【コラム・原田博夫】8月上中旬、「高円宮妃久子殿下 根付(ねつけ)コレクションと写真展:『旅する根付』-『茶の本』120年目の夏に」が、茨城県天心記念五浦美術館で開催されました。通例では展覧会前に開催される特別内覧会が写真展の中日(10日)に設定され、妃殿下ご来臨でのレセプションも水戸市内で開催されました。私も参列する機会を得、根付芸術の魅力を堪能しました。
根付は、着物が衣装だった時代、印籠(いんろう)・煙草(タバコ)入れ・巾着(きんちゃく)などを腰につるすときの紐(ひも)の先端に付ける小さな細工物でしたが、「江戸の粋」を象徴する洒落(しゃれ)具としてはやり、文化文政年間(1804~30年)に最盛期を迎え、遊び心あふれる実用品として身分を問わず広く愛用されたようです。
しかし、明治になり洋風化が進むと、日本社会では根付の役割は急速に失われました。対して海外では、世界的にも類を見ない「小宇宙の芸術」として評価されました。とりわけボストン美術館が収集した根付コレクションには、日本人好みの小ぶりな根付が多く所蔵されています。同美術館の中国・日本美術部長だった岡倉天心の鑑識眼や見識が反映していると推察されます。
根付は、現代では着物の装身具としては役割を終えるも、家財のアクセントとして新たな意義が見いだされ、「掌(てのひら)におさまる美術品」として洋の東西を問わず評価されているようです。
収集した古根付などは約500点
内覧会とレセプションで妃殿下は、「高円宮コレクションは、故高円宮殿下の発議で始まったと言われるけれど、そうではなく、妃殿下が最初に関心を持ち、それを故高円宮殿下もお認めくださったことから収集が始まった」と、懐かしいエピソードとして紹介されました。内覧会での妃殿下ご自身のご説明も、事前の準備や段取りを超えた熱のこもったもので、周りの関係者は進行にハラハラドキドキでした。
妃殿下ご自身が、博士論文「根付コレクションの研究-高円宮コレクションを中心に」で、2011年度に大阪芸術大学から博士号を取得されているだけのことはある、と得心した次第です。
妃殿下のお話では、収集した古根付・現代根付・印籠など約500点は、2011年より数次にわたって東京国立博物館に「根付:高円宮コレクション」として寄贈しているそうです。今回の天心記念五浦美術館の展示では、そのうちから現代根付を中心に約200点が選定されていました。いずれ機会を見て、東京国立博物館でじっくりと再拝見したいものだ、と思った次第です。(専修大学名誉教授)






最近のコメント