【コラム・沼田誠】フェイスブックを眺めていたところ、千葉県の熊谷俊人知事の投稿が目に入った。少子化対策に関するもので、子どもの医療費や保育料の助成を競ってきた自治体の施策の多くは、少子化対策というより「社会増の奪い合い」だったのではないか、という指摘である。
千葉では全市町村が、高校卒業相当の18歳まで医療費を助成している(茨城でいうマル福)が、県内の出生数は9年で28%減ったという。知事は施策を、お金の支援と、可処分時間・子ども部屋を持てる住環境・出会いを整える策に分け、自治体が力を入れるべき施策は後者だと主張している。今回はこの指摘を踏まえ、つくば市と水戸市の施策をチェックしたい。
水戸は重要課題、つくばは人口増加
水戸市は人口減少を最重要課題に掲げている。2026年度は、給食費の無償化に13.1億円、第2子の保育料無償化に3.39億円を充てている。住まいを支える補助もあるが、規模は小さい。
気になるのは指標だ。第2次総合戦略は出生率1.70を目標にしたが、現行の第3次戦略の指標(概要版)に出生率はなく、年少人口や子育て世帯の社会動態が並んでいる。転入と転出の差を目標にするのは、熊谷知事の言う「社会増」の物差しそのもので、明確な転換があったようだ。
つくば市はどうか。2028年度の市長所信表明に「少子化」の用語は見当たらない。強調されたのは、人口増加率が全国第3位ということだ。第3期戦略プランでも、少子高齢化についての言及はあるものの、施策としてはパッケージ化されていない。対策として明示されているのは、不妊治療費助成(上限4万円)くらいだ。
両市の内容を整理すると、水戸は少子化対策を掲げ、手段はお金による支援が中心。つくばは転入によって人口が増えていることもあり、少子化対策を前面に出していない。
出生率、つくば1.49、水戸1.42
出生率はどうだろうか。厚生労働省の2018〜22年の5年間の推計値では、つくば市は1.49、水戸市は1.42、茨城県は1.34、全国は1.33。人口が増えも減りもしない水準(置換水準)は2.07で、いずれもこの数値には遠く及ばない。つくば市と水戸市に共通するのは、それぞれの施策が出生率に効いたかを確かめる数字が見えにくい。
出生率低下は、労働力の確保や社会保障制度の維持に関わる課題である。OECD加盟国のほとんどで出生率は置換水準を下回っているが、日本はその中でも下位に位置する。もちろん、婚姻や出産は個人の自由であり、強制できるものではない。だからこそ、婚姻や出産をしやすい環境だけは十分に整える必要がある。基礎自治体のレベルから、対策を間違えないことが重要なのではないか。
そうした環境を整えることは、結果的に他の世代にも住みやすい社会をつくることになるのではないだろうか。(元水戸市みとの魅力発信課長)





