火曜日, 6月 16, 2026
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「電力消費、排熱、CO₂排出に懸念」歌川学さん講演 つくばに国内最大級のデータセンター(下)

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データセンターの対策 効率規制は2031年から

現在、データセンターのエネルギー効率を上げるため主に考えられているのがIT機器以外の省エネだ。主なものは冷却のエネルギー効率を上げること。データセンターではIT機器が狭いところに密集して置かれ、巨大なエネルギーを消費するので熱がこもる。そこで巨大空調設備で冷却し熱を外に出す、または、水あるいは特殊な液体で冷却する。他に記憶装置の省エネなどもある。本来はIT機器の効率改善が大きいがメーンになっていない。

データセンターのエネルギー効率を上げようと、経産省は省エネ法で目標値を示している。ただし現段階は義務ではない目標で、達成できなくても罰則はない。IT機器のエネルギー消費でデータセンター全体のエネルギーを割るというのが指標で、目標は1.4。つまりIT機器のエネルギー1に対し、冷却などは0.4のエネルギー消費にとどめるというものだ。北海道石狩市のさくらインターネットのデータセンターなど、すでに目標値1.4を達成しそれ以下で済ませているところもある。KDDIは特殊な液体オイルでIT機器を丸ごと冷やす「液浸冷却」の実証実験に取り組み、効率の悪いデータセンターに比べて冷却の電力を大きく削減でき、今後実用化すると発表している。

海外では、ドイツや中国の一部で、日本の目標値よりも厳しい対策を求めている。日本でも制度強化が予定され、現在は罰則のない目標値だが、2029年以降に新設されるデータセンターは、稼働後2年を経た2031年以降、現在の目標値より厳しい効率1.3、つまり、IT機器のエネルギー1に対し冷却などは0.3のエネルギー消費にとどめなければならなくなる。

データセンターの営業形態にはいくつかパターンがあって、①IT機器は所有しないで場所を貸す営業②建物を所有し、IT機器を自分で入れて、そのIT機器を時間貸しあるいはスペース貸しにするオーナー型の営業③建物は借りて、IT機器だけを使うテナント型の営業などがある。つくばはどういう営業形態になるか分からないが、これまで制度対象外だったテナント型も2029年の2年後の2031年以降は規制の対象になる。

1棟目のデータセンターの建設が始まったつくば市大穂の用地

欧州では排熱を活用

ヨーロッパではデータセンターの排熱を活用し、排熱が外に出るのを防いでいる。フィンランドでは首都ヘルシンキなど複数の都市でデータセンターの排熱を地域熱供給網で利用している。スイスのバーゼルではデータセンターではないが、巨大な施設からの排熱を地域熱供給網で利用している。いずれも排熱を地域の工場、オフィス、家庭で暖房、給湯などに使用する。

つくばには中心部にしか地域熱供給網がないが、周辺地域に地域熱供給網をつくれば、地域に排熱を排出しなくて済む可能性がある。

国内の例では、東京都は都市再開発をする時に、地域熱供給を検討することを義務付けている。ここでの検討義務の内容は都市再開発事業をする際に、事業者が地域熱供給網を建設し利用することだ。ただしデータセンターが排熱の地域供給網を国内で導入した例は国内ではない。

再エネ100%利用ならCO₂排出ゼロ

二酸化炭素の排出量を減らす手段としては、再生可能エネルギーの利用がある。つくば市は今年4月策定の地球温暖化対策実行計画で、温室効果ガス排出量を2030年に2013年比46%削減する目標を立てている。データセンターで、再エネではない現状の火力中心の電力を使用すれば、現在のつくば市全体の2倍の二酸化炭素が排出されるが、再生可能エネルギー100%の電気を使うことで排出ゼロになり、つくば市の計画に悪い影響をもたらさないこともできる。

実は、使用する電力を再生可能エネルギー100%にした、あるいは2030年までに計画しているデータセンターが日本でも多数ある。東急不動産の石狩市データセンター、同じ石狩市のさくらインターネットのデータセンターなどだ。ソフトバンクが北海道苫小牧市に計画するデータセンターも使用電力を再生可能エネルギー100%にする計画を立てた。

これは必ずしも環境に熱心だからではなく、データセンターを使う大手企業が、うちの製品やサービスは、自分が使っているサービスを含めて二酸化炭素排出ゼロ、再生可能エネルギー100%と名乗りたいため、使用するデータセンターにも対策を求めるためだ。製品・サービスのサプライチェーン全体の再エネ100%を名乗るには、その企業が使用するデータセンターも、二酸化炭素排出ゼロ、再生可能エネルギー100%でなくてはならないので、将来の生き残りのためにデータセンターを多数持つ会社が再エネ100%などの計画を立てている。つくばの計画にはそうした情報がない。

データセンターも2極分化し、再エネ100%利用あるいは計画を積極的に発表しアピールする会社と、再エネ利用について何も発言がない会社がある。発表のないところは、少なくとも当面は火力発電中心の電力を購入すると見られる。

自治体も対応できる

巨大データセンターの立地に際して、自治体としてどんなことが考えられるか。つくば市の場合、2050年二酸化炭素排出実質ゼロが目標だが、巨大データセンターは市の計画の目標達成に大きな影響がある。一方で自治体は開発や建築の際に許認可を行うなど関与するので、地域の環境や住民に影響があるか考えて判断することも考えられる。

自治体の取り組みとして、エネルギー消費側でなくエネルギー供給施設について、例えば太陽光パネルの乱開発を抑える条例がある。事実上、10キロワット以上の地上設置太陽光建設を制約している自治体もある。事業者と地域住民などが対立した時に、まちづくり条例などで市が調停役になる制度を持つ自治体もあり、千葉県流山市は市が調停する条例をもち、ここではデータセンターの建設計画が中止になっている。

