【コラム・斉藤裕之】伸びた庭木の枝でも切ろうかと思うが、まだまだ蚊がいたり天気が悪かったりして。絵を描くのも日がな一日というわけでもないので、さて、何をしようかと…。そこで目に付いたのが分厚い本。表紙カバーは光沢のある青に小さな魚の群れが描かれている。
実は英語で書かれている小説で、かれこれ20年以上前に東京の洋書屋さんで買い求めたもの。「FISH of the SETO INLAND SEA」つまり「瀬戸内海の魚」。このタイトルに引かれて買った。何の話か全く分からず、作者は日本の女性? 何度も読み始めては挫折して、結局放ったらかし。
でも、なんか気になって目につくところには置いてあった。ちなみに、私の英語の能力は高卒程度かつ年齢と共に退化中。
それから、これもノートとしてはかなり厚手のわら半紙製の、多分この先も使う当てのないものを引き出しの中に見つけて、和訳したものを書き始めた。日本の話ではあるし、それも舞台は故郷の瀬戸内海。頭の中に映像が浮かびやすい。それほど難しい言い回しもない。
とにかく、ボールペンでひたすら和訳文を書いていく。そこで今どき大変重宝するのがネット検索。パソコンを開いてわからない単語はもちろん、今一つうまく訳せない時には文章を打ち込むと、なるほどね。おまけにネイティブの発音まで聞ける。
しかし、目的はこの物語を読み切りたいということだから、単語や熟語を覚える気はさらさらないし、英語のお勉強をするという向上心もない。その上、人に見せるためではないので、悪筆走り書きで私自身も読み返すことができないほど。しかし、面白いことにこの方法で和訳をしていくと、ストーリーはもちろん、リアルな映像として頭に残っていく。
そばぼうろ、かりんとう、ふがし
さて、楽しみながらの和訳も、いかんせん目が遠くてそう長くはやっていられない。そんな時目に留まったのが「みすゞ飴(あめ)」。いわゆるゼリー菓子。長野の上田にお店があるのは知っていたが、先日、千曲のギャラリーに行った折に初めて買ってみた。
食べるというより、セロファン製の包み紙の色合いが良くて、私の身の回りにはない色合いだから、絵を描こうと思って買ってきた。それを一つ二つ、まずは描いてみた。それから口に入れてみた。「?!」 思っていたよりもいい感じのかみ応え、しかもそれほど甘くない。思っていたゼリーとはちょっと違った。そして、私はみすゞ飴にはまってしまった(茨城のスーパーでも売っているのを発見)。
「みすゞ」とは、「信濃」にかかる枕詞だそうで篠竹のことだそうだ。言葉の響きもいいし、「ゞ」という踊り字もかわいらしい。今度生まれてくる孫は女の子だそうだから、「みすゞ」ちゃんという名前はどうだろう。上田は向こうのお母さんの故郷でもあるし…。
新聞の記事によると、世間ではグミがはやりというが、私はみすゞ飴をひとつ口に入れて和訳再開。この小説の時代設定にも、寒天と水飴でできたみすゞ飴が似つかわしい。さて、果たしてこの本を読み切ることはできるのか…。というか、最近、そばぼうろとかかりんとう、ふがしなんか買ってしまうのは、年齢のせい? 来年につづく。(画家)






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