国際協力機構(JICA)筑波センター(つくば市高野台)を訪れているケニアやマレーシアなどアジア・アフリカ9カ国からの研修員17人が15日、つくば市内の子ども食堂を訪れ、貧困の現場で支援する民間の取り組みを視察した。地域住民や企業、行政が連携して食を通じた支援を行う現場を学び、自国での活動に生かそうと熱心に耳を傾けた。
研修員らは本国で栄養改善事業に携わる中央・地方政府機関の職員。農業分野だけでなく、保健、衛生、水、教育関係者らで構成されている。7月8日から8月5日までJICA筑波で、関連団体の視察や講義を通じて得た知識を元に本国での計画を作成し、帰国後に計画を実施することを目的としている。

世界に広がってほしい
視察したのは、2016年につくば市内で初めて子ども食堂を立ち上げたNPO法人マナーズによる「つくば『こどもの家』食堂」(同市北中妻)だ。同法人は、虐待やネグレクトなど、さまざまな事情で家庭で暮らすことが難しくなった15歳以上の子どもを受け入れる自立援助ホームも運営している。ホームで子どもたちと接する中で、15歳になってからでは支援が難しいケースもあることから、より幼い頃から地域で子どもたちを支えようと、子ども食堂を開設した。
現在は毎月第1、第3水曜日に開催し、毎回150人から170人ほどが利用する。未就学児は無料、小中高校生は100円、大人には300円で食事を提供し、市内のスーパーや企業、農家などから寄せられた食材を活用する。不登校の子どもや子育てに悩みを抱える家庭の利用も多く、スクールソーシャルワーカーや学校教員とも連携しながら、必要に応じて行政や支援機関につなぐ地域の居場所としての役割も担っている。

マナーズ理事長の宅間佳代子さん(68)は「自立援助ホームで、15歳になってから出会う子どもたちの中には、大人に心を開くことが難しい子も少なくない。もっと幼い頃から地域の中で子どもたちとつながることが大切だと考え、子ども食堂を始めた。子ども食堂は食事を提供するだけでなく、不登校やさまざまな悩みを抱える子どもや家庭を、行政や学校につなぐ役割も担っている。行政だけでなく、地域住民一人ひとりが支え合う草の根の活動だからこそ、広がる力がある。この取り組みが、それぞれの国や地域にも広がってほしい」と話した。
弱者が直面する課題は共通
ケニアから訪れた地方政府職員のジャクソン・エクシさん(31)は「私の地域では、移動型牧畜で生計を立ててきた高齢者の中に、住まいや食料に困る人もいる。子ども食堂の取り組みを見て、まずは始めることが大切であり、地域の協力が広がっていくことを学んだ。帰国後は、住まいや食事、保健サービスなどを提供できる支援の場づくりに生かしたい」と語った。
ボツワナから訪れた、政府機関の学校給食部門に従事するロシーナ・ディガンさん(51)は「地域や企業、ボランティアが協力して食材を提供する仕組みがとても印象的だった。帰国後は、農家が学校や地域へ野菜を寄付する取り組みを進め、栄養価の高い食事を必要とする子どもたちや若い女性への支援につなげたい」と話した。

JICA筑波センター研修業務課の赤石布美子さんは「今回の研修員は、モザンビークやエチオピアなど食料や水、衛生の不足が深刻な国や地域だけでなく、マレーシアやボツワナなど比較的食料や水、衛生設備が整備されてきている国や地域からも来日している。各国の背景は異なるが、社会的に弱い立場の方々が、特に栄養バランスの取れた食事をとりにくいことは共通の課題。つくばの子ども食堂で見られたような、地域・企業・行政が連携し、支援する取り組みを、出身国・地域で広め、進めていただきたい」と期待を寄せた。
全国に15カ所あるJICAの国内拠点の中でも農業分野に特化するJICA筑波には、各国の政府機関や自治体から年間700人余りの研修員が訪れ、それぞれの国が抱える課題の解決に向けて学んでいる。稲作や野菜など各国の主要作物について、品質や収量の向上、病害虫対策などをテーマに日本の指導員とともに研究・実験を行っている。研修で育てた農作物は、JICA筑波で開催されるイベントなどで活用されるほか、年間約2トンの野菜と800キロの米が2024年から、子ども食堂に寄付されている。(柴田大輔)






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