる謎は深まるばかりだ。(NEWSつくばライター)

宇宙へのあこがれ 80mのアートに 今井義明さん 1日から県つくば美術館

画材一式を背負って世界各国をめぐり、現地で人間や環境をテーマにしたアート制作に取り組んできた画家の今井義明さん(81)=かすみがうら市在住=の展覧会が1日から県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まる。宇宙への思いのたけを幅1メートル×タテ1.7メートルのパネル80枚に描き、全作を横並びに連ねて展示するというスケールの大きな展示会で、「ゴールデンウイーク中の子供たちに観てほしい」と来場を呼び掛けている。 143回目となる展覧会は「未来へ宇宙オリンピア」がテーマ。人類の宇宙へのあこがれに、想像力を羽ばたかせたアクリル画80枚を展示室の中空に吊り下げる。1枚1枚のパネルを屏風状に連ねて吊り下げるため、美術館保有のワイヤーでは不足が生じ他館から調達して間に合わせるという前代未聞の展示法になる。 1960年代に画業をスタートさせた今井さんは車に画材や生活用具一式を積み込み、全国各地で野外絵画展を開き、93年までに全国47都道府県を巡回した。97年からはバックパッカーとなって世界各国をめぐり、中国を皮切りに5大陸を踏破して 2006年には世界一周達成展を開催、20年の「万葉集・花展」までに142回の展覧会をこなし、人類や環境をテーマとしたアートを発表し続けてきた。 さらに宇宙へとイメージをふくらませた展覧会を東京五輪に合わせ20年に企画したが、折からのコロナ禍で断念。今回は早々につくば美術館のゴールデンウイーク中の日程を押さえ、4年越しの開催に漕ぎつけた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙センターが所在し、つくばエキスポセンターも最寄りに立地する美術館で、是非とも開きたかった会場という。 「宇宙への夢を実現するのはいつも子供たちだから、この奇想天外な世界に遊びに楽しんでほしい」と今井さん。4年前の制作物を描き替え、描き加えてパネルの総延長は約80メートルになる。照明を落とし宇宙に見立てた80メートルの空間を、子供たちが聖火トーチを持って走るイメージの趣向も考えているそうだ。(相澤冬樹) ◆今井義明展は5月1日(水)~6日(月)、県つくば美術館。入場無料。電話0299-59-4152(アートセンターイマイ)

乳がんについて知っておきたいこと《メディカル知恵袋》4

ありふれた病気 【コラム・乳腺科医師】乳がんは今や日本人女性の9人に1人が発症する時代となりました。好発年齢が40代および60代と社会や家庭で活躍する年齢層であり、乳がんの発症によりその重要な役割を充分に果たせなくなることは社会問題であると言えます。 罹患率こそ女性第1位でありますが、5年相対生存率(あるがんと診断された場合に治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標の一つ)は92.3%(2009~11年:がん情報サービスがん統計より抜粋)と決して低くありません。ただし病期(ステージ)が進むにつれ治療も難しくなるので早期発見・早期治療が肝心です。 初期治療 乳がんの初期治療には、手術、放射線療法といった局所療法と薬物による全身療法があります。最適な治療方針を決定するためには組織診断と画像診断が不可欠です。乳がんが非浸潤(ひしんじゅん)がんか浸潤がんか、リンパ節やほかの臓器に転移をしていないかなど、がんの進行度や特性に応じて治療を行っていきます。 非浸潤がんは、乳管・小葉内にがんがとどまっている状態を指し、局所療法のみで根治可能です。浸潤がんは乳管・小葉周囲にがんが広がった状態であり、すでにリンパや血液の中にがんが潜んでいる可能性があることから、それらを根絶するために全身治療が必要となります。 局所療法 乳がんの手術は乳房と領域リンパ節にある病巣の切除からなります。乳房の手術は乳房をすべて切除する全切除と、病巣を切除する部分切除(乳房温存術)があります。乳房温存術は病巣が小さい、限局しているといった適応となる条件があり、術後は残った乳房に放射線療法を行う必要があります。全切除では、乳房の喪失感を補うために乳房再建術を同時に行うことも保険適用で可能です。 領域リンパ節の手術は、術前に明らかなリンパ節転移を認めない場合に「センチネルリンパ節生検」を行います。センチネルリンパ節とは、リンパ流に乗ったがん細胞が最初に転移するリンパ節のことです。センチネルリンパ節に転移を認めなかった場合にはそれより奥のリンパ節の郭清(根こそぎ切除する)を省略可能であり、上腕の浮腫や知覚鈍麻の発症を防ぐことができます。術前からリンパ節に転移を認める場合やセンチネルリンパ節に転移を認めた場合にはリンパ節を郭清(かくせい)します。 全身療法 薬物療法には、ホルモン療法、化学療法(抗がん剤治療)、分子標的薬療法、免疫療法があります。乳がんの約7割はホルモン受容体陽性で女性ホルモンの一種であるエストロゲンにより増殖が促されるため、エストロゲンを抑える治療を行います。  HER2(がん細胞の増殖に関係するタンパク質)陽性乳がんには、抗HER2療法を用います。化学療法はがん細胞に対する効果が期待されると同時にがん以外の正常な細胞に影響を与える可能性があり、適応や使用には十分に注意します。 脱毛や悪心などに代表される副作用に対する支持療法も発展してきています。近年では、ホルモン療法にCDK4/6阻害薬という分子標的薬を併用したり、化学療法に自己の免疫を賦活化させる免疫療法を併用させたりすることで、再発予防効果が高まることが知られています。 遺伝も関連 乳がんの5~10%はその発症に遺伝が関連していると言われています。親から子に受け継がれる遺伝子に変化を認めることで、がんを発症しやすくなる体質のことを遺伝性のがんといいます。 その中でも、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変化を認めることを「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)」といい、乳がんの約5%でみられます。生涯にわたり乳がん、卵巣がんを発症する確率が高いほか、前立腺がんや膵(すい)がんの発症とも関連していることがわかっています。HBOCの場合、がんを発症していない側の乳房や卵巣の予防的な切除や遺伝子の変化に対応した治療薬による治療を行うことが可能です。 1人ひとりに合った治療を提供 このように、乳がん治療は多岐にわたります。それに加え、仕事や学業、妊娠・出産、子育てなどの生活との両立に悩まれる方も多いのではないかと思います。治療のためだからといって、すべてを諦める必要はありません。必ずあなたに合った治療があると思います。私たちは、1人ひとりの患者さんに合った治療を提供していけるよう、日々診療を行ってまいります。(筑波メディカルセンター病院 医師)