土浦一高哲学部がNEWSつくばで3月から4月にかけて連載したコラム「放課後の哲学」が、あっぷる出版社から書籍として刊行された(8月20日付)。これを記念する出版記念イベント「『放課後の哲学』ができるまで」が13日、土浦市のがばんクリエイティブルーム(同市中央)で開かれた。執筆を担った哲学部員や卒業生、顧問教諭ら9人が登壇し、書籍が生まれるまでの道のりや部の活動、それぞれが哲学や対話に寄せる思いを語った。会場には20人余りの参加者が集まり、耳を傾けた。
土浦一高哲学部は、もともと同校の文芸・弁論部内の一班「哲学班」として始まり、2025年に独立した部として成立した。哲学カフェを中心に、哲学書の読書会や哲学史の勉強会に取り組んでいる。2024年からは、がばんクリエイティブルームを会場に、市民も交えた哲学カフェ「語るカフェ」を開催。企画・運営はすべて生徒自身が担い、これまでに6回を数える。
書籍には、2026年3月から4月にかけてNEWSつくばに掲載された哲学部員9人と顧問教諭によるリレーコラム全10本のうち8本を収録。これに新たに執筆を希望した部員や卒業生らによる書き下ろしを含む22本を収録した。部員たちは8月、つくば、土浦市内の書店を実際に訪ね、自らの手で本をPRして回った。9月7日から全国の書店への配本が始まった。

一人で考えていたこと
文芸部でも活動する2年の岡田陽菜さんが手がけたコラムは「なぜ私はフィクションを求めるのか」。普段から小説を書いているという岡田さんは、執筆のきっかけについて「自分がなぜ小説を書くのか、きちんと考えてみたかった」と話す。「まさか本になるとは思っていなかった。現物が8月の終わり頃に届いて手に取った時に重みを感じた。頑張って書いてよかった」と振り返った。
「友だちを定義できるか」を書いた2年生の入江春香さんは、小学生の頃から「クラスメートって本当に友達なんだろうか」という疑問を抱いてきた。「自分一人で考えていたことを文章にするのはとても大変だった。それが人に読まれることに緊張や怖さもあったが、今はうれしい気持ちもある。哲学部に入ってよかった」と語った。
問いを共有する
文芸部の活動に哲学を取り入れるきっかけをつくったのは、卒業生で、現在大学3年の石田彩恵さんだった。中学生の頃、校外の哲学カフェに参加した経験が原点だという。高校入学後、飯島教諭に哲学カフェの開催を持ちかけたことで文芸部内に哲学班が生まれ、校内での哲学カフェが始まった。石田さんは「高校生はもやもやを抱えても、それを発散できないことがある。私自身も個人的な感情をうまく処理できず、内面的な問いも増えていた。疑問を声に出し、みんなで問いを共有する。言葉にならないような問いも取り入れていけたことが、哲学カフェの意義になった」と話した。
哲学班の活動を校内に広めた、大学2年の松間夕華さんは「大きな悩みだった人間関係について、対話することで自分が救われる場に哲学班はなっていた。友達や趣味のつながりとは違う形で人とつながれる場所。在学中は活動を知ってもらいたくて、自分でフライヤーを作って各クラスを回るなど、がむしゃらに動いていた」と当時を語った。
市民向けの「語るカフェ」を始めるきっかけを作った大学1年の神谷和奏さんは、哲学カフェの魅力について「相手のことを否定しないというルールがあること。討論とは違うし、意見の優劣を決めるものでもない。ここなら自分について素直に話すことができる」とし、「精神的につながれる場所が高校生の時にあったことは、自分にとって本当にありがたかった」と振り返った。
「語るカフェ」の会場となっているがばんクリエイティブルームを立ち上げた葛西紘子さんは、神谷さんとの出会いが哲学カフェにつながった経緯を紹介した。「日常の中に、自分を表現できる自由な場所があるといいと思って始めたのが、がばんクリエイティブルーム。ここで開いた別のイベントに遊びに来てくれた神谷さんとの出会いが、『語るカフェ』が始まるきっかけになった。これからも面白い企画をしてもらえたら」と語った。

高校生だからこそ感じる視点
書籍化を実現したあっぷる出版社の渡辺さんは、NEWSつくばに掲載されたコラムを読んだことが出版のきっかけになったとし、「コラムを見て、これは本にできるんじゃないかと思った。偉い人や、たくさん経験を積んだ人だけでなく、若い人にもどんどん本を出してほしいと思っていた。今後、この本がどう広まっていくのか、すごく楽しみ。より多くの読者に届けていきたい」と話した。
顧問の飯島一也教諭は、哲学カフェを続ける中で「哲学は個人の作業ではなく、共同作業だということに気づいた」と語る。「『対話』という対等な関係性だからこそ促進されるのが、哲学カフェ。哲学部の活動は、哲学と対話に基づく関係性を学校内外に広めていくことを主な目標としている。生徒と一緒に歩む中で、活動の焦点が定まっていった」と話した。今回の書籍については「哲学カフェのライブ感や、生徒一人一人の問題意識の切実さを描いている」と評した。
哲学部部長で2年生の大和田哲汰さんは、自身が執筆したコラムについて「深夜までかかって書き上げたが、自分の言葉になりきれずに何度も見つめ直し、書き直した。自分が書いた原稿が本になることに驚いている」と話した。8月に書店を訪れた際には「本の前で立ち止まった方が手に取ってくれたのを見た」といい、「迷いながら書いた中で、友人から感想をもらえたこともうれしかった」と振り返る。「生徒が向き合う切実な問題を取り上げている。高校生だからこそ感じる視点が盛り込まれているところに独自性があると思っている。多くの方に新しい考え方や気づきを与えられたら、とてもうれしい」と締めくくった。(柴田大輔)





