土曜日, 8月 22, 2026
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「ひきこもり」その2《看取り医者は見た!》29

【コラム・平野国美】今回は前回(10月4日掲載)の続きです。「ひきこもり」は、いつ、どこから現れたのか? 他国にも存在するのか? 単なる個人の病的な資質なのか?

家族主義がある韓国、イタリア、日本では「ひきこもり」の形態が多く、個人主義の米国、英国では子供が家から独立する傾向があるため、「ホームレス」の形態が多いと言います。つまり、この現象は個人の資質だけでなく、文化や生活習慣の影響を受けていると思われます。

「病理」という医学用語があります。病気の原因や成り立ちを研究する学問で、主に患者さんの病変部を採取した組織を顕微鏡で観察して診断をつける役割を果たしています。「ひきこもり」という現象は、顕微鏡の世界で理解できるものではありません。社会的病理と考えられるのではないでしょうか?

精神科医、斎藤環先生(筑波大学医学医療系社会精神保健学教授)は「ひきこもり」を「病」ではなく「状態」として捉え、社会的な要因が大きく影響していると指摘しています。

斎藤先生によると、日本のひきこもりは、家族主義だけでなく、社会の期待が強い文化背景が影響しており、個人が社会や家族の役に立たないと感じることがその一因と述べています。そして、社会からの孤立が問題の本質と強調されています。

そこは天国か? 地獄か?

日本の「ひきこもり」と欧米の「ホームレス」は似て非なるものなのか? それとも、孤立という同じものなのか? そこに文化的背景があるのか? 私の小学校の同級生に、この範疇(はんちゅう)に入る者の記憶がありません。中学校時代は1学年400名ほどでしたが、1人存在していたと思います。

自分が現在診察している高齢の方に、昔、こういう人はいましたか?と尋ねると、ほとんどの方が存在しなかったと答えます。文化背景の一つかも知れませんが、昭和、戦前の日本家屋を考えると、引きこもる場所もなかったと思います。6畳間に雑魚寝して生活する時代であったと思います。

実際、患者さんたちは、昔のことをこう話してくれます。「家も狭いし、家でゴロゴロしていると、親に外で遊んでこいと叱られた」と。戦後のある時代から、子供部屋というものが出現しました。当初はふすまや障子で仕切られた部屋であったと思います。

私も受験期に、そのような部屋をあてがわれました。そして、平成に入り、子供部屋がドアを持った構造、そして鍵が掛かり、テレビが1台。ある時から、そこにパソコンやゲーム機器が置かれるようになったと思います。20年前、2階の息子と母親が携帯電話で話す姿を見て奇妙に思えたことがあります。

そこは天国か? 地獄なのか? 家屋構造の変化も、「ひきこもり」を誘発したのではないでしょうか?(訪問診療医師)

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