国と茨城県の環境影響評価制度は、一つの県、一つの政令指定都市並みの電力消費があっても、市全体の何倍もの電力を消費し、二酸化炭素を排出しても、それだけではデータセンターは制度の対象にはならない。

しかし何らかの形で環境影響評価制度の対象になることがある。東京都昭島市のデータセンターは、それ自体は東京都の環境影響評価制度の対象ではないが、ゴルフ場で緑地であったところをデータセンターにし、土地の改変をするということで制度対象になった。それによって昭島市の場合はデータセンターの電力消費量や二酸化炭素排出量が開示された。

都市計画その他で、住民参加手続きをもつ制度もある。任意であっても自治体が事業者に住民説明を求めることも全国で行われている。つくばでは説明会はされたのだろうか。建築協定とか地区計画など国交省の制度などもあり、使えるといいかもしれない。

事業者は情報公開、説明を

つくばでは最初の5万キロワットのデータセンターの建設が始まったが、次期施設については今後、いつ、どれくらいの規模の計画か情報がない。エネルギー消費量、二酸化炭素排出量、排熱量、冷却装置の種類、空冷でも水冷でも効率はどれくらいか、再生可能エネルギーを使用するのか等の説明が求められる。

今、建設が始まった建物は、高さ38メートルの壁のような建物になる。高い建物が建つと、突風など今までにない気象を起こす可能性がある。排熱で空気が上昇する場合の地表の風の強さも懸念される。東側には物流施設が計画されトラックが行き来する。これらの情報を共有することがこれから課題になる。予測と、やや極端な影響になる場合の対策が分かることによって、地域でどう受け止め、何の対策強化を求めたらいいのか議論できる。分からないと議論できない。

バックアップ電源も不明

バックアップ電源についても、つくばの計画では発表がない。容量30万キロワットの他市のデータセンターで、その規模全てまかなうバックアップ用ディーゼル発電機を用意し、毎月試運転をする計画と聞いた。同じように考えるとつくば市のバックアップ電源は5万キロワット、自家発電設備として大きな規模である。将来、100万キロワットのバックアップ電源を計画しているか不明だが、この場合は容量だけで言うと火力発電所の環境影響評価制度の対象となる15万キロワットをはるかに超える規模のディーゼル発電機のバックアップ電源で、試運転を定期的にすると運転の初めと終わりには大気汚染物質その他有害物質の排出も懸念される。

つくばのバックアップ電源についても、どういう規模・種類の設備か、試運転も含めた運用、燃料貯蔵などの開示が求められる。

あと、空冷や水冷の設備や受電設備などが敷地境界にあると、夜、騒音や低周波音が気になることがあるかもしれない。

緊急時、他分野では操業制限の例も

緊急時の対応についても自治体や周辺住民との協議が求められる。猛暑日に周辺地域の気温が上昇するなどの緊急時対策として、大気汚染公害対策が参考になる。高度成長期の1970年代からの大気汚染で、子供たちが倒れる、大気汚染が原因で肺疾患になった患者さんが亡くなるなどの大気汚染公害被害があった。その時にできて今も運用されている大気汚染防止法の制度がある。オキシダント濃度が上昇し光化学スモッグ注意報が出た時に、対象地域を定めて光化学スモッグ原因物質を排出する工場に対し都道府県知事が指示を出し、大きい場合は40%燃料使用量削減や、工場や設備の使用制限などを求める制度だ。データセンターなどエネルギー多消費施設の排熱による緊急時対策制度は今のところないものの、排熱量は非常に大きいので、地域の気温上昇影響を予測し、大気汚染の例をもとに緊急時対策も検討すると良い。事前の対策として風の道を考えた冷却、気象条件によって健康影響が拡大した場合の救急体制の拡充などもある。

日本のデータセンター事業者はフル稼働に近い運転を考えるが、ヨーロッパのデータセンターには柔軟な運転があり技術的には可能性がある。緊急時の対策を話し合うことも考えられる。

予測評価をし対策の具体的議論を

データセンターの電力消費や排熱などについて、また地域に与える悪影響を防止する対策について、地域住民だけでなく全体で議論されなければいけない。議論が積み重ねられると、エネルギー効率改善対策、排熱を地域に排出しない対策、再エネ利用などが提案される可能性もある。

地域のことを全体で考え、今後、AI利用のコストアップを利用者で負担しIT企業の対策実施を求めるようなルールになると、例えば、今後は大型データセンターは地域熱供給網と合わせて建設され、周辺地域、例えばつくば市や土浦市の地域企業や家庭は冷暖房や給湯を化石燃料から脱却し、光熱費負担も下がるなどのメリットも生じる。地元には、売り上げも雇用もあまりなく、巨大排熱などが懸念される迷惑施設ではなくなる可能性もある。

今後はデータセンターがこれだけ必要なのか議論になる。電力中央研究所が昨年の報告で、計画通りできるか、この業種は不確実性が大きいと指摘している。国の審議会でも送電線容量を抑えたままの問題を議論している。予測しにくい、地域にとってやっかいな施設ともいえる。

日本の多くの自治体が2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言をしているので、その裏付けの一つに、今後新規立地する大規模事業所は期限を決めて再エネを使うということにしないと、市町村長が許可を出さないような制度設計も今後は考えられる。大口は再エネ使用を原則、少なくとも電力は化石燃料に頼らない対策を進め、それを裏付ける制度設計を考える必要がある。半導体工場とデータセンターは大手企業が担い、使用エネルギーも再エネ化しやすい電力が大半なので、今後消費が伸びる分は化石燃料に頼らない対策、それを確実に促す制度設計も可能だ。

終わり(鈴木宏子)

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