【コラム・山口絹記】ツール・ド・つくば2026、本番当日。朝5時前に起床。普通に寝不足である。炭水化物をとるため、山盛りのパスタとパンを無理やり食べ、前日に車に積んでおいた自転車とともに会場へ向かった。
会場に着くと、すでに参加者たちが周辺を走り込んでいる。使い込まれたロードバイクに本格的なサイクルウェア。チームで参加している人も多い。
私はこれまでスポーツの大会というものにほとんど参加したことがない。最後に出たのは、小学生のころの水泳の区民大会くらいだ。どうにも自分だけ場違いな気がする。
スタート地点には見たこともない数のロードバイクが並んでいた。その中に自分がいることが不思議で、一体どうしてこうなったのだろうと思う。
自分はいつもこうだ。自分で決めたことなのに、どうして自分が今ここでこうしているのかと、ふと我に返ってしまう。
55分21秒 201
スタート。
自転車屋の店長さんから「周りのペースに乗せられないように」と言われていたので、自分の脚にかかる負荷だけを意識する。
とはいえ、ずいぶん追い抜かれるな。
30代の集団では早々に最後尾。やがて後ろからスタートした40代の人たちにもすさまじい勢いで追い抜かれていく。
どうなってんだよ。おかしいだろ。
横をぶち抜いていく立派なふくらはぎを見て、まぁさもありなんと諦めた。
それでも練習で一度座り込んだ不動峠を今回は止まらず通過。スカイラインに入ると、今度は店長さんの「下りは休憩じゃないですからね」という言葉を思い出す。
ギアを上げ、一気に踏む。
下りで加速し、その勢いのまま次の登りへ。これは意外とうまくいった。今まで抜かれ続けていたのに、今度はこちらが何人も追い抜いていく。最高速度54.7キロ/時。人を追い抜くというのは、結構気持ちがいい。
風返し峠を越え、残り1キロで経過時間は50分。
コレは1時間を切れる。
急に気合が入り、初めてダンシングをしてみたら脚がつりそうになったので、すぐやめた。右膝も痛い。
最後まで見えないゴールへ向かって、残った力でペダルを踏む。
55分21秒201。
目標だった1時間を、4分以上縮めていた。
もっと遠くへ行ってみたい
帰りは参加者数十人で、登ってきた道をゆっくり下る。段差があれば前の人が手でサインを出す。それを見て、私も後ろの人にサインを送る。
なんだか、これがすごく楽しい。
ツール・ド・つくばを完走することは、私にとって大切な約束でもあった。その話は、いつかきちんと書こうと思う。
今はただ、もっと遠くへ行ってみたい。
そんなことを考えていたところ、父から「6月末に佐賀へ行かないか」と連絡があった。
佐賀は、この自転車にも深い関わりのある場所である。
そうか。このバイクを、佐賀に持っていけばいいんだな。
次の目標が決まった。(言語研究者)